28話 古代遺跡突入1階層から9階層
いつもありがとうございます。
今回少し長めとなります。
いつもと変わらない朝が来る。
当たり前でごく自然な事だ。
朝食を食べて皆と話す、これもいつもの事だ。
「マジックソード、フォルムファイア!」
私は最近、魔力防具だけではなく、様々な魔法の訓練をしている。
熟練値なのだろうか、日々魔力が上がってる様にも思えるのだ。
魔法剣の火属性を作り出し、剣の先まで火で包む。
足に魔力を流して、一気に距離を詰める。
的の正面まで来ると、そのまま斬る。
的が切断されて、断面から火が発生して燃やす。
「火熱一閃!」
横に振り抜くと、そのまま火の斬撃を飛ばす。
横一閃に飛ぶ事で複数の的に当たり、瞬時に火が包み込み燃やし尽くす。
「火花蕾熱!」
後ろ側に設置した的に、振り向き放つ。
縦に飛ぶ火の斬撃だが、的に当たると蕾の様に火が包み、火の花を咲かせ辺りを燃やす。
「やっぱり二つの魔法剣技で、もう魔力が尽きかけてる」
魔法剣の熟練値なのか、魔力をいくら込めても、これ以上増えないのだ。
「これで最後、火炎解放!炎熱旋風!」
魔法剣の最終技である、魔力解放だ。
普通に解放して魔力の塊をぶつけても強いのだが、この状態で自分の魔力も使って発動できる、魔法剣技がこの技となる。
指定位置に炎の渦を発生させて、的を内部斬撃でズタズタに引き裂きながら燃やしていく。
超高温の炎なので、地面が溶解する程だ。
発動後、魔法剣は粒子となり消えていった。
「お嬢様、お見事ですね」
「うーん、まだまだなんだよね。前は6属性展開して、魔力で振り回してたし、今も数回使うと、魔法剣の魔力切れなんだよね」
普通に斬る分にはあまり関係ないので、使う時は小出しにするしかないのかなと考えた。
しかし魔法剣使うだけで魔力を多く消費するなんて、昔では考えられない状態だなぁ、とため息を吐く。
「私には十分すぎる様に見えるのですが、今のでもまだ足りないという事ですね」
「反属性の魔法剣で合わせ技とかあるから、使えると大抵の魔物は倒せるんだけど、まだまだ先になりそうだよ」
訓練所で大の字になり、私は空を見上げてそう呟くのだった。
これ以上は魔力回復で、リングに補充ができなくなる為、訓練は一旦終えて、お風呂に入り汗を落とす。
部屋に戻ると、出来上がりを知らせる声が聞こえた。
『 魔法道具の製作が完了しました…』
ふふ、と笑みをこぼして収納魔法から、次々と取り出していく。
今回の戦力となるのが、魔法の石ころだ。
これが恐ろしく、強いのだ。
投げると敵に向かい飛ぶのだが、途中で弾けて拡散弾の様に敵に当たる。
貫通属性持ちなので、大抵の魔物はそれで倒せてしまう。
高レベルの古代遺跡だと通じないが、低レベルだと殆どこれだけで済んでしまうのではないかと思うほどだ。
後は召喚武具である、生きた大盾と大剣も強力だ。
体力設定があり、小ボス程度の耐久を持ちつつ、大盾は自動ガードを使い、大剣は範囲に敵が居ると、回転して攻撃しにいく。
全て自動なので楽なのだ。
簡易テントも昨日、魔法剣で試した所壊れたり破損する事もないので、安心できる事がわかった。
マジックチェーンに魔法の石ころを詰めて、召喚武具はリディアとシャーリーに渡そうと思う。
その後は魔力が回復するとリングに溜める、を繰り返して決行当日となる。
杖の指輪を装着して、左右の腕にリングを付けて、マジックチェーンを装備して、妖精の靴を履く。
現在できる、最高の武装となる。
食材や水を沢山収納魔法に詰め込み、私は準備万端だ。
「お嬢様、リディア様とローラン様がいらっしゃいました」
来たようだ、私は整えて作戦室は向かった。
リディアとローランは、既に到着して座っていた。
リディアは渡したリングと、妖精の靴を履いている。
「リディア、ローラン、おはよう」
「アニエスちゃん、おはよう」
「嬢ちゃん、おはような」
「む、ローラン、嬢ちゃんじゃあ分かりにくいから、アニエスって呼んでよ」
「んん、まぁ、そういう事なら、アニエス嬢って呼ばせてもらうぞ」
「馴れ馴れしい奴め。事故に見せて遺跡に沈めるか…」
シャーリーがボソッと言った事を、私は聞こえていた。
何でこんなにも、ローランに当たりが厳しいのか、よく分からない…
「ま、まぁ皆に改めて話をするよ。まずシャーリーとリディアにこれ渡すね」
2人に大盾と大剣の宿る、丸い玉を渡す。
2人は受け取ると、覗くように見ていた。
「これは一体…」
「でも綺麗だね」
「それはね、召喚武具っていう、魔法道具だよ」
そう話をして、効果を伝える。
すると2人は、高価そうだけどいいのかと聞いてきたので、怪我をしたりする事を考えれば問題ないと答えた。
後はローランに回復薬を渡す。
前衛についてもらうので気休め程度だが、回復薬はあった方がいいだろう。
「ありがたいが、回復薬って結構値段するぞ、ポーチも貰って本当にいいのか?」
「もう、何度も言わせないでよ。何が起きるよりは安いものだよ。人の命は一番高いからね…」
ありがたく頂くと言って、ポーチにしまっていく。
さてと、立ち回りや行動の仕方を話す事にした。
7からできれば10階層を1日で到達したい事、前衛にローラン、その後ろに私と、リディア最後にシャーリーという隊列となる。
ゴーレム系は私が処理をする話と、大抵の魔物は石で倒すというと皆頭に?を浮かべていた。
「さて、準備は整った。今ならまだ止まれるけど、皆気は変わってない?万が一は死ぬ事を理解してる?」
「俺は大丈夫だ。依頼を受けた時に承諾している」
「私も大丈夫だよ、少しでもアニエスちゃんに近づきたいから頑張る」
「お嬢様と共になら、何処までも一緒に向かいますよ」
みんなの意思を確認していると、お父様が入ってきた。
「準備万端のようだな、全員、誰1人も欠ける事なく必ず無事に戻ってくるんだぞ、ローラン、シャーリー、アニエスとリディアを頼んだぞ」
はいと皆で応える。
4人で邸から出て、近くの森へ向かう。
中央の広場を使う予定なのだ。
「こんな所でどうするんだ?古代遺跡向かうんだろ?」
「向かうから、待っててよ」
創世の杖を使い、シェイドを呼び出す予定だ。
「何だその杖、ありえるのか…」
あれ?ローランもしかして、見えてるのかな
「さぁ、創世の杖に宿る。我が、契約精霊よ。呼び声に答え顕現せよ。闇の精霊シェイド!」
珠の1つが光り、シェイドが呼び出される。
『我がマスター、呼びかけに応じて、飛んできたぞ』
すると先程の事で、ローランが詰め寄ってきた。
「おい、アニエス嬢!あれは何だ!」
この世界では、説明しにくいんだよね
「ローラン、とりあえず今は忘れてね」
強制力はない、ただの言葉だ。
そのはずなのだが…
「あ、ああ、取り乱してすまなかった」
ふむ、すんなり引き下がった、結果としては、良かったからいいかな
「シェイド、皆に念話繋いで」
そう言うと、皆に念話が繋がる。
「な、なんだこれ、頭に直接声が聞こえるぞ」
「声の主は闇の精霊シェイドね。シェイド、指定座標に私達を影移動させてほしいけどいい?」
『魔力は貰うが、問題ないぞ』
ローランはじっと、何かを見つめている。
もしかして、精霊も見えてるの?
「ねぇ、ローランもしかして、シェイドが見えるの?」
「靄がかかった感じだが、黒い何かが見えるな」
「あ!私と同じだ」
「ふむ、私には見えないのに、ずるいね」
「お嬢様、私も見えないので、ご安心下さい」
ぞくっと魔力を持っていかれた。
急な魔力低下は、体に辛さを感じるけど、ここでそれを言うわけにはいかない。
「皆、手を繋いで、離すと次元の彼方に彷徨うことになるからね」
そう言うと、皆があわてて手を握る。
「シェイド、お願い」
『うむ、影渡』
精霊魔法で、人には再現できない魔法となる。
黒い球体に包まれて、地面に潜っていく。
真っ暗な中で、何が起きてるかわからない状態が続き、リディアは大丈夫だよね大丈夫だよね、と何度も聞いてくるほどだった。
『もう着くぞ』
シェイドの声が聞こえて、包まれた球体が晴れていく。
先程と景色が変わり、完全に森の中だった。
しかし、目の前に古代遺跡の入り口があるから、問題なく到着できたようだ。
「到着だね」
「凄いな、遠距離テレポートか」
えっ、ローラン、この世界にテレポートあるの…、後で聞いてみよう。
「辺りは全部森だね」
「自生の植物からすると、おそらく未開の森深部でしょうか」
「普通に行くと、時間がかなりかかる所だからね。ちょっとずるいけど裏技だよ」
使える物は使うのが、今の私なのだ。
「シェイド、サーチお願いしていい?」
『魔力を貰えれば、問題ない』
ごっそり持っていかれた。
明らかに使う分以上取られた感じがする。
急激な魔力低下は慣れないなぁ
「皆、サーチ終わるまで待機ね」
私は低級の魔力回復薬を飲んだ。
強い効果の方だと、飲んだ後に体が熱くなるから、出来るだけ避けたいのだ。
「アニエスちゃん、シェイド様ってどんな精霊なの?」
「俺も興味があるな」
「私も聞いてみたいですね」
ふむ、皆は精霊に興味があるようだ。
どう言うべきか、迷ってしまう。
何故ならそもそもシェイドは闇を司るが、死を体現したような精霊だからだ。
「シェイドは闇の上級精霊で、闇を支配する役割だね。使える魔法も闇に関わる事や、今やってるように空間を調べたり、さっきのように移動したりもできるよ」
「姿ってどんなのなの?アニエスちゃん、見たことあるんでしょ」
「あるけど、死神ってわかる?」
「鎌もった骸骨みたいな奴だろ、魔物図鑑で見たことあるぞ」
多分それボスだと思うよ
「うん、私も見た事あるけど怖い」
「そのイメージと殆ど一緒だよ」
『我がマスターよ、我のイメージを崩さないで頂きたいのだが、良いだろうか』
「うお!見えないのは不便だね。シェイドありがとう、マップを私に転送して」
そう言うと、マップデータが頭に入ってくる。
この状態で収納道具から、ダンジョンマップを取り出す。
通常は白紙だが、一度見たり情報を持っていれば、写すことができるのだ。
写るマップを、私は見ていく。
やはり地下50階層だった、幸いなことにフロアが変わる系のダンジョンではないようだ。
出る敵も低レベルだが、30階以降にゴーレムとガーディアンゴーレムが出てくるようだ。
しかし、このダンジョンもしかして、素材稼ぎ用のダンジョンなんじゃ
後半がゴーレムだけではなく、アイアンゴーレムという上級魔物まで表記されている。
大抵魔物は表記されないのだが、素材系のダンジョンは表記が入る事があるのだ。
私が考えてると、ローランやリディアが見せてと言ってきたので、見せることにした。
「これは凄いな、こんな便利なマップあるなら、古代遺跡行き放題だぞ」
「普通はどんな感じなの?」
「不定期に中が変わるから、そうなったら手探りで動かないとダメだし、それ以外だと暴利な金額で、冒険者組合がお手製のマップを販売してるな」
「アニエスちゃん、この変なマークは何?」
「ん?どれの事?」
リディアが指で差したところを見ると、呪と書かれている。
うげぇ、厄介な奴が出てきそうだ。
「あのね、リディアそのマークはね…アンデットや呪われた魔物が出てくる階層の事だよ…」
「えっ…うそでしょ…」
リディアの顔が青ざめていく、おそらく怖いものが苦手なのだろう。
「それなら、俺の白銀剣が活躍しそうだな」
「私の魔法剣も、属性珠あるので使えそうですね」
「そうだね、出る魔物によるけど、石が当たらない幽霊みたいなのだと2人に任せるよ」
「ああ、任せてくれ」
「な、なんで…皆は平気なの?…幽霊だよ…」
「とは言っても魔物だからね。呪われた系も人がベースでも魔物だし、大丈夫!」
空を見つめて、私はそう言い切った。
正直、幽霊がこの体に影響を与えそうと、思っているからだ。
私は大丈夫でも、この体の精神年齢に引っ張られる事が多いので、おそらく幽霊を見ると、叫んでしまいそうだと思う。
何とかなるよね、と遠い目をして自問自答する。
「さて、簡単に説明してくよ」
そう言って、話をし出す。
1階層から9階層までが低級魔物、ゴブリン系とオークの混成となる。
おそらくボスもどちらかの、リーダー格だろう。
11階層から19階層までが、動物種となる。
ウルフ、サベージタイガー、ファングウルフだと思う。
ボスは予想できないけど、大きそうな魔物かな。
21階層から29階層までが呪いゾーンで、薄気味悪い魔物中心となる。
ボスは大抵、スケルトンキングとか呪い系の人形だ。
人形…まさかね…
31階層からは、ゴーレムとガーディアンゴーレムが出てきて…アイアンゴーレム…やばいのも出るね。
50階層まで変わらないから、ボスはメタル系か鉱石系だと思う。
「大体わかったが、アイアンゴーレムってなんだ?聞いた事も見た事もないぞ」
「ガーディアンゴーレムを纏めてる、ボスみたいなのだね。とても硬くて武装してるゴーレムだよ」
「聞くだけで、面倒そうなのだな」
「でもその分、素材はいい奴が手に入るのと、取り巻きにガーディアンゴーレム3体と、ゴーレム2体出るから稼ぎやすいかな」
「その構成を稼ぎやすいって言うのは、アニエス嬢ぐらいだな」
「私は折角覚えた魔法使いたいけど、アニエスちゃんの邪魔しないようにするね」
「多分、呪いゾーンで活躍できるよ」
私がそう言うと、ヒィッと怯えてしまった。
気になるのは50階層のボスがわからない。
ボスは名前など出ないのだけど、種族とか属性すら出てこない全く未知なのだ。
古代遺跡の名前も碧石の都とあるが、私の記憶にない所だ。
ゴーレムが多いから石がつくのはわかるけど、碧か、考えても始まらないし行くしかないかな。
「さてと、入り口をちょっと見てみるね」
確かに、かなり昔から開いた形跡がないようだ。
何か文字が書いてある、けど、削れてて読めないや
材質は普通の岩と扉は鋼かな、強度は普通程度だから、魔物が溢れるとしたら突破されるだろう。
触ったり叩いたりして、材質などを確認していった。
「そうだ、ローラン、古代遺跡から魔物って出てくることあるの?」
「んー、俺が知る限りは、一度もないな」
ふむ、そうなると深く考えすぎてるだけかな
「そろそろ、中に入ろうか」
一通り皆で調べて、中に入る事にした。
マップがあるから罠も回避できるし、最短で次の階層に向かえるから何というかイージー?と言う気がする。
重い扉を開けようとした時に、ふと思い出し手を止めて、シェイドに話しかけた。
「あっ、シェイド、リディアとシャーリーを全ての危機から守り抜いて、私の命より優先で対処する命令を行使するね」
通常は私を守護する役目だが、それを解いてリディアとシャーリーを守るように指示をする。
本当は命令なんてしたくはないけど、形式上そうしないと指示を細かくできないのだ。
『我、マスター。命令を受諾したぞ、今よりこの2人の守護に徹しよう』
「アニエスちゃん、そんなに気を使わなくてもいいんだよ」
「お嬢様、私はお嬢様が怪我しない事のみを望んでおります」
「私はね、2人に怪我をしてほしくないんだ。今ここに2人がいるのは私が付き合わせたようなものだからね。それにあくまで保険の一つと考えてくれればいいよ」
「保険?わかったよ」
そうか、保険はないんだね。
2人は疑問を感じつつ、納得してくれた。
これで大体の事はシェイドの防御も使えるので、大盾と含めれば2人に何か起きることはないだろう
『では我は影より、2人を見守るとしようか』
そう言ってシェイドは体が二つに分かれて、リディアとシャーリーの陰に潜っていった。
「えっ!影に入っちゃった」
「お嬢様、問題はないのですよね」
「うん、影から守ってくれるだけだよ。ああ!プライバシーとかはシェイド守るから安心してね。影に潜ってると、魔力探知と敵意や殺気をサーチしかできないから、例え服を全部脱いでもシェイドには見られないから、安心してね!」
冗談も含めてそう言うと、2人は揶揄わないでと言って、みんなで笑う。
この先は油断すると命を落としてしまう、だからこそ気を引き締め直した。
皆で遺跡の入り口を開けて、中に入っていくのだった。
「うわぁ、本当に遺跡の中なんだね」
「リディア様、離れないように、お願いしますね」
「2人とも、大盾と大剣を使ってみて」
そう言うと、2人は取り出して、どう使うの?と聞いてきた。
床に投げればいいよ、と言うと2人とも同じように投げる。
もくもくと煙が出て、禍々しい盾と剣が2人の近くに出てくる。
「こ、これでいいの?なんかすっごく禍々しいけど」
「お嬢様、何というか、これは呪いの装備でしょうか」
「何と言えばいいか、その発想は近いね。実際その召喚武具は、生きた状態だから呪いもあながち間違ってないね」
どう使うか聞かれたので、何もしないよと伝えて、実践してみることになった。
遺跡の中は、壁も天井も岩のような材質だ。
一部の遺跡では、空間が歪められていて外だったり、特殊な場合もある。
私達は適切な道を進んでいると、ゴブリンと遭遇したのだ。
「初魔物だね、えっとシャーリーかリディア、どちらでもいいけど近寄ってみて」
「えっ、う、うん」
「リディア様私が行きますので、ご安心下さい」
リディアをシャーリーが庇い、ゴブリンに近寄る。
ゴブリンが威嚇して飛びかかるが、大盾が自動で攻撃を弾く、弾かれて飛んだ所に、大剣が回転して両断するのだ。
「こんな感じだよ、ほぼ自動で防御と攻撃してくれるけど、過信はしないでね」
「これは凄いですね。大量に作れたらもう魔物から怯える事は無さそうです…」
シャーリーは色々思い出したのだろう、だけどそれができないんだよね
「しかし、この強さだと下手な冒険者雇うよりも優秀だぞ」
「アニエスちゃん、これ作るのは、どうやってるの?」
「これの材料はかなり特殊な物で、私もほとんど持ってないんだ。だから少ししか作れなかったの」
素材を伝えると、皆が何それと知らないほどのものだった。
私達が話してる間にも、ゴブリンは何処となく湧き続ける。
近寄ると両断されるので、辺りにゴブリンだった物のみが残っていく
「うっぷ…」
「リディア、刺激強いよね。大丈夫?」
「なんとか…喉ぐらいに上ってきたけど耐えたよ」
「確かに冒険者に成り立ての奴は、これ見てると気持ち悪くなるんだよな。慣れるとまぁ、何とかなるんだがな」
「私も騎士団で見慣れましたので、今では気にならないですね」
「そうだ、目標以外の魔物素材はどうする?」
「ローランが必要なら取っちゃっていいよ」
「なら、勝手に取らせてもらうか」
そう言って、慣れた手つきでゴブリンから魔石を取り出す。
小ぶりだが、冒険者成り立ての主な稼ぎ方となる。
討伐の証は耳となるので、それを切り取りポーチに入れていく。
「本当にマジックポーチは便利でもう手放せないな」
「うっ、私もうダメかも」
「リディア、少し離れて座って」
時間は余裕があるから、リディアを休ませた。
確かに血の匂いも凄いし、見た目がちょっとね
「よし、終わりだな。待たせた」
ローランは自身の手を水で洗い流していた。
「うう、剥ぎ取った後はどうするの?」
リディアは、その後の話を聞いてきた。
「野外だと、燃やさないとアンデット化する場合や、他の魔物を呼び寄せたりするけど、古代遺跡の中だと時間経過で遺跡が食べるから大丈夫だよ」
最初はゲームの消える仕様かと思っていたが、どうやら魔物を取り込み新たな魔物を生み出してる循環機能があるらしい
リディアはそれを想像して、うぇぇと言っている。
2階層に降りて進むと、ゴブリンだけではなく、ゴブリンソルジャーやアーチャーも出るようになった。
ソルジャーは武具を見に纏い、剣を扱うゴブリンとなり、アーチャーは遠距離から矢を射る事で、他のゴブリンを援護してくる。
私達は盾が自動防御する為、矢が届く事はなかった。
「敵が増えてきたから、石を使うね」
わかったと皆が言って、私は取り出し指で弾く。
指弾の要領で飛ばすと、途中で加速して拡散する。
ほぼ通路全域に石が飛び散り、ゴブリンを貫いた。
「凄いな、そして見た目が酷いな」
「使うと、こうなるんだよね、全身を貫くから素材を取る事もできないけど、早く倒せるんだよね」
「リディア様、見ないで下さいね」
シャーリーが視界を塞ぎ、フォローしていた。
「シャーリーさん、ありがとう。気になるけど、見ると後悔しそうだね」
「お嬢様、これは流石に刺激が強すぎます」
確かに威力が想像よりも高すぎたと思ってるよ、ごめんね
気を取り直して進み、複数出る時だけ使い、それ以外は大剣で処理をしていく。
ほぼ通過するだけで、一体ずつなら剥ぎ取りをローランは流れで行い歩き続ける。
3階層に降りると、オークが出てくるようになった。
大剣の前では一撃で切り倒されていく、歩みを止める事なく進んでいった。
魔石を取り出しているローランに、気になる事があり聞いてみることにした。
「そういえば、オークって食べたりするの?」
「いやいや、魔物の肉なんて、臭くて食べれないぞ」
「遠征で食料がなくなり一度食べましたが、もの凄く硬くて不味かったですね」
「私の知識だと、オークは美味しいんだよね」
各都市にゲテモノショップがあって販売されて、特殊なプレイヤー間には人気だったと記録されてる。
「まぁ、好き好んで食べる事はないと思うな、どうしてもの時に参考にさせてもらうぞ」
遭遇するオークが偶に武器を持っているので、その武器は回収していく
武器なので何かの役には立つ為だ。
4階層はオークとハイオークとなる。
古代遺跡の配慮なのか、一度に二体以上出てこないので、特に苦も無く進むことが出来る。
「古代遺跡って、こんなに楽していいのかな?」
「リディアは慣れる事が必要だから、その為の時間と考えた方がいいかもね。学園では各個人がやらないとダメだから、チームを組むなら連携が大切かな」
「アニエス嬢の言う通りだな、よく冒険者で即席のチームを組む奴がいるが、大物や強襲を受けるとすぐにバラバラに動いて、全滅する事も少なくない。魔物がどう動くのかとかも大切だし、チームの動きを観察する事も大切だな。リディア嬢はそれを他よりも早く見れる機会に遭遇するしてるんだから、しっかりと見ておけよ」
「はい!ローランさんありがとうございます!」
知らない間に、仲良くなってる気がする
一緒に来てたし、時折フォローしてるし、仲良いことは良いことだね
リディアも冒険者になってるし、その兼ね合いなのかな
その後も問題なく5階層、6階層と進んでいく、7階層を進むと少し広めの場所があったので、私は休憩する事を提案した。
「一応、第一目標の7階層まできたから、歩き続けてたし休憩しようか」
「やったー、ずっと歩いてたから疲れたよ」
両手を上げて、リディアは嬉しがっていた。
「冒険者には体力も必要だぞ、後は休憩できる時に体を休める事も大切だな」
そう言ってリディアにローランは果物を投げて渡した。
「ローランさん、ありがとうございます」
ほいっと私の方にも飛んできて、両手で受け止める。
シャーリーにも投げて、ローランも取り出し齧りだした。
名称不明の美味しい果物だ。
「ローラン、ありがとう、これ美味しいよね。名前なんだろう」
「これの名前か、これはな」
一口齧るとローランは名前を喋ろうとしたが、シャーリーが阻止する。
「これの名前は秘密にして下さい…」
「お、おう…わかったから殺気を飛ばすなよ」
「えっ、これ何!何なのこれ!」
そんなに伏せられると気になるを超えて、食べづらく感じてしまう。
「お嬢様、名称不明という事で良いじゃないですか、美味しいですし」
「リディアなら知ってるでしょ!この果物なんなの!」
「えっ、あ、うん。私も知らないかな…」
もう意味がわからない。
みんな隠してる、もしかすると本当に名前がない可能性もあるかもしれない。
確かに美味しいから、まぁいいや
名称不明のまま果物を齧り続けた。
甘い糖分は頭も働くし体の疲れが取れるので、こんな時は一段と美味しく感じる。
下手すると死ぬ事があるこの状況で、私は少し楽しさを感じている。
誰かとこんな風に冒険した事がなかったからだ。
これがプレイヤーが行っていた冒険なんだと認識するのだった。
「さて、そろそろ出発するか」
「ローランの指示に従うよ、じゃあ皆移動しようか」
荷物などを持っていないので、即移動することができる。
その後も正午を過ぎた事もあり、進んで広い場所に出たら、少し休んでを繰り返しながら進んでいくのだった。
「9階層に到着だね、流石に足が疲れてきたよ」
私の体でも、かなり疲労感が溜まっていた。
「お嬢様、私が背負いますが、如何致しますか?」
「おい、マテマテ、リディア嬢のようにアニエス嬢も自分の足で歩くんだ。シャーリーが背負ったら、万が一の襲撃に対応できないだろ」
「確かに一理ある話だね。自分の足で歩いていくよ」
「ローランの言葉は気にせず、辛くなれば私を頼って下さいね」
「私も結構足がパンパンで痛いけど、アニエスちゃん頑張ろ」
とりあえず10階層の手前で休むか、進むかを考える事にして先に進んだ。
9階層まで来ると、魔物も殆ど武装を行なっている。
並大抵の冒険者は餌食となる事だろう。
私達はと言うと、現在も歩いていると、剣が勝手に魔物を倒していくのだ。
私は武器や装備をさっせと回収して、ローランは魔石などを取り出していく。
「こんなに楽な古代遺跡は初めてだな、いつもは気を張りながら物資を守り、少しずつ進む事を繰り返していくからな」
「そうなんだ、ローランでもそんなに苦労するんだね」
「俺自身が何もなくても、物資を奪われると危険だからな、1人で入るのは少ないが、複数で入る時は必ず荷物持ちを優先で守ってる」
私達はマジックポーチなどで楽をしているが、通常では少し進むのも精神的に辛く感じるようだ。
よく考えると、いきなり奇襲を受けて物資を取られると、それだけでも死を意味する、そう考えると楽し過ぎてるのかもしれないが、失敗は死を意味するからこそ、使えるものは使わないといけないのだ。
「なんだか徐々に魔物が強くなってる?」
一撃で魔物が倒しきれなくなって、私は言葉にした。
「確かにさっきから、大剣の攻撃を耐える魔物が出てきてるな」
ローランも魔物の動きを見て、強くなってると認識してる様だ。
「私は全く分からないよ…」
リディアはよくわからない様だ。
「見ている限りの話ですが、致命傷をずらして耐える場合があるようですね」
シャーリーの話で、私は確信した。
9階層までは大剣の回転高速斬撃を防ぐ手段はなく、魔物が出ると即斬で倒されるのだが、今では一撃を受けても死なずに、再度向かってくる敵が出てきてるのだ。
決められた数値の魔物ではない以上、やはり古代遺跡が進化をさせているのだろうか
我々も経験が力となり成長できるので、魔物ができても不思議ではないと言う事だ。
「でも、大剣の返し斬りでそのまま倒せるから、実感は殆ど無いね」
「まぁ、正直有り得ないような強さの剣だからできるんだがな、俺もおそらく一撃で倒せるが、正直こんなに出てくると疲れて休憩を繰り返すことになる。今までで一番魔物が出てくる量が多いぞ」
「古代遺跡から魔物が溢れたら、こんなにいるから大変な事になりそうだね」
リディアがそう言うと起きそうで怖い
「考えたくもありませんね、ハイオークの群れで大変な事になったのに混合の魔物が一度に襲うと、恐らく混乱して士気が下がると思います」
「古代遺跡から魔物が出た事は聞いた事ないが、もし起きたら街なんて簡単に潰されるだろうな」
ローランはそんな事を言うが、私は気が気ではないのだ。
決められた設定通りに動かなくなれば、扉を開けて出てくる事もあり得なくは無さそうだからだ。
さらに9階層からは、後ろを狙ってくる事もある。
通ってきた道から襲われると言うことは、凄い速度で魔物が生み出されている事となる。
幸いにもシェイドが影から攻撃してくれるから大丈夫だけど、この難度だと冒険者は確実に死ぬと思う。
「ローラン、この古代遺跡は冒険者で攻略できる?」
歩きながら、思った事を聞いてみる事にした。
「現在の所まで来るには、まず銀ランク以下は死ぬだろうな、もしくは部隊を編成して、かなりの人数で攻略するかになる。俺は多分大丈夫だが、休憩が取れないと何処かで死ぬのは間違いないな」
「ありがとう」
上層でさらに弱い魔物なのに、こうなるとかなり気を引き締めないと危なそうだ。
初心者用の素材ダンジョンではないと言うことだろうか
「マップの通り、ここが10階層に降りる道だな。アニエス嬢どうする?ここで一夜過ごすか?」
ちょうど広めのスペースがあった。
古代遺跡の内部は時間感覚が狂いやすく、私も今何時なのか分からない。
ローランは、冒険者としてのスキルで分かるらしい。
10階層は間違いなく強めの魔物が出てくる為、ここで寝る事にした。
予定よりも進んでるので、問題ないだろう
さて、古代遺跡で野営だね!
お読みいただき、ありがとうございます。
ブクマやいいね、等ありがとうございます。
最近増えていき、とても嬉しく、励みになります。
何か気になる事や、こうした方が良いのでは、とかここはダメという所など、あればコメント頂ければ幸いです。
あれ?こんな技の名前だっけ、と設定を確認するも作っていない事に気がついた私です。
安直すぎて、とりあえず読み仮名をルビで付けてます。
正直、むず痒くなる技が増えますが、ゲーム的な感覚で納得いただければ幸いです。
途中までサクサク進んでいきます。
次回はボスと一応戦います…
お恥ずかしい話ですが、表記揺れが多数あるのを確認してます。
読みづらいかと思いますが、徐々に編集致しますので、何卒よろしくお願いいたします。




