83話 リディアの試験
皆様いつもありがとうございます。
リディアの緊張もほぐれた頃、準備が整ったと言う事で部屋から出ると、周囲を魔法騎士に囲まれながらの移動だ。
「何と言うか、私達が悪い事して囲まれながら歩いてる気分だね」
私は仰々しい現状をそう表現すると、リディアが「魔法騎士の人達に囲まれるなんて普通はないからね」と同意してくれた。そんな中歩いていると、お母様が「アニエスが勝手に何処かへ行かないように今後魔法騎士に頼むのも良いかもしれませんね」と恐ろしい事を言う為、私は首を振りながら拒否をした。
それにしても王城もだけど、魔法教会は王都内にあるはずが広すぎると思う。今歩いてるのも一角で他に学園があり、遠くからくる生徒向けに寮も存在する時点で広さがおかしいと思う。まるで空間拡張しているような王都内に一つの街があるようだ。
魔法教会の内部は私的に結構好みでシンプルかつ歩きやすい、装飾が嫌いという事ではないけど、実用性の無い物は無くても構わないという考えだからだ。
魔法騎士の隙間から壁や天井を見つつ歩いていると、リディアが「また緊張してきた…帰りたいかも…」と弱気になっていたので、手を繋ぎ少しでも緊張を解そうと話をしながら歩くのだった。
黄金の扉を魔法騎士が開けると、広いゲームにある闘技場のような場所に着いた。どうやら、ここが目的のようで空が見える事から特殊な作りに思える。
「もしかして、天井に結界が貼られてるのかな?」
私がそういうと、お母様が「よく気がついたわね、この場所は元々実験や研究で使う場所にですから、万が一に外部へ被害が出ない作りなのですよ」と説明をしてくれた。この環境ならリディアも全力で行っても問題ない為、私は「リディア、全力でやろう!」と伝えた。
「ほっほっほっ!元気の良い娘じゃな」
急に声が響くように聞こえた事で、リディアは驚き、私も違う意味で驚いた。お母様に誰の声かと聞くと、魔法教会長と教えてもらい、何が始まるかとワクワクしてきた。
「さて、今回はリディアちゃんの入学試験を行うと言う事で、宜しいかな?」
姿が見えない為、返事が聞こえるか不安の中、リディアは頷き「はい!」と力強く言葉にすると「元気が良いのは良い事じゃ!」と声が響いた。声の出す方法はわかるけど、どうやって聞いているのだろうかと未知の現象に私は気になってしまう。キョロキョロと辺りを見ているとお母様に注意をされて、今は一旦考えるのをやめる事にした。
「では、内容を説明するぞ、本来の試験とは異なり、魔法学園の教師が操る魔法人形を渾身の攻撃で壊してもらう、注意として魔法人形は授業や魔法教会の実験でも使う為、丈夫に作られ魔法耐性も備えておる。故に全力で攻撃しても大丈夫じゃ!」
魔法人形とはマリーの魂を宿してない状態みたいなのかな?しかし、本当に丈夫ならいいけど、中途半端なら粉砕してしまうのではと不安を感じてしまった。魔法教会長が直々に全力で問題ないと言っている事からリディアに下手な事を言うよりも見守る事にした。
近くで見守ろうと思っている所で、お母様が私に離れて見学席に向かうと告げる為、リディアに応援するからねと言って、その場を離れた。外周から2階に上がれる作りで、既にお父様や国王陛下も座っていた。私は挨拶を行うと、国王陛下は「良い良い、楽にするのだ!」と気楽に言う為、言われた通り見やすい位置の席に座る事にした。フレデリカ様は来られないのですか?と聞いてみた所、本人は凄く来たがっていたらしく、お稽古が無ければと泣きそうな顔で延期を国王陛下に頼んでいたようだ。
「魔法人形を的にするならマリー呼べばよかったかな、マリーなら壊れないと思うけど、魔法人形だと…」
そんな事をいうと、魔法人形は魔法教会の総力で作られたようで、国王陛下も壊せるなら見てみたい、その方が魔法教会は悔しがるだろうと言ったのだ。
リディアを見ていると近づく人が数人いるようで、どうやら教師らしく、リディアに何やら喋りかけている。お母様に聞いてみると、おそらく条件を話しているのでは無いかと言って、単純に壊すだけではないようだ。
話し終えたようで、離れていくとどこから聞こえるのか、大きな鑼のような音が響くと、リディアの周りに青白く光る人形の魔法人形が現れて、動き始めた。高度な技術なのか、操られている魔法人形は不規則に停滞せず動き続ける。本来なら入学試験で行う内容ではない事を理解させる動きだった。
私は魔力眼を発動させて見ていると、魔法人形から教師に向かい魔力の紐のような物で繋がれていることが分かった。リディアの魔力が流れるのを確認すると、リディアの頭上にフレイムランスが展開されて、周囲に飛び散る。ファイアボルトに比べれば速度が速く、動く相手も避けにくい、地面に当たれば周囲に炎が飛び散り、擬似的な範囲攻撃にもなる為、強力だ。
「かなり高位の魔法に見えるが、あれ程の魔法を操るとはな…」
国王陛下もリディアの話を聞いているが、初めて見るようで驚き声に出すと、魔法教会長が「魔法教会でも使える者は少ない魔法ですな、それよりも詠唱を行っていなかった方が気になるのぉ」と言う。チラッとお父様が私の方を見た気がしたけど、気にせずリディアを応援し続ける事に集中しているからだ。
リディアはフレイムランスを発動させると、相手も強者のようで直線に飛ぶ事が予想できていたのか、左右に動き避けた。それで終わらず、本来なら直線にしか飛ばないはずのフレイムランスが避けられた後に曲がり追尾したのだ。
「追尾!?嘘でしょ!」
驚いて声に出すと、お父様が「静かにしなさい」と言うが、魔法教会長は「驚くのも当然じゃ、本来は曲がらぬからな」と言う事で国王陛下もお父様も感心している。お母様は曲がる事を知っていたのか、そこまで驚いていないようだ。
曲がり追尾するフレイムランスは速く、とても避け難い。一体が直撃すると小爆発を起こし、周囲に炎を飛び散らせた。それにより他の魔法人形も動き難いのか、機動性が落ちると見逃さないリディアは集中的に二体目へ三発のフレイムランスを叩き込む事で爆散した。
「後2体はどうするんだろ…」
私はそう呟くと横にいるお母様は「アニエスのとっておきを使うと思うわよ」と言う事で、私はハッと思う。流石に強すぎると思ったからだ
元々の雷撃も雷に近い攻撃速度なので、とても速く、赤い雷撃は速さに火力が出されている。私が空中で使うような槍に変換をさせたり、自身で雷撃の能力を変化させる事はできないけど、それをしなくても強い特別な魔法だ。
軽いフットワークで魔法人形を翻弄すると、操っている者も必死に追いかける。何故追いかけるのか気になっている私に魔法教会長は「魔法人形に三回触れられると失格なのじゃ」と教えてくれた。それで必死に追いかけているのかと納得すると、一直線に重なる瞬間、赤い光が瞬くようにリディアの手から放出されて、とても速い速度で赤い軌跡を残すと遅れて防御魔法がかけられている観覧席にも大きく聞こえる雷音が轟いた。
「何が起きたのだ…」
国王陛下も驚き言葉が続かず、魔法教会長は固まっている。そんな中、お父様は「アニエス、あれはお前のとっておきなのでは?」と声をかける為、「リディアの為にちょっとだけ付与しました」と答えた。お母様は何度か見ていたらしく、私に使えるようにならないかと聞いてくるが、私は「難しいですね」と答えた。
「アニエス…リディアをどうしたいんだ…あれは明らかに異常な威力だぞ、人に使ったら塵も残らん…」
「人には使わないってリディアも言ってる為、大丈夫かなと思います」
リディアもそれは望んでいない、私は確信している為、そう答えると、お父様は頭を抱えていた。国王陛下は大喜びで、「凄すぎる!将来は王城に来てもらおう!」とお父様と同じ事を言い、魔法教会長も「いやいや、あれ程の逸材なら魔法研究をした方が良いじゃろう」とお母様のような事を言い合う。結果、同じように私が仲裁を試みると、魔法教会長が「あの魔法はなんと言う魔法なんじゃ?」と聞く為、私は雷撃という特別な魔法ですよと伝えた。
「雷撃…見た限り、詠唱も行わず、あれ程の威力…制御できれば問題ないが、咄嗟で手元が狂えば危なくも見えるな」
「はい、なので私とリディアの約束で、いざという時以外は使わないようにと伝えてます」
国王陛下の懸念に私はそう答えるが、はて、今がその時だったのだろうかと少し疑問になっていた。どうやら魔法人形は跡形もなく消えて、地面が抉れ試験が終わったようだ。
リディアをこの場に連れてくるように魔法教会長が言うと、国王陛下は「あれが古代魔法の一つか…それを操るアニエスをどう扱えばよいものか…」と言うのだ。
せめて、私がいないところで協議をして欲しかったけど、聞いた以上は私の気持ちを伝える事にした。
「えっとですね、ある程度、この国の魔法文化を発展させるつもりです。しかし、それは私ではなく弟子のリディアに行ってもらうつもりなのです。全てとは言いませんが、数段は魔法が強力になると考えて頂ければと思います」
そう私が言うと、口を大きく開いて国王陛下は固まってしまった。
「すまん、久しぶりに驚いてしまった。だが、そうなれば弟子のフレデリカも今後強力な魔法が使えると考えて良いのだな?」
固まりから溶けた国王陛下はそう言うと、私は「あっ…」と言葉が出た。一応、あの時は場を治める為にそう言って、短期間の間魔法を見ていたけど、杖の指輪渡したし、いいかな?と私の中では終わった話だった。しかし、この流れでそんな事は言えず、私は国王陛下に「フレデリカ様が更に魔法操作を学んだらと考えてます」と無難に言葉を濁すのだった。
「アニエス、フレデリカ王女の魔法を見ているとは聞いていたが、弟子にしたとは聞いていなかったぞ…」
国王陛下の追求は逃れたが、お父様に話していない事を思い出して一応逃れれるかなと「えっと、言いませんでした?」と伝えてみるも、怒られてしまう。そんな私の横で国王陛下とお母様と魔法教会長が今後の話をしている為、それは大人に任せて、怒られながらリディアの到着を待つのだった。
「し、失礼します!!」
緊張したリディアの声が聞こえて、内側から扉を魔法騎士が開けると動きがぎこちないリディアが歩いてくる。今更だけど、この場のことを考えればそうなるのも無理はないだろう。
「リディアよ、素晴らしい魔法が見れた事を感謝する。今後も国の為に鍛錬を続けてくれ」
国王陛下は立ち上がると、近寄るリディアにそう言う。リディアは予想外の言葉をもらい混乱しつつ「あ、ありがとうございます!」と感謝を伝えて頭を下げた。
私はお母様に「リディアは試験合格ですよね?」と聞くと問題なく合格と言われ、魔法教会長は「普通の試験より難しい状態で、あれ程完膚なきまで粉砕した事を考えると、少し何かを与えた方が良いのかのぉ」と高評価のようだ。
「あ、ありがとうございます。お気持ちは嬉しいのですが、私一人の力ではないので、私の事は普通に扱ってほしいです!」
困惑したリディアはそう言うと、私の方に向ってくる。私は立ち上がり、両手でリディアを迎えると少し身長の高いリディアに背伸びをしながら頑張ったねと言いつつ頭を撫でるのだ。
「そうだった、私の魔法を前に見せるとか見せないとか話があったと思うのですが、魔法学園の特別処置を受けるには必要あるんでしたっけ?」
頭を撫でながら、前に言われたことを思い出して、せっかくなのでと魔法教会長に聞いてみると、「今日は大丈夫じゃ、これ以上驚くことを見てしまうと死んでしまうかもしれんのでのぉ…」と避けられた。
「アニエスの魔法は強力ですからね、リディアちゃんの赤い雷撃でもアニエスが作った魔法生物はかすり傷しか付かないほどですよ」
逃げ腰の魔法教会長に追撃をするかの如く、お母様は驚く言葉を発した。それは私も驚く話で、まさか、ゴーレムに雷撃を使っていたとは思わなかった。敵対行動と思われてない分はいいけど、しっかり伝えないと事が起きてからでは遅い為、ゴーレムを攻撃するのを禁止にさせた方が良さそうだ。
リディアを抱きしめたまま、そんな事を考えていると、国王陛下は「王都にも作れないだろうか?」と聞いてくる。まずは領地を安全にしてから次を考えたいと思う私は「約束はできませんが何は…」と言うのが限界だった。
リディアの入学試験は無事?終わり、その後は魔法教会の敷地内にある食堂で王城とは違う食事を行い、その後は何故か国王陛下も含めて見学会となり、お母様と魔法教会長の解説を受けつつ、内部を回ると、最後には魔法学園も見る事となった。
「見ていて気になりましたけど、見た目と中身の大きさ違いますよね」
訪れた時から感じていた事だったけど、魔法学園に入って確信した事で聞いてみる。すると「やはりその系統もわかるんじゃな、失われた魔法が付与されておる魔法道具のおかげじゃよ」と答えてくれた。それを聞いて私は少し違いを感じる。私の知る空間拡張とは違うように思えて、更にはテントなどの次元拡張された道具とも違うように思えたからだ。
「それは何処かに置くことで空間拡張しているのですか?」
「代々受け継がれる魔法教会の秘宝じゃ、その為口には出せんが、おそらく思っている通りじゃよ」
私はそう言われてしまった事で、少し見せてもらおうと言おうとしたが言えなくなった。どんな方法を使えば、こんな都合のいい空間拡張ができるのだろうか、普通じゃない魔法付与という事はわかる為、いつか解き明かしたいと心に決めたのだ。
魔法学園の見学も順調に進み、リディアは今後通う所をワクワクしながら見て周り、私もテンションを上げながら見て回った。授業中の所を遠くから見学したり、学園内に図書室があったり、実技授業も迫力があった。生徒や教師は恐る恐る行っていたが、私達は皆満足しながら見て回ったのだ。
「どんな所なのかなって思っていたけど、魔法学園って本当に凄い所だね!でもアニエスちゃんは初等部に通わないんだよね…」
「うっ…そ、そうだね、でもその後は通う予定だからね…」
リディアが私と一緒に学べない事をしょんぼりして言う為、何とか機嫌を取る為に話をしているうちに私は定期的に会いにくると言う意味不明な約束をしてしまった。口を滑らせて言った時にあっと思ったが、既に遅く、満面の笑顔で約束だからね!と言うリディアに取り消しとは言えなかったのだ。
お父様が耳打ちで「どうするつもりだ?」と聞いてくるが考えておきますとしか言えなかった。全くの無策ではないけど、それを実現する為にはアルテアやラキアの協力が必要で、転移魔法の改良が必須だからだ。
これ以上の追求をされると大変に思い私は話をすり替える事にした。今この場にいる者なら問題ないと思ってのことで、私が魔石を加工した場合、魔法教会は買取をしてくれるのかと言う単純な話をするはずが、魔石の加工は殆ど難しいらしく、出回ると問題なると言われたのだ。
「アニエス、今後何かを作った時は必ず私に報告するんだぞ、特に魔法道具、使い方を間違えれば酷い事になる一級品ばかりだからな…」
「貶してるのか褒めてるのかよくわかりませんが、善処します…」
私は何も悪くないはずが、何故今日はこれほど怒られなければならないのか、うがーと心の中の叫びをそのまま口に出したい気持ちだった。
しょんぼりする私をリディアは味方になってくれるので、良しとする事にして、今日の集まりは解散したのだ。
その後は王城に戻らず、王都の邸に泊まるつもりが、お父様に連れられて再度王城へ戻され、何故ですかと聞くと、リディアと一緒にいると本が作れないだろと言われて少し納得した。後少しの間に作らなければならない以上は時間を有効に使わせてもらう事にしよう。
お読みいただきありがとうございます。
遅れて大変申し訳ございません。
流れは組んでいるのですが、中々伝えたい内容を文書にするのが難しく、他の方々は本当に凄いと思います。




