11 モンスターお役所の副所長
次の朝、無事に寝坊することなく起きれた私は妖月様と一緒の車でモンスターお役所に初出勤する。
う~ん、新人の私が所長の妖月様と一緒に出勤するなんていいのかなあ。
でもまだこの街を一人で歩くのはちょっと怖いし。
私は車窓から街の中を歩くモンスターたちを見た。
この世界にも通勤ラッシュがあるのか分からないが昨日よりも多くのモンスターたちの姿がある。
基本的に彼らは歩いているが一部の羽のあるモンスターたちは空中を飛んでいるようだ。
羽があったら歩くより楽かも。
でも私は妖月様の車に乗ってるから羽がなくても快適だけどさ。
だけどその空中を飛んでるモンスターたちを見ていてある特徴に私は気付いた。
あれ? 空中を飛んでてもあまり高くは飛んでないみたい。
羽があるからもっと高く飛んでもいいのに。
「あの、妖月様」
「なんだ?」
「羽のあるモンスターさんたちは飛んでるけど高い所を飛ばないのはなぜですか?」
「この街では10メートル以上高く飛ぶことは禁止だ」
「え? なぜですか?」
妖月様は「そんなことも分からんのか」って表情をした。
そんな顔されても私はモンスターじゃないから理由なんか分からないよお。
少しの無言の後、妖月様は面倒くさそうに答えを教えてくれる。
「………空中を自由自在に飛ぶのを許したら交通整理が大変だろうが」
「あ、そうですね。自由に飛ぶのが許されてたら空中での交通事故もあるかも。高く飛んではいけないこともこの街の「ルール」のひとつですか?」
「そうだ」
妖月様はそう言うとプイっと前を向いてしまった。
まずは「ルール」についても学ばないとだよね。
でも妖月様にしつこく訊くと嫌われそうだし。
嫌われて「お屋敷を出てけ」って言われても困るし。
そんなことを考えていたら車がモンスターお役所に着いた。
「私について来い」
妖月様は車を降りてモンスターお役所の中に入って行く。
私はその後をついて行くがモンスターお役所に勤めている役人モンスターたちの出勤時間なのかお役所内はモンスターたちがいっぱいいた。
うわあ、いろんなモンスターさんがいるなあ。
人型もいるけど触手系もいるし獣系もいるし、あっちは植物系もいるみたい。
みんなどんな仕事してるのかな?
妖月様が歩くと他のモンスターさんたちは道をあける。
その真ん中を堂々と妖月様は歩いて行く。
やっぱり妖月様って偉いんだね。
みんなが道を譲るなんて。
私は妖月様とエレベーターに乗り最上階に向かった。
最上階で降りるとそのフロアには部屋が一つだけある。
扉には「所長室」と書いてあった。
妖月様はここで仕事をしてるのかあ。
妖月様は無造作に扉を開けて所長室に入って行ったので私もそれに続く。
「後で、界魔が来る。お前の担当係の職場まで案内させるからしばし待て」
「はい」
妖月様は所長の机の椅子に座った。
私は立って待っていようかどうしようか迷う。
勝手に椅子に座ったら怒られるかな。
「どうした?」
「え、えっと、座って待ってればいいですか?」
「ああ、かまわぬ。適当に座っていろ」
「はい。ありがとうございます」
私は近くにあった椅子に座り所長室を見渡した。
所長室は妖月様の仕事をする机と椅子の他にも机や椅子がいくつかある。
他にもここで仕事をするモンスターさんがいるのかも。
妖月様に秘書がいるとか?
あ、でも、それは界魔さんとは違うモンスターさんなのかな。
「あの、妖月様。妖月様以外でもここの部屋を使う方がいるんですか?」
「ああ、夜の部を担当する副所長もここを使う」
へえ、夜の部は副所長が担当してるんだ。
副所長ってどんなモンスターさんなんだろう。
そこへ扉が開き一人の女性が入って来た。
黒い髪のロングヘアに黒曜石のような瞳のとても綺麗な女性だった。
うわあ、綺麗な人だなあ。スタイルもいいし。
女性はグレーのスーツを着ていたが胸も大きいし腰は細いしお尻も大きい。
大人の女性の魅力満載だ。
う~ん、私なんてとても敵わないスタイルの良さだなあ。
この人誰だろう?っていうか、この人もモンスターさん?
見た目は完璧に人間と変わらないが妖月様だって人間の姿だから姿だけで本物の人間か人型モンスターかの区別は難しい。
だけどここはモンスター世界だからきっとこの人もモンスターだろうと推測はできる。
「所長。引継ぎ資料を持って来たわよ。ん? 誰、この子?」
その女性は私を見て不審そうな顔をした。
「その者は新しい職員だ。訳あって私と一緒に暮らしておる」
「へ? 所長と一緒に?」
その女性は明らかに驚いたようだ。
そして興味深そう私の顔を覗き込む。
「でもこの子、モンスターなの?」
「ヴァンパイア族の亜種だ。美音、彼女は副所長の麗華だ。自己紹介せよ」
「は、はい。名前は美音です。種族はヴァンパイア族の亜種です。本日から仕事をしますのでよろしくお願いいたします」
私はその副所長の麗華さんに頭を下げた。
自分が人間だとバレてはいけない。
「ふ~ん。私は副所長の麗華よ。モンスターお役所の夜の部の担当なの。まあ、頑張ってね、美音さん」
「はい。ありがとうございます」
「じゃあ、所長。資料はここに置くから後はよろしく」
「分かった。ではまたな」
そう言って麗華さんは所長室を出て行った。
「妖月様。麗華様は何のモンスターなんですか?」
「麗華は妖狐族だ」
私はリュックサックに入れておいたモンスター解析書を取り出す。
妖狐族って、ああ、狐のモンスターかあ。
上級モンスターだから完璧な人型だったんだね。
でもモンスターの種族を判断するのは難しいなあ。




