43話 商業街の動きと剣聖の話
皆様、いつもありがとうございます!
訓練所で魔法道具のテストが終わった所からです。
確認もひと段落した頃にローランは話があると言った。
このまま離さない所から、大切な話だろうと予想した私は、訓練所の横に休憩用のテーブルと椅子がある事を思い出して、3人で移動する事にした。
「えっと、ローランそれで、話って何?」
「昨日、冒険者組合の通信を使ったんだが、商業街がかなり変みたいでな、アニエス嬢の意見を聞きたかったんだ」
「変?結構な数の人が行方不明者になってるよね.その状態で何か違う事でも起きたの?」
「ああ、商業街の中で魔物が発見された。2日連続で見つかって、1日目は10体ほど街を徘徊してたそうだ」
「!!」
「街に魔物…こ、怖い…」
「ローラン!その情報って正しいんだよね。出た魔物って聞いてる?」
「情報源は正しく嘘は絶対ない、出た魔物は、1日目が通常のゴブリン4体、オーク2体、ワーウルフ2体、スライム2体で、2日目も俺が聞いた時は大体同じだった。全て冒険者や熟練者により討伐されたが、被害が出ている。発生後、自主的に外出を控えた事が幸いして、思ったよりは被害者が少なかったようだ」
「結構な規模だね、でも種類バラバラだし、意味がわからない…スライムまで、どうやって街に入ったんだろう」
「そうだな、種類はゴブリンやオークだと共存する事があるが、ワーウルフは違うし、そもそも近くに出ない、スライムは明らかに、この中だと一番強くて、一緒に来たとは到底思えないが、同じ日に出ている」
「確かに一緒は変だね。スライムは視覚がない分、魔物も魔獣も人も関係なしで取り込み吸収するからね」
魔力感知が長けてるので、魔力がある方に動いて、吸収出来るものは取り込もうとする習性がある
これにより、スライム同士が合わさり、高レベルの魔物へ進化する事もあったはずだ。
「アニエスちゃん、スライムって、魔物図鑑でも見たけど、すっごい強い魔物だよね」
「うん、絶対に見かけたら逃げてね。魔法使いは対処し易いけど、接近されると危険だからね」
ゲームだと、初心者が間違えて挑む魔物だった。
何故か殆どの人は、スライムを弱いと決めつけて、デスペナを貰ってたはず
「アニエス嬢の言う通りで、冒険者組合も遭遇時は逃げて、近くの冒険者組合に報告する事になってるな、物理攻撃に耐性があるのもだが、体の硬度を自由に調整できて、飛んでくるわ、体を分裂させるわ、で近寄られると窒息死か鋼のように硬くなり、体を穴だらけにされて、最後は溶かして取り込まれるな」
「ヒィッ!」
リディアは想像したのか、体を震わせて怖がっていた。
「でも、よくスライム対処できたね、ワーウルフも脅威だけど、街中だとスライムが危険かな」
「偶然居合わせた、メイドが倒したらしい、スライム核の所有権を冒険者組合に伝えたらしく、詳しく調べれば名前は分かるが、大体わかったから調べなかった」
「アニエスちゃん、その人ってまさか…」
メイド姿で片手剣振り回すのって、シャーリーしか見た事ないから、私の知ってる範囲が狭いけど、そんなに沢山はいないと思う
ゲームだと、戦闘メイドってのもあったけど、この世界だと、どうなんだろう…
「うん、間違いないと思うよ。魔法剣持って行ったし、シャーリーならスライムは近寄っても体にくっつく前に斬れると思う」
しかし、スライム核って何に使うつもりなんだろうか
魔石と別にスライムには核があり、本体の魔力や体力を削りきれば倒せるし、核を砕いても倒せる
今の話だと、核を砕かずに倒したという事になるから、残ってるのも核と魔石ぐらいだろうね
「ワーウルフは戦った冒険者が数人軽傷を負ったが、大きな盾を持つ男に助けられたらしい、ゴブリンとオークも多少の軽傷者は出たが、対処された」
「安全な街で魔物に襲われるなんて、怖すぎるよ」
大盾って事は、ラルフって人の事だと思う
シャーリーを呼んだのも、この事の予兆があってと言う事なのか、偶然に巻き込まれたのか、これは聞かないとわからないだろう
「そうだね、いつも暮らしてる街で襲われるなんて考えたくないし、犠牲になった人の家族を思うと、この街では起こしたくないよ」
「厳しい事を言いたくはないが、絶対安全な所って正直殆どないからな、アニエス嬢もリディア嬢も自分の身を一番優先にして、その次に手が届くと範囲を守る事を考えた方がいいな、特にアニエス嬢は守ろうとする範囲が広すぎるからな」
うぐっ…
心にダメージを受けた気がしたよ
とりあえず、気になる事を聞く事にした。
「そ、そうだ!話の中に冒険者とか熟練者とか出たけど、兵士は戦ったの?」
「俺も同じ事を気になって聞いた所、現時点で確認された魔物との遭遇戦では兵士は1人も見てないらしい、冒険者組合が確認してるが、返答待ちとの事だ」
やはり、話に出なかったのは居なかった…
あり得ない…街の兵士なら通常、巡回もしてるし、悲鳴や戦闘音があれば近寄り加勢したり、その場を収めたりするはずだ。
人が行方不明者になるのもだけど、故意に関わってないように思えてくるけど、考えすぎだろうか
「街に魔物が出たって事は、外出制限も出てるの?」
「いや、出てない、だから皆、自主的に家に引き篭もってるな」
「兵士は巡回もしてるよね、それでも戦ってないの?」
「あくまで、俺が確認した時の話だから、その後や報告が無いだけで、兵士も戦っていると考えるほうが普通だな」
あり得ない事が起きすぎると、根本が違うのではと思ってしまうけど、情報が少なくてわからない
疑ってしまうけど、ローランの言う通り報告待ちや、タイミングの問題と考えた方が良さそうだ。
「えっと、街に魔物が出たら、普通はどうなるの?」
「リディア嬢、そうだな、今この街に非常警報が出てるが、間違いなく同じ事になると思う、魔物の発生、侵入経路が確認されて、危険が無くなれば解除されるが、そうしないと被害が拡大するからだ」
「ローラン、倒した魔物って、シャーリーが核を欲しがるぐらいだから、消えないで残るんだよね」
私が使う召喚スクロールの可能性を最初考えたけど、もし残るなら違う事になる
「現在の討伐された魔物は全て消えてなく、素材を取る事も可能だな、アニエス嬢に聞きたいのは侵入経路、もしくは魔物が街に発生する可能性を聞きたいが、何かわかるか?」
自然と手が口元に近づき、考えるポーズを作る
私は自分の持つ知識を参考に考えた。
可能性や各魔物の発生条件を含めてだ。
考えれば考えるだけ、わからなくなってしまう
一応、素材を残しつつ、街中で召喚する手はあるにはあるのだが、ゲームの中という条件を付けないと、この世界の技術やアイテムレベルから考えるとあり得ないのだ。
話すか迷ったけど、話せば私の事も言わないといけなくなる
今は混乱させたくないし、可能性は殆どないから言わなくても良いだろう
「正直、情報が少なすぎるね。街全体を見て回れば変わるだろうけど、魔物の死体が消えない事から、私が使う召喚スクロールではないし、召喚術も倒されると消えるから違うね。街の中で発生する可能性は少しあるけど、条件を満たす事は無いと思うから、侵入したと考えた方がいいと思う」
まだ、侵入や条件発生と考えた方が、可能性は高いと思う
「街の中で発生する条件を今後の参考に知りたいんだが、聞いてもいい話か?」
「話す事は問題ないけど、いい話じゃないよ。2つあるね、1つは、特殊な魔物で、霊体、精霊、妖精、これらは出るかどうかの話なら出るね。もう1つは濃い魔力で満たされたり、儀式や大量の人、準ずる命を一度に失うと出るよ。簡単に言うと、生贄で召喚する系統だね」
リディアがいるので、かなり優しく伝えたが、1つ目はまず条件を満たす事は無いと思う、2つ目は儀式を行えばある種の魔物は呼び出せる、今回の行方不明者が贄として攫われたとなると可能性はあるけど、この場合は出る魔物が違い、死霊系の魔物となるので可能性は低めだ。
「儀式…贄…そんな事をする人がいるなんて、考えたく無いよ」
私も考えたくないし、儀式の準備を考えると、出来事が割に合わない
更に言えば、利点が思いつかない
「アニエス嬢の言い方だと、出る魔物はヤバそうだから、今回のとは違いそうだな」
「確定とは言えないけど、侵入が一番可能性は高いと思う、この場合の疑問は種類の違いなんだけどね、街の外壁が一部壊れてるとか、地面に穴があったり、門を素通りしたり、街の下水道経由だったりかな」
「そうなるよな、あー、俺は考えるよりも動くタイプだから、今すぐ行って確認したいな」
「でも、お父様との話的に何か決まり事あるんでしょ」
「細かくは言えないが、有事の際は、俺の扱いが王国騎士団長扱いになるんだ。つまり、作戦指揮や問題解決を行う必要が出てくる。更に言えば、俺に指示が出来るのは、国王か上級貴族となり、指示がない場合は領主の指示に従う事になる」
「うへぇ〜、ローランさんは、やっぱり大変なんですね」
「とは言っても、かなり自由にやってるな。俺の師匠、先代の剣聖はそれが嫌で俺に譲ったと言ってたが、俺が動ける間はやり続けるつもりだ」
分かりにくいけど、大体わかった気がした。
つまり、国王からの指示がなければ、お父様が言った、守る指示が優先されるから、動けないって事なのかな
でも、ローランの性格なら、称号なしでも守りそうな気がする
「えっと、その話だと、ローランは有事の際は酷使されるって事だね」
「その代わり、剣聖は騎士団長として行動する時に同じ権限が使えたり、各領地や街の通行料はかからない、あまり使いたく無いが、領地の兵士にも指示を出せる、更に王国騎士団御用達の店は割引が使える。後は少ないが、臨時の手当も出るな」
この街は入る時にお金を預かり、出る時に返すが、他の街は街の維持の為に通行料が発生する
当日の間なら2回、3回とかかる事はないが、冒険者や商人が日を跨ぐと、その度に料金が発生するので、高くない事が多いけど、馬鹿にならない
お父様から聞いた話では、低いランクの冒険者は夕方までに終わる依頼を受ける事が中心になり、討伐依頼や調査依頼が溜まってしまうらしい
この街は冒険者が集まる事が多いから預かり金として、一旦預かるだけにしたとか、無しにしようとしたらしいけど、国の偉い人に怒られたと言っていた。
話の中だと御用達店って王都にしかないから、あまり使えなさそうだね
「確かに、その条件はかなり好条件だね。前から気になってたけど、ローランの実力って、銀ランクじゃないよね。なんで金に昇格しないの?」
今の私基準だと、ローランは相当強いと思う
正直、驚くほど強いと思った。
「ああ、俺は今が一番やり易いから、上げてないな。リディア嬢の手前こう言うのは駄目なんだが、ランク上げはどうでもいいんだ。それに金ランクになると冒険者組合の指示も受けないと駄目になる。これ以上、縛られたくはないな、これ他の冒険者に秘密だからな」
確か、長期間達成されない依頼や緊急の依頼を冒険者組合が指示する仕組みだったはず
通常だと、ランクが高くなれば、それだけ身分証明もしやすいけど、称号と本になってるから上げる意味も無いのだろう
「わ、私もランクはあまり上げる気ないかな…本読んだりして夢見てたけど、私のやりたい事は困ってる人を助ける事だから、それができるなら良いかなって思ってるかな」
リディアの言葉を聞くと、私の心が浄化されてくようで、清らかな私になりそうだ。
いつか謝るけど、最初会った時、利用しようとしてた自分が恥ずかしいと思っている
「俺からのアドバイスは、ある程度ランクは上げた方がいい、そうだな…銅ランクまでは上げないと、受けれない依頼があるからな、逆に銀ランクに上げると、危険な依頼を回される時があるから注意な」
「気長に考えてみます…」
「確か、強い魔物の討伐は銅ランクからだよね。銀ランクになると、災厄級が出た時に動ける人は参加しないとダメだったっけ」
「そうだな、まぁ、冒険者の話はこれぐらいにして、詳しくは組合のカウンター横に各ランクの特典が書いてあるから、気になるなら時間ある時にでも読んでみたらいいと思う」
確かに、かなり話が脱線してたね
商業街、シャーリーの事もあるし、お父様も通過しないと帰って来れない
正直、心配になってきた。
「アニエス嬢、相談なんだが、古代遺跡で使った様に精霊に指示して動いてもらう事って出来るのか?」
「んー、出来るけど、結構距離あるから、長期間は難しいかな、私からの魔力供給なしで自ら魔力を補充する為には、各精霊に適した場所かつ魔力が濃い所じゃないと魔力切れになるね」
古代遺跡の中の様な濃い魔力じゃないと正直難しい
私の魔力を全て注げば、ある程度可能だが、今やってる事ができなくなる
「やっぱそうだよな、精霊が街を守るなら一番心強かったが、そもそも出来るなら、この街の周辺守ってるはずだよな」
なんとかする方法はないだろうか…
そう考えていると、1つの可能性を思いついた。
「あっ!もしかしたら、街を守る方法あるかもだけど、本人次第かな…」
「その話、聞いてもいいか?」
「マリーなら、単独で動けるし、魔力は自然回復できるからと思ったけど、本人のやる気次第だね。作ったのは私だけど、命令権はないからね」
ちょっと、複雑な話になるけど、魔法生物は2通りあって、魂を付与させた状態は命令権がない、逆に魂の付与がない状態だと、自身で考える事ができない代わりに簡単な命令を出せる
今製作中のゴーレムは魂を入れないので、例えば街道に敵意や魔物が近寄れば排除するという命令を出せる
その事を簡単に説明した。
私が使える魂を持ってないから詳しくは試せないけど、多分この仕組みは変わってないはずだ。
実際、マリーは勝手に動いてるからね
「もうこんな時間か…話が長くてすまなかったな」
「確かに日が沈みそうだね」
ローランとリディアの言葉で、時間がかなり経過してる事に気がついた。
一応、マリーが戻ったら聞いてみる事になり、話は明日へ持ち越す事にして、3人で夕食を食べに食堂へ向かった。
途中、フィリスに会うと、私をどうやら探していた様で心配していた。
他のメイドに聞くと訓練所にいるとわかったらしいが、今後は予定を話そうと思う
夕食後、お母様に軽く商業街の話をしてみたけど、やはりこの街から人を出す事は出来ないと言われた。
この街の兵士や私兵もかなり疲弊してるようで、お母様も頭を抱えていた。
お母様自身もあまり寝てないらしく、私は心配になった。
その後、お風呂に入り、寝る前に本を読む事にした。
「この本を読む時間は本当に大好きだよ、もっと本が増えると良いのにっていつも思うね」
「そうですね、私が商人の父と一緒に街を転々としてた時も本は殆ど入荷する事はなかったですね」
「フィリスは、それなりに本、読んでたよね」
「一般の方よりは多い程度でしょうか、買い付けで稀に入る事もあり、その時に読ませてもらったり、街の滞在時間が長い時は、本屋さんにお金を払って読ませてもらいましたね」
本の読む方法は様々あり、本を売ってる貴族向けの店でお金を払って読んだり、移動本屋という特殊な行商人からお金を払って読む事も出来る。読ませてもらうのも本や場所によるが、銀貨は必要になり、読むだけでもお金はかなりかかる
買うとなれば、金貨数枚は薄い本でもかかるので、本の所有は貴族の身分の高さを示すとも言われてるらしい
無料で読むなら、教会にも少し本はあり、お祈りや掃除を手伝えば読ませてもらえたはずだ。
「いつか、本を皆が読めるようにしたいけど、全く想像できないんだよね」
本は知識を向上させる。それは、魔法の向上にも繋がるので、魔導書も含めて本をもっと身近なものにしたいと思う
「1枚1枚手書きですからね、使うインクも紙も高価ですし、なかなか難しい事ですが、素晴らしい目標だと思います」
紙は錬金術で作れるけど、普通に作るのは大変と聞いた事がある。何かいい方法があれば、仕事がない人にも仕事を与えれて街を更に発展できるけど、第一目標を達成してからかな
本を読み終わり寝ようとするが、今日もフィリスは一緒に寝るらしい
「フィリス、今日も抱きつき禁止だからね!暑くて、私死んじゃうから、私居なくなるのは嫌だよね」
「うう…アニエスさんが居なくなるのは嫌ですが、アニエスさんを目の前に抑えれるかどうか…強く抱きつかないので、どうでしょうか」
「どうでしょうかって、抱きつく事前提なんだね…」
人より体温が低い私は抱きつくと、どうやら心地よいらしく抱きつかない選択はないらしい。このままだと話が無限に続くので、私は強く抱きつかない、という事で妥協する事となった。
お互いに、おやすみと言い合って、二人は夢の世界に向かった。
お読みいただき、ありがとうございます。
よければブクマなどいただけると、転がって喜んでます。
評価、いいね、ありがとうございます!!
アニエスは夢や目標が当初、マリエルに会う事、マリエルを守る事、神様のお願い順に考えてましたが、人として生きる事でどんどん増えてます。
優先順位はアニエスの気まぐれなので、それも含めて成長してるとお考えいただければと思います。
スライムが弱く思われる原因は、間違いなくあれですが、通常は強魔物です。
この世界では至る所で、そこそこ人が犠牲になってます。
説明を少なく読みやすくしたいのですが、申し訳ございません。
何か気になる事や、こうした方が良いのでは、とかここはダメという所など、あればコメント頂ければ幸いです。




