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66 ガミラン帝国軍強襲部隊1

「ゴクゴクゴク、ぷはー」

「このワイン、鬼殺しと2対8で割ると最高だな」

「グビクビグビ、ヒック」

「ウヘヘーッ、酔いが回ってきたんじゃないか、艦長さんよー」

「ドワーフ技術主任も、もうヘロヘロじゃん。ヒクッ」


 ブリッチでクレト艦長とドワーフ技術主任が、酒宴を開いていた。


「艦長、どうぞ」

「ありがとー、クリスタちゃーん」


 クリスタさんが、お酌係としてクレト艦長の傍に寄り添っていて、その光景を見ている私の心は大変に複雑だ。


「おおっと、俺にもわざわざすまねえな」

「いいんですよ、技術主任」


 クリスタさんがクレト艦長だけでなく、ドワーフ技術主任にまでお酌をしている。


 羨まし過ぎる。

 高嶺の花(アイドル)クリスタさんと話すだけでなく、お酌までしてもらえるドワーフ技術主任が羨ましすぎる。



「ゴホンッ、ここは飲食禁止なのですが」


 それはともかく、いつもであればブリッチでの飲食禁止を告げるドワーフ技術主任が、今回は機能していない。


「ガルデミラン帝国の最高級ワインだぞ。固いこと言うなよ、副長―」

「そうだそうだ、副長―。アハハハー」


 クレト艦長が、ガルデミラン帝国の最高級ワインを、樽ごとダース単位で持ってきて、それが原因でブリッチで酒宴が始まってしまった。


 なお、酒宴の最中に通信が入って、ガルデミラン帝国の女フューラーがまた泣きながら叫び声をあげるという一幕もあった。

 酒の出所に関しては、もはや詮索する必要がない。



 しかし最高級酒を前に、普段であれば口うるさいドワーフ技術主任も陥落してしまい、現状を止められる人間が誰もいなくなってしまった。



 もっとも我々はガルデミラン帝国と戦っているが、今では戦力としてのダイワはおまけみたいなもの。

 クリスタさんが出撃すると、ガルデミラン帝国の大艦隊相手にも互角以上の勝負をしてしまうので、ここ最近ではブリッチの空気が緩んでいく一方だった。



「あれ?周辺の空間に未確認の現象を確認」

「グレー科学主任?」


 そんな緩んでいた空気の中で、グレー科学主任が報告を上げてくる。

 どうしたのだろうと、私は副長席を立って、科学主任の傍へ向かう。


「……マズイ、これはステルス反応だ。何かがダイワの至近距離にいるぞ!」

「なんだと、総員戦闘配置。繰り返す戦闘配置だ!」


 弛緩して油断していたが、何者かの接近を許してしまった。


 そして次の瞬間、ダイワ全体が振動した。

 想像した以上に強力な揺れで、私は思わず床にこけてしまう。


「な、何事だ!」


 まさか敵の攻撃を受けてしまったのか。

 至近距離からの砲撃あれば、ダイワの重厚な装甲とて持ちはすまい。

 そう思う私だが、振動は小さくなりながらも、継続し続ける。


「ダイワの傍に、ガルデミラン帝国の宇宙船がステルス状態で潜伏していた。張り付かれてしまい、現在相手の船から、強襲用の連絡通路が伸びている。まずいぞ、あと数十秒もせずに装甲が破られ、敵が艦内に突入してくる!」

「クッ、艦隊戦で勝てないからと、艦内に直接乗り込んでくる気か」


 強襲揚陸艦と呼ばれる船を用いることで、相手の船に張り付く。

 強襲用の連絡通路を使って、船の装甲を熱で融解させて突破し、相手の船に直接クルーを送り込む。

 そうすることで戦場の舞台を宇宙空間から、相手の艦内にすることで、人間(クルー)同士の白兵戦へ持ち込む。


 そういう戦い方を、ガルデミラン帝国が取ってきたのだ。


 正規軍による戦い方としては邪道で、宇宙海賊の戦い方と言っていい戦法だ。



「ゴブリン戦闘主任、張り付いている敵艦を主砲で攻撃できるか?」

「既に接弦されているため、この距離で攻撃すれば、本艦にも深刻なダメージが入ります」

「主砲は使えないか。総員白兵戦闘の用意。敵が艦内になだれ込んでくるぞ!」


 宇宙空間に出て、はや数か月。

 今までガルデミラン帝国艦隊相手に戦ってきた我々だが、初めて艦内に敵を侵入させてしまった。


 敵の強襲揚陸艦から、移動用の強襲連絡通路がダイワの艦内にまで到達した。

 艦内をモニターしていた映像から、連絡通路を通って、ガルデミラン帝国の軍人が次々に船へ入り込んでくる。


 パワードスーツと呼ばれる、2メートル大の大きさのスーツを着た兵士の集団だ。


「ダイワの諸君、我が国のフューラーの命令によって、この船には必ず沈んでもらう。我らガルデミラン帝国軍人の精強さを、死をもって君たちに教えてやろう」


 パワードスーツの1体が、モニターに向けて挑発するように宣言すると、銃口を向けてモニターしていたカメラを破壊した。


 なんという事だ、艦内に敵の侵入をみすみす許してしまうとは、副長として大失態。


 だが、今はそんなことを後悔している暇などない。


「艦長……」


 まずは指揮官であるクレト艦長の意見を聞こうと、私は艦長の方を見る。


「スピー、スピー」

「グガー、ゴーゴー」


 酒の飲み過ぎで、クレト艦長とドワーフ技術主任が、2人とも仲良く眠りこけていた。


「ガアアアッ、いつもいつもマイペースで役立たず!」


 艦の非常事態なのに、艦長のていたらくぶりに、私は叫んでしまう。



「仕方ありません。私が出向いて、汚物を消毒してきましょう」


 そんな中、クリスタさんが立ち上がると、1柱でブリッチを出て行こうとする。


「クリスタさん、1柱で戦うなんて危険です。せめてゴブリン戦闘員を、何柱かつけていってください」

「いりません。副長、私が中位魔神だということをお忘れなく」


 私はクリスタさんの身を案じたけれど、クリスタさんはクスリと笑うと、そのままブリッチを後にした。


 ああ、なんて可憐な姿……ではない!


「艦内各所の映像をモニターに出せ。私はここから全体の指揮を執る」


 艦長が役に立たない今、いつものように私が事実上の最高責任者として、艦の指揮を執ることにした。


「モガモガ、もっとお酒ちょうだい」


 事の重大さに緊張する私の横で、クレト艦長の寝言が聞こえたが、私はその声を完全に無視させてもらった。

 飲兵衛の相手をしている暇などない。







 俺はゴブリン戦闘員。

 昔はしがないただのゴブリンだったが、運命のいたずらという奴か、様々な経緯を経て、今では偉大なる魔神王アーヴィン様の配下として、下級魔神の1柱になっている。

 と言っても、元がゴブリンである俺が魔神になったところで、その実力は大したものではない。


 ただのゴブリンだった頃に比べれば、既に何十倍、あるいは百倍以上強くなっているが、元がザコだったので、強化された今でも、ザコに毛が生えた程度の強さしかない。


 そんな俺は、仲間のゴブリン戦闘員たちと共に、艦内に侵入したガルデミラン帝国の軍人相手に戦っている。


「いいか、ここは艦内だ。全員、爆発と雷系の魔法は使うな。自分たちの船を破壊したら、あとで困るのは俺たちなんだからな」

「おおよっ。と言っても、俺たちが使える魔法程度だと、あのパワードスーツ相手には全く効かないけどな」

「ハハハ、違いない」


 俺たちはアーヴィン様が言うところの戦場ごっこによって鍛えられ、その後武器を実弾系から、レーザーライフルへと変えた。


 侵入してきたガルデミラン帝国のパワードスーツ相手に、レーザーライフルで応戦するが、こちらは生身。

 機械仕掛けのパワードスーツは、動きは鈍足ながらも、シールドを展開しているようで、こちらのレーザー攻撃を無力化してしまう。


「敵を各個撃破する。前方の1体に攻撃を集中させろ」

「うおおおー、やってやるぜー」

「神に戦いを挑んだこと、後悔しやがれ!」


 俺たちゴブリン戦闘員は叫び声をあげ、レーザーライフを敵に叩き込んでやる。


 攻撃が集中したことで、敵のパワードスーツのシールド機能が停止する。

 そこにさらなるレーザーの光が降り注いでいく。

 スーツの装甲も強力なようだが、それも突破し、レーザーで敵を穴だらけにしてやった。


「ハハハ、なんだ見た目だけで大した……」


 パンッ。

 敵の1体を仕留めたが、余裕をこいたゴブリンの頭が弾け飛んだ。

 敵は1体でなく、後続が続いているのだ。



「バカ野郎。頭を低くしろ。死にたくなければ、ちゃんと自分の身を守れ!」

「ヤバイ、奴ら手りゅう弾を投げてきたぞ」

「急いで逃げろ!奴ら敵の船内だからって、爆発系の武器を使ってきやがった!」


 俺たちは自分たちが乗っている船を、自分たちの手で沈めるわけにいないので、使える武器が限られている。


 パワードスーツ相手でも、バズーカや手りゅう弾、さらに電撃系の魔法や武器を用いれば対等に勝負できるが、そんなことをすれば、ダイワの船体にもダメージが入ってしまう。


 そうしている間に、敵の投げた手りゅう弾が爆発する。


「戦闘員6名が死傷。ヤバッ、俺の腕もボロボロになっちまった」


 ゴブリン戦闘員の1柱が報告するが、彼の腕も手りゅう弾のせいで、半分もげかけている。


 だが、痛みなんて感じている間などない。


「敵が突っ込んできた!全員身体強化魔法を使って、格闘戦をしろ。銃撃戦をやってる暇はないぞ!」

「「「オオーッ」」」


 敵はよほどパワードスーツに自信があるようで、手りゅう弾で俺たちを攻撃した後は、体当たりをしながら、俺たちの所へ突っ込んできた。


 だけどな、俺たちはザコであっても、魔神なんだよ。


 ただのパワードスーツで、魔法で強化した俺たちの腕力に勝てると思うな!


「ウオラー」

「ゴブリンパンチ!」

「ザコとは違うんだよ!ザコよりは強いんだよ!」


 俺たちは雄叫びを上げながら、突入してきたパワードスーツに対して、格闘戦を仕掛ける。

 拳で殴り、足で蹴り上げ、タックルに対してタックルで押し返す。


「なっ、バカな。生身の生物相手に、パワードスーツが押し負けるだと!」


 パワードスーツを着ていたガルデミラン帝国兵を、格闘攻撃で叩き返してやれば、スーツの中から驚きの声が帰ってくる。



「残念だったな、俺たちを甘く見た報いだ」


 俺は床に転がったパワードスーツの相手に対して、踵落としをする。

 スーツの装甲を突き破って、その中にいた敵兵の肉体を破壊した。



「皆さんお怪我はないですか。それと返事ができない死体の方も、すぐに生き返らせて差し上げますよー」


 そして戦闘がひと段落すれば、ゴブリン衛生兵がどこからともなく現れた。

 手早く負傷したゴブリン兵士の治療をし、死んだゴブリン兵士の蘇生も行っていく。


「おい、ゴブリン衛生兵。敵の第一波を退けたが、まだまだ敵がやってくる。敵の前にでるなよ」

「ええ、分かってますよ。敵が来たら、この場からいなくなるので安心してください」


 ゴブリン衛生兵がいれば、俺たちは例え体を切り刻まれようが、殺されようが、復活することができる。


 現に手りゅう弾によって腕がもげかけたゴブリン戦闘員も、その腕が元通りに回復した。

 頭を吹き飛ばされたゴブリン戦闘員も、注射の1発で生き返る。


「うおおおー、俺は不死身だー」

「クリスタちゃーん、愛してるー」


 ただ、治療と蘇生に使う注射の副作用で、その後ハッピーな状態になってしまう。

 注射されたゴブリン戦闘員たちが、やたらハイテンションになってしまった。






 私はクリスタ。

 ダイワの艦内に汚物どもが押し寄せてきたので、滅菌消毒することにした。


「光魔法・光線(レーザー)


 私は人間の姿をしたまま手を伸ばし、発見した汚物に魔法攻撃を仕掛ける。


「ウオオーッ、そんなガラスみたいな見た目で……」


 汚物は、自分を鼓舞する雄叫びを上げていたが、私のレーザーで体を貫く。

 防御系のシールドを展開していたようだが、私の魔法の前では脆すぎる。

 レーザーの光が貫通し、その背後にいた汚物4、5体の体も貫く。


「こちらゴブリン副長。クリスタさん、もう少し火力を抑えてください。ダイワの通路隔壁までレーザーが貫通しています」

「……しかたないですね」


 通信を介して、ゴブリン副長の声がした。

 本当はこの船ごと破壊して、汚物どもを完全消毒してしまいたいが、そんなことをすればクレト様の不興をかってしまう。


 ゴブリン副長の指示に従う気にもなれないが、船を破壊しすぎてクレト様の不興をかうとまずいので、私はしぶしぶ指示に従うことにした。


「いくらレーザーが強力でも、格闘戦になれば……ウギャー」


 通路の曲がり角に、汚物がまたいた。


「汚らわしい体で私に触れるな。土魔法・超振動(スーパーバイブレーション)


 汚らわしいので、体を構成している分子を超振動させて分解した。

 分子レベルに分解されて崩れ去り、後にはチリ一つ残ることなく消え去っていく。



 勘違いしてもらっては困るが、私は中位魔神。

 人化しているため、本来に比べて戦闘能力が弱体化しているが、魔王にすら勝てる私に、この程度の汚物が相手になるはずなどない。


 その後も、私は汚物どもを見つけては、魔法を使って触れないようにしながら、消毒していった。


「ああ、汚物が動き回って、汚らわしい」


 私にとって、これは戦闘ではない。

 汚物を消毒する作業なのだ。

 汚物に直接触れることなく、魔法を使って処理していく。



「ク、クリスタさん、可憐だ……」


 作業をしていた私に、通信回線を介して、ゴブリン副長の声がした。


 あの副長を消すのはさすがにマズいが、滅菌程度くらいはしてもいい気がする。

 少し体の体積が減る程度の、罰を与えるべきだろうか?

あとがき




 現在のダイワの危険度。


 RPG中盤の敵キャラクラスのゴブリン魔神が、各所にて交戦(エンカウント)中。

 さらに大魔王クリスタさんが徘徊(ランダムエンカウント)中。

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