プロローグ
長い髪をした女が舞っていた。
長く細やかな手足をゆっくりと滑らかに伸ばし、金色の長い髪は一呼吸おいて彼女の動作についてゆく、穏やかに流れる川を見る者に思わせた。
女の手には細く長いレイピアが握られていた。陽の光を反射して時に目を奪うように煌き、この舞のような美しい動作がアストラシア王国軍に伝わる正式な剣術の型であることに気づく。
「ヘルガさん、アシュレイ中将がお呼びです」
女の美しい舞に見とれていた上士官秘書は、彼女の動きが止まるのを待って、声をかけた。
「また見惚れてしまいましたわ。さっきもここに来るまでに新兵の共同訓練をやっていましたが、ヘルガさんのように、美しい舞のように剣をなされる方などきっと誰もいないでしょうね」
「敵を倒せなければ、何の意味もありませんよ。私の剣は恐怖を生み出す事ができない」
女はレイピアを腰の鞘にしまいながら、腰布で汗をぬぐい、笑いながら言った。
女の顔はまるで人形のように整っており、透き通るような白い肌が更に彼女を周りの風景から際立たせていた。
今、激しい運動により上気し、ほんのりと赤く染まった女の顔は雪の中に咲くおかしな真紅の薔薇のように、異様なほど美しく輝いていた。
秘書は女の上記した顔を見つめ、何かを言いかけたが、口をつぐみ笑顔を見せながら、用件を再度伝え、部屋に戻っていった。




