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#3

 夜明けとともにサクヤは目を覚ました。未発達な文明の中で生活していると体内時計も自然に合わせて調節されるらしい。


 部屋の隅に大きな葛篭と小さな葛篭があった。テーブルの上に広げた衣類や小物をユーワンが選別していた。


 旅に持っていく品物とそうでない物をより分けていたのだ。


 サクヤが起きたことに気づくと、ユーワンは振り向いた。


「おはよう」


 サクヤが久しぶりに聞く日本語だった。


「おはよう、おじさん、日本人なの?」


「おじさんはショックだな。何歳に見える?」


「わかんない」


 首をふるふると降るサクヤ。


「いいよ、確かに老けて見えるかもしれない・それに、これからはおじさんではなく、わたしのことを『お父さん』と呼ぶんだ」


「おじさんはわたしのお父さんじゃないよ」


「そうなんだけど、お父さんと呼ぶんだ。この国の言葉では「パップア」と発音する。言ってみて」


「パッパ」


「パップア、もう一度」


「パッパ!」


 声が大きくなったが、発音は変わらない。


「自然とイントネーションは直るだろう。朝ごはんを食べたら、昼までに出かけるよ」


 剣聖は料理もした。スクランブルエッグと根菜類の添え物、パンと紅茶の朝食を作ってくれた。


 それを食べていると、不意にユーワンが手を止めた。その視線は窓の外へ向いている。


「誰か来たの?」


「そのようだ」


 彼は立ち上がり、太刀に手を伸ばした。決闘でも木刀を用いた男だが、真剣を抜く気だった。


 窓の外に騎士が騎乗する馬が3頭いた。


「七剣士が3人か」


 来訪者の顔を覚えている。


「サクヤ、奥の納戸に入っていろ、その扉の奥だ」


 言われるがままに小屋の奥に隠れるサクヤ。


 扉の影に太刀を隠して、馬上の騎士にユーワンは手を振った。


「これは、ノエル・ヴァルキリー殿ではないですか」


 男装の少女騎士は馬を降りて、あばら家に近づいた。


「朝早くに申し訳ありません」


 二人の騎士も彼女に続く。ユーワンは扉の影で太刀を離さない。


 ノエルは一度、歩みを止めた。腰に手をやり、ベルトからサーベルを鞘ごと外した。丸腰になった。


 彼女はロートルに伝えた。


「持っておれ」


 近衛隊長はいい顔をしなかったが、その剣を預かった。


「朝早くに申し訳ありません、剣聖どの」


「ユーワンとお呼びください、ノエルどの」


 互いに友好的な笑みを浮かべた。ノエルは本心からの笑みだったが、ユーワンは警戒を解いていない。


「良い匂いですね。朝食が終わるまで待ちましょうか」


「何かご用がありますなら、こちらから伺いますが」


「いえいえ、剣聖……ユーワン殿にご足労をかけるなど恐縮至極」





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