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そよ風が吹き草の匂いが鼻をつく。


いい匂いだ。天気もポカポカしていて気持ちがいい。俺は今どこにいるんだろうか?でも、そんなこともどうでもいいぐらいに大地とともに横になる。


目を開ける。天気は快晴。清々しい朝だ。少しひんやりしていたそよ風がまた吹いてきた。朝露に濡れた草の上で横になっているせいか、シャツが濡れていて肌にピタッとしている感じが少し気持ち悪い。


俺はその感じがちょっぴり嫌で背中を上げる。丘だ。岡田君ではない。丘だ。周りには木が一本もない。まさに隠れた秘境のような場所に今いる。


遠くにはこの丘を円で囲んでいるように木が生えており、ここが森の中にあるミステリーサークルのような印象を与える。


「おっこんなところに封筒が」


いや絶対この封筒俺宛だろう。まずこんな草っ原に封筒があること自体おかしいし不釣り合いだ。


それに封筒にはぎょうらしく「田中君へ」という字が書かれている。これが俺宛じゃなかったら誰宛なんだと言いたくなる。


遅れたが俺の名前は田中。田んぼの田に中で田中だ。よろしく。


俺は封筒を乱暴に開く。後になって気づいたがカッターが横に置いてあった。封筒を開くと中には一通の手紙。


「なになに?田中君へ。転生は無事成功したみたいだね。おめでとう。君は七つの大罪を知っているかい?憤怒。傲慢。嫉妬。強欲。怠惰。色欲。暴食。これらはこの世界でも罪だ。それもかなり重い罪だね。だから君に七つの美徳を教えておこう。忠義。寛容。勤勉。慈愛。分別。純潔。節制。これらが七つの美徳になっている。これらを守り異世界ライフを満喫してくれ。最後に、暴食には特に注意だよ。神より」


ふむ、あまり意味がわからなかったが、七つの大罪は知っている。よくなろう小説やアニメなんかで出てくる罪のことだ。


まあ手紙のことは後で考えればいいだろう。


「あっ!」


ここで俺は思い出した。この世界が俺の予想している剣と魔法の世界かを聞いていないことに。これはまずいぞ。魔法を使えなかったら俺は異世界にきた意味がないではないか!いやまだわからないぞ。俺には魔力があって極大な魔法を放つことができるかもしれない。


「俺に力を!ファイア!」


俺は片手を前に呪文を唱える。炎よでてこい!思い描くは火炎放射器のような炎!


しかし何も出てこなかった。


「はあ......俺ただの痛いやつじゃん......周りに人がいなくて良かった」


残念だ。魔法を使うことができないなんて......だがまだ諦めるのは早計というものだろう。まだ希望はある!


ふと封筒の置いてあったところにカッターとがま口が置いてあることに気がついた。


「おおー!金と武器?かな?」


がま口を開く。そこには見たこともないようなお金。紙幣も入っている。これらがどのくらいの金額かはわからないが、神様がくれたものだ。ありがたくいただくとしよう。


そしてカッター。これ多分あれだ。武器じゃなくて封筒を破く用のやつだわ。つい俺のおっちょこちょいが発動してしまったぜ。まあいいや。武器でいいだろ。


さあて今からどこに行こうかな?近くに街とかないかな。


「ここ、転生させる場所間違ってない?周り森しかないんだけど」


うん、俺を中心に円の形で草原があるわけですよ。その周りが森。見渡す限りの森。木の高さはそこまでないが俺が楽々下を通れるぐらいの高さ。


わんわん


なんか聞こえてきたぞ〜。なんの音だ?


振り向く。うん、犬っぽいのがいる。1匹だけだけど。あれ間違いなく俺に向かってきてるよね?敵か味方か。さあどっち?


うぅー!がう!


はい、敵でしたー。残念!俺の武器カッターしかないんだけど?とりあえず犬っぽいのを観察。黒っぽい毛並みは濡れたようにツヤツヤ。目は白眼のところが赤い。うん、犬ではないよね。俺はニホンオオカミという絶滅した生き物を思い出した。確かあれは灰色っぽかったはずだけどそれに限りなくフォルムは近い。


えーと、俺と共存の道を歩みませんか?いやかな?


うー!がお!


獣はいてものけものはいない世界が良かったです。はい。走っても追いつかれるよなあ......だってオオカミもどきだぜ?車で散歩する人がいるぐらいの速さだぞ?逃げれないだろ。ここは勝算はないが戦うしかないよね。


俺はカッターを右手に装着し相手を待つ。


......


来ないんだけど。あいつ走ってるよね?うん、でも何か見えない壁があるみたいで近づいて来れないみたい。あいつ壁に向かって走り続けてたのか......かわいそうなやつだ。


ここは多分ホーリーフィールド的なサムシングの場所なんだろう。聖域ってやつだな。きっとあいつは魔物で聖域には入れないんだ。多分そう。目の前の現実が証明だろ。俺はオオカミもどきとは逆の森に向かってそそくさと歩いて行く。


後ろを振り返る。オオカミもどきは俺に向かって走っているがやはりこっちに来れないみたいだ。俺は走って森の中に入る。


暗い。それが第一印象。空を枝葉が覆っており暗いのだ。まあ一応目が慣れさえすれば見える明るさだ。携帯の画面を一番暗くしたような明るさだ。えっ何?わかりにくい?知らねえよ。ここでは俺がルールだ!


なんて考えながら森を進んで行く。あのオオカミもどきに合わないように祈りながら森の中を疾走する。森の中はデコボコしており少し走りづらい。やっぱ慣れないことはするもんじゃないね。こけそうになりつつも俺は走る。


...なんで走ってるんだっけ?歩いても良くないか?歩く。やっぱ運動しない人が急に走ったら危ないよね。俺拒食症でずっとベッドアンド点滴だったからね。運動してない人が急に走るもんじゃないよ。


わんわん


あれれー?おかしいぞー?聞こえちゃいけない声が聞こえた気がした。後ろを振り返る。遠くからガサガサという音を立てながらオオカミもどきが近づいてくる。


今度は敵味方どっちだ!?


ううー!がおー!


わっかんねー!獣語なんて分かるかよボケ!俺は凸凹道を再度走る。木の根やぬかるみを踏みつつも第一にこけないことを意識する。


がうがう!


やばい!番犬がおがおが意外と速い!これは戦うしかないんじゃないか?


俺は戦う覚悟を決め後ろに体を向ける。ガオガオはすぐそこまで近づいてきている。敏捷性は明らかに向こうの方が上。


俺は相手が避けるのを踏まえて顔面に蹴りを食らわす。つま先が犬の鼻先に触れ下からアッパーを食らわしたかのごとくガオガオは上へ弾け飛んだ。


あれ?もしかしてフレンドリーファイアですか?味方ですか?


やばい目が赤いから確実に魔物だと思っていたし聖域?にも入って来れないから完全に悪の化身だと思っていた。そんなガオガオがまさかの味方!?


ガオガオが起き上がる。


クゥーン


泣いてる......いや見た目も行動も悪っぽかったから敵だと勘違いしたんだよ!俺は犬猫愛護協会に訴えかける。とりあえず仲直りだ。


「ごめんな!ガオガオ!」

「わんわん!」


どうやら許してくれたっぽい?マジでこいついいやつじゃねえか!無害なら聖域に入れてやれよ!ごめんなポチ助。


オオカミもどき改めガオガオ改めポチ助が仲間になった。


ーーーーー


今俺はポチ助について行っている。なぜなら犬の勘は侮れないからだ。じっちゃんも言ってた。昔迷子になった時飼い犬のげべがわしを探しにきてくれたと。俺は藁にもすがる気持ちで先導するポチ助について行く。


ポチ助が俺を振り返る。俺がちゃんとついてきているかの確認をしているのだ。なんていいやつなんだ!ポチ助先輩!一生ついて行くっす!俺はポチ助とともに街を目指す。


ーーーーー


かなり歩いた。どうやらこの森はかなり安全なようで魔物など一体もいない。いるのは俺とポチ助だけなんじゃないかと思わせるほどに静かだ。嵐の前の静けさでないことを祈ろう。というか魔物なんて異世界にいないんじゃないか?と思ったがポチ助のような存在がいるので魔物はいるだろうと考えている。


そしてなぜポチ助が聖域に入れなかったのかを考えた。そこで、実はあの中には悪いやつしか入れない場所で、ポチ助のようないいやつだけが入れないという逆説を考えてみた。つまり俺が悪というわけだ。まさかな。ははは......ありえる!俺とポチ助のファーストコンタクトならびにセカンドコンタクトを見てみれば分かるように俺って悪っぽいよね?ねえ!?つまりこっちの説の方が有望だ。まあ悪でもいっか。バレなきゃ犯罪じゃないからな。


次になぜポチ助があそこにいたのかを考えた。あれは明らかに俺に向かって来ていた。そして俺は今気づいた。ポチ助に首輪がついていることに。つまり飼い犬。ポチ助は、どこかから俺を呼びに来ていたということになる。なぜポチ助は俺を呼びに来たんだ?今はきっと街に向かっている。ポチ助が元いた街に。もしかしたらその飼い主が特殊orポチ助が特殊説が浮上して来たぞ。うおー!助けてくれ!思考の渦に頭が爆発しそうだ!


まあいいや。俺は思考を放棄した。だって飼い主に合えばどっちの説が正しいのか判別がつくし、時間が解決してくれる。


ーーーーー


光が見えてきた。いやほんとうに光だ。暗い場所で急に携帯を開いたときみたいな明かりが正面に見える。またわかりづらい例えだって?それじゃあそうだなあ。遮光カーテンに閉ざされた部屋の遮光カーテンを開いて外の朝日が目についたように明るい。こんな感じかな?急に光が見えてきた俺は光に向かって手を伸ばし光が目に当たらないようにする。自然と足が速くなる。街がすぐそこに見えることを祈って俺は光の中に足を踏み入れた。

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