洪水
洪水
その年の夏、大きく揺れた。
グラ、グレ、グラ
今で言うと、震度5程度であろうか。
縄文の森で山彦が、皆の前で告げた。
「大きいな、揺れが落ち着いたら、崖が崩れてないか、手分けしてくれ」
各自が、散らばった。
この所、順調な気候がつづき、安定していたが、地震を経て不穏なムードが漂っていた。
地震の揺れは、多少の崩れは起きていたが、無事に過ごし、夏が過ぎていった。
しかし、雨が少ない年であった。
屋敷に生まれた赤ん坊は、秋で4歳になっていた。
雨が少なくても、その年は何事もなく、収穫はよく実り、縄文の森の隠れ田んぼも、よく実るようになった。
順調に米ができ、冬支度が楽になった。
冬が来て、雪の多い年が過ぎた。
翌年、春になって山彦は、不安を感じて、千曲川の上流を見に行くと、大きな崖崩れが起きており、水量が増していた。
そして、森に帰ると、森が湿っていた。
これは、大雨が来るかも知れない。
空がどんよりしていた。
集落を訪ねた長に、今年は大雨が来るかも知れないと言った。
「山彦、本当か。」
「冬の大雪で千曲川の上流で崖が崩れておった。森も湿ってる。」
「雨が降ったら危ないということだな」
「茅とか、屋根になるようなものを持って浅間山の麓に来れば、水はしのげる。木はこちらが準備しておく、大雨は仕方がない。」
「助かる。頼むぞ、他の集落にも知らせる」
何日か経つと、空がいよいよ真っ暗になり、雨が降って来た。
1日目は、何事もないかのように過ぎた。しかし翌日の昼過ぎ頃、静かに水が溜まり、水が徐々に上がってくる。
集落の者達は、それぞれ、茅などの草を抱え逃げ出した。
屋敷とは違う場所だが、同じ高さにある浅間山の麓に逃げたのである。
山彦は、集落の長と打ち合わせどおり、背の高さより高い棒を森の仲間たちと持ってきており、次々に簡易テントを築き上げ、雨を凌ぐ。
およそ、1000人ぐらいが集まっていた。
縄文の森の者共は、テントが出来ると、森へ帰って行った。
水は集落の者達が逃げた場所までは、来なかった。
屋敷も、無事で、集落にいた兵達が、逃げ込んできた。
集落のことなど、お構いなしであった。
代官が、兵達を受け入れたが、集落の皆はどうしたのか。
と聞くと、彼らは雨が降ると、ほら、あっちの方に逃げ込んでいます。
という。
代官は、集落の者共は、賢いのだなと感心した。
美和は、動き見ていて、集落の者共が賢い?そんな事はないな、何かの指示なのではないか。
と感じていた。
雨はその後2日振り続いたが、その後、止んだが、水は引かなかった。
空はすっかり晴れ渡り、青空が広がっていた。
暑い太陽の光が注ぎ、洪水の水面をキラキラ光っていた。




