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④ 月の化身 -4-

 遥か彼方に遠ざかった地球を掴むかのように手を伸ばした。


「アラン……」


 月に還った私が思い返すことは、アランのことばかりだった。


 彼は、私に名前をくれた。

 彼は、私の名前を呼んだ。


 それが嬉しかった……のだろう。私は私の名前を何度も口にし、その度にアランを思い浮かべた。


 だから、私は彼を忘れなかったのだろう。


 そして、次の新月の日。


 私たちは再会を果たすことになる。


     ***


 隕石が落下した場所――

 私に衝突した際に出来た小さなクレーターの所にアランは立って居た。


 そして彼は満面の笑顔で私を迎い入れてくれた。


「願いは叶うものだね」


「願い?」


「あの流星群の時に、流れ星に願い事をしていたんだ。これからも君と一緒に居られますように、てね」


 地球では、流れ星が消える前に願い事を三回祈ると、その願いが叶うと云われているらしかった。

 だけど、私はアランがそんな事を祈っていたなんて知らなかった。


 私は私の意志で、やってきたのだと話したが、アランは――


「まぁ、結果オーライってことだよ」


 彼は無邪気に、微笑み返した。


 それから、新月の日――地球に降り立つ日が訪れる度に、何度もアランと会った。


 アランと語り合ったり、星を観測したり、時には海や遊園地などの場所にも出掛け、アクセサリーなどを贈ってもらったりした。


 そして、いつしか地球に降り立つ理由は、アランと逢うために変わっていた。


 アランと居ることが楽しかった。アランと話すことが嬉しかった。アランと会う度に、私はアランに惹かれていった。


 やがて、


“アランと、いつまでも一緒にいたい”


 そう思うようにもなっていた。


 そして、約三十日間もアランと逢えなくなることが……夜明けと共に離れてしまうことが……とても苦しく胸が張り裂けるようになった。


 あの気持ちは何だったのか……今となっては、理解できる。


 私は、アランに恋をしたのだ。

 月である私が、一人の人間に……。


 だけど、アランは言う。


「人間だって星とかに魅了されるよ。だから、こうして天体観測をしたりする。だから、ルナに心を奪われてしまってもおかしくは無いよ」


 彼も、私を愛してくれた。


―――そして、私と地球の運命を変える日が訪れる―――


 アランと初めての口づけをした夜の事だった……。


 夜明けと共に、私は月に還ることが出来なくなったのだ。


 それはアランの望みだったのか、それとも私の望みだったのか……。


 だけど、これで私はずっとアランと一緒にいられると思った。


 その日から、月は姿を消したのだった。

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