レイドと最後の決断⑬
死を覚悟して放った俺の魔法が自らの身体を傷つける感触がして、その余りの激痛に思わず目を閉じて悶えそうになる。
しかしすぐに何か違和感を覚えて、それが何なのか考えようとしたところで……突然ぐらりと足元が揺らいだように感じた。
(ぐぐぅ……な、何が起きて……魔王が何か……い、いやだけど何をしてももう遅いはず……この痛みからして俺の魔法は発動したんだから、魔王も魔力が暴発してふき取ん……何で俺も足場も吹き飛んでないんだっ!?)
そこでようやく俺は自分が感じている違和感の正体に気が付いた。
確かに前のように攻撃魔法を暴発させたわけではないために派手な爆発などは起こらないのはわかっている。
しかし全身に巡る魔力を直接暴発した以上は、むしろ本来発散されるべき威力が全て持ち主の体内で暴れまわり解放されようとその細胞の悉くを粉砕するはずだ。
だからもしも魔王が俺の魔法の効果を受けているのならば、全身が一瞬で吹き飛んで……体内に居る俺もその余波というか大気の振動によって打ちのめされているはずなのだ。
(ぐっ……い、いや……仮に俺が何かの弾みで生き残っていたとしても……魔王自体の身体は一瞬で吹き飛ぶはずだから外へと放り出されてなければおかしい……なのに何で足場になる部位が残ってたんだっ!?)
何が起きているのか理解できないでいるうちに、痛みの残る俺の身体は不意に浮遊感に包まれ……すぐに風の抵抗と共に落下し始めるのを感じた。
(ぐぐっ……し、死にそうなほど痛いけど……指先一つ動かすだけで全身が軋むけど……目を開けて確認しろ……何が起きてるのか……確認するんだっ!!)
痛みに苦しみながら歯を食いしばり、落下時に感じる風の抵抗に翻弄されながらも何とか目を開いた。
「……っ!!?」
「「「「「----------っ!!」」」」」
そんな俺が最初に見たのは、声なき声を洩らしながら空へと急上昇していく……身体が半分千切れた魔王の姿だった。
千切れたところからは岩と血液が入り混じったようなものがボロボロと零れ落ちているが、その部分は癒しの光に包まれていた。
(じ、自己修復機能っ!? ま、まさか倒し損ねたのかっ!? そんなっ!? だけど何でっ!!)
信じられない目の前の現実を俺は受け入れられないでいた。
何せ魔王の魔力は余りにも甚大で、あれが全て暴発すれば致命傷は必須であり……仮に生き延びても心臓や脳などは完全に粉砕されて自己修復機能は止まるはずだったのだ。
そうなれば幾ら命を繋いでいたとしても魔力も暴発により使い切っている関係上、回復魔法も使えなくなり魔王は死に至るしかない……筈だったのだ。
(なのに何でっ!? どうしてあいつは生き……っ!?)
しかしそこで俺の身体の下からも何か大きなものが落下する音が聞こえていて、もはや痛みも忘れて強引に振り返った俺はそこに魔王の千切れた半身が原型を保ったまま落ちているのを見た。
こちらは心臓や脳と切り離されたためか再生する兆候は一切見られなかったが、それを見た俺はようやく何が起きたのか……魔王があの瞬間に何をしたのかを悟ってしまう。
(あ、あいつ……俺を振り払うために自分の身体を自分で切り落としたのかっ!?)
魔王の身体の頑丈さからして傷つけられる存在など限られている……まして俺が魔法を唱えるまでの一瞬の間に身体の半分を引きちぎるほどの威力を繰り出せるのはそれこそ魔王本人しかいないであろうことも俺の考えが正しいことを証明していた
恐らく魔王は前に俺のせいで大地と結合させられた上にあの偽魔法陣作戦で大ダメージを負わされたことで、俺のことを全力で憎みつつ警戒もしていたのだろう。
実際に俺がこの場に来てから魔王は俺のことだけを見つめて、俺の名前を叫び……俺だけを殺そうと付け狙っていたぐらいだ。
あれはきっと自分を傷つけられたことへの恨みもあっただろうけれど、それ以上に俺を放置しておいたらまた何かされるのではないかという恐れからくる攻撃だったのだ。
だからこそ真っ先に排除しようと動いていて、それでいながら決して近づかないよう一番強力な本体は距離を置きつつ遠距離攻撃を行い、次いでゴーレムの群れに襲わせてようとしたのだろう。
(ぐぅぅ……そうだ、考えてみればあの戦い方は初めて戦った魔獣が傷をつけられてから取った行動と殆ど同じやり方……距離を取って遠距離攻撃を続けて、駄目なら魔物を呼び出して襲撃させる……ならあの時と同じように唯一傷つけられる手段を持つであろう俺の動きを……俺の魔法を……必要以上に全力で警戒するのは当然じゃないか……)
しかしそんな警戒していた俺が自らの体内に飛び込んで前に自らの身体を消耗させた転移魔法を使われてしまった。
そのせいで魔王は恐慌状態に陥り、もはや手段を選ぶ余裕もなく……身体を引きちぎってでも俺を追い出そうとしたのではないか。
(転移した直後に俺に死ねって言ってたのはその前から攻撃しようとしてて……直後に転移魔法を掛けられて恐慌状態に陥った魔王が攻撃手段をそのまま自分の身体の切り離しに使ったと思えば……くそっ!! 何から何まで本当に最初に戦った魔獣と同じ……っ!!)
あの時の魔獣は俺に傷つけれた痛みに驚いて俺にふり下ろすはずの手で大地を叩いて、強引に逃げるように距離を取っていた。
魔王もまたどうやったのか無数に生えていた手を翼に変えて羽ばたかせることで空を飛ぶ推力を得ながらも、落下する俺に追撃を掛けるどころか必死になって距離を稼ごうとドラゴンすら上回るほどの凄まじい速度で上昇を続けているではないか。
(そうか……身体を切り離すなりあの速度で即座に俺から逃げ出して……そのせいで俺の範囲魔法の効力から脱しやがったのかっ!?)
ようやく自らの置かれた絶望的な状況を理解してしまう。
魔王の退治に失敗した上に、空中で自らの魔法のダメージに寄りろくな身動きも取れない状態で魔力も尽きてしまっている。
もはやこうなれば遥か下の大地に向かって無防備に落下することしかできない。
万が一にもアリシア達を巻き込むまいと詠唱込みで可能な限り上空に向かって飛んだのだ。
こんな体調でそれだけの高さから地面へとぶつかったら、それだけでも間違いなく俺の命はないだろう。
(せめて魔力が回復出来たら盾を下に敷いて衝撃を和らげられる……だけど……)
マジックポーションを取り出そうにも魔力が暴発して内側から全身を傷つけられた現状では、身体の殆どを動かすことができなかった。
何せ魔力の調整をする暇もなくあの魔法を放ったのだ……事前に転移魔法を全力で放って大幅に魔力を消費したとはいえ、はっきり言って生きているだけでも奇跡に近いぐらいだ。
それでも事前に身体へと振りかけておいた自動回復してくれる粉の効果もあって、もう少し時間があれば身体が動くだろうし回復魔法を使える程度に魔力も回復するはずだ。
「「「「「ーーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」
「くぅっ!?」
しかし俺は気づいてしまう……もはや遠くに行きすぎて豆粒ほどの大きさにまで小さくなった魔王が、俺に殺意を向けていることを。
(くそ……正気に戻りやがったのか……それとも空中で身動きの取れない俺を見て、今しか倒すチャンスはないと開き直ったのか……どっちにしても今襲われたら不味いっ!!)
仮に万全の状態であったとしても俺一人では魔王の攻撃をいなすことなどできるはずがない。
まして今は身動き一つとれず魔法も使えない……こんな状況で魔王が襲い掛かってきたら、打つ手どころの話ではないのだ。
(もう少しでいいっ!! そのまま警戒していてくれっ!! せめてもう一度あの範囲魔法を使えるようになるまではっ!!)
そうなれば魔王の接近にカウンター気味に合わせられれば今度こそ倒すことができる。
尤も魔王の動きは俺ごときではろくに視認することも難しいぐらいだから上手く行くとは思えないが……それでもせめて向こうの攻撃にだけでも合わせられれば相打ちには持ち込めるのだ。
「「「「「ーーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」
「……来るっ!!」
だからこそ祈るような気持ちで魔王を見つめるが、またしても声なき声を上げたかと思うとその身体を翻し、一直線に俺へ凄まじい速度で突っ込んできた。
(駄目だっ!! 幾ら距離があるとはいえあの速度で迫られたら俺の治療は多分間に合わないっ!! 十中八九向こうの攻撃の方が早いっ!!)
必死に打開策を考えるが身体が動かない時点でどうしようもない……今度という今度こそ完全にお終いだった。
もしも周りに誰かが居れば話は別だっただろうが……そこで俺は今更ながらに自分のミスを思い知らされる。
『一人で抱え込む必要なんかないんだからね……僕達は仲間なんだから、頼ってくれていいの……レイドが自分自身を犠牲にしてまで頑張る必要はないの……』
アイダに言われた言葉を思い出す。
(どうして俺はアイダの言うことを素直に聞かなかったんだろうな……あれだけ仲間に頼ることを覚えなきゃって自分でも思ってたのに……何で自分一人で何でもできるって思い上がってたんだ……)
今までもずっとそうだった……俺は大切な人達を巻き込みたくないと、皆を守りたいからと一人で解決しようとムキになって……だけどそのたびに誰かに助けられていたではないか。
アイダが俺を支えて、トルテとミーアが俺の手の回らない所を庇って、フローラやマキナが俺の戦いの補助となる道具を整えてくれて、マナが俺の足りない部分を魔法でカバーして、エメラがアリシアを連れてきて……他の皆だって自分のできることをやって俺を助けてくれていたではないか。
(そうだよ、ル・リダさんを助ける時だって思い知ったじゃないか……俺一人で出来ることなんてたかが知れてるって……だけど皆が協力してくれるからずっと何とかなってたんだ……なのにどうして俺は肝心なところで仲間の力を……信じきれなかったんだ……)
大切だから自分を犠牲にしてでも守りたい……その気持ちに間違いはない。
だけどこれは言い換えれば仲間たちは俺が守らないと駄目なのだと思っているのと同じで、それはつまり仲間の力を信頼しきれていないということになるのではないか。
(俺が何度も絶対に死んでたまるかって……皆で生き残ろうって決意してたように、他の人達も同じ気持ちでいたんじゃないのか……なのにどうして俺は……そのみんなの想いを裏切るような真似を……)
もはや後悔しても遅いけれど、それでも俺は悔やまずにはいられなかった。
(アイダも、そしてアリシアも……あれほど言ってくれてたのに……気遣って涙まで流してくれてたのに……俺は、馬鹿だ……っ)
「「「「「ーーーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」
「……っ」
改めて一人の無力さを……自分の情けなさを悟らされた俺は、それでも最後の抵抗として迫り来る魔王を睨みつけた。
(もういい、こんな愚かな俺が生き残れるはずはない……だけどせめてみんなの期待を裏切った分だけでも、こいつに一矢報いないと……この後戦うであろう仲間たちのためにもっ!!)
何が出来るはずもないが、最後の瞬間まで諦めまいと俺は必死に頭を回転させて魔王を僅かにでも苦しめる手段を考え続けた。
しかしそんな都合のいい方法があるはずもなく、むしろ思いつくのはこの場に仲間が居れば取れるであろう方法ばかりだった。
そして……結局俺は何も思いつかないまま……その身体に物凄い衝撃が走った。
「ぐぅっ……えっ!?」
「れ、レイドレイドレイドぉおおおおっ!!」
「馬鹿っ!! レイドの馬鹿ぁああっ!!」
何故かその衝撃は魔王が到達する前に横から発生して、しかも強く抱き留められる感傷と聞き覚えのある声が伴ってきた。
何が起きているのかと驚く俺を即座に回復魔法の光が重複して発生して、あっという間に痛みが打ち払われて身体に自由が戻ってくる。
「……アイダ……アリシア……?」
「たくっ!! マジで自分一人犠牲になるつもりだったとはなっ!!」
「レイドっ!! てめぇそういう自己犠牲的な考えはいい加減にしろってのっ!!」
「そ、そうですよっ!! あ、アイダちゃんが気づいたからよかったですけど……お願いだから一人で無茶しないでくださいよっ!!」
果たして身体が動くようになった俺が自らの身体を抱きついて泣き叫んでいるアイダとアリシアに気が付くのと同時に、新たな聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「……トルテさん、ミーアさん、フローラさん……それに……」
「全くであるぞレイド殿っ!! 何度も言ったであろうがっ!! レイド殿を失ってまで得る勝利に意味などはないのだっ!!」
「レイドの馬鹿っ!! アホっ!! あんぽんたんっ!! 私たちが追いかけるのが間に合わなかったらどうする気だったのっ!?」
「そうですよレイドさぁあああんっ!! アイダさんがレイドさんの態度が変だっていうから慌てて追いかけてきたらこれですからねぇええっ!! 貴方が死んだら私もドラコちゃんも他のみんなも悲しくて仕方ないんですよぉおっ!!」
「その通りであるぞレイド殿っ!! 例え世界が救われようともお主の命が失われては妾達は一生悔やんでも悔やみきれぬのだぞっ!!」」
「マキナ殿……マナさん……エメラさん……アンリ様……」
周りを見回せばそこに見慣れた顔が勢ぞろいしていて、口々に俺へ向けて怒りとも悲しみともつかぬ感情を叩きつけてくる。
「そうですよレイド様……危険は承知ですが私達にも手伝わせてくださいませ……お願いですから一人で抱え込まないでください……」
「そぉだよレイドお兄ちゃん……私も大した役に立たないかもしれないけど、レイドお兄ちゃんが辛いんなら頑張るから何でも言ってよぉ……」
「幾ら我が貴様を認めて居ようともあの魔王という愚物の始末を押し付けられるものか……協力して事を為すのだ……良いな?」
「ル・リダさん……ドラコ……それにパパドラさん……」
誰も彼も……本来のドラゴンのサイズになり俺を含む皆を背中に乗せて移動しているパパドラまでもが俺を諭すように呟いてくる。
更に見れば下の方にはドドドラゴンに乗っているエクスとデウスの姿も見えた。
「何で皆……どうして……いや、どうやって……?」
「だ、だからレイドがっ!! レイドの態度があんまりにも変だったからぁっ!!」
「わ、私達を守るために自分を犠牲にしようとしてるって分かったから後を追いかけただけっ!!」
「まあだいたいそう言うことなのだが、もう少し補足するとだね……アイダ殿がレイド殿の様子がおかしいと……ちゃんと約束もしなかったし絶対に命を捨てるぐらいの気持ちでいると断言してね……だから一旦王宮へと戻ってドラコっ子達をランド様に預けてからこちらへ転移魔法で駆けつけてきたわけだ……尤も最初はレイド殿の足手まといにならぬよう少数で来るつもりだったのだが……」
「皆我慢できなかったんだよ……最後の最後までレイドに何もかも任せたくなかったし……」
「最後ぐらい手を貸してやりたかったからな……仲間として、どうしても命がけで戦ってるレイドの力に成りたかったんだ……」
俺の疑問に未だに泣きついて離れないアイダとアリシアに代わり、マキナ達が代わる代わる説明してくれる。
「も、もちろん死ぬほど危険な場所だってのはわかってましたけど……少しでもレイドさんのお役に立てればって……」
「そう思ってこの場に来てみればアリシア殿が必死の形相で頭上を見上げて転移魔法を唱えようとしておってな……それを見てすぐアイダ殿が事情を察したように傍へと近づいて……」
「そう、それで一緒にレイドの元へ飛ぶって……万が一失敗してもレイドとならくっ付いて命を落としても何の悔いも無いって……私達もレイド一人死なせるぐらいならって同じ気持ちだったから……」
「パパドラさんのお背中に乗せて頂いて全員で一気に空へと飛んで来たわけでぇえええすっ!!」
「それで万が一、本当に私たちが駄目になった時のためにエクス様とデウス様にはドドドラゴン……ちゃんと一緒に下から飛んできてもらって……私達はレイド様のすぐ傍へと転移魔法で……」
「そしたらレイドお兄ちゃんが魔王の身体と落ちてて……魔王を睨みつけてたから慌てて捕まえたの……私達偉いでしょ?」
「そうか……それで……」
果たして頭上を見上げれば皆と合流した俺を憎々し気に睨みつけながら、やはり猛烈な勢いでパパドラを追いかけて来る魔王の姿があった。
その異常な速さはパパドラより遥かに早いけれど、それでも相対的に先ほどよりはずっと近づかれるまでの時間が伸びていた。
「れ、レイドぉおおおおっ!! や、約束破っちゃヤダってあれほど言ったじゃんっ!! な、なのに何でこんなことしたのぉっ!!」
「お願いだから無理をしないでくれレイドっ!! 私たちを置いて行かないでくれっ!! レイドが居なくなったら私たちは……私もアイダも……っ!!」
「……ごめん、本当にごめん二人とも……泣かせちゃってごめん……」
未だに涙が止まらない二人を俺は優しく抱きしめて、心の底からの謝罪を口にする。
「うぅ……馬鹿……レイドの馬鹿ぁ……」
「わかってる……俺は本当に馬鹿だったよ……皆の気持ちを踏みにじるような真似して……本当にごめん……許してくれ……」
「わ、分かっているなら今度こそ約束してくれ……も、もう二度とこんなことしないと……何もかも一人で抱え込まないで……私達を頼って……」
「ああ、わかってるとも……もう二度とこんな真似はしないよ……だからこそ皆にお願いがある……どうか俺に力を貸してくれっ!! 俺一人じゃあの魔王を倒せても生き残れない……そうじゃなくて皆で生き残るために……完全な勝利を掴むために、どうか協力してくれっ!!」
二人を優しく撫でてあげながら、俺は改めてこんな俺を助けてくれる仲間達にはっきりと協力を求めて頭を下げるのだった。
「当たり前だろレイド……協力させてくれよ……」
「任せとけってレイド……さっさと倒して皆で酒宴と行こうぜ……」
「はいっ!! 喜んで協力させてもらいますレイドさんっ!!」
「無論だとも、私に出来ることならば何でもさせてもらうよレイド殿……」
「任せて……完璧にこなして見せるから……何をすればいいレイド?」
「おまかせくださぁあああいっ!! ドラコちゃん達に会わせてくださったレイドさんのお願いならたとえ火の中水の中、パパドラさんのブレスの中でもお任せですよぉおおっ!!」
「うむっ!! 妾も全力で協力させてもらうぞレイド殿っ!!」
「ええ、私も全ての発端である魔獣の端くれとして……何よりレイド様のお仲間として協力させていただきます……」
「任せてレイドお兄ちゃんっ!! 私もみんなと一緒に頑張るよぉっ!!」
「遠慮なく何でも言うがよい……レイド殿の指示ならば信頼しようではないか……」
「ありがとう皆……」
はっきりと頷き返してくれる皆にやはり心の底から感謝の気持ちを口にしつつ、改めて俺は一番傍にいる一番大切な二人にそっと話しかけるのだった。
「アリシア……それにアイダも……二人には特に危険なことを頼むかもしれないけど、協力してくれるかい?」
「も、もちろんだよぉっ!! わ、私だって頑張るからぁっ!!」
「ふぅ……もちろん何でも言ってくれレイド……私の能力は全て貴方のためにあるのだから……」
「ありがとう二人とも……じゃあ今度こそ最後の……魔王に完全勝利するための作戦を説明するっ!! 良く聞いてくれっ!!」