第六十一話 Cランク魔王
「タケシ様!」
「魔王様!」
「ご主人様!」
仲間たちの声が聞こえる。
「ん……」
俺はゆっくりと目を開けた。
視界がぼやけている。
体が重い。
耳の奥で、まだ爆発音が響いているような気がした。
「ミル……か?」
俺は小さな声で尋ねた。
「はい! タケシ様、大丈夫ですか!?」
ミルが泣きそうな顔で俺を覗き込んでいる。
その後ろには、ゼキナ、水魅五姉妹、ガルド。
さらに、バルド、ギガルド、ガルフ、ロギ、ミーナ、ゼルドたちの姿もあった。
みんな、傷だらけだ。
だが、生きている。
「ああ……大丈夫だ」
俺はゆっくりと体を起こした。
「それより、Sランク冒険者はどこだ?」
俺がそう言うと、ミルは少しだけ表情を変えた。
「倒れました」
「……倒れた?」
「はい」
俺は周囲を見る。
そこには、巨大な爆発の跡が残っていた。
地面は大きくえぐれ、壁は崩れ、石があちこちに転がっている。
俺とSランク冒険者の最大技がぶつかった場所は、まるで別の階層のように壊れていた。
「ミル、一体何があったんだ?」
俺が聞くと、ミルはゆっくり説明を始めた。
「タケシ様の闇雷と、Sランク冒険者の光の塔がぶつかり合いました」
「ああ……そこまでは覚えてる」
「その瞬間、とんでもない爆発が起きました」
ミルは震える声で続ける。
「爆発の中心にいたSランク冒険者は、そのまま倒れました」
「そうか……」
俺は息を吐いた。
勝った。
あのSランク冒険者に。
俺は勝ったのか。
「でも、俺はなんで生きてるんだ?」
地獄の狂乱を使い、魔法キューブまで使った。
その上、あの爆発の中心にいた。
本来なら、俺も無事では済まなかったはずだ。
「みんなです」
「みんな?」
「はい」
ミルが俺の周りにいる仲間たちを見る。
「タケシ様が爆発に飲み込まれる直前、私たち全員でタケシ様の周りに魔力を張りました」
「魔力を……?」
「ゼキナ様が魔力を束ね、水魅五姉妹が水の結界を作り、ガルド様が闇で衝撃を受け止めました」
ミルは続ける。
「オーク族が防壁を展開して、ゴブリン族が仕掛けを動かし、猫族が回復薬を用意して、ダークエルフ族が闇の霧で爆発の魔力を散らしました」
「……」
「みんなで、タケシ様を守ったんです」
俺はしばらく何も言えなかった。
俺が守るつもりだった。
俺が王として、みんなを守るつもりだった。
だが、最後に俺を守ったのは、みんなだった。
「そうか」
俺は小さく笑った。
「みんな、ありがとう」
俺がそう言うと、全員が一斉に頭を下げた。
「魔王様が生きてくださって、本当に良かったです」
ギガルドが目に涙を浮かべて言う。
「我が王を守るのは、我らの役目です」
ガルドが静かに言った。
「ご主人様が無事で、本当に良かったです」
セリたち水魅五姉妹も、涙を浮かべている。
「……悪かったな。心配かけた」
「本当ですよ!」
ミルが怒ったような、泣いているような顔で言った。
「でも、勝ちました」
「ああ」
俺はもう一度、爆発の中心を見た。
そこには、Sランク冒険者が倒れていた。
動かない。
あの余裕の笑みもない。
俺たちは、本当に勝った。
「タケシ様」
ミルが少し表情を変えた。
「それと、もう一つあります」
「なんだ?」
「タケシ様のレベルが上がりました」
「本当か?」
俺は驚いて声を上げた。
「はい」
ミルが頷く。
「Sランク冒険者を倒したことで、一気にレベルが上がりました。さらに、Aランク冒険者たちも各階層の罠や仲間たちの連携で倒されています」
「つまり……」
「タケシ様は、DランクLv100に到達しました」
ミルは嬉しそうに言った。
「そして、Cランク魔王へ進化します」
「Cランク……」
俺は自分の手を見た。
前にDランクへ進化した時は、二週間眠った。
だが、今回はそこまでの眠気はない。
「でも、眠くないぞ」
「Cランクへの進化は、これまでのような長い眠りはありません」
「そうなのか?」
「はい。Dランクまでの進化は、魔王の体そのものを大きく作り替えるために眠りが必要でした。ですが、Cランクからは魔王としての性質が強くなる進化です」
「つまり?」
「姿や魔力が少し変わります。そして、新しい力が開きます」
「なるほど」
確かに、体の奥に変な感覚がある。
痛みではない。
熱でもない。
何かが、体の中から広がっていくような感覚だ。
「まずは一度、玉座の間へ戻りましょう」
「分かった」
俺は立ち上がろうとした。
だが、少しふらつく。
「タケシ様!」
ミルが支えてくれる。
「地獄の狂乱の反動がまだ残っています。無理しないでください」
「そうだったな」
地獄の狂乱。
効果が切れた後、一時間意識を失う呪い付きのスキル。
俺が気を失っていたのは、その反動もあったのだろう。
「みんな、戻るぞ」
「はい!」
◇◇◇
俺たちは玉座の間へ戻った。
玉座の前には、魔物の国の仲間たちが集まっている。
戦いに勝ったという実感が、少しずつ広がっていた。
だが、誰も騒がなかった。
みんな、俺の進化を見守っている。
「それで、どう変わったんだ?」
俺がミルに尋ねると、ミルは真剣な顔で答えた。
「まずは一度、ステータスを見てみてください」
「ああ」
俺はステータス画面を開こうとした。
その瞬間――。
玉座の間に、大きな光が広がった。
「なっ……!」
俺の体が光に包まれる。
白でもない。
黒でもない。
金色と紫色が混ざったような、不思議な光だった。
体の奥から魔力が溢れる。
骨がきしむ。
血が熱くなる。
だが、苦しくはない。
むしろ、体が作り替えられていくような感覚だった。
「タケシ様……」
ミルが小さく呟く。
「これが、Cランク魔王への進化です」
光がさらに強くなる。
俺の髪が少し伸び、瞳の奥に紫黒い光が宿る。
背中からは、一瞬だけ黒い翼のような魔力が広がった。
そして、玉座の間全体に、俺の魔力が広がっていく。
それは、Dランクの時よりも濃い。
重い。
深い。
まるで、このダンジョン全体が俺の体の一部になったようだった。
『条件達成』
『魔王Dランク Lv100到達』
『魔王Cランクへ進化します』
『進化完了』
『新スキルを獲得しました』
『階層支配強化を獲得しました』
『配下強化を獲得しました』
『魔王城機能を一部解放しました』
光がゆっくりと消えていく。
俺は自分の手を見る。
体が軽い。
だが、力は前よりずっとある。
魔力も、今までとは比べものにならないほど濃い。
「これが、Cランク……」
俺は小さく呟いた。
「タケシ様、ステータスが表示されます」
ミルが言った。
俺の前に、新しいステータス画面が開かれた。
━━━━━━━━━━━━━━━
【新帝のダンジョン 魔王Cランク】
名前:タケシ
レベル:0
体力:150000
魔力:150000
スキル
・鑑定S
・魔力の極み
・ファイヤーボール
・煉獄斬り
・黒葬の惨撃
・未来予知Lv10
・魔王の威圧Lv2
・身体能力強化
・超速再生
・エンゲル
・残像
・無限の斬撃
・重力反転
・魔王領域
・魔王懺悔
・地獄の狂乱(呪い)
・無限再生
・瞬間移動
・魔法キューブ(魔力30000以上の時のみ使用可能)
・階層支配強化
・配下強化
・魔王城機能解放
残りポイント:793160pt
所持品
・魔銃
・上位魔剣
・アルティアレギオン
━━━━━━━━━━━━━━━
「体力と魔力が十五万……」
俺は思わず声を漏らした。
Dランクの時より、明らかに上がっている。
「魔王の威圧もLv2になっています」
ミルが嬉しそうに言う。
「さらに、新しいスキルもあります」
「階層支配強化、配下強化、魔王城機能解放か」
「はい」
ミルが頷く。
「階層支配強化は、ダンジョン内の階層をより細かく操作できるようになる力です」
「つまり、罠や地形をもっと自由に変えられるってことか?」
「はい。戦闘中でも一部の地形を動かせるようになります」
「強いな」
「配下強化は、タケシ様の配下として認められた魔物たちに、わずかな能力上昇を与えます」
「つまり、みんなも強くなるのか」
「はい。特に名前を与えられた者や、星を持つ種族には効果が出やすいと思います」
「なるほど」
星制度と相性がいい。
国として貢献した者ほど、俺の力で強化される。
これはかなり使える。
「魔王城機能解放は?」
「六十階層に作っている魔王城が、ただの建物ではなく、ダンジョンの中心機能を持つようになります」
「中心機能?」
「はい。完成すれば、玉座の間から各階層の管理、配下への指示、魔力の分配、国の防衛機能などが強化されます」
「それはすごいな」
魔王城を作る意味がさらに大きくなった。
ただの城ではなく、この国の心臓になる。
「タケシ様」
ミルが俺を見上げる。
「Cランク魔王になったことで、新帝ダンジョンはさらに大きく変わります」
「ああ」
俺は玉座の前に立ち、集まった魔物たちを見る。
みんなが俺を見ている。
不安ではない。
恐怖でもない。
期待の目だ。
Sランク冒険者を倒した。
Cランク魔王へ進化した。
魔物の国は、また一歩進んだ。
「みんな」
俺は声を上げた。
「俺たちは勝った」
玉座の間が静まる。
「Sランク冒険者を倒し、この国を守った」
魔物たちの目が輝く。
「そして俺は、Cランク魔王になった」
次の瞬間、玉座の間に大歓声が響いた。
「うおおおおおお!」
「魔王様!」
「タケシ様!」
「新帝ダンジョン万歳!」
声が重なる。
俺はその声を聞きながら、静かに拳を握った。
ここで終わりじゃない。
Sランク冒険者を倒したことで、外の世界は必ず動く。
人間の国も、冒険者ギルドも、もっと強い者を送り込んでくるかもしれない。
だが、今の俺たちは前とは違う。
ただのダンジョンではない。
魔物の国だ。
「次は、この国をもっと強くする」
俺は玉座の前で宣言した。
「誰にも奪われない国にする」
魔物たちが一斉に頭を下げる。
俺はその光景を見ながら、Cランク魔王としての新しい力を感じていた。
新帝ダンジョン。
魔物の国。
その王として、俺はまた一つ上の段階へ進んだのだった。
第六十一話終了時点
タケシ:魔王Cランク Lv0
階層数:60階層
残りポイント:793160pt
戦闘結果:
・Sランク冒険者を撃破
・Aランク冒険者20人も、罠と仲間たちの連携で撃破
・タケシは地獄の狂乱の反動で一時意識を失う
・仲間たちが魔力障壁、結界、防壁、闇の霧などでタケシを守った
進化:
・タケシがDランクLv100に到達
・魔王Cランクへ進化
・Cランク進化では長い眠りは発生しない
・姿が少し変化
・魔力が大きく増加
新ステータス:
・魔王Cランク Lv0
・体力:150000
・魔力:150000
・魔王の威圧Lv2へ強化
新スキル:
・階層支配強化
階層や罠、地形をより細かく操作できる
戦闘中でも一部の地形を動かせるようになる
・配下強化
タケシの配下として認められた魔物たちに能力上昇を与える
名前を持つ者や星を持つ種族に効果が出やすい
・魔王城機能解放
六十階層の魔王城がダンジョン管理の中心機能を持つようになる
各階層管理、配下への指示、魔力分配、防衛機能が強化される
ポイント計算
第六十話終了時点:633160pt
Sランク冒険者討伐:
+100000pt
Aランク冒険者20人討伐:
3000pt × 20人 = +60000pt
合計獲得ポイント:
+160000pt
633160pt + 160000pt = 793160pt
第六十一話終了時点:793160pt




