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光を踏み抜いてしばらく経った。いやさ、目が光に慣れるまで時間がいるわけよ。ポチ助のように魔物?だったらその調節ネジが違うのかもしれないしれないけどさ。
俺は目を開けてあたりの風景を見る。
......
街......街どこ?廃墟しか見えないよ?もしかしてここには人が住んでいて新しい文化を気づいているとか?
俺は前に前に行くポチ助について行く。もしかしてここってただの通過点?
俺は目を見張った。廃墟にくっついているように街が見える。廃墟が一番最下層のフロアで上に行くほど豪華な建物が出来上がっていて、凸凹だが統一性のあるピラミッドが出来上がっていた。今まで上が眩しくて見えなかったがようやっと拝むことができた。
つまりこの廃墟は昔、街の一部だった。それか俺予想するにここは......
「わう!」
「ああー!また人見つけてきたの?このスラムはヘルのおかげで人が増えて行く一方ね」
やはりスラムか。それよりもポチの飼い主っぽい人を見つけたぞ。見た目はスラムだからと言ってそこまで薄汚いわけではないんだな。普通に服着てズボン履いてどっちかというと小綺麗。まあそんな女の子がいる。見た目は平凡中の平凡。ブサイクではないと思うが、俺の美人基準は高いからな。まあ可愛い方だろう。そんな女の子。
どうしようか?まずは挨拶からか。
「こんにちは」
「こんにちは、あなたも森で迷子になったの?」
迷子......まあ迷子だな、人生も迷子ってね。
「ああ、どうやら道に迷ってしまってね。それに記憶喪失なんだ」
「えっあなた記憶喪失なの!?大変ね。まあ七つの美徳を知ってれば大丈夫よ。七つの美徳はわかるかしら?」
「ええと、確かこの手紙にっと。忠義。寛容。勤勉。慈愛。分別。純潔。節制。の七つだな」
「そう、それと七つの大罪さえ知ってれば問題ないわ」
「憤怒。傲慢。嫉妬。強欲。怠惰。色欲。暴食。の七つか。これさえ知ってればいいのか?」
「ええ。基本的には美徳に従って大罪を避けていれば問題ないわ」
「そうかありがとう。ついでにこのヘル?だっけか。こいつについて教えてくれ」
「この子はヘルウルフのヘル。ヘルウルフは地獄の番犬と恐れられていて本当はここまで懐かないんだけど、なぜかこの子は特別らしいの」
七つの美徳と大罪だけ守っていればいいってことなのね。手紙の通りだな。
それとこのヘルが特殊説が正しいのか。それじゃあ、あそこが聖域でヘルが魔物だから入れないってわけかな?ヘルが迎えに着てくれたのはヘルに迷子を見つける機能がそなわっていたからということかね?まあいいかな。やっぱり考えても答えでないや。
「そうか。ありがとうな。お礼にこの小銭をやろう」
「えっこんなにいいの!?ありがとう!」
あれっ小銭の方が紙幣より高いのか?
「なあ、金について教えてくれ。俺が今持っているのはこれだけなんだが......」
俺はがま口を開け全財産を少女に見せる。
「あなた大富豪だったのね!この大きい紙幣が100万セル!初めて見たわ!そして金貨が1万セル。銀貨が100セル。銅貨が1セルね」
ふむ。俺は大富豪というやつか。神さま結構頑張ってくれたんだな。いつか神社みたいなところに参りに行くかな。
「ありがとう。この金貨でヘルに美味い飯食わせてやってくれ」
「わかったわ!じゃあまたね!」
少女は去っていった。いやー。いい子だったな。さすがヘルの飼い主さんといったところか。
俺が異世界に来て半日がたった。しかし俺はまだ異世界を謳歌できずにいる。速く異世界を謳歌したいと脳が訴えかけてくる。さあ異世界を早速謳歌しようではないか!
「おばちゃん!飯!」
そう、俺は今食堂にいる。まあここにくるまでになんやかんやあったわけだが、それは割愛するとして......
飯だ!異世界だ!贅沢だ!俺は今猛烈にお腹が空いている!頭を使い体を使ったのだから当然だろう。体を使った後に体に甘えさせなければどんどんストレスが蓄積されて大変なことになってしまう。これは前世で知ったことだ。俺は頑張った俺自身の体を甘えさせるとする。
メニューを見ている俺の視線が一箇所で止まる。そこに書かれていた文字は本当にここが異世界か?と言いたくなるような文字だった。そこには......
スタミナ丼。
キタァ!スタミナ丼!これは冒険心が俺をそそのかす。
「おばちゃん!スタミナ丼!スタミナ丼を頼む!」
「あいよ!」
俺がスタミナ丼を頼みおばちゃんがそれに応じる。
「おいおいあいつ......!」
「ああ......! この店のスタミナ丼を食べるなんて本気かよ......!」
スタミナ丼には何が乗っているのだろうか?カツか?それとも天ぷら?はたまた海鮮が乗っていたりするのだろうか?食堂の奥から食欲をそそる香りが漂ってくる。ジュージューという肉を痛めるような音も聞こえる。
おいおいまじかよ!このにおいは......!
「ヘイ、お待ち!」
「おばちゃん!これって!」
まさかこれがスタミナ丼!?そこにあったのは......!
生姜焼きの乗った丼だった。それも大盛り。これはスタミナがつくに決まっているぜ!おれは生姜焼きと米を箸ですくい食べる。
まあ待て。ここに来て日本の文化が盛りだくさんではないか!という質問は待ってくれ!
まず!日本にある外国の料理は本場の料理とは違うのはご存知であろうか。あれは本場の料理を真似た本場に近い料理であって本物ではない!あれは日本人の舌に合わせて作った偽物といってもいい! (そんなことはない)
つまり何が言いたいのかというと!日本の文化があってもいいじゃない!この一点に尽きる。頼む!ジャパニーズ文化を許容してあげてほしい!
箸!箸がいけないのか!?確かにあれは扱うのが難しい日本独自の文化だが!日本の文化がなくなるわけではない!日本人たちよ!逆に日本のことがこの小説に残るのだ!誇って欲しい!そしてこの小説をブックマークしてほしい!
はっ!俺は何をいっているんだ!俺は箸ですくい食べる。
懐かしい味だ......俺が拒食症になってから一度も食べたことのない懐かしい味......それが口の中で弾けるように広がり喉をもその味で侵す。
一言で言おう!大変美味であると!
俺は時間や周りの新鮮な風景など忘れてスタミナ丼にがっつく。美味い!美味い!
自然と涙がこぼれた。こんなに食える幸せを今存分に噛み締めている。食える!食えるんだ!この体なら食べることができるんだ!
俺は見事に完食した。
ふと我に戻ると、周りの風景は一変していた。
店の天井はもげて、目の前には逮捕されているおばちゃん。
「少年!お前を暴食、節制の罪で逮捕する!」
......why?
えっ何でおばちゃん捕まってんの!?そして俺もですか!?いや意味わかんないよ!飯食ってただけじゃん!
「少年、最後の晩餐は美味かったか?」
警察が嫌味ったらしく言ってくる。
「俺がなにをしたって言うんだ!」
意味がわからない。しかも最後の晩餐?舐めんなよ。警察ふぜいが。
「お前は禁忌を犯したのだ!暴食というな!神様がお決めになった法律をお前は踏みにじったのだ!反省は牢屋の中でするんだな!」
「離せ!触んじゃねえ!」
俺は街についたその日に。いや転生したその日に捕まった。