終わりの始まり⑤
昨日は更新できず申し訳ありませんでした、今後は終わりまで毎日更新を絶やさないようにする……つもりです。
「な、何がどうなってんだよ……おい……」
「し、信じられねぇ……何だこの光景は……」
「……ドラコを置いてきて正解だった……紛れたら大変……だけどこれは予想外過ぎる」
「これ……どうするのレイドぉ?」
(ど、どうするって言われても……どうすりゃあいいんだよこんなの?)
地下を進んでいた俺たちは何の問題もなく魔獣製造工場へとたどり着いて、そこで内部の様子を確認したところで呆気に取られてしまう。
「ドゥルルルルっ!!」
「ドゥルルルルっ!!」
「ドゥルルルルっ!!」
「ドゥルルルルっ!!」
「ドゥルルルルっ!!」
(一体何体居るんだ? どうしてこんなにもドラコそっくりな魔獣がうろついているんだ?)
何故か工場の内部には四つん這いになってこそいるが、人の見た目にドラゴンの特徴が合わさったドラコそっくりな奴らが無数にうろつき回っていた。
その数は下手したら前に見た魔獣の総数と変わらないかもしれない。
「ヲ・リダさん……貴方が一番この中で知識があるはずです……この状況への見解をお聞かせください……」
「……ただの推測になりますがこれは恐らく……素材の培養器で増やしたドラゴンの素材に……ゴーレムを作る魔法をかけることで生み出された新生物でしょう」
「なるほど……」
ヲ・リダの言葉はこの状況を簡単に説明して納得させてくれたが、その言葉は俺たちに絶望をもたらすだけであった。
(そうだよなぁ……魔法で命を生み出すことが出来て、それで土塊に掛けて動かせるなら、魔物の素材に掛けても動かせるよなぁ……んでその元となった特徴をもった生き物が産み出されると……はは、最悪過ぎる……)
何故ドラコのように人型をしているのかまではわからないが、ゴーレムの例を考えると命を与える魔法を掛けると自然とこのような形になるのかもしれない。
尤もそれが真実だろうと何だろうとこの悪夢のような状況に変わりはない。
『簡単に観察した限りでは一体一体の実力は恐らく多混竜が一番近いとは思う ただこれほどの数が居るとなると真っ向から戦うのは不可能だな』
アリシアが書いて見せたように、ドラゴンの素材から生み出されたであろうこいつらの実力は並の魔獣を遥かに上回るはずだ。
これがもしも先ほどのゴーレムのように何かの目的の元に進みだしたらば、もはや人類の戦力では止めることは出来ないだろう。
余りにも酷い戦力差ともはや自分達ではどうしようもないのではと言う目の前の現実に、俺たちは何やら深刻さを通り越して乾いた笑みを浮かべてしまう。
(ドラコがこいつらに言及しなかったのは同族としての反応も多混竜並で、あの発言をしたときはまだ距離があって探知できていなかったか……もしくは最近になって産み出されたからか……だけどこの数を前にしたらそんなこと些細な問題だな……)
「……レイドぉ、いつまでもここでこぉしてても仕方ないよぉ?」
「……アイダの言う通りだな……言う通りだけど……どうしたらいいんだこれ?」
「こんなの勝ち目ねぇしなぁ……」
「まあ、だからって諦める気にはならねぇけどよぉ……」
アイダの言葉に返事をしようとするが、どうにもこんな光景を見せられたらこれからどうするべきか迷いが表に出てきてしまう。
(逃走経路の確保って話だったけど、その前にマキナ殿は無理そうだと判断したらその時点で逃げろっても言ってくれた……どうせ先に進んで戦いになっても勝ち目があるとは思えないし、もうこの情報を持って帰るのも一つの手だけれど……)
そんなことを思ってしまう俺に対して、アイダは皆の発言を聞いて違うとばかりに首を横に振って見せた。
「あのさぁ、勝ち目とかまだ考える段階じゃないと思うんだけどぉ……何を決めるにしてもまずはドラコのお父さんたちと会って話し合いをしてからだったよね?」
「いや、そうだけどよぉ……こんな戦力を見せつけられたら……」
「だからぁ……まだ敵と決まったわけでも無いのに戦力も何も無いでしょぉ? ひょっとしたらドラコのお父さんがドラコの代わりを求めて作ってたりとかするかもしれないじゃん」
「あ……い、いやそれは……」
目の前のドラコそっくりな集団がアイダの言う目的で作られたとは思えないが、それでも彼女の言葉には一つの真理がある気がした。
(そ、そうだよ……まだこいつらが全部敵になるって決まったわけじゃない……もちろんドラコが探知していた三体共もだ……)
どうやら俺はあの三つ首の化け物との戦闘とゴーレムによる襲撃のせいで自然とこいつらは倒さなければいけない敵だと無意識のうちに思い込んでしまっていたようだ。
敵だと仮定して警戒するだけならばともかく、一応は話し合うつもり出来ているのにこちらが敵意を抱いていては何も始まらないではないか。
「僕はさぁ……確かにドラコのおとーさんは怒ってるだろうし三つ首のあいつだっておっかないけど……ここにある建物が殆ど無事で残ってるってことはまだ話し合いの余地はあると思うんだぁ……あいつらが暴れたらこんなのあっとゆーまに壊れちゃうんだからね、そうだよねアリシア?」
『アイダの言う通りだ ここにいる存在が全て怒りの感情に囚われているようならばこんな居住区など簡単に崩壊しているはずだ 実際にゼメツの街がそうだった すっかり忘れていたよ 良く思い出させてくれたなアイダ』
「えへへ、僕は直接戦闘してなかったから覚えてられただけだよぉ……アリシアが僕を守ってくれてたから……そんなアリシアを僕はとっても頼りがいのある素敵な人だって思ってるんだぁ」
『アイダも私を守ってくれている 今だって私は戦うことばかり考えて少し落ち込みかけていた そんな風に心が苦しい時いつだってアイダは支えてくれる だからこそ私はアイダの方がずっと素敵な人だと思っている』
そう言って肩越しに見つめ合う二人……やっぱり仲が良すぎる気がするのは気のせいじゃないと思う。
「……そ、そうだな俺もアリシアとアイダのそう言うところを凄く素敵だと思ってるぞ、うん」
「れ、レイドお前……流石にその会話の混ざり方は無理があるぞ……」
「二人とも仲良し……良いことだけど確かにこの距離感は異常……二人に恋するレイドからしたら……哀れな……」
「あははっ!! わ、わりぃ笑っちまった……けどそうだな、アイダの言う通り勝手なこと考えて絶望するにはまだ早ぇよなっ!!」
慌てて割って入ろうとした俺をトルテとマナは憐れんだ目で見つめて来て、ミーアに至っては楽しそうに笑い声をあげる。
しかしおかげでと言うか、俺たちの間に満ちていた暗い気持ちは少しだけ晴れたような気がした。
「ふふふ、まぁ僕とアリシアはとぉっても仲良しだからねぇ……だから誰かさんは早く決めないと色々大変だよぉ?」
『私はむしろこの状態が長く続くよう遅くなってくれても構わないのだがな』
「うぅ……そ、その件については善処させていただきますぅ……と、と言うわけで話を戻して……コホン……ヲ・リダさん、改めて転移魔法陣のある場所まで案内をお願いします」
「……畏まりました、お任せください」
唯一俺たちの関係を知らないヲ・リダだけは、どこか寂しそうにしていたが……笑っているトルテとミーアを見るその目には安堵と言う感情が浮かんでいるように見えた。
(ヲ・リダさんはマキナ殿の弟子としての記憶だけじゃなくて、トルテさんとミーアさんの知り合いだったリダって人の記憶もあるみたいだな……両方に影響を受けているというか根底にあるというべきか……)
恐らく他のリダ達も似たようなものなのだろうが、それにしてはエメラに対してはマリアとしての側面を覗かせることはなかったように見えた。
ル・リダはあれほどマリアの記憶と要素を兼ね備えているように見えたのだが、一体この違いは何なのか少しだけ気になった。
だから洞窟を掘るのを再開したヲ・リダの邪魔にならないよう、タイミングを見計らって訊ねてみた。
「……ところでヲ・リダさん、個人的に気になっているのですが……貴方にもマリア様の記憶は残っているのですか?」
「いえ、殆ど……説明は難しいのですが後半に合成された者の記憶は余り引き継がれないのです……仮説としては複数人の記憶を引き継ぐと脳の容量が足りなくなるからではと思っておりますが……ですから理論上は複数頭を継ぎ足した存在なら全ての記憶を引き継ぐこともできるはずですが……」
「そ、そんなこともできるのですか……?」
ヲ・リダの言葉に思わず尋ね返してしまうが、考えてみたら三つ首の化け物という前例があることを思い出す。
「ええ、転送魔法を上手く使えば頭だけでなく身体の好きな部位を好きなように増やせます……ただ元が人間であるためにどうしても頭を二つ持つのは美意識に反するというか忌避感が強くなりまして……ましてどっちが主導権を握ることになるのかなどの恐怖もありますし、事故を起こさないためにも結局は効果を限定した転移魔法陣で同じような形になるようにして増やしておりましたから……」
「な、なるほど……」
流石に幹部であり魔獣製造の根幹の理論を編み出した人の記憶を引き継いでいるためにか、前に下っ端と思わしき魔獣から聞いていた以上の詳しいところを答えてくれるヲ・リダ。
おかげで今まで抱いていた疑問は軽く解消された気がしたが、そこでまたアイダが今の話を聞いて恐ろし気に震えながらも小首を傾げて見せた。
「うぅ……あ、あれ? で、でもさぁ……その話で行くと頭が多いほぉが沢山記憶を引き継げるってことだよねぇ……そ、その割にあの三つ首の奴はあんまりかしこそぉにはみえなかったけど……」
「三つ首の、と言いますと貴方達が教えてくださった多混竜が三体合わさった奴のことでしょうか? 私は担当外でしたので余りはっきりとは言えませんが、多混竜となった個体は全て魔物とだけ掛け合わされていたと聞きます……知性ある人と混ざっていないがためにそこまではっきりとした記憶を引き継げず知性も上がらなかったのではないでしょうか?」
「はぁ……じゃあよぉ、そっちの……じゃなくてこっちのっていうべきか……とにかくここに攻めてきた成体のドラゴンはどうなんだ? 元々知性が高いって言っても野生の魔物だったドラゴンの頭じゃ幾ら魔獣を取り込んでも人間様の記憶を全て引き継ぐなんて不可能だろ?」
『もう一つ気になる 何故、多混竜には魔物の素材しか混ぜていないというのならば何故ドラコは人型なのだ? あの子にだけは人を混ぜたとするならばそれはどうしてだ?』
「そ、それは確かに……あ、後もう一つ、いくら精神的な問題があるとはいえ人が混ざったにしてはドラコが誰かの記憶を語っているところを見たことがないのですが、元になった方はどのような人だったのですか?」
アイダの質問にもあっさり答えたヲ・リダに対して、ついつい俺たちは質問攻めを喰らわせてしまう。
頭上をドラコそっくりな奴らが行き来している現状に、もし気付かれたらと自然と不安を感じていてそれをごまかそうと会話に熱中したかったのかもしれない。
そしてヲ・リダも同じ気持ちなのか、洞窟を掘る手を止めないまま少し頭を悩ませながら一つ一つ答えていく。
「まずここに攻めてきた成体のドラゴンですが……確かに戦い方からしても人間に勝る知性があるようには見えませんでしたし、魔獣達を取り込んで行っても頭が増えていくことはありませんでしたが……エルフやドワーフと言う長寿の種族をご存じでしょうが、彼らは長く生きるためか記憶の容量が非常に多いようです……ですから殆ど合成されていないル・リダですらマリア様の記憶を完全には引き継げなかったほどでして……それはともかく肝心のドラゴンですが、確認した方はおりませんがその寿命は前途の二種族より遥かに長いと推測されています……ですから一つの頭でも複数の魔獣の記憶を貯め込める容量があったのかもしれません」
「はぁ……なるほどなぁ……寿命の差かよぉ……ずっりぃなぁおい……」
「ですからその分、出生率が低いとか何とか……だからこそエルフは余計に他種族の子供に手を付けて騒ぎになりやすいとか、同種族で伝説的な存在になっている高名なデウス氏から里からの出入りを制限されているとか……まあこの辺りはル・リダが生きていれば彼女に聞いたほうがずっと詳しかったでしょうけれど……」
(え、エルフってのは話を聞けば聞くほど……本当にあれは種族病みたいなもんなんだなぁ……それでもル・リダさんはまだマシな方だったけど……もしここに居たら、今頃騒ぎになってるよな?)
チラリと定期的にヲ・リダが開けてくれる監視の穴から外を眺めてみると、鱗に隠れている部分以外はほぼ全裸なドラコ軍団がやっぱり行き来している。
その四つ足染みた振る舞いと口から洩れるドラゴンの咆哮めいた声からしてこいつらに知性があるようには見えないが、それでもこんな光景をエルフの影響を受けたル・リダが見たら迷わず抱きつきに行くことだろう。
(エメラさんを連れてこなくて正解だったなぁ……じゃ、じゃなくて……これでル・リダさんの叫び声が全く聞こえないってことはやっぱりもう……いやこの光景の刺激が強すぎて気絶している可能性も零じゃないか……な?)
「次にドラコさんの話でしたね……尤もこれは誰もが見ていない所で気が付いたら人型となっていたので推測でしか話せませんが……我々はドラゴンの力を得るため複数の実験を繰り返しそのたびに失敗し続けてきました……そんな状態に一部の魔獣達は苛立ちを隠せない状態でして、その中の誰かが手っ取り早くドラゴンの力を手に入れようと早まって自らを素体に合成してしまったか……或いは会話を可能にして少しでも何か情報を得るために攫ってきた人間を勝手に合成したのではと考えておりました」
「えっ!? ま、魔獣の幹部で他の魔獣達から話を聞ける立場だったヲ・リダさんが知らないって……それはつまり魔獣全員がドラコの人型になった経緯を見ていないということですかっ!?」
「その通りです……余りにも不可思議な変化でしたので確かに全員に聞いて回ったのですが誰も……そしてもう一つ疑問なのは、実際に合成するための知識と技術は基本的にリダを名乗る我々しか持っていないはずなのです……しかしドラコが出来た後で姿を消したリダは一人もおりませんでした」
「そ、それってさぁ……い、今ヲ・リダさんがいってた仮説をまっこーからひてーしてない?」
話の不気味さにアイダが恐る恐る訪ねるが、ヲ・リダもまたはっきりと頷いて見せた。
「リダ達の誰かが嘘をついていなければその通りですね……尤もそんなことの追及に力を注ぐ暇があったらドラゴンの力を入手することに全力を費やすべきだとア・リダが強く主張しましてね……そしてほぼ同時に『魔獣殺し』の記事が出回り、我々の存在が表沙汰になりもはや一刻の猶予もないと全てが有耶無耶なまま成体のドラゴンを狙った計画が始まり……と言う感じですね」
「そう言うことですか……じゃあドラコと合成された存在はわからないと……」
「ええ……それこそドラコさん本人が記憶に関して何かを話してくだされば正体を限定することは出来たでしょうけれど……」
「……私も聞きたいことができた……聞いてもいい?」
そこで黙って聞いていたマナもまた、ヲ・リダに向かって口を開いた。
「はい、構いませんが……尤ももう少しで目的地ですので簡単にお応えすることになりそうですが……」
「そう……じゃあ簡潔に聞く……成体のドラゴンが魔獣に化けたのは擬態狐の能力だと聞いているけど……根拠はある?」
「根拠と言われると困りますが、あのように見た目の大きさから形状まで変えられる能力は他に聞いた覚えは……」
「私はある……たぶん貴方も知ってるはず……転移魔法やゴーレムと同じお話に出てきた……違う?」
「あっ!? そ、それは……っ!!?」
マナの言葉にヲ・リダは初めて気が付いたかのように目を見開きながら驚きに満ちた表情でもってこちらへ振り返った
「そ、そんな魔法もあるのですか……そ、そのお話ってのは一体……?」
「簡単に言えば創世記……世界と人々がどうやって生まれたか……神様と呼ばれる命を生み出せる存在が転移魔法で別の場所からやってきて、この世界に色んな生命を作り出したってお話……その中で種族を分けるために見た目だけじゃなくて中身まで変化させる魔法も出てくる……土塊が動き回るだけの世界じゃ寂しいからって……」
「た、確かにそのような記述はありましたが……いや、でもありないっ!! かつての私は愚かマキナ先生ですら再現できなかった魔法を何故ドラゴンなどがっ!?」
「わからない……だけどもしもドラゴンと言う種族にその魔法が先祖代々伝わっているとしたら……或いは寿命が長すぎて中には神様と会った個体が居るのかも……とにかくその魔法が使えるなら成体のドラゴンもドラコも人型になった理由はわかる……違う?」
「っ!!?」
淡々としたマナの口調だが、その内容に俺たちは改めて衝撃を受けてしまう。
(た、確かにそんな魔法があるとしてドラコが何らかの目的でその魔法を使えば単独でも人型に成れるだろうし、さっきの過去に見た多混竜にそっくりな石像や頭上に居るのがドラコに似た個体ばかりだってのも説明自体はつく……だ、だけど何のためにそんな真似をしているのかは全く分からない……い、一体本当に何がどうなってるんだ?)
「ヲ・リダ……手が止まってる……早く掘り進む……」
「あっ!? す、済みません……」
困惑する俺たちに対してマナだけはどこか冷静にヲ・リダへ洞窟を掘るよう指摘して、彼もまた思い出したように作業へと取り掛かるのであった。
「皆も……不気味なのはわかるけど現状にはあまり関係ない……そんなに取り乱さない……」
「そ、そりゃあそうだけど……マナさんがそんなこと言うからよぉ……」
「そ、そうだぜマナ先生よぉ……どぉしていきなりそんな事言い出したんだよぉ?」
「わかったことは皆で情報共有……それが大事だってマキナの奴が言ってたし……私一人だけ悶々と悩まされるの嫌だっただけ……」
「ちょっ!? そ、それって自分が感じた不気味さを共有しようと俺たちを巻き込んだってことですかぁっ!?」
俺たちの問いかけにマナは静かにこちらに向き直ると、少しだけ悪戯っ子のようにその表情を緩めて見せた。
「……秘密」
「はぁぁ……も、もぉマナさんたらぁ……前からこぉなのアリシアぁ?」
『ああ、意外にお茶目なのだマナは 以前も私がマナが聞きたがっているレイドについて語っていたら耳を押さえるような真似を良くされたものだ』
「そ、それは違う……あれはごーもん……一日中惚気話されて困った……あんまりうるさ過ぎていっそ黙らせるために寝取ってやろうかと思った……レイド、私と浮気しない?」
更にそのままより笑みを深くして俺の元へ寄り添おうとするマナ。
「え……えぇっ!? な、何言ってるんですかマナさぁんっ!?」
『また冗談を 冗談だよなマナ?』
「ま、マナさぁんっ!! そ、それやめてよっ!? ただでさえレイドはそーいう面だけはヘタレなんだからこれで一人増えたらもうシャレにならないよぉっ!!」
「あははっ!! マナ先生も言うねぇっ!! よぉしあたしももういっちょレイドに粉をかけてぇ~……」
「もう止めてやれってのミーア……マナさんも冗談はそれぐらいにしといてやってくれって……」
そんな俺たちの反応をマナは少しだけ楽しそうに見つめてから、ゆっくりと首を横に振って見せるのであった。
「ふふ……冗談に決まってる……アリシアのそんな顔見たの初めて……他の皆も馬鹿面して……これじゃあ私がしっかりしないと駄目……この件が終わってからもレイドが答えを出すまで傍で見守ってやる……だから安心して……」
「む、むしろ安心できないよぉ……うぅ……あ、アリシアぁ……やっぱり今度プランCでレイドの入ってるお風呂に……」
『いやアイダよ いっその事プランDで寝ている隙にだな』
「ちょ、ちょっと二人ともぉっ!? ぷ、プランって何のプランなのさぁっ!?」




