73話 狭間
皆様、いつもありがとうございます。
今まで「」を文字の中に入れるか迷ってましたが、今回から人の会話を「」で表現してます。
これまでの話は区切りがいいところで変更しますので、宜しくお願いします。
索敵により周囲の状況はある程度理解できたが、いまいち分からなかったのは真っ直ぐ進む通路の先だ。
周囲の部屋で玉座の間が覗けず、再度行うと同調したウィンディーネの魔力を何かの手段で奪われてしまった。
原初精霊は私の呼び出しに応じないので、別枠と考えても大精霊は汎用性で召喚時の魔力が変わる。
回復、防御、攻撃を全て可能なので、その分魔力消費が多く、起きてしまった事だが、ウィンディーネ帰還は手痛い失態だ。
そんな事を考えていると、無意識で表情に出してしまったようで、シャーリーから、「安全を取る為に行った事なので、自分を責めないで下さい。」と慰められる。
クヨクヨしていても仕方がないねと自ら言い聞かせ、丁寧な誘導をしている場所に向かおうと気合を入れた。
「えとね、この先は何があるか分からないから、この場に残りたい人は残っていいからね。強要はしたくないから、自らの意思で決めてほしいかな」
何があっても私は大丈夫と決意して言葉に出したが、今更何を言ってるんだ、と言いたげな顔で皆、一緒に行くと言葉に出し、このまま進む事となった。
先程の場所から比べれば、壁や床も微かな光を放つ事から宝石を砕いた物が散らばっているようで、玉座の間に続く道は美しく心が奪われそうだ。
こんな事がなければ、はしゃいでいたのかもしれない、それだけ今回の出来事は許せなかった。
アルビネスから話は聞けず、その遺体も残らず、証拠が無くなってしまったが、状況から考えても他国が動いているだろう。
憤りを感じながら進むと、大きな扉の前に到着した。
「お、大きいね…」
観光に来たわけではないが、その大きさに圧倒されてしまう。
本来は国王が諸国や要人と会ったりする場所なので、厳重かつ威厳を示すために大きく作られているのだろう。
「大きさだけではありませんよ、扉の外周に嵌め込まれた宝石は透視魔法や聴覚強化系を阻害する効果、中央の極大魔石は魔法そのものを弱めます。扉の材質も王国の中で最も堅牢な素材を使ったと言われてますので、破る事ができない扉とも言われてますね」
誇らしげにシャーリーは解説を行った。
おおーと思ったが、それほど凄いなら非常時はこの奥に逃げれば良いのではと思いつつ、違和感を感じる。
「シャーリー、こんな凄い扉って開閉どうしてるの?明らかに人が動かせない重さだと思うけど…」
「それはですね、王族に伝わる解除魔法を使うのです」
シャーリーの言葉を聞いて私は戸惑ってしまう。
王族と言われても扉が正常に使えなければ会いにもいけず、先にこの現象を対処しないと進めないからだ。
そう考えると、この先から干渉を受けた事が気になった。
「それだと変じゃない?見る限り閉まってるけど、アニエスちゃんに干渉したのって、この先からだよね」
私が言う前にアルテアが違和感を指摘した。
現在閉まっている為、中に敵が入っている事は考えにくいからだ。
扉の効力が失っているのではと思い、魔力眼を使うと全体が光り、眩しさを感じるだけで、これならどうかと下級魔法を使っても扉は正常のようで打ち消された。
「そう言う事ですか…だから城内の扉は別空間に繋がっていたと言う事ですね。そうなると防げるのは外部干渉のみでしょうか…」
ラキアは話を聞いて、「可能性と言うより、間違いないでしょう。」と言って考えを話した。
「王城の内部、各扉が違う部屋に繋がっていたのは、最初は何かをする間の発見を遅らせる為、目的の場所に辿り着かせない為、考えてましたが、それならば破壊行動を起こせばよいので、非効率と感じました。最初から、この玉座の間に繋がる扉を使わずに入る目的だったのでしょう、おそらく、外側から魔法を受けつけない事を事前に知って、城内の扉の先を狂わせる事で、他の場所から侵入したのではないかと思います」
ラキアが話した事、私も少し感じていた違和感が答えに繋がった気がした。
回りくどい行為の目的は、この中に入る方法だったのだろう。
更に何故、この中に逃げないのかと言う理由も少しわかった気がした。
中に入れても外から開ける手段が殆どなく、救助を待つには外部の情報が分からない為、使わないのだろう。
シャーリーに内部は外が見える窓があるのかと聞くと、危険を少なくするために存在せず、この扉だけが唯一の道と答えたのだ。
「遺物と呼べる堅牢な守りは扉だけに使われてるとは思えないかな、窓もないことから部屋全体を遺物で囲んで効果を高めてるんだろうね。そうなると、どうやって入るかって話だけど…」
ラキアに内部へ転移は可能かと聞くが、王城全体は転移阻害があり、無理矢理何とか頑張ってもバグを倒した時の瞬間的に穴を開けて利用するのが限界らしく、それも一度足を踏み入れなければ、正確な発動はできないと言われた。
悩む中、アルテアは、壊せるか試そうか?と言い出したのだ。
壊した場合、後の始末をどうすればいいか恐ろしく思ったが、ここで時間を消費する事で命が失われるのはもっと恐ろしい、そうなれば試すしかなかった。
アルテアにお願いすると、嬉しそうに腕を回して扉の前に立ち、魔力を込めて殴る様で拳を握った。
「皆離れてよ!!一撃にボクの魔力をできる限り込めるから!!」
シャーリーは、「どうなっても知りませんよ!」と言うが責任は全て私が持つつもりだ。
私の場合はお父様を悩ませる事になると思うが、そんな事を考える場合じゃないのだ。
ラルフの大盾に避難すると、渾身の一撃が扉に炸裂した。
身体強化だけではなく、闇属性の魔力攻撃にも見えた一撃は大きな音と衝撃波を発生させるほどだ。
「本気で攻撃しても壊れそうに無いかな…」
大盾の内側でアルテアの言葉が聞こえ、顔を出すと渾身の一撃ですら、扉に傷をつける事ができなかった様だ。
アルテアも無理という扉、力で開けるのは条件を満たさず動かないのだろう、そんな扉をどうやって作ったのか、何か引っかかりを感じる。
「あれ?扉って、あんな模様あった?」
調べようと思った矢先、扉全体に模様が浮かび、先程までは無かった気がしたので確認すると、アルテアが殴る前は出てないようで、何かの条件を満たした事による発生と感じた。
扉に近寄り、浮かび上がった模様を確認すると、上部から下部までびっしり描かれていた。
「どっかで見たような気がするんだけど…」
右端から左端、左端から右端と調べる。
模様をじっと見つめて目線を動かすと、過去の記憶、正確には設定された情報を思い出し、当てはめながら言葉に出した。
「始まりの頂、ここに眠り、如何なる者も、妨げることなかれ、証の塔、デュナミスが石碑に刻む…」
(あれ、所々読めない箇所はあるけど、これって…)
「読めるのですか?文字に見えないのですが…」
これを読める人は殆どいないだろう。
理由は簡単でゲーム外にある世界の文字、付け加えるなら世界秘宝クエストの一文だ。
私の記憶では扉ではなく、塔の内部にある起動ギミックだったはずで、すぐには分からなかった。
「失われた古代文字、アニエス様は解るのですか!!」
ラキアは興奮気味にそう言うのだ。
異界に同じ文字が残っているらしく、どうやら初代魔王の書物に書かれた解読ができない文字との事だ。
一度話を聞いて興味がある初代魔王、読んでみたいと思いつつ、今考える事でもないので、今は話を逸らし、「これなら開けれるよ。」と皆に話した。
開けれるという言葉に各々驚いている。
この扉を知っているシャーリー達は開けれるのが王族という事で驚き、アルテアやラキアは古代文字の仕掛けという事で驚いていたのだ。
私はクエストフラグが変わっていなければ大丈夫のはずと思い、手順を思い出しながらギミックを動かし始める。
手を当てながら広がるように魔力込めて、静かに言葉を紡いだ。
「光り輝くデュナミスよ、汝に道標の燈、証の力を我が示す。」
静かに告げると、扉の上部から模様が光りながら、浮かびゆっくりと重々しい扉が開き始めた。
やはり変わっていない、それにしても口に出すと恥ずかしい気がして、当時のプレイヤーが恥ずかしいと言っていた理由がわかった気がした。
本来は上昇床を動かすギミックのはずだが、開閉扉にどうやって変えたのか疑問に思うが、考えても分からないので開く扉を見守った。
「王族に伝わる扉が、本当に開けてしまうとは…」
シャーリーは思考を停止しているのか言葉にした後、口が開いたままになっていた。
皆が様々な反応をする中、ラキアは、「先程の名前、何処かで聞いた事があるような気がするのです。」と言うのだ。
それはあり得ないと思いつつ、もし、仮にあり得るなら、会いたいとも思う。
辺りを震わせながら扉が開き、部屋の内部が見えるはずが、中が見えない事に驚いてしまう。
これを見えないという言葉で済ませるのは間違っていると思うが、それ以外の言葉は思いつかないのだ。
どう言葉にすれば良いのか分からず、誰も喋らないので確認することにしよう。
「ねぇ、シャーリー、玉座の間って真っ暗のはずないよね?」
間違いなく違う、それは分かっているが、念の為にシャーリーへ確認した。
シャーリーは少し間を置き、私の話に答えた。
「私も数回程度しか見たことはないですが、本来は天井に光源があり、部屋全体を照らしているのです。それに真っ暗というより、違うように思えますね」
シャーリーはラルフにも聞くが、ラルフは一度も入った事がないらしく、サーシャは、「確認した方が早そうですね。」と腰に付いている袋から小石を取り出すと中へ投げた。
部屋の中に小石が投げられると、真っ暗の闇に一つの白い小石が放物線を描くように落ちていくのだが、本来床がある位置で跳ね返らずにそのまま見えなくなるまで落下していったのだ。
「えっと…この扉も影響を受けて変な所に繋がってるって事でいいのかな…」
私の中で様々な考えを浮かべるが、そう考えるしかない、しかし、この扉が私の知る物ならば、他の扉とは違うので、簡単に行き先を変える事はできないと思った。
「ラキア、空間を調べれるかな?」
アルテアがラキアに指示を出すと、何度も見た袋を取り出して扉の先、真っ暗な空間に投げ込むと中の粉が舞い散った。
「これは…いや、ありえませんね…しかし、この結果は間違いなさそうにも思えますね」
粉を使い自身の魔力で周辺の空間把握を行った後、考え込んでラキアは結果が納得できないような素振りを見せた。
「ラキア!どうだったの?何かわかったんだよね?」
「はい、そうですね…簡単にご説明致しますと、扉の先は何もありません」
ラキアが発した言葉、簡単に説明するとは言ったが、何もないという言葉は皆の頭にハテナを浮かばせた。
言葉を付け足すようにラキアは、「狭間という言葉はご存知でしょうか。」と言うので私は、「物と物の間の事かな?」と答えると、「その通りです。」と言う。
「今回の場合は、空間と空間の間という意味での狭間になるのでしょうかね。本来は人が見る事がない空間の繋ぎ目、それが扉の先に広がっていると思います。私の魔力索敵も扉から少し進んだ所で、粉の消滅が確認できました」
「それって、もしかして…転移中の変な空間に近いのかな」
転移魔法以外も発生する移動空間、様々な色、捩れた物、言葉として出すとキリが無いほど、異質な空間を転移中は移動している。
その間、動く事は禁止と言われて、誤って動いてしまうとゲームの時も死亡扱いとなるデッドゾーンと呼ばれた空間だ。
空間と空間を繋ぐと言われたので、真っ暗では無いが思い当たる事があり、言葉に出したのだ。
「移動ではなく、おそらく王城の中の扉を繋げ変えた時に発生した狭間かと思います。その為、真っ暗な空間で上下左右どこまでも広がり、何処にも繋がらない狭間でしょうかね。特異的な狭間の為か魔法も扉から奥に向かうとこの通り、消滅します」
ラキアは開いた扉に向かって魔法を使うと、少し進んだ瞬間に消えてしまう。
付け足すように、「実際消えてしまったのか、吸収されたのかわかりませんが、人が踏み入れる所ではないでしょう。」と言うのだった。
ラキアの話を聞いて本来と違う空間の狭間という事は分かったが、それなら目的の場所に着く事はできないという事だ。
王城の扉と部屋の間、今の話では魔法により発生した現象となるが、これ程の狭間が発生するのだろうか、それとこの真っ暗な部屋を見続けていると見た事があるような既視感を感じてしまう。
私の記憶では知らないはずの空間、既視感を答えに導く事はできないが、扉に顔を向けて、「おーい!」と叫んだ。
「当たり前だけど、誰も答えないよね…」
状況を知らない者が見ればおかしな行動に見えるだろう、折角扉が開いてもこれでは進めず困っていると、一瞬何かが横切るように見えたのだ。
見間違いや目の疲れと思ったが、数回、視界の中をかなりの速度で横切った。
「ねぇ、何か見えなかった?」
一応、皆にも確認をすると、私以外は誰も目撃をしてなかったのだ。
能力的にアルテアやラキアは見えてもおかしくない為、私の見間違いなのかなと思いつつ、扉の中に魔法を放つ事にした。
「ちょっと試したいから、魔力増加、穿て、雷槍!!」
ラキアの魔法は途中で消えたが、魔力の問題かもしれないと思い、視界を何度も横切る物も気になるので、魔力を強め、その場でジャンプしながら雷撃を槍に変化させ、真っ暗の空間に投げつけた。
黄色く光る雷の槍は真っ暗の空間を照らしながら、飛んでいったのだ。
ラニアの魔法が消えた辺りで光りが弱まり、少し進んだ所で何も無いはずが、当たった時の周囲に雷が広がる効果を発動させた。
大きな音を発生させて広がる雷、何も見えないが、何かがあると確信した。
「何か、あの場所に見えない何かがありそう!!」
私はそう言って雷槍が当たった場所を指差したのだ。
「ふむ、それならとっておきの技を使う時が来たみたいだね!」
アルテアが目を輝かせながら、両手でやってやるぞとポーズを決めつつ、そう言うのだ。
嫌な予感しかしなかったが、私の使える遠距離で飛ぶ魔法は限度がある。
範囲魔法が使える可能性もあるが、なるべく魔力は温存したいので、アルテアにお願いする事にした。
不安を感じる事には変わりがないので、ラキアにそれとなく聞くと、「おそらく魔王剣を投げるおつもりでしょうね…」と答えた。
「魔王顕現、魔王剣!!」
(ん?前と違う使い方の様な気がするけど…)
一度見た魔王顕現は姿を変える効果だったはずが、アルテアの姿はそのままで右手に禍々しい見たら忘れないような魔王剣を取り出した。
前と違うような気がすると言葉にすると、「時間勿体無いから短縮だよ」とアルテアは返した。
もしかして、無詠唱と同じで、ある程度は自由に調整できるのだろうか、それならあの時は何故使ったのだろう、疑問を感じつつ、見守る事にした。
「魔王剣投げ!!」
そう言いながら勢いよく魔王剣を私が指差した場所に投げたのだ。
こんな状況じゃなきゃツッコミを入れたのだが、私は疲れる事を考えて言葉を飲み込んだ。
安直な攻撃名だったが、魔王剣の特異性は本物で、アルテアの力も合わさる事により、凄い速度で飛んだのだ。
雷槍が当たった場所に到達すると、扉の前にいる私達の所まで衝撃波が届いた。
強い衝撃波に一瞬目を閉じてしまい、すぐに見直すと私の視界には魔王剣から無数の赤黒い腕が出るように見え、それがまるで纏わりつくように当たった場所を覆うのだ。
「アニエスちゃんの言う通りで、間違いなく何かあるよ」
キリッとした表情でアルテアはそう言う。
魔王剣は前見た時も普通じゃないと思ったが、ここまでできるとは思わなかった。
アルテアは拳を突き出すと掌を広げて、勢いよく握る動作を行う。
すると、纏わりつく腕は勢いよく内側を締め付けて、何か壊れるような、砕けるような音が聞こえたのだ。
「や、やったの?」
私は不意にお決まりの言葉を口にしてしまう。
あっと思い口を手で塞ぐとアルテアは、「外側は壊れたみたいだね」と言うのだ。
魔王剣が役目を終えたようで砕けて消えると、何もなかった真っ暗の空間に一つ豪華な椅子が現れて、そこに誰か座っていたのだ。
「誰か居るよ!!」
不釣り合いな姿、この国で見ることがない服、アルビネスが着ていた軍服に近い長めの服を着て、おしゃれ重視の帽子を被った男が座っていたのだ。
「誰だい?おじさんまだやる事あるのに無理矢理、ここに引っ張ったのは誰だい?」
ゆっくり、威風堂々とした声、強者を思わすような言葉使いに私の体はブルッと震えてしまった。
そして直感で、この男は危険だと思ったのだ。
お読みいただき、ありがとうございます。




