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背後に立っているヘイルが言った。
「君があの中に入っている間、あれの全感覚が君のものになる。つまり君は、あのロボット『レイ・エンジェル』の脳になっていたわけだ」
「そうか。見えたり聞こえたり、考えたりするのは脳があるから。だから、あの、レイ・エンジェルだっけ? あのロボットが私の体になったかのように感じていたのね」
「そう。君の脳が感じていただけなんだ。レイ・エンジェルはこの宇宙船『エデン』の護衛として搭載されていたようなんだ」
「宇宙生物からの?」
「それもあるだろうし、隕石からとか。宇宙には危険がいっぱいだからね。君はカプセルからあの中に移され、そこで中学生活を送っている夢を見てた。夢が変な具合になっていたのは、機械が異常をきたしたからじゃないかな」
ヘイルの説明に納得し、一言ごとにうなづいた。
話を聞いている間中ずっと、セリナはレイ・エンジェル(以下『レイA』)を見上げていた。
自分の意思だけで、このような巨大ロボットを動かしていたことに素直に驚いていた。
ヘイルがセリナの手を握ってきた。
「エデンのメインコンピュータールームに行こう。もっと何かわかるかも知れない」
と、緩やかに手を引いた。
レイAの格納庫から出て、廊下を歩いた。
明かりが少なく、床に黒のカーペットが敷かれてある。
幅が広く、殺風景で、長い廊下だった。
レイAの頭部から出てきてから、しばらく混乱していたセリナだったが、かなり落ち着いてきた。
それでも、この場が現実とはにわかに考えにくい。
ただの中学生だった頃がいつもの日常としてまぶたの裏に浮かんできた。
ヘイルはずっと傍にいてくれた。
宇宙船エデンは全長七キロメートル、全高全幅ともに六百メートルほどだそうだ。
古典的なロケットを長くした鉛筆のような形であるが、内部には重力が発生しており、地上と同じように歩くことができる。
「でも、地上と比べるとなんだか体が軽いね」
「地球じゃなく、月の重力を少し強くしたレベルにしているらしいんだ」
ヘイルは床を強く蹴った。
二人の体が浮き上がり、数秒間中を漂った後、数メートル離れた場所に着地した。
セリナは少し遅れて降り立った。ヘイルと手をつないでいるので、よほどのことがない限り、離れ離れになることはない。
二人の話し声と足音が、静かだった広い廊下に響いていた。




