精霊王女の迷宮
「……でね……。」
目覚めると、先ほどまでの事柄が急速に遠のいていく……さっきまではこの腕の中にあった……何が?
……ダメだ、思い出せない。
(……ってば!……レイってば!)
ファーの呼びかけに我に返る。
「あぁ、ファー。どうした?」
(どうしたじゃないわよ!まだ寝ぼけてんの!)
……そうか、寝てたのか。
(この森に入ってからもう5回目よ。レイがこんな状態異常にかかるなんて……体の調子がおかしい?)
ファーが心配そうに訊ねてくる。
封印解呪の影響を心配しているのだろう。
「いや、体調はいいよ。
多分ミリィが呼んでいるんじゃないかな?
睡眠以外の状態異常は全く受け付けてないしね。」
俺は結界を破った後、森へ踏み込んだのだが、そこには30を越えるモンスター達が待ちかまえていた。
まぁ、魔法を3~4発打ち込んだところでほぼ壊滅、残った奴らも散り散りになって逃げていったのだが・・・・・・。
更に踏み込んだところで、俺はあえなく、眠りの状態異常にかかり・・・・・・ファーに起こされて先へ進み・・・・・・また眠りにかかるということを繰り返していた。
(・・・・・・精霊化しておく?私の力なら跳ね除けられると思うけど?)
「うーん・・・・・・何かを伝えようとしてるんだと思うから完全に排除するのもなぁ・・・・・・。かと言って、覚えていないのも・・・・・・。」
(じゃぁ『精神結合しておく?』
「精神結合」は精霊と一体化するのではなく意識の一部のみを共有する方法で、術者と精霊がそれぞれ見たもの・感じたものが、離れていても共有出来るというのが最大のメリットである。
「そうだな。」
俺はファーの提案に同意すると、早速「精神結合」をする。
「俺が次に眠ったら、意識をトレースしてくれ。」
(任せて。・・・・・・レイは安心して寝てればいいわよ。)
何か含みがある言い方だったが、あえて気にしないことにする。
こう言うとき、下手に気にするとロクな目に遭わないことは学習済みだ。
暫く進むと、お馴染みに成りつつある眠気が襲ってくる。
「来たようだ。・・・・・・トレース頼んだぞ。」
俺はファーに伝えると、そのまま眠りに落ちていった。
目が覚める・・・・・・という表現もおかしいか・・・・・・さっき眠りに入ったばかりだしな。
・・・・・・まぁ、そんなことはどうでもいいか。
眼前には森が広がっている……少し先が見通せないぐらい深い森だ。
あたりを見回している俺の目の前に小さな精霊が現れ、話しかけてくる。
「また来たの?懲りないねー、キミも。」
「お前は誰だ!」
小精霊の言葉はスルーして訊ねる。
「その質問も6回目だよ。いい加減飽きちゃった。そう思わない?」
「いいから答えろ!」
俺は再度訊ねる。
今までも同じやりとりを繰り返したのだろうが、そんなことは関係ない。
覚えていないのだからな。
奴は6回目と言った。
つまり5回同じ事を繰り返してるわけだ。
奴がここに居ることに意味があるのだろう。
そうでなければ、とっくにいなくなっているはずだ。
「まぁ、いいや。僕はカーン。見ての通りレプラコーンの一族に連なる者さ。」
「ここはどこだ、この先は何をすればいい?」
俺はカーンと名乗る精霊に、続けて訊ねる。
「ここは、王女の心の迷宮だよ。王女は傷ついてるんだ。僕たちと一緒に精霊界に行くべきなんだ。
……だけど、王女はまだ迷ってるんだ。こんな世界見捨てちゃえばいいのにさ。
だからこんな迷宮が出来るんだよ。
僕はこの迷宮の案内人。
君はこの先に進んで王女の心に触れるのさ。
王女が君を選べば、結界は消える。選ばなければ、王女の魂は精霊界へと昇華する。
僕は、それを見届けるためにここに居る……わかったかい?」
「あぁ、よくわかったよ。このまま進んでミリィの心を捕まえればいいって事だろ?」
「その通りだよ。ただ、心はひとつじゃないからね。……健闘を祈るよ。」
俺は、目の前の森へ向かい足を踏み入れる。
途端に前後左右の間隔が失われる……前に進んでいると思うが、それすらも定かではない。
「ファー、聞こえるか?」
……。
返事がない……ダメか。
俺は、いったん立ち止まり、感覚を研ぎ澄ます。
………。
………左奥手の方から微かな力を感じる。
そちらの方向へゆっくりと歩きだすが、しばらくすると、右手の方から力を感じるようになる。
周りは深い森で、風景に変化はない……俺が気づかずに方向を変えられているのか、発信源が惑わすための偽物なのか……。
「判断がつかないなぁ……。」
(……える?……きこ……える……聞こえる?レイ。)
「ファーか?聞こえるぞ。」
(やっと……つながっ……わ……何かジャ……ング掛……っているわ……)
「とりあえず、……今は右後方か……力が発信されているのわかるか?」
(トレー……してたか……わ……てる。力の……は動い……いない……。レイ……グル……ル回って……けよ。)
「分かった。」
やはり、惑わされているか……。
俺は目をつぶり、力の示す方向だけを頼りに歩きだす。
左……右……左……後ろ……左……。
(後5m……らい……。)
まっすぐ……左……右……広い場所に出た気配がする。
俺はゆっくりと目を開けた。
眼前には、今までと違い明るい森が広がっている。
その中央に小さな女の子がうずくまっている。
……あれは、幼いミリィか?
俺は幼いミリィに近づく……俺の手が触れるか触れないかの所で突然ミリィを中心に光が弾ける。
森の動物たちと戯れるミリィ……精霊の子守歌で昼寝をしているミリィ……
俺の周りに、映像が浮かび上がる。
……これは……ミリィの記憶?
同じ年頃の少女と遊んでいるミリィ……。
突然回りが暗くなる。
村の大人が幼いミリィに詰め寄る……。
怒声が浴びせられる。石が投げられる。
出て行け!、悪魔! ……。
心無い声が響き渡る。
すべての映像が掻き消える……。
私は遊びたかっただけ……
初めて友達になった……助けたかった……危険を知らせたのに……
私と同じ姿……人間……でも、心は違う……
醜い……醜い……
私が何したの……憎い……憎い……
俺は幼いミリィに近づき抱きしめる。
精霊光がスパークし、俺にダメージを与えてくるが、気にせずに抱きしめる。
「おにぃちゃん……私に近づくと怪我するよ?離れて……。みんな、みんな傷つくの……私のせいで……。」
「何故、ミリィのせいなんだい?ミリィが何をしたんだい?」
俺は、幼いミリィに問いかける。
「私は……私は……友達を助けたかった……。
初めての友達……ミカちゃん……叔父さんにいつもイヤな事されていた。
ミカちゃんは、いつも笑っていたけど、辛そうだった。
だから……。」
しゃくりあげながら、途切れ途切れに話してくれる幼いミリィ。
……ずっと森で幸せに暮らしていた。
……初めて人間の子供と会って友達になった。
……その子は叔父から暴行を受けていたが、それをまわりに言えず我慢していた。
……ミリィと遊んでいる時だけはその子の笑顔を見ることが出来た。
……ある時、村が火事になるイメージが見えた。……精霊が教えてくれた。
……出火場所は少女の家。
……ミリィは村に知らせる。結果、火事は起きなかった。
暴行に耐えかねた少女が火を点けようとしている所を、村人達が取り押さえた。
……少女はミリに向かって叫ぶ「裏切り者!」と。
そして、村人たちに向かって少女が叫ぶ。
あいつだ、あの子が火を点けろと言ったんだ……と。
そして少女は、ミリィが初めての友達だからと教えた秘密をばらしていく。
……少女に向かっていた悪意がミリィに矛先を変える。
「私がミカちゃんに近づかなければ……余計なことを言わなければ……。」
俺は幼いミリィを抱きしめる腕に力を込める。
「ミリィは悪くない。悪くないんだ。」
「……やっぱり悪いのは人間?」
幼いミリィの姿がどす黒く変化していく。
「誰が悪いかなんて、問題じゃない。人間だろうが、精霊だろうが、ミリィを悲しませる奴が悪い!」
「え?」
幼いミリィが戸惑い、俺を見上げる。
「原因なんかどうでもいい、関係ない。ミリィを泣かせる奴は例え、神だろうが悪魔だろうが、俺が許さない。」
「えーと、そういう問題なのかなぁ?」
「そういう問題だ。ミリィは俺の側にいいんだよ。」
難しい事なんてわからない。
わかっているのは、俺にはミリィが必要で、ミリィにも、きっと俺が必要なんだって事だ。
……必要とされているよな?
……急に不安になってきた。
「おにぃちゃんは、ミリィの笑顔を守ってくれる?」
「モチロンだ。」
幼いミリィの問いかけに、俺はすかさず答える。
それだけは間違いない。
「じゃぁ、ミリィの事お願いね。」
そう言うと、幼いミリィは光となって、どこかへ飛んで行った。
あたりの景色が、先ほどと同じ、暗い森に変わる。
俺は、光の飛んで行った方を目指して、再び歩き出した。
「ファー、聞こえるか?」
(大丈夫よ、聞こ……るわ。……さっき……ミングが弱くなっ……たいよ。)
「そうか……方向はわかるか?」
(今は、その……真っすぐ……いわ。)
「了解。」
俺はさっきと同じように、資格を遮断し、力を感じる方角へ向けて歩き出す。
しばらく歩き続けると、また、同じような広場に辿り着く。
中央には俺と出会った頃くらいのミリィがうずくまっている。
俺が近づくと、周りに映像が浮かび上がる。
年配の夫人の世話をするミリィ。
村人と楽しそうに話すミリィ。
若い女の子に相談を持ち掛けられるミリィ。
若い男から、求愛を受け、真っ赤になるミリィ。
……俺と、出会う少し前の頃かな?
ミリィが村人に何かを訴えるが、逆に怒らせてしまう。
教会に詰め寄る村人達。
ミリィと教会の前で、村人たちの前に立つ年配のシスター。
石を投げつける村人たちと、互いに庇い合う、シスターとミリィ。
燃え上がる教会。
粗末なベットの上で、息を引き取るシスター。
……様々な光景が、浮かんでは消える。
「私はただ、誰かの役に立ちたかった……それだけなのに。」
「ミリィは俺を助けてくれた……そうだろ?」
俺は少し前のミリィに近づき抱きしめる。
「あれは、単なる私の自己満足……。」
「それでも、俺の心は救われた……だから俺は、全ての悪意からミリィを守るよ。」
少し前のミリィが顔を上げ、俺を見つめる。
「ずっと一緒に居てくれる?」
「あぁ、ずっと一緒にいる。……だけど、ココでじゃない。みんなのいる外の世界でだ。」
……記憶にないが、たぶん、俺はここで選択を間違えていたのだろう。
だけど、今度は間違えない。
一緒にいる、それはミリィだけじゃなく、リィズやソラ、俺の大事な人すべてと一緒にだ。
「……その覚悟が本物なら……奥へ来て。」
そう言って、少し前のミリィが光となって消えていく。
あたりの景色が変わる。
俺の目の前に一筋の光が奥へと続いている。
(レイ、気を付けて……その先から……すごく強い力……感じるわ。)
ファーからの忠告を受け取る。
たぶんこの奥が最後だろう。……そして、そこにミリィがいる。
俺は光を追って進んでいく。
やがて、開けた場所に出る。
そこにはミリィが悠然と立っていた……一糸まとわぬ姿で。
「ミ、ミリィ……何か服着てくれ。」
俺は目を逸らしながらそんな事を言う。
……目が釘付けになりそうなのを必死でこらえる。
……だって、仕方がない。ミリィは、着やせするタイプで、かなりの「ナイスバディ」なんだぞ。
男だったら誰だって……。
「なんで?……誘ってるのよ?……なんで抱いてくれないの?」
ミリィが近づいてきて……俺に寄り添う。
俺は、ミリィを抱きしめる。
……密着していれば見ないで済むと思ったからだが……。
色々あたって、かえってヤバいかも……。
「私は魅力ない?」
「そんなことない。ミリィは十分すぎるぐらい魅力的だよ。」
「だったらなぜ……。」
俺の周りに映像が浮かび上がる。
ミリィが、寝室に忍び込んだ時……。
ミリィとリィズに挟まれてギュっとされているとき……。
ミリィと二人きりで抱き合ってるとき……。
……。
……。
「あの時も、この時も……レイさん、手を出してくれなかった。
私、恥ずかしかったけど精一杯勇気出したのにぃ……。」
「その……ゴメン。」
ミリィがそこまで思い悩んでいたことに気づかなかった。
自分の事しか考えてなかったんだな。
「やっぱり私じゃぁ……レイさんはソラちゃんやリィズのような小さい子の方が……」
「ちょ、ちょっと待てぃ!」
ミリィが、とんでもない事を言い出す。
「確かに、ソラやリィズも大事だが、それはソラやリィズだからして、決して小さい子だからじゃないからな!その証拠に、ミリィに対してだって……。」
俺はその先を言い淀む。
「私に対して……なぁに?」
ミリィがいつものからかう様な仕草で聞いてくる。
「……欲情してる。」
俺は本音を伝える。
「……嬉しい……でも手を出さないんでしょ……レイさんのヘタレ!」
ミリィからのきつい一言が俺を襲う。
周りに、今までのミリィと過ごした映像が浮かび上がり……「ヘタレ!」「ヘタレ!」と訴えかけてくる。
「うおぉぉぉ……ゴメンよー!」
俺は完ぺきに打ちのめされる。
「……ヘタレ……俺はヘタレ……。」
(ちょっと、王女様!それくらいにしてあげて。……大体ヘタレなのわかってって付き合ってるんでしょうが?今更でしょ?)
ファーが俺の事を庇ってくれる……庇ってくれてるんだよね?
「だって、今言っておかないと……言う機会逃しそうだし……。」
ミリィが俺の側に来て、、うずくまる俺をやさしく起こしてくれる。
「レイさんゴメンね。……でも、本当の事よ。私は……少なくとも私とリィズは、レイさんと一つになりたいと思っているの。」
ミリィがやさしく伝えてくる。
「ゴメン……俺は……怖いんだ。先へ進むと、今の関係が壊れるんじゃないかと……今が崩れるんじゃないかと……怖いんだよ。」
俺は素直に本音を告げる。
ミリィの前だと、どうしても強がりきれないな……。
「そんなことないのに……ね。」
ミリィがやさしく口づけをしてくる。
「やっぱり、レイさんには私がついていないとダメね。」
ミリィが体を離し、いつものようなからかう仕草で言う。
「目覚めたら……奥まで進んで。もう結界はないからすぐ私の元へたどり着けるわ。……そこで私を起こしてね。……優しく……ね。」
ミリィは笑いながらそう言うと、光となって消えていき……あたりが元の森に戻る。
「ちぇ!結局今までのままか。王女は、僕たちと一緒の方が幸せだと思うんだけどね。」
眼前にカーンが現れる。
「いや、お前らなんかにミリィは渡さない。ミリィのそばに居たかったら、お前らが俺の元に降るんだな。」
俺は不敵に笑い、カーンに告げる。
「ミリィを奪おうとするものは、たとえ、精霊女王であろうとも相手をしてやる!そう、仲間にも伝えておけ!」
「王女の選んだ相手に喧嘩を吹っ掛ける気はないよーだ。でも覚えておいてね、王女を悲しませたら、人間界滅ぼすよ。」
カーンからどす黒いオーラが立ち上る。
「それは俺のセリフだよ。」
俺はそのオーラをファリスで断ち切る。
「……フン。そこ真っすぐにいけばこの森を抜けて目覚めるよ。サッサと行ったら?王女が待ってるんでしょ。……僕は別の遊びを探しに行くよ。じゃぁね!」
カーンは言いたいことを言って消えていった。
「……ミリィを迎えに行くか。」
俺は、言われた通り眼前の道を進み、森を抜け……そして目覚める。
(レイ、おはよ。よく眠れた?)
「あぁ、いい夢見てた気がする……。」
(でしょうねー……。すぐ行く?)
「……行くってどこへ?……あぁ、でも行かなきゃ……。」
(うーん、やっぱり忘れちゃうのか。夢の迷宮は厄介ね。)
ファーが何を言っているのかわからないが、行かなければという思いが募ってきた。
(でも、まぁ、完全に忘れるわけでもないみたいだし……。王女の所へ行くのよ、レイ。)
「あぁ、そうだな。ミリィを助けないと……。」
俺は立ち上がり、森の奥へと足を踏み入れた。
眠りにつく前までの、不快な感じや体の重さなどを感じることもなく、先へ先へと順調に進んでいける。
「どうやら結界みたいなのはなくなったようだな。」
(……王女がそう言ってたじゃない、それも忘れちゃったの?)
「目覚めた後、急速に遠ざかる記憶って感じ分かるか?……そんな感じで、なんとなくのイメージしか覚えていないんだよ。」
(じゃぁ、レイがロリコンでヘタレだってことも覚えていない?)
ファーがクスクス笑いながら言う。……オイ、コラ。
今、ファーがとんでもない事を言ったぞ。
「ちょっと待て!なんだ、それは。俺はロリコンじゃない!……ミリィがそう言ったのか?」
(さぁねぇー……本人に聞いてみたら?目の前にいるわよ?)
ファーの言葉に視線を向けると……大木から伸びた蔦に絡まれているミリィの姿が見えた。
俺は、ミリィを絡めとっている蔦を外そうとしたが、びくともしない。
ミリィを捕らえている大樹から声が響く。
(王女はワタサナイ……ワタシタチの世界で……一緒……)
「悪いな。ミリィは俺のモンだ。返してもらうぞ!……ケイオス!」
俺はケイオスを召喚……右手に光が収束し、ケイオスが実体化する。
両手でケイオスを握りなおし、ミリィを絡めとる蔦を切り裂いていく。
自由になったミリィを左腕で抱きかかえ、右手に握ったケイオスを大樹に突きつける。
「大人しく引き下がるなら見逃してやる。抵抗するなら……燃やす!」
(王女……王女……)
俺は大樹の精霊に警告する。
しかし、相手も素直に引き下がれないようだ……仕方がないか。
俺はケイオスに魔力を込める。
「待って……。」
俺が魔力を開放しようとしたとき、それを止める声がかかる。
「ミリィ……起きたのか?」
「それ以上傷つけないであげて……。」
俺の言葉に、ミリィは軽く頷き、大樹への攻撃をやめるように言ってくる。
そして俺から離れ、大樹に近寄る。
「今まで、守ってくれてありがとう。一度お帰り……また遊ぼうね。」
(王女……元気……)
「うん、私は大丈夫よ!」
ミリィとの会話の後、大樹から光が溢れ出し、天へと昇っていく。
しばらくして静寂が訪れると、ミリィが振り向いて俺の側へと戻って来る。
「もぅ!優しく起こしてって言ったのにぃ。」
(ダメよ、王女……こいつ何も覚えていないから。
「えーと、……あなたがファーリース?」
(お初にお目にかかります、精霊王女様。できれば「ファー」とお呼びください。)
小妖精の姿のファーが、恭しくお辞儀をする。
「わかったわ、ファー。レイさんを守ってくれてありがとうね。……後、王女はやめてほしいな。」
ミリィが頷き、ファーに頭を下げる。
(王女は王女なんだけど……まいっか。 改めまして、ミリィ。私はファー。レイの相棒よ!)
ファーが元気よく告げる。
「よろしくねファー……仲良くやっていこうね?」
ミリィが笑顔でファーに答える。
笑顔なんだけど……なんか怖いっす、ミリィサン……。
「レイさん……無事でよかった。」
ミリィが俺に抱き着いてくる。
「私、心配で……でも、リィズやソラを守らなきゃって……私頑張ったよ?」
ミリィが潤んだ目で見あげてくる。
「あぁ、ありがとう。ミリィはよく頑張ったよ。」
俺は、ミリィを抱きしめ、そっと口付ける。
一度口を離し、ミリィを見つめる。
「俺も、ずっと心配だった……そして、ミリィ達がいない事がとても淋しかったよ。」
「レイさん……、私は、ここに居ますよ。」
そう言って、俺の手を両手で包み込み、胸元へ……柔らかい。
俺はそのまま、もう一度ミリィとキスをする。
……このまま先へ進んでしまってもいいのか?
そんな考えがよぎるが、ミリィの唇の柔らかさ、手にあたる胸の膨らみ……俺の理性を押し流すには充分であった。
「ミリィ!」
俺は獣の様にミリィを抱きしめる。
……が、ミリィにすっと躱される。
……あれっ?
「この先はお預けです。リィズ達に悪いから♪」
ミリィがクスクス笑いながら言う。
……そんなぁ。
「レイさんの心配事がなくなったら改めて……ね?」
ミリィにそんな顔をされたら、何も言えなくなる。
「……ったく、しょうがねぇなぁ。さっさと、リィズ達を迎えに行こうぜ。」
「レイさんは誰を選びますか?……って、私が聞いたらどうします?」
ミリィがそんな事を聞いてくる。
笑ってはいるが、目の色は真剣味を帯びている。
「決まってる……俺は選ばない。選ぶ必要がない……全部俺のだ!」
決めた!もう迷わない。みんな俺のものだ、俺が守る。
リィズ達と合流して、酒池肉林の日々を送るんだ。だれにも文句は言わせない!
(はぁ……レイ、サイテー……ヘタレのくせに。)
ファーが呆れかえった声を出すが、俺は聞こえないふりをする。
「あらあら、全部だなんて、レイさんは強欲ですね。まるで魔王様みたい。」
「お前ら全員、俺の嫁!文句がある奴は蹴散らしてやるよ!必要なら魔王にだってなってやるさ。」
俺は努めてさわやかに言ってみる。
「あらあら……期待してますね。」
(ほんと、サイテーだわ。……でも、まぁ、魔王の相棒ってのもいいかもね。)
ミリィが笑顔で、ファーは呆れながら言ってくる。
そう、俺は大事なものを守る為なら、何を敵に回しても構わない。
それで、みんなが笑顔でいられるなら、なんだってする。
勇者でも魔王でも神にでもなってやるさ。
無事、ミリィと合流出来ました。
途中で合流を次回へ回そうと、何度思った事やら……
心象風景を表現するのは難しいです。
※活動報告にも書きましたが、誤字報告ありがとうございました。
この場を借りてお礼申し上げます。




