14話 治療と闇の誘い
いつもありがとうございます。
皆様のお力添えで私は頑張れてます。
重ねて、御礼申し上げます。
アニエス視点です。
前回の戦闘後からとなります。
どうして、こうなった。
私は完璧に考えていたはずなのに
今、収容所に連れて行かれているのは何故だ!
「私を離してください!誰か!助けてください!」
私は錯乱した様に叫び出す。
辺りにある兵士が、何事かとこちらを見ていた。
「お嬢様、やめてください。変な目で見られてるじゃないですか」
「アニエスちゃん、もう諦めて、ちゃんと話そ」
シャーリーの困惑した顔とリディアの暖かい目が、こちらを見ている。
フィリスは何が起きるのかわからない感じではあるが、打開策はもうない。
私は諦めてだらんと力を抜き体をシャーリーに預けた。
3人の足は止まる事はなく、仮設営されたテント風の拠点へ入っていく。
中に入ると私はベッドに下ろされた。
「お嬢様、まず傷の消毒と治療を行いますので、失礼致します」
そう言って私の服を脱がせ、斬られたところを外に出す。
左肩から背中と言っても少しだけど、プロテクトが無ければ、恐らくもっと深い傷を負っていただろう。
それを見たフィリスが悲しげに言った。
「私を助けたからこんな傷を…」
「違うよ、これはフィリスのせいじゃない。オークが悪いんだからね」
傷と言っても深くないし血は殆ど止まってるし、心配はいらないと言ってるのに、悲しげな表情は変わらなかった。
「フィリスちゃんも怪我してるから、こっち座って」
リディアが治療するからと言い、椅子にフィリスを座らせる。
フィリスは大きな傷は無いものの、小さい怪我をしている為、消毒等をする様だ。
私は、うつ伏せに寝かされた。
「お嬢様、傷口をまずきれいにしますので、少し痛いかもしれません」
「大丈夫だから、我慢する」
優しくシャーリーが、周りの血を落として水を傷口に付けていく。
その後、綺麗な布で水気を拭き取る。
「ぜ、全然痛くなかったよ」
体を震わせ私は強気な事を言った。
「では次に消毒液使いますので、染みます」
「一思いにって、いだぁぁい!しみるぅぅ」
私が喋り終わる前に消毒液が塗られ、染み込む痛みに悶え苦しむ。
私が悶えていると、軽い擦り傷等にも塗られていき追撃される。
斬られた時よりも、痛く感じるほどだ。
痛くて涙が出てきたよ。
「そうやって痛がってると、年相応なのですね。これからは無茶しないでください」
「うぅ…私はか弱い女の子なのに…いだっ!」
私が喋ってる時に鎮痛と治療効果のある湿布を、傷に貼り付けられた。
ベッドに伏せていると、なんだか眠くなってきた。
ダメだ、目が勝手に閉じる…
何とか目を開けようとしたが、無駄に終わりそのまま眠ってしまった。
真っ黒の空間だ。
そこに私は浮いている。
他に何もなく、上下左右もわからない。
全てが無のような空間だ。
『キサマ、何のつもりだ』
突然に声が聞こえた。
「聞き間違い?人違い?」
よくわからなかったので、そう言うと何かが怒り出した。
『キサマ!私の実験を潰しておいて我を馬鹿にする気か!』
「私に話していたのですね。貴方誰ですか?実験とは?」
私に話していた様なので、聞き返してみた。
『精神を剥がされた状態で強気だな。お前みたいなのに潰されるとは思わなかったぞ。知ってて潰したのだろ、魔物の進化実験だ』
初耳すぎて、困惑してしまう。
冷静に整理すると、声の主に私はここに連れてこられたという事で、おそらく私が倒した魔物が実験という事だろうか。
私は、手を顎に当てながら考えていた。
『何とか、言ったらどうだ?』
「ちょっと待って、今考えてる」
『ふざけるな!!』
考えてるのにうるさい。
私はふむと言葉を一言発して、それに付け加える。
「身に覚えがありませんので、帰してください」
『フハハハ!』
いきなり大きな笑い声が聞こえる。
怒ったり、笑ったりと忙しいやつだ。
『計画を潰されたと思ったら、無意識とはな!我の傑作を潰したのだ。絶望しろ、人間を蹂躙してやる』
「何を言ってるの!何をする気!」
私が大きく声を発しても、答えは帰ってこなかった。
私は焦った。
先程の意味を考えると、間違いなく良く無い事が起こる。
早く、この世界から戻らないといけない気がする。
「私をここから出せぇ!」
とりあえずできる事を試してみよう。
まず、ここはどこかという事だ。
見渡す限り、何もない闇以外の表現はなさそう。
自分の頬をつねってみることにした。
「いだぁい!」
普通に痛い。
夢ではなさそうな気がする。
精神を剥がしたというのも気になる。
私が知る限りでは、その様な魔法はないはずなのだ。
魔法はどうだろうか、使えるかな。
「収納魔法」
頭に入っているアイテムなどが、表示される。
使えるみたいだね。
創世の杖を使った方が良いはずだ。
創世の杖を取り出し、中に浮かべる。
6個の珠のうち1つ、緑のシルフだけ黒くなったままだ。
シルフはあの後どうしたんだろう。
シャーリー達と一緒にいたはずだけど、一緒には来なかった。
あの後、念話を使おうとしたが、範囲外の様で届かなかったし。
闇には闇を聞くのが一番のはずだ。
『さぁ、創世の杖に宿る。我が、契約精霊よ。呼び声に答え顕現せよ。闇の精霊シェイド!』
6つの珠の闇の珠が光を放ち、闇と影の精霊をこの場に呼び寄せる。
『マスター、久しいな。』
「久しぶりだね。私からは姿見えないけど、居るんだよね」
『うむ、ここにいるぞ。して、我を呼んだ要件は、この空間に関する事か?』
「流石、話が早くて助かるよ」
私は今いる経緯をシェイドに話した。
話を聞いた後、この空間を調べ出した。
『ふむ、難儀な事が起きておるな。マスターの夢から、他者の精神に無理矢理押し込んだとみえる。』
「他者の精神?」
『ここは、他の者の心の世界ということじゃ。真っ暗で闇に覆われた者の心というところかの。しかし、この禁術を使う者がいるとは思わなんだ』
うへぇ、こんな心を持った人がいるなんて信じれない。
もしかして、さっきのやつとか、ありえそうな気がしてきた。
禁術の話を聞くと、この術は自分を犠牲に発動するらしい。
他者を自分の心に閉じ込める諸刃の刃という事だ。
「ここから出る事出来そうかな?気になる事があるから、早く戻りたくて」
『ふむ、可能じゃが、術者が死ぬか、この心を壊すかしかないぞ』
心を壊す、聞くだけでも怖い意味に聞こえてしまう。
話を聞くと、心が壊れたら生きていても死んでる状態になるという。
『人の事はわからぬが、ここまで闇を抱える者は、まともとは言えぬがな』
私は壊して戻る事を決意した。
元々、私を閉じ込めたのだし、危険という事はわかっているはずだ。
早く急がないと、私の中で感じるこの直感は危険だ!
『どれ、我が、一つ手を貸すとするかの。幸いにも、ここには闇の魔力が無限に溜まっておるでな』
闇から魔力を補給できる精霊ならではなのだろう。
シェイドは魔力を集め出した。
すると闇でしかない空間から骸骨の兵士が湧いてくる。
『どうやら、防衛本能のようじゃな』
心を守る者らしい。
シェイドの魔法を完成させるまで、守り切るしかない。
創世の杖を握り、思いっきり骸骨を殴りつける。
杖を殴るために使う人は少ないだろうが、これも正しい使い方なのだ。
この杖は殴ると6属性のうち1属性がランダムで選ばれて、属性ダメージを与える効果を持つ。
今の私では体が小さくて力はないが、この属性追撃は杖の性能に比例する為、上位魔法とほとんど変わらないはずだ。
現実なら重くて振り回せないのに、簡単に振り回せて面白く感じていた。
『魔力は集め終わったぞ。我が魔法を使ったら即、杖に戻し杖をしまうんじゃ。後は、じっとしていれば良い』
「わかったよ。ありがとう」
『例には及ばんよ。ではゆくぞ!暗き深淵の王よ、我シェイドの名にて力を貸したまえ、闇に蝕まれよ!アビス•ダークネス!』
何かすごい事が起きた様な気がした。
私は言われた通りにシェイドを杖に戻し杖を収納する。
そして、じっと耐えている。
辺りが元々黒色なので何が起きてるかわからないけど、待っていれば良いんだよね。
そんな事を思っていると、体が何かに引っ張られて私を吸い込んでいく。
ものすごい速度で吸い込まれて、目を回しそうだった。
それは、この心の世界も吸い込まれて虚無へと変えていった。
私はというと、カラフルな大地に立っている。
「ここは、自分の夢なのかな。戻ってきたって事でいいのかな」
お菓子やら様々な物が浮く世界。
私の夢って一体…
見渡すと一軒の家があり、そこから人が出てくる。
「マリエル!!」
見間違える事はない!
あれはマリエルだ!
走る私に手を振っている。
そこで私は、現実に戻ってきた。
起き上がり、涙が頬を伝うのを感じた。
後少しだけ、あの場所に居たかった。
「お嬢様!気がついたのですね!よかった!」
「アニエスちゃん!死んじゃったかと思ったよ…うぅ」
起きた私に気がついたシャーリーとリディアだった。
どうやら私はあの後、意識を失ったようだ。
最初は寝てるだけと思われた様だが、いつまで経っても起きなかった様だ。
それを聞き私は焦った。
「今!あれからどのぐらい経ってる?」
「落ち着いて下さい。大体、1日ぐらい経過しております」
1日も時間が経っていたなんて、あの中では1時間ぐらいだと思ったのに。
「よく聞いてね。ここを狙ってる奴がいるの」
私は、今までの経緯を2人に話した。
2人は信じれない様な話をしっかり聞いて、信じてくれる。
「お嬢様、私は異常がなかったか、確認してまいります。リディア様とご一緒にお待ちください。」
「お願い、少しでも変な事があったら教えてね。私は準備をしてるから」
今回の怪我も今起きた事も、私がもっと気をつければ防げたかもしれない。
守る為には全力を尽くさなければならないのだ。
「アニエスちゃん、何をする気なの」
唯ならぬ私の雰囲気にたじろぐリディアだった。
「もう勝手な事はさせないから安心してね」
お読みいただき、ありがとうございます。
よければブクマなど頂けると転がって喜びます。
何か気になる事や、こうした方が良いのでは、とかここはダメという所など、あればコメント頂ければ幸いです。
シェイドの魔法は闇が濃くないと発動できません。
アニエスが闇魔法使えるのは、シェイドと契約しているからです。
次回は戦闘予定ですが、分割するかもしれません。




