12話 お遊戯会:後編
【禁忌の刻限:零時】に絆されし、
黄昏の孤児の覚醒譚
——それが『シンデレラ』という名の黙示録。
不条理なる血族(継母・義姉)の虐待により、灰に塗れた日常を強制されていた少女。彼女の封印された運命は、一人の「魔導師」の介入によって改変されることとなる。
一足の靴が導く、絶対的不可避の因果律。
世界を統べる王家が探し求めた“真実の足”が靴を満たした時、灰被りの少女は世界を統べる
【光の姫君】へと転生(覚醒)を果たすのだ……。
◇◇◇◇
前回までのあらすじ…
俺のさくら、寝取られそう。
ステージの幕が上がった。
俺:「いいか、作戦はこうだ。最後のプロポーズの
シーンで『ちょっと待った!』と叫んで、
シンデレラ達と略奪婚て感じだ。
質問はあるか?」
門番ABCDは舞台裏のホワイトボードで作戦会議を
始めている。
け:「ひとつだけいい?劇台無しになる可能性は?」
俺:「なんだ門番C、舞台裏で既に寝取られ展開な
時点でもう修羅場なんだよ。俺らはもう歴戦の
勇者一行なの!OK?」(とてもいい発音)
け:「でも遊者様、シンデレラ3人で俺ら4人。
1人余りまーす。」(ダウナー系)
俺:「フッ…甘いね、KEN。そこら辺のラブコメより
甘い…。俺はそれも把握済みさ☆
余った1人は担任の仲裁の邪魔をしろ。」
(キメ顔ウインク)
ゆ:「門番Aさん。はるかはともかく、2人の心が完全
にイケメンにゲットされてたら諦めるん
ですか?」
(待ってくれ、トゲがあるよこの子。手伝うこと
強制しちゃったのは申し訳ないけどさ……
オブラートに包めよ!せめてミカンの皮に包め!)
俺:「お、おいYUTA。今はその話は、禁句だぞ。」
(人差し指を口元にあてた)
ゆ:「いや曖昧にしないで教えてくださいよー。」
し:「おい、お前!俺らは今勇者パーティー
言ってたやん兄やんが!お前クビに
されたいんか?落とし前つけろやゴルァ!」
(メンチ切ってる)
俺:「まぁ落ち着けぃ若いの。この兄ちゃんが
言っとることも一理ある。……ダメだったら
俺らはさくらとモアを諦める。
これでええか?」(ヤクザっぽく)
し:「うぅ…兄貴……でも因縁さくらちゃんとモアに
見放された原因も兄貴…」
(修羅場蒸し返すなや!)
俺:「行くぞ、お前ら!」
他:「おう!」
(あの夏の青春がフラッシュバックしそうな、そんな清々しい雰囲気がした。…やってることは
ドロドロのそれだが。)
◇
門番の出番…舞踏会のシーンになった。さくらと
モアは楽しそうに踊っていた。はるかは教育実習生
と目の前のイケメンで心が揺れている様に見えた。
(おのれイケメン野郎…さくらの可愛らしい手を
握りやがって。しかもさくらの肩にまで手を
おいちゃって………後でカビキラーをあいつに
噴射してやる!)
俺は門番Bの様子を見た。Bはずっと下を向いて
いた。でも呼吸が荒い。彼も今、殺菌のことに
ついて考えているのだろう。
俺たちの表向きの出番が終了した。俺はしんすけに
向かって親指を立てた。
ゆ:「いやー。3人とも顔赤かったね。」(ケラケラ)
俺:「あれは全然照れとかじゃねぇし!多分観客に
見られてんの、恥ずかしかっただけだし!
そうだよな、しんすけ!……おいしんすけ?」
し:「いや、あれは確かに照れてた。俺には分かる。
あれは…惚れかけてる…。」
事態は思ったより深刻だ。甲子園コールドゲームで
終わるのだけは避けたい。沈黙が流れた。
その沈黙を健が止めた。
け:「お前らがそんな深刻そうなの初めて見たわ。
お前らいつも逆転の一手だけで動いてるくせに
途中経過で負けてるぐらいでヘコむなよ。」
(ダウナー系けん、お前がNo.1だ)
ゆ:「まだ、勝ち目あんだろ…勇者さん。」
(師匠、あんたって人はどんだけ良い子なんだ…)
し:「お前らに励まされるとは思ってなかったぜ…
ありがとな、お前ら。…とおる、まだ切り札
(略奪婚)残ってるぜ!」
(そうだ、前世の俺はいつだって逆転サヨナラホームランを狙って生きてきた。たかがこの程度の
不況、全然怖くねぇ。むしろ心地良いぜ!)
俺:「そうだな…忘れてたぜ。俺がどういう人間
だったか。皆、最後にもう一度だけ力を
貸してくれ!」(いつもの眼に戻った)
(※この子たちは園児です)
担:「今の話、全部聞いちゃった。」(ニコッ)
俺:「先生、邪魔しないでください。」
担:「衣装…そこにあるから早く着替えな。こういう
展開は元ヤンの私には邪魔できねえ。」
俺:「先生、ありがとう。」(固い握手)
◇
(舞台は整った。後はどっちに転ぼうと後悔しないよう、戦うだけだ!)
王子達:「おぉ、あなたがシンデレラだ!シンデレラ
僕と結婚してください。」
徹たちは走り出した。そして、叫んだ。
俺達 :「ちょっと待った!」
(うわ、この空気感恥ずかしすぎる!穴があったら
入りたい!)
し :「決闘を申し込む!シンデレラをかけてだ!
剣を交えて勝ったほうがシンデレラと結婚
する。それでいいか?」(剣を投げる)
イケ1 :「フッ、面白い!受けて立つ!」(ノリ良い)
モ :「しんすけ…」(不安な眼差し)
今回、真佑が負けたら徹たちは負ける、いわゆる
代表戦だ。
(しんすけ、お前が一番モアのこと好きなの、俺達は知ってるんだ。見せてくれよ、お前の愛と
やらを。そして早くイチャつけ!)
両者、中々動かなかった。先に動いたのは真佑だった。
し :「うぉぉぉぉ!」
イケ1 :「やぁぁぁ!」
今までの真佑はもう負けていただろう。だが、今回はイケメンに喰らいついている。
モ :「しんすけ!行けー!」(叫び)
し :「絶対に、負けられねぇんだ!うぉぉぉぉ!
やぁぁぁ!」(叫び)
―――結果、俺達は勝った!!
俺達 :「良くやったしんすけ!お前さすがだよ!」
真佑は緊張が解けて床に座り込んだ。
モ :「しんすけー!」(抱きつく)
し :「モア、俺…グスン…勝った。…ヒック…
勝ったよー。」
(ヘナヘナ)
モ :「かっこよかったよ、しんすけ!」
(俺、こういうの…グスン、弱いんだよ…)
門番ACDがもらい泣きをしていると、Aも抱きつかれた。さくらちゃんに!
さ :「さくら、とっても嬉しかったよ!とおる君
が、さくらのこと好きでいてくれて!」
(エンジェルスマイル)
俺 :「良かった…誰にも取られなくて…。」
(独占欲の塊)
この混沌とした中、舞台の幕は閉じた。
◇
あの後、俺達門番は先生からとても怒られた。
元ヤン先生は協力してくれたけど、形式的に
怒らないといけないらしい。迫力がヤバくて、
上も下も涙目だった。
観客の皆さんは、「この子たちなりのシンデレラ」
だと思っていてくれたらしい。黙って見ててくれた
観客には感謝しかない。何はともあれ、寝取られ
展開にならなくて本当に良かった。
―――次回、お芋掘り




