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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

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結界と封印解呪

 ドゥン! ドゥン! ドゥン! ドゥン! ドゥン! ドゥン!

 リボルバーの残弾を全部打ち尽くす。

 うん、大丈夫、異常はないな。

 威力も申し分なし。


 「ニィちゃん、出来たのかい?」

 場所を借りた鍛冶工房の親父さんが、声をかけてくる。

 

 「あぁ、後少し仕上げが残っているけど、完成だ。長く場所を占拠して悪かった。」

 そう言いながら俺は、最後の仕上げとして、ファリスを精霊石に戻し、ドラグーンの柄に装着する。

 「エンチャント・カオス」

 俺は、カオス属性のエンチャントをかけ、魔力が全体に行き渡る様に流し込んでいく。


 「構わねぇよ。代金もちゃんと貰っているし、面白いモン見せてもらったしな。」

 俺がエンチャントをかけ仕上げをしている横で、親父がそう答える。

 魔力を補助にしながら制作していく、俺のスタイルが珍しかったらしい。


 「しかし、見れば見るほど変わった形の「魔力杖」だな。・・・・・・聖女様の側近も似たようなの持っているって噂だし、王都では、流行ってるんかねぇ?」

 この世界には魔力を撃ち出す「魔力杖」という武器が存在する。

 概ね杖の形を取っているものが多いが、形状は様々ではある。

 稀に「どう見ても杖には見えない」物もあったりするので、銃を持っていても「魔力杖」と言えば怪しまれる事はない。

 

 「聖女様が持っているって?」

 そんな事より、聖女が銃を持っているという噂の方が気になる。

 「いや、最近聖女様の近くでよく見る、警備の子がそう言う武器を使ってるって話だよ。

 何でも、成人前の女の子と侮った襲撃者20人を、魔力杖を使って、一瞬で蹴散らしたって噂だよ。」

 聖女は多分、俺と同じ転生者だと思う。

 だから銃の知識を知っていてもおかしくないのだが……。

 うまく合流できているのなら、ソラという事もあり得る。

 ……情報が少ないな……後で酒場に行って情報を集めるか。


 「あ、そうそう、その子は天使みたいに可愛いらしくてね、幼女好きな聖女様の、新しいお気に入り何だろうって噂なんだよ。」

 プチッ!

 俺の中で、何かがキレる音がする……。

 「親父、その話をもう少し詳しく。」

 俺は親父の胸ぐらをつかみ、ドラグーン・改を顎に突き付け、問いただす。

 「おい、ちょっと、あんちゃん、いきなりどうしたんだ!。」

 (レイ、落ち着きなさい!親父さん眼を回してるよ。)

 「落ち着けって?ソラが聖女に手籠めにされるのを黙ってみてろってか!」

 止めに入ったファーに俺は言い返す。

 一応当たりの事を慮って、小声でだ……ウン、俺は冷静だ。

 (まだ、ソラちゃんって決まったわけでもないでしょう。とりあえず、その「どらぐーん」とかいうの下ろしなさいよ。)

 ファーに言われて、俺は親父を掴んでいる手を離す。

 

 「親父、悪かった。つい取り乱した。」

 「いや、いいけどよ……。」

 俺が差し出した、銀貨の詰まっている袋を見て、鍛冶屋の親父は機嫌を直してくれたようだ。

 「聖女様の事だったか? 何でも、親が罪人として処刑された子供たちを集めて、身の回りの世話をさせたりなどの仕事を与えて面倒を見てるって話だ。

 ただ、その子らが、揃って見目麗しい子達ばかりなので、口の悪い奴らが「気に入った幼女を囲ってる、幼女好きの聖女」なんて噂を流してるんだよ。

 後は、獣人奴隷をたくさん囲ってるなんて噂もあるな。」

 

 獣人関連は、ソフィアが前言っていたことが理由にあるのだろう。

 「獣人と言えば、以前、獣人王国がどうこうって聞いたんだが、どうなったんだ?」

 ついでに、この親父から聞ける情報を聞いておこうと話を振ってみる。

 「今、これだけ騒がしいのに知らないのか?」

 親父が胡散臭げに、聞いてくる……怪しまれたか?

 「いや、実は、最近までずっとダンジョンに閉じ込められていてね、2~3日前にようやく出てこれたんだ。」

 「そうかい……まぁ、詳しくは聞かねぇけどよぉ……獣人の国の話だったか?」


 親父の話をまとめると、獣人の国に関しては1か月ほど前に、世界各地に向けて、「ポメラ獣人国」として建国が宣言されたらしい。

 リンガードの北側、アルガードの国境に面した辺りに、新たなる国境線が敷かれたそうだ。

 ポメラ獣人国は、建国後すぐにアルガード王国に対し、獣人奴隷の解放と賠償を求めて来たらしいが、その条件が、かなり無茶な要求だったとのことだ。

 まるで、戦争をしたがっているようだと親父は言う。

 「まぁ、それだけならよくある話なんだが……。」

 問題はアルガード王国内で起きているという。

 ポメラ獣人国の建国を反対していた王が、要求に対し「ある程度は仕方がない。要求を呑んでも、穏便に行くべきだ。」と声明を出したのに対し「あんな言いがかりは無視するべき!戦争がしたいなら受けて立とうではないか!」という過激派と意見が対立しているらしい。

 一触即発という状態を辛うじてともっているのは、聖女の存在だという。

 聖女は「要求は呑めません。しかし戦争はダメです。」と、第三の道を探しましょうと言っているらしい。

 もちろん、それに対する反発も強いのだが、聖女陣営が第三勢力として存在しているおかげで、過激派も穏健派も動くに動けないという状態になっているそうだ。

 「ま、聖女様をどちらの陣営が取り込むかで状況は変わるだろうさ。」

 「なるほどな。いい話が聞けた、これは礼だよ。」

 俺は金貨1枚を、親父に投げ、店を後にする。


 「ファー、この後酒場でもう少し、情報を集めたい。」

 (いいわ、付き合ってあげる。……ついでに、私も色々聞き耳立てればいいんでしょ?)

 「そう言う事、話が早くて助かるぜ、相棒!」

 (任せなさいよ!)


  ……。

  ………。


 結局、酒場で集めた情報は、鍛冶屋の親父のところで聞いた事を補足するぐらいだった。

 新しい情報としては、聖女の拠点がミンディアにあるらしいって事と、聖女を襲撃に行った兵士たちが、何故か聖女側に寝返るものが多い……得体のしれない魔術で操られているんじゃないか?とかの噂ぐらいだった。


 「聖女の件も気にはなるけどなぁ……。」

 (王女助けるのが先なんでしょ?)

 「そうだ。とりあえず、ミリィを助けだそう。」

 ……戦況が膠着状態の今のうちにミリィの件を片付けなければ。

 意外と時間に余裕がない……明後日にはミリィが結界を張っている森につくから……。

 俺は色々な条件でシミュレートしてみるが、ほとんどが、ミリィを助け出した時の状態に応じて変更が必要になることに気付き、考えるのを辞めた。

 「まぁ、何とかなるさ。」


 「さて、ついたわけだが……はぁ、どうするよ、これ?」

 俺は、眼前に広がる光景を見てため息をつく。

 認識阻害の魔法もかかっている為、普通の人にはちょっとした森にしか見えないだろう。

 しかし、俺やファーの眼はこれくらいでは誤魔化せない。

 目の前には左右に果てなく広がる結界と、鬱蒼と生い茂る深い森が映っている。

 (まずは結界を破らないとね?……やる?)

 「やるさ!……ファー!」

 俺はファーを呼び込む。

 ファーが光の粒子となり、俺の体内に入り込む。

 力が俺の体の隅々まで行き渡る。

 俺はファリスを抜き叫ぶ。

 「ドラグーン!」

 手の中のファリスが光の粒子となり、形を変えていく……一瞬後には俺の手には拳銃が握られる。

 M29マグナム・ドラグーン改だ。

 俺はグリップを両手で握り、眼前の結界に向けて構える。

 ……5・4・3……

 カウントダウンをしながら魔力を注いでいく。

 ……2・1……

 銃口から溢れ出す魔力が虹色に輝く。

 ……シュート!

 ドラグーンの銃口から膨大な魔力が放出され、結界に吸い込まれる。

 ドゥォーンッ!

 直後、着弾地点を中心に爆音が響く。

 

 ……やがて、爆音と、爆風による砂煙が収まると、そこにはほんの少しだけ傷がついた、結界が悠然と立ちふさがっていた。

 「……えーと、これだけ?……マジかぁー。」

 俺は、その場でうずくまる。

 (あれだけ格好つけて、結果がこれじゃぁねぇ……。)

 「言うなよー、余計落ち込む。」

 (レイさぁ、あの呪印外したら?アレのせいで効率が25%程落ちてるのよ?)

 ファーは、周りのエネルギーを吸い取り自分のエネルギーとして変換することが出来る。

 これが精霊蟲毒によって、歪められ強化された。

 そのため、俺の魔力を外部に放出させるのを阻害する封印に関しても、封印が吸い取る魔力を、そのまま吸い取り自分のものにしている為、精霊化している時なら自在に魔力が使えていたのだが……。そうか、それでもロスはあったのか。


 「外せるなら、外したいんだけどな……。」

 俺は、ファーに封印の事を説明する。

 封印を施した魔人の事、解呪するための儀式の事など……。

 (へー、そうなんだぁ?……でも外せるよ?)

 「へっ?」

 我ながら間抜けな声が出てしまった。

 ……外せる……だと?

 「いや……だって……解呪には……」

 (さっき言ってた儀式って、要は各属性の力を魔法陣で増幅して、力技で封印を吹き飛ばすってものだからね。

 私の特性と属性なら、大半をカバーできるし、足りない分はレイの魔力を乗せれば……いけるんじゃない?)


 ……あれだけ苦労していた封印が、解けるのか……。

 俺は、今までの苦労を感慨深げに思い出す。

 ……ん?あれ?あまり苦労した覚えないな?

 ……まいっか。


 「どうすればいい?」

 (今からイメージを送るから、その魔法陣用意して。)

 「OK……!」

 俺は頭の中に浮かんだ魔法陣を描いていく。

 要所に魔晶石をセットする。

 「出来たぞ、これからどうする?」

 (うーん、一緒の方がいいかな?精霊化しよ?)

 俺は言われるがまま、ファーを取り込む。

 (魔法陣の中央に立って……そう……後は魔力を少しづづ魔法陣に流し込むように……そう、後は私の誘導に従って……そうそう……そのまま、流して……。)

 俺からあふれる魔力が魔法陣を巡り戻ってくる。

 魔力の循環量が多くなり、速くなる……。

 魔力全体が虹色に輝き、上空へと立ち上っていく。

 虹色の光の柱の中心に俺がいる……。 

 周りからの光が俺の中に吸い込まれていく……。

 すべての光が俺の中へ……そして、封印が施された呪印へと集まっていく。

 (破邪!)

 ファーの掛け声とともに光が弾ける。

 ……やがて光が消え去り、静寂が戻ってくる。


 (無事解呪できたみたいね……腕吹っ飛ばなくてよかったね。)

 小妖精の姿に戻ったファーがとんでもないことを言い出す。

 「おい、コラッ!、腕吹っ飛ぶってなんだよ!聞いてないぞ。」

 (あれ?言ってなかったっけ?タイミングが狂うと魔力が暴発するって。)

 「聞いてねぇーよ!なに、危ない事してくれるんじゃ!」

 (まぁ、まぁ、無事成功したからいいじゃない。)

 「……ま、いいけど……しかし、ゴッソリ魔力持ってかれたな。しばらく立てないぞ。」

 (う……ん……私もね、結構力使ったから……今日はこのまま休も?)

 「……それはいいが……無防備だぞ。」

 (大丈夫よ……認識阻害の魔法効いてるから、誰もここに居ることに気付かないわよ。)

 「そっか、じゃぁ大丈夫かな。」

 (そうそう。大丈……夫……)

 ファーが、力を失い地面へと落ちる。

 「ッと……。」

 ファーの体が地面へ落ちる前に、何とか受け止める。

 (……あは……今日は、もう打ち止め。)

 ファーが力なく笑い……そのまま意識を失う。

 「……お疲れ……ファー。」

 俺はファーをゆっくりと柔らかい地面に降し、布をかけてやる。

 『光を力とし癒しの力と成せ』

 俺は、ファーに手をかざす。

 ・・・『癒しの光(ライトヒール)!』

 俺の手からあふれる光がファーの体を包み込む。

 (すー……すぅー……。)

 光が収まる頃には、ファーから穏やかな寝息が聞こえてきた。

 「おやすみ、ファー。」

 

 ……ファーのおかげで、俺の封印が解けた。 

 枯渇寸前まで、持っていかれた魔力だったが、すでに半分ぐらいまで回復している。

 俺は、周りの枝や木切れを集め……『着火(ティンダー)』……火を点ける。

 ……ん、いいねー、自由に魔法が使える。

 さて、このまま色々試してみたい所だが……魔力不足で明日動けないのも困るしな。

 大人しく寝るか。

 俺はファーの傍で横になる。


 

 「さて、仕切り直しだな。」

 翌朝、俺はドラグーンを構え、昨日の場所に立つ。

 (私も元気一杯だからね。遠慮しなくていいよ!)

 俺達はすでに精霊化している。

 封印によるロスがなくなったせいか、いつもより体が軽い。

 「……3・2・1……。」

 溢れ出す魔力を抑え、ドラグーンに収束する。

 「シュート!」

 虹色の光が、結界へ向かって放たれる。

 結界に光が吸い込まれていく……。

 ピシッ……ピシッ……ピシッ!……

 光が吸い込まれた場所を中心に結界にヒビが入り、そして……

 ……パリーンッ!

 結界がはじけ飛ぶ。


 「さて、行くか。」

 俺は眼前に広がる森に向かって踏み出した。

 


 

次回、ミリィとの再会……予定です(^^;

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