14話:一条家は保護する
馬車周辺を探す事になった。
再び俺達の耳に鳴き声が聞こえた。
俺達は顔を見合わせて頷いた。
声のする方向へ向かうと、そこには──二人のケモ耳が生えた女の子がいた。
「ケモ耳?」
「ふわふわ?」
「ケモっ娘?」
「獣人?」
俺、舞、母さん、父さんの順でそう呟いた。
外見からして小学生と中学生くらいだろうか?
それにしても衰弱しているようだ。
二人のケモっ娘は怯えた目をしてこちらを見ていた。
体中にはムチで打たれたような痕が残っていた。
だが、二人の首には奴隷なら付いているはずの首輪が見当たらなかった。
「その、俺達は悪い人じゃない。通りすがりの旅人だ」
俺は二人にそういうのだがどうにも警戒されているようだ。
小学生くらいの方は白髪ショートの狐耳。
中学生くらいの方は同じく白髪ロングの狐耳だった。
髪色だけではなく、耳や尻尾までもが白かった。
小学生くらいの少女は未だに泣いている。
「お願いだ。君達をどうこうするつもりはないんだ。
ましてや痛めつけたりなんてしない。
話を聞きたいんだ。何があったか話してはくれないか?」
俺は二人の少女の目を見て優しく問いかけた。
すると、中学生くらいの少女の方がゆっくりとだが口を開いた。
「……わかり、ました」
少女は語った。
二人は獣人の国のある村に産まれた。
だが、
「白は忌み子として村から追い出されました」
と言った。
忌み子。理不尽な理由で不吉だと決めつけられたのだろう。
何処だってそういった風習はあるのだ。
俺達がいた世界にだってメラニン色素が欠乏した、アルビノと言われるものがある。それで迫害を受けてきた人だっていた。
この子達も同じような事を受けたのだろう。
そんな話を聞いて舞や母さん、父さんは「うっ……」と涙を浮かべていた。
「こんな私達をお父さんとお母さんは守ってくれました。ですが……村を出て数日後お父さんとお母さんは魔物から私達を守るため……」
死んだ、か……
「そこで通りかかった奴隷商の人に捕まったと……」
「はい……」
そして二人は俯き涙を零した。
そんなのは俺でも耐えることは出来ないだろうな。
俺は父さん達を見る。
父さん達は俺の言いたい事が分かったのだろう。
「伊織の言いたい事は分かる」
「そうね。思ってる事は同じだと思うわ」
「私もだよ。お兄ちゃんのしたいようにすればいいよ!」
「ありがとう」
俺は二人に近寄って膝を付き目線を合わせる。
「どうだ? 良かったら一緒に行かないか?」
「でも……」
「私達は忌み子で……」
「忌み子だろうと何だろうと関係ない。な、みんな?」
俺は父さん達に尋ねた。
「当たり前だ。困っていたら放って置けないだろ」
「ほんとよ。しかもケモっ娘なんて……」
「うんうん! ジャ〇リ〇ークを作りたいくらいだよ!」
我が妹よ、それは待て! いや、素晴らしいのだが……こんないいシュチュでそんな事を言うなよ?!
心の中で舞にツッコミを入れる。
「こんな家族だが良かったら一緒にこないか?」
そう言って俺は二人に両手を差し伸べた。
「い、いいの……?」
「忌み子、なんだよ……?」
俺達はその言葉に首を横に振って否定した。
「そんなことは無い。困っている人がいれば助ける」
「助け合いよ」
「そうだよ! しかもケモっ娘なら大歓迎!」
「さぁ、新しい一歩を踏み出そうぜ!」
二人は顔を見合わせて頷いた。
「……ありがとう」
「……ありがとうなの」
そう言って俺の手を取るのだった。