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RAY ANGEL SPACE REMIX  作者: 迫田啓伸
40/71

4-5

 廊下に敷かれた黒のカーペットと飾り気のない廊下はどこまでも続いていた。

 ヘイルが先に行き、船内を案内した。迷路のような廊下を迷わず進んでいく。

 二人は何度か言葉をかわしたが、会話は途切れがちで、二人とも黙り込んでしまった。

 彼はあるドアの前で立ち止まった。

「ここに寄ろう。驚かないでね」

 ドアについている正方形のボタンを押すと、シュッという音と同時に勢いよく開いた。

 二人が中に入るとドアは閉じ、証明が点灯した。

「んなっ」

 セリナはその光景を一望した。その場で体が硬直し、立ちすくんだ。

「君は驚いてばかりだな」

「だって」

 ヘイルのあきれた声が聞こえる。

 それにセリナはろくな返答ができず、部屋の中の光景をただ眺めているだけだった。

 その部屋はレイAの格納庫と同じくらいの大きさだった。

 そこにあるのは天井まで届くほどの巨大な標本棚だ。セリナに見えるのは一番前のものだけだったが、その向こうにも同じ物が並んでいる。

 それには無数のカプセルが安置されていた。

 セリナは棚に近寄っていった。

 接近するとその巨大さがよくわかる。

 カプセルはセリナの身長よりも大きい。

 隣のカプセルとはわずかな間隔を開けているだけで、ビッシリと敷きつめられている。

 カプセルは円柱状で、表に向けられている部分は広範囲にわたって、結露が凍りつき半透明になっているガラスがはめ込まれていた。

 ガラスのすぐ上には、文字が刻み込まれた金属板が貼り付けられている。これが名札なのだろう。

 ガラスに触ってみる。

「冷たい」

 反射的に手を引っ込めたが、再び手を置いた。

 我慢できないということもなかった。

 手を離すとその箇所だけ露に濡れていたが、すぐに凍りついた。

 カプセルの中には人がいた。

 まだ十代前半と思しき女の子が眠っていた。セリナと同じ服装だったが、その女の子の顔には生気が見られない。血の気がないのだ。

「僕達はこの中にいたから」


 再びヘイルに手を引かれ、部屋の中央まで連れてこられた。

「あれ?」

 損傷を受けた標本棚があった。

 そんなのがいくつも並んでいた。

 棚を作っている金属板が引き裂かれ、壊れたカプセルと一緒に床に散らばっている。

 進んでいくごとに棚の損害はひどくなった。

 標本棚がたてに大きく割れ、傾き、カプセルがほとんど残っていないものもあった。

 二人はその棚の前で足を止めた。

「僕のカプセルはあの棚の真ん中辺りにあったんだ。僕の姉貴だった人のもね」

「どういうこと?」

「レイ・エンジェルと宇宙生物が戦っていたんだ。天井に穴が開けられて、カプセルが吸い出されていった。僕は何とか助かった。カプセルは壊れてしまったけどね」

 ヘイルの口調は淡々としていた。

「もしかしたら!」

 セリナは蒼ざめ、叫んだ。

「どうした?」

「私、覚えてる。この前、人が入っているカプセルが、宇宙生物に、食べられていたの」

 自分の顔から血の気が引いていくのを感じた。


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