序章
本編に入る前のプロローグとなっています。
「???」
目覚めると、あたりは真っ白だった。俺は混乱する。
さっきまで家のベッドでぐっすりと寝ていたはずなのに。
「寒っむ。なんだここ。どこ見ても氷だらけじゃないか」
俺はひとりで氷の世界に仰向けに寝転がっていた。
俺の周りだけ氷が解けているようだが、それ以外はほとんど氷しか目に入らない。
「でもなぁ、空はからっと晴れてるんだよなぁ」
唯一、いつもとわからない空を見上げ、落ち着いてからあたりを見渡す。
さっきはぼんやりしていたが、今ならある程度はっきり物事を考えられる。
どうやら、ここはもともと村だったらしい。一面の氷の中に、固まったままの家々が見える。
俺は凍ったままのその家をよく観察してみる。
壁はコンクリート?のような、しっかりした素材で作られている。明らかに作りが緻密だ。
「ど、どこなんだよ、ここ」
意識がはっきりして、現実が見えてきた。焦りが生まれる。
これから、どうする?
何もしなかったら、のたれ死ぬのか?
この寒さだと、餓死する前に凍死だぞ?
「こんな寒いところに来た覚えなんかないのに」
本当に日本じゃないのかもしれない。
もしかして、ここは異世界なのか?
そうだとしたら、この氷は。
「これ、俺のせいじゃないよな?」
もし俺のせいでもこんな責任負いたくないぞ。
俺の最後の記憶は家のベッドに横になったところだ。
さすがに何もできないし、何かした記憶がない。
責任も何も、状況からして俺は被害者だよな。
ここは慎重になった方がいいはず。
といっても、ここにいても何にもならない。
俺は立ち上がり、あてもなく歩き始めた。
ーーーーーーーーーー
あれから、一か月が過ぎた。
結論から言うと、ここは異世界だった。さすがに何日もこの世界を見ていると、いやでも分かる。
空にはでかいドラゴンが飛んでいたし、明らかに人間ではないゴブリンらしき集団もいた。
そして、氷の世界は、ずっと続いているわけではなかった。
何十kmも歩いて氷の世界を抜けると、大自然が広がっていた。
そして、もう一つ分かったことがある。
俺はいわゆるチート能力というものを1つだけ持っていた。
俺は不死身だ。
ちぎれた腕はトカゲみたいに再生するし、腹がすいても、寝て起きれば回復している。
おかげで、この一か月ずっと健康状態だった。
ただ、俺のチートはそれだけだった。便利な魔法なんてものは使えないし、ステータスバーなるものは今のところ存在を確認できていない。
「不死身でも、痛みは感じるからな」
不死身だから死ななかったが、不死身だから死ねなかった。
いっそ一思いにやってくれと何度思ったことか。
それでも、命があることはいいことか。
ーーーーーーーーーー
さらに数か月が過ぎた。
めげずに歩き続けていると、人間がよりそって暮らしている小さな村を発見した。
異世界に来てから、今までで最高の瞬間だった。
ただ、ここからは最悪だった。
俺は最初に見つけた村人に声をかける。
後から思えば、これば一番の失態だった。
久しぶりに会えた人間に舞い上がっていた。
「あの、すみません。ここってど…」
言い終わる前に、その村人は俺をにらみつける。
「**********」
当たり前だが、俺の言葉は村人に伝わらなかったし、村人の言葉を俺は理解できなかった。
「*****! **!!」
その村人は、大きな声で叫ぶ。
さらに、その村人は俺に向かって手のひらを向ける。
「************」
そう何かをつぶやくと、村人の手のひらから、小さな火の玉が放たれた。
俺の態勢は崩され、その場にひざまづいた。
「************************」
もう2、3発火の玉がその手から放たれる。
そして、
ドンッ! 頭に激痛が走る。
どうやら、後ろに村人の仲間がいたみたいだ。
俺は何かで頭を殴られた。
「は、はふ、ううぅぅぅぅぅぅ」
声にもならないうめき声を出す。
そして、俺は気を失った。
ーーーーーーーーーー
あれから、4年が過ぎた。
気を失った後、俺は手と足に枷をされ、あの村人に出会った村より大きな町に連れてこられた。
言葉もわからないまま尋問を受け、そのまま牢につながれた。
「僕は、無実なんです! ねえ、聞いてください!」
日本語が伝わるわけがなかった。
多分、俺は罪人として扱われていたのだろう。
もちろん、俺は何もしていない。
俺の悪夢はそこで終わらなかった。
いつの間にか、俺は奴隷として売られていた。
不死身の特性のおかげで、健康状態は良かったから、さぞいい値がついただろう。
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奴隷になってからは、大きな農場で働くことになった。
この農場には俺のほかにも何人かの奴隷がいた。
彼らと交流していくうちに俺も日常会話くらいは話せるようになっていた。
俺の物語はここから始まることになる。




