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81 パラメーター操作 前編

 次の日の朝、寝袋の中で大きくあくびをしながら目を覚ますと、俺の横にはやけに深刻そうな顔をしたベルディーがいた。


「ふ、浮雲さん、この中から一枚引いてください!」


「なんだよ、うるさいな……」


 彼女は、どこから引っ張り出してきたのか、手に五枚のトランプを持っており、それらの背面を俺に向けていた。


「適当に選べばいいのか?」


「はい、お願いします」


 意味がわからない。手品でも見せたいのか?

 まあ、せいぜい頑張って俺を驚かせてみろよ。

 言われた通りにカードを一枚引き、書いてある数字を見るためにそれをくるりと回した。


 ――ジョーカーか。数字は書いてないな。


「ヒ、ヒ、ヒェ!!! 引いちゃいました!!!」


 なぜか俺ではなく、ベルディーの方がやけに驚いた顔をしている。


「手品はこれで終わりか? 全然、驚かなかったぞ」


「……ちょ、ちょ、ちょっと待ってください、むしろ一枚しかないあのジョーカーを引けたことは、運が良いと言えるのかもしれません。ジョーカーを引いたら負けと明言しませんでしたからね。今のは、これ(・・)が確実にあれ(・・)を変動させている確証とはなりませんね」


 ベルディーは俺の質問を無視して、ブツブツとわけがわからないことを呟いている。

 慣れない異世界の空気に脳を汚染されて、もしくはネトゲの禁断症状がでてきて、頭がおかしくなってしまったのだろうか。


「浮雲さん、次ですよ、次。1から5の間にある数字を一つ言ってください」


 こいつ、もしかしてさっきから俺のことを回りくどい方法でバカにしているのか?

 昨日はかなり怒っていたし、これはあれの延長線だというのはありえそうだ。

 俺は一から五の間にある数字すら答えることができないノータリンだと、暗に言おうとしているのかもしれない。


 だが、そういうことなら、こちらにも対策はあるぞ。

 こいつに俺の暗算Lv2によって鍛えられた、数学力を存分に見せつけてやる。


「ふっ……1.57でどうだ? ついでに4.56、3.76、そして2.01も言っちゃうぞ」


 安直に2、3、もしくは4と答えるのはつまらない。

 数学の神である俺が教えてやるぜ、ベルディー!

 小数点を使えば、数字は無限に創りだせるんだよ!

 無限の非整数アンリミテッド・ナンバーワークスなんだよ!


「は、外れてるぅうううううう!!!」


 俺の数学力に心の底から驚愕したのか、ベルディーはムンクの叫びのような顔を浮かべて、絶叫をあげた。

 あまりにも豪快に発狂するので少し心配になってきたぞ。

 こいつが普段から奇抜な発言ばかりするやつじゃなかったら、すぐさま医者に連れて行っていたところだ。


「で、ですが、今のも、たまたまかもしれません。も、もっと検証しないと。もしかしたら壊れてるかもしれませんし、もし壊れていれば、社長の命令に従わなくても怒られませんよね? わたしのせいじゃないですし」


 ベルディーは頭を抱えながら、またもやブツブツと独り言を呟きだした。



***



 ――トントン。


 ゴロゴロとリビングの中でくつろいでいると、扉がノックされる音が響いてきた。

 どうやら、お客さんがやってきたみたいだ。

 お隣さんの美人お姉さんからの差し入れみたいなイベントだといいな。


「おはよう、フーン。今日は私と一緒に魔物を狩りに行かないか?」


 扉を開くと、そこに立っていたのは主観的に美人とは言い難いカリアだった。

 もちろん魔物狩りみたいな面倒なものはまっぴらごめんなので、俺はあからさまに嫌そうな顔を浮かべた。


「そんな顔をするな。私はお前が八勇士になって、どれほど強くなったのかをこの目で直に見てみたいのだ。少しぐらい、いいだろう?」


「なんだ、そういうことか。ならいいぞ。俺の新たなる力をいくらでも披露してやる。感動の涙を流しながら、さすがフーン様と連呼する壊れた人形になっても知らないからな。覚悟しておけよ」


「ふむ、かなりの大口を叩くのだな。まあ、少しばかりは期待しておいてやろう」


 カリアはそこそこ強いが、結局は井の中のカエル。

 そんな彼女なんて目じゃないレベルの敵(盗賊団、イエティ、おっさん、針忍者など)を大勢なぎ倒してきたのだ。

 俺の圧倒的成長ぶりを目の当たりにさせて、こいつをひれ伏させてやる。


「なんか、面白そうですね。わたしも同行して、オッケーですか?」


 二階から俺たちの会話が聞こえていたのか、ベルディーは階段を降りながらそう訊ねてきた。


「おう、別にいいぞ」


「お、おいっ……フーン、この天使はいったい?」


 カリアは物珍しそうに、ベルディーをジロジロと観察している。

 確かに俺もこちらの世界で天使と出会ったことはないし、相当レアな生物なのかもしれない。

 それとも地球のように、神話上の存在とされているのかもしれない。


 まあ、どちらにせよ中身は単なるだらけたアラサーOLなんで、そんな凄い設定の上に存在していたとしても、ベルディー自体からまったく凄みは感じられないんだけどな。


「か、カワイィ……」


 カリアが妙に熱っぽい視線をベルディーに向けている気がする。

 なんか羽に触ろうとしているかのような手つきもちょっといやらしい。

 でも当の本人はカリアに対して何も違和感を感じていないらしく、普通に挨拶をしているので、俺の勘違いだろう。


「天使というか、こいつは単なる疫病神だよ。あんまり気にしないでも大丈夫だ。そこら辺にいる村人Aのような扱いでいいから、普通に接してやってくれ」


「なんだか、こちらに来てから暴言ばかりですね……。この世界ではわたしとの交友関係が一番長いんですし、もう少し優しくしてあげようとか思わないんですか? 一応、女の子ですし」


 メルリンとのキスを台無しにした恨みは根深いのだよ、ベルディー。

 あと、お前が女の子なのは見た目だけで、実質おばさんだから。

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