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『信用処刑人レオン』 ― 帝国監査局第零課 ―  作者: 神代零


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第十二話 「帝国監査」

 帝国監査局中央監査塔ネメシス


 第零級秘匿会議室。


 重苦しい沈黙が続いていた。


 世界信用図には、

 赤い崩壊線が増え続けている。


 東方聖導院共和国。


 灰鉄諸侯領。


 自由都市同盟。


 複数国家で同時多発的な市場異常。


 四十年前。


 黒月恐慌前夜と、

 極めて似ていた。


「……偶然じゃない」


 ルークが掠れた声で言う。


「誰かがまた、

 世界規模恐慌を起こそうとしてる」


「違う」


 ヴァルディスが静かに否定した。


「既に始まっている」


 空気が凍る。


 レオンは世界信用図を見つめていた。


 視える。


 国家を繋ぐ契約線。


 金融流動。


 信用操作。


 そして。


 その全ての中心に存在する、

 一つの巨大構造。


 帝国中央信用議会。


 七大財閥。


 世界経済支配の中枢。


(……黒いな)


 契約線が濁っている。


 まるで巨大な腐敗そのものだ。


「レオン」


 セリスが静かに呼ぶ。


「何が見えていますか」


 レオンは数秒黙る。


 そして答えた。


「世界規模の信用収縮」


「市場を意図的に冷やしてる」


 ルークが眉をひそめる。


「目的は?」


「国家債務支配」


 ヴァルディスが目を閉じる。


 正解だった。


「恐慌を起こす」


「国家が破綻する」


「帝国財閥が救済名目で介入」


「債務で支配する」


 レオンは淡々と整理する。


「四十年前と同じ構図だ」


 室内が静まり返る。


 あまりにも巨大な話だった。


 国家規模ではない。


 世界そのもの。


「……止められるんですか」


 ルークが小さく聞く。


 ヴァルディスは答えない。


 代わりに、

 老人はレオンを見た。


「アルヴェインだけが、

 この構造を監査できた」


「だから消された」


 レオンは静かに息を吐く。


 理解してしまった。


 自分がここへ呼ばれた理由を。


 帝国監査局は、

 既に内部から腐食されている。


 通常監査では届かない。


 だから必要なのだ。


 アルヴェインが。


「……監査対象は」


 レオンが低く呟く。


 ヴァルディスが答える。


「帝国中央信用議会」


 世界最大権力。


 国家を超える支配機構。


 つまり。


 世界そのもの。


 ルークが乾いた笑いを漏らす。


「新人監査官の仕事じゃないぞ……」


「元々、

 普通の新人じゃない」


 セリスの視線は真っ直ぐレオンへ向いている。


 彼女は既に理解していた。


 この男は。


 国家単位では止まらない。


 その時だった。


 警報。


《中央監査塔内部異常》


《監査封印破壊を確認》


 全員が顔を上げる。


 次の瞬間。


 会議室外で爆音が響いた。


 轟音。


 衝撃。


 壁面術式が激しく揺れる。


「襲撃!?」


 ルークが立ち上がる。


 同時に、

 通路側監査封印が爆散した。


 黒煙。


 そして。


 ゆっくりと、

 一人の男が現れる。


 黒い監査外套。


 胸元には、

 砕けた銀監査印。


 その姿を見た瞬間、

 ヴァルディスの表情が変わった。


「……馬鹿な」


 男が静かに笑う。


「久しぶりですね、

 総監」


 低い声。


 だが、

 その瞬間。


 レオンの視界が激しく反応した。


 信用視が警告を発する。


 異常。


 危険。


 目の前の男は、

 普通ではない。


 契約構造が崩壊している。


 まるで、

 存在そのものが信用から外れている。


「誰だ」


 レオンが問う。


 男はゆっくり視線を向ける。


 そして。


 静かに名乗った。


「元・第零課主任監査官」


「カイン・アルヴェイン」


 世界が止まった。


 アルヴェイン。


 ルークが絶句する。


「え……?」


 セリスですら目を見開いていた。


 レオンだけが、

 動けなかった。


 男は笑う。


 どこか、

 悲しそうに。


「初めましてだな」


「レオン」


 その瞬間。


 レオンは理解する。


 自分の一族は、

 まだ終わっていない。

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