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第35話:あの娘はダイヤモンド(宮本玲奈)

 ――信じられなかった。


 目の前に立っているのは、本当に保奈美ちゃん?

 あの素朴で、ちょっと危なっかしいくらいにピュアな感じの義妹ちゃんが――今は、映画のスクリーンから飛び出してきたみたいな、大人の女性に変わっている。


 唇も、瞳も、髪の艶も。

 すべてが磨かれ、光を放っていた。

 ハリウッド女優やスーパーモデルに囲まれても引けを取らない――いや、むしろ圧倒的な主役を張れるほどのオーラ。


「……っ」

 胸の奥がぎゅっと締めつけられた。


 このままじゃ、私も亜紀さんも完全に引き立て役だ。

 二人で横に並んだら、その差は歴然。


 ――瞬殺されてしまう……。


 カリスマ美容師エドワード・トリウミの力を、甘く見ていた。


 横にいる亜紀さんも、硬直したまま小さく息を呑んでいる。

 ――間違いなく同じ気持ちだ。


 けれど、本当に衝撃だったのはその後。


 保奈美ちゃんが、ふっと直也さんの方に向き直った。

 少しだけ首を傾げ、無邪気に問いかける。


「直也さん……どう? 似合ってますか?」


 その声がやけに甘く響いた。

 あざといんじゃない。

 ただ自然に、彼女は可愛さを全開にしてしまう。


「ぐぬぬぬ……」

 思わず喉の奥から声が漏れた。

 横を見れば、亜紀さんも同じ顔をしている。


 二人して完全にやられていた。


 そして、直也の答えが決定打になった。


「……正直、本当に驚いたよ。

 本当にカワイイとしか言いようがないよ」


 ――はい、終了。

 心の中で鐘の音が鳴った気がした。


 もうダメだ。

 完全に保奈美ちゃんの一人勝ちじゃない。


「ぐぬぬぬ……」

 再び同じ呻きが漏れる。

 亜紀さんと顔を見合わせて、同時に肩を落とした。


 ――何なのよこれ。

 敵に塩どころか、敵をダイヤモンドに磨き上げてしまった。

 そしてその輝きに、直也が目を奪われている。


 負けた。

 今日ばかりは、そう認めるしかなかった。


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