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65 女フューラーの寝間着姿は……

まえがき




 今回は短いです。

 とある日の事。


 隣の銀河系を目指して旅する我々ダイワのクルー。

 現在は我々の住む銀河系から隣にある銀河系へ向かう間にある、暗黒空間を航行している。

 ただ、銀河の間にある空間は、何もない。

 文字通りの意味で、暗黒の空間が延々と続いているだけで、風景の変化が全くない。


 その状態が3日ほど続いたところで、クレト艦長の気まぐれが勃発した。


「何もなくて退屈だから、隣の銀河系までジャーンプ」

「本艦の空間座標が変位……ざ、座標位置、ガルデミラン銀河系です!」


 クレト艦長が暗黒空間に嫌気がさして、空間転移魔法で艦ごと隣の銀河系に飛ばしてしまった。

 なおガルデミラン銀河系とは、我々が目指している銀河系の名前である。

 ガルデミラン帝国の支配する銀河系だから、ガルデミラン銀河系と名付けた。



「……なあ、転移魔法で隣の銀河系に行けるなら、俺たちがいる意味ってあるのか?」

「グレー科学主任、クレト艦長の頭は常時能天気なんだよ」

「……意味を理解したくないけど、理解できてしまったのが辛い」


 銀河間の移動を一瞬でさせられてしまい、グレー科学主任とドワーフ技術主任が、うんざりした顔をする。


 ダイワのクルーにとっては危険な宇宙の旅でも、クレト艦長にとっては、ピクニック程度の気分なのだ。



「……周辺宙域の警戒を厳に。ここからはガルデミラン帝国の支配領域だから、いつ敵の艦隊が来てもおかしくないぞ」

「はい、副長」


 突然の銀河間転移に副長の私もビックリだが、クレト艦長相手に驚き続けても仕方ない。

 私はレーダー担当のクリスタさんに注意を促しつつ、これからの旅路が、今まで以上に困難な戦いを伴うだろうと警戒した。






 まあ、警戒しているのだけど……



 ガルデミラン銀河系に侵入して3日後。


「このホットワイン、チビチビやりながら飲むとおいしいねー」

「艦長、ブリッチでは飲食禁止だぞ」


 クレト艦長が、今日もドワーフ技術主任から注意されつつも、それを聞かずに艦長席でホットワインを飲んでいた。


「いい匂いですね。かなりの上物ですか?」


 艦長の隣にいる副長の私の元まで、ワインのいい香りがしてくる。


「超一級品だよ。ガルデミラン帝国の女フューラーの寝室にあったワインだから」

「えっ……」

「女フューラーが寝る前にいつも飲んでるんだって。本人がこれから飲もうとしてたけど、美味しそうだから、無理言ってもらってきちゃったー。えへへー」


 クレト艦長、どうやら私の知らない所で転移魔法を使って、ガルデミラン帝国の女フューラーの寝室に侵入したようだ。


 というか、完全に犯罪だ。

 寝る前の美人の寝室に侵入なんて、完全に犯罪だ。


「艦長、ガルデミラン帝国からの通信をキャッチしました」

「モニターに映していいよー」


 なんてやっていたら、件のガルミラン帝国から通信が入ってしまった。


「こ、この、私の寝室に土足で入ってきて、なんで私のお気に入りのワインをとっていくのよ!この犯罪者!今すぐ艦隊を送り付けて、その船を木っ端微塵にしてやる。特に艦長、あんただけは絶対に生かしちゃおかない。私の寝間着姿を見ておいて、無事に生きていられると思わないでよ!」


 モニターに映し出されたのは、ガルデミラン帝国の女フューラー。

 なぜか胸元を手で隠しながら、それでも真っ青な顔を赤くして、物凄い剣幕をしていた。

 そりゃそうだよな、艦長に対してこの人は怒っていい人だ。


「可愛い、クマさんパジャマだったねー」

「キャ、キャアアアー!」


 涙声になって叫ぶ女フューラー。

 そこでモニターに映し出されていた映像が途切れた。


 彼女にとっては、致命的に恥ずかしいことだったようだ。


 初めて通信で見た時は気障な態度をとっていたのに、まさか寝間着がクマさんパジャマだったとは。

 私はガルデミラン人の母星にもクマがいるのかと思いつつ、存外女フューラーは乙女な趣味をしているなと思った。



「通信途絶えました」


 そして通信オペレーターからの報告だ。



「……艦長、婦女子の寝室に勝手に出入りするのは犯罪過ぎますよ。もう2度としないでください」

「はーい。それじゃあ、今度は昼間に酒瓶もらいに行ってくる―」

「向こうの護衛に撃ち殺されませんか?」

「全然平気だよー」


 高位魔神の力を持ってすれば、別銀河に支配の手を伸ばす巨大帝国も何のその。

 超自分本位で動き回るクレト艦長だ。


「なあ、俺たちなんで、こんな旅してるんだっけ?」

「もともとクレト艦長の我がままで始まった旅だから、難しいことは考えない方がいいぞ」


 そんな私たちの前で、グレー科学主任とドワーフ技術者が雑談していた。


 正直副長の私も、クレト艦長の自由奔放過ぎる行動にあきれ果てている。



 なお、後日フューラーの怒りを体現したかのような、100隻から成るガルデミラン帝国の大艦隊に遭遇してしまった。


「なんだかむしゃくしゃするので、今日は全力で行かせてもらいます」


 ダイワ1隻で相手取るには、相手の戦力が過剰だった。


 だけど、不機嫌そうなクリスタさんが本来の姿で出撃し、結果1柱で50隻ものガルデミラン艦を沈めてしまった。

 ダイワも30隻のガルデミラン艦を沈めたが、宇宙戦艦よりクリスタさん1柱の方が強かった。

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