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第五章 了

「無いように推測しております」


「根拠はあるか」


「ユーワン・アルティミトは、自身が数多の悪魔憑き、すなわち異世界人を屠ったことで名を挙げたのです。そのことで感謝している国も多いと聞きます」


「他の者であるならばともかく、剣聖ならワガママも許されるということなのかな」


「御意」


 傍若無人に振る舞う異世界人たちを倒したユーワン・アルティミトならばこそのことだろう。


「しかし、彼はどういう心境なのだろう? これまで自らが倒してきた異世界人の童子を救うために命を投げ出すとは」


 宴が終わり、自室に戻ってもそのことばかりを考えていた。


「自分が倒してきた者たちだからこそ、童子の命に責任を感じたのか。あるいは、純粋に騎士道に反するからか」


 いまごろ、どうしているのだろうかと思いを馳せる。大事をやり遂げた後の安堵の色はあったが、子ども好きな男の笑みは無かった。柔和ではあるが、常にどこかこわばった表情を貼り付けていた。


 面識も無い者のために命をかけるとはどういうことか。実はヴァイオラにもその境地は理解出来る。それが自分と彼の共通の認識かはわからない。


「もう一度会えるなら尋ねてみたいものだ」


 名も知らぬ民を守るために人生を賭けるのが王の生きる道だからだ。父と学者たちから学んだ帝王学の中にもあった。


 侍女も下がらせ、暖かい紅茶にブランデーを入れた。なんとかこの難題を解決できそうな見通しになったことで、胸の内も暖かくなった。


 やがて穏やかな睡魔がやって来た。ろうそくの火を一つ一つ息を吹きかけて消していく。


「久しぶりにぐっすりと眠れそうだわ」


 また、ノエルの騎士装束に扮して、二人がどうしているか見に行ってやろう。


「そうだ、そうだ。そうしよう」


  半分夢の中で、ヴァイオラはいたずらっ子のような笑みを浮かべるのだった。

第六章で完結にします。

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