中級奴隷と邪妖精
「俺はレイフォード、お前は?」
俺は再度、目の前にいる小妖精に話しかける。
名前ぐらい教えてもらわないと、呼びにくい。
(はぁ?何言ってんのよ?契約したわけでもないし、精霊がそう易々と名前を告げるわけないでしょ!)
フェアリーがそう言うが……エアリーゼなんて、簡単に名乗ってたような気もする……それより……。
「お前『精霊』だったのか?どう見てもフェアリーにしか見えないから妖精族かと思ったんだが?」
確かに精霊ならば内包している魔力圧もうなずける。
自我ある事、魔力量などから考えて、上級に位置するだろう。
(バッカじゃないの?私のどこが「小妖精」なのよ?どこからどう見たって……。)
フェアリーは自分の体を見て、言葉に詰まる……。
(……そっか……そう言う事か……。)
フェアリーが一人で、何やらブツブツ言っている。
漏れ聞こえる声はなんだか悲しそうだった。
(私の名前は「ファーリース」……ファーでいいわ……今となっては意味のない名前だけどね。)
フェアリー……いや、ファーがそう言う。
「意味のない……ってどういうことだ?」
(私の事はどうでもいいのよ。後でわかるわ。それよりアリゼ姉さまの事話してよ。)
俺は疑問に思ったことを聞いてみるが、教えてもらえなかった。
あとでわかるという事だし、とりあえずここはファーの要望に応えよう。
「アリゼ姉さまって……エアリーゼの事か?」
(そうそう、名前で呼んでるってことはかなり近しい間柄なんでしょ?ここに居ないってことは契約していないみたいだけど、どこであったの?今どうしてるの?)
「エアリーゼは俺の大切な……。」
俺はそこで言葉を切る……俺にとってリィズはどういう関係なんだろうか?
好意を寄せてくれているのはわかる。
……というより、あれだけあからさまだと、わからない方がおかしいだろ。
恋人……とは言えないな……でも、キスしたっけ……あ、ミリィとも……。
友人……というと距離があるようで嫌だし……ウーン……。
(大切な……なんなのよ!)
急に黙り込んだ俺に、ファーが怒ったように訊ねてくる。
「あぁ、大切な……家族……そう、大切な家族だよ。」
そうだ、家族だ。
友人とか、恋人とか、そういう枠を超えて、いつも一緒にいるのが当たり前、そばにいるのが当然……そんな存在……リィズもミリィもソラも、家族で、俺のモノなんだよ。
(アリゼ姉さまが家族??どゆこと??)
「あぁ、ごめん。そうじゃなくて、エアリーゼは俺の大事な家族のリィズと契約してるんだよ。」
まぁ、大きな意味ではファルスもエアリーゼの家族と言えなくもないか……。
俺は、ファーに精霊の森のでエアリーゼにあった事から、リィズの事、ファルスとソラの事、ミリィの事などを話した。
……話しているうちに懐かしくて涙ぐんでしまったことは内緒だ。
まだ、離れてから1ヶ月もたっていないのに……情けない。
ファーは俺の話を「姉さまらしぃ」とか「バッカじゃないの」など、相槌を打ちながら楽しそうに聞いていた。所々淋しそうな感情を感じたのは気のせいではないだろう。
(アリゼ姉様は楽しくやってるんだね……ありがとう。話してくれて)
ファーがお礼を言ってくる。
「大した事じゃないさ、それよりファーの事……話してくれるか?」
ファーの雰囲気と合わない禍々しい気配、見かけと合わない魔力圧、時折見せる寂しそうな感情……そして意味がないといった名前……かなり複雑な事情があるのはすぐわかったが、話したくないというのであれば、無理に聞き出すことはしないでおこうと思う。
(……あなたの話に出てきたファルス……神格から精霊格に落とされた……どう思う?どう思った?)
しばらくの無言の後、ファーがそんな事を聞いてくる。
「どう……と言われてもなぁ。本人がよければ……としか言いようがないな。ファルスも楽しそうだし、いいんじゃないのか?」
正直、ファーが何を聞きたいのか見当もつかない。
(本当に?格を落とされたのよ!精霊落ちしたのよ!それなのに楽しいって思ってる?本当にそう思ってるの!?)
ファーが、ヒステリックに叫ぶ。
精霊や神々などは、肉体に縛られない存在であるが故に「階位」を拠り所にしている。
「階位」は精神の格を表すもので……よくわからないが、階位が高い者は偉い、低い者は大したことない……という事らしい。
それだけに、階位が上がることを栄誉とし、落とされることを恥だと思うらしいのだが……。
「精霊の事はよくわからないけどさぁ、少なくとも今のファルスは、ソラと一緒に居ることを望んでいるし、楽しいと思っているのは間違いないぜ。」
……他の精霊が寄ってこないように画策してるぐらいだしなぁ。
「神のままだったらソラと一緒に居られなかった。精霊だから一緒に居られるって、最近よく聞かされてたよ。」
(……本当に……そうなの……かな?……だったらいいな………)
ファーが、ブツブツ言っている。
とりあえず、ファーが落ち着くまで待とうか。
(レイ、あのね……最初に言っておくわ。今の私は人間が……憎い!滅びても構わないとさえ思っている。)
ファーから激しい憎悪が伝わる。
先程迄の着やすい感覚が消え、憎悪に飲み込まれそうになる。
今のファーを見れば、あの禍々しさは間違いなく彼女から発せられるものだとわかる。
しかし、俺は知っている。
……エアリーゼの話を聞いていた時の、彼女の笑顔と愛らしさ。エアリーゼに対する親愛の情……あの姿は本来のファーの姿だ。
「な……何が……あった?……教えて……くれる……のか?」
俺は、憎悪に飲み込まれそうになる感情を必死で押し止め、ファーに訊ねる。
(そうね……あなたなら……アリゼ姉様を家族と思ってくれているあなたになら……賭けてもいいかもね。)
後半は声が小さくて聞き取れなかった。
ファーから力が抜けた感じがする……と同時に俺の周りで蠢いていた憎悪の意思も消えてゆく……体が楽になった気がする。
(レイ、あなたは「蟲毒」って知ってる?)
「あぁ、知っている。」
蟲毒……小さな瓶に百匹の毒虫を詰め、争わせ強力な最後に残った最凶の毒虫を作り上げ、毒として使用したり、呪術の道具としたりする……それなりに有名なヤツだ。
(昔ね、精霊を使って蟲毒を作ろうとした魔術師がいたの。……私たちを閉じ込めた太古の人間が何をしようとしていたのかはわからないわ……)
ファーが閉じ込められていた小瓶は「精霊瓶」と呼ばれるもので、精霊を中に閉じ込めておくための物だ。
本来は火山の中に水精霊を連れて行くときに連れて行くなど「外部から精霊を守るため」に作られたものなのだが、いつしか「精霊を捕まえ閉じこめる物」に変わってしまったらしい。
瓶の周りに描かれている紋様は「精霊紋」と呼ばれる特殊なもので、この紋様の形によって様々な効果を及ぼす。
普通は、精霊の力を封じ込めるだけだが、ファーたちが閉じ込められた瓶には精霊だけに効く、呪詛や怨嗟、状態異常を引き起こすなどの効果が組み込まれていたらしい。
(狭い瓶の中でね、ギュウギュウに押し込まれ、ずっと怨嗟の声や呪詛を受けていればね……おかしくなって当然よ。)
力のない者から怨嗟にとらわれ、呪詛に負け、周りを飲み込んでいく。
上級精霊としての力を持っていたファーだが、最初こそ、周りを励まし頑張っていたものの、徐々に増えていく狂った精霊達には力負けをしていく。
負けないために、自我を保つために、弱い精霊を取り込み……それは同時に呪詛と怨嗟をその身に蓄えていくことになり……。
長い年月が過ぎる……自分以外の精霊の存在がない事を何とも思わなくなっていても……外に出る事は出来ずそれでも自我を手放すことだけは矜持が許さず……ずっと長い年月、いつか外に出れることを一縷の望みに耐えていた。
(もうね、自分が何やってるのかも、何者なのかもわからないくらい気薄になっていたんだけど、ある時、突然、懐かしい気配に触れた気がしたの。)
「それが、俺が入ってきた時ってわけか。」
(そう……すごく懐かしい感覚がよみがえってきて、私という自我が、ストンと入ってきてね……)
長い年月の間、自分の自我を守る事だけに専念していた……他の精霊の力を取り込み呪詛と怨嗟を受け止め、それすらも取り込み……。
そのために精霊から妖精族にまで格落ちして……属性もグチャグチャ……しいて言うなら「混沌」の属性だろうか……出来上がったのが今のファーというわけだ。
(もう精霊じゃないみたいだからね……契約に必要な「名前」も意味をなさないわ)
「意味がないって……そう言う事か。……でもな、ファーがファーである限り、俺にとって「ファーリース」という名前は他の誰でもない、ファーを指し示すものって事には変わりはない。」
だから意味なくなんてないさ……と慰める。
(私が私である限り……ね。アリゼ姉様が見込んだだけはあるって事ね……。いいわ、契約なんて出来ないだろうけど、私があなたに力を貸してあげる。だから、必ずアリゼ姉さまの所まで連れて行きなさい!)
ファーはそう言うと、体から光を発する。
やがて、光が収束し掻き消えると、俺の手元に一つの石が残された。
「……これは……ファーの……精霊石?」
(そうよ……やればできるもんなのね。精霊としての力も使えるみたいよ。……ちょうどタイミングよく私の力を見せつける相手が来たわね)
ファーの言葉に辺りを見回すと、前方に中型犬ぐらいの大きさの獣が姿を現す。
よく見ると……頭が二つ……双頭狼か!
なぜこんなところに……ってそうか。
俺はふと依頼の事を思い出した。
(この部屋の隙間に次元の裂け目があってね……この部屋から発する瘴気……まぁ、あの精霊瓶なんだけどに誘われてやってくるようになったのよ。)
ファーが教えてくれる。
つまり、あの裂け目から、普段はいない魔物が出てきて、それがダンジョンに出てしまったのを目撃されたって事か。
これで依頼は完了だな。……帰るか。
(ちょ、ちょっと、あれ放っておく気?)
「いや、だって、俺碌な武器持ってないし?」
(私の力見せつけるって言ったでしょ!もう……ふんふん……なるほど……面白いわね……)
ファーの精霊石から魔力が流れ込み、俺の体内を駆け巡る……なんか色々探られている感触がした。
(今回は……これでいいか……。そのボロボロの安っぽい剣を握りなさいよ!)
「安っぽいって……まぁ、安物だけどさ。」
俺は言われるがままにショップで買った銅っぽい金属の剣を握る。
(いい、今回は特別だからね。早く依り代作りなさいよ!)
そう言った後、頭の中にイメージが流れ込む。
俺はそのイメージのまま握った剣をベースに魔力を形成していく……。
やがて、魔力が固定化され、一振りの剣となる。
『精霊剣』
頭の中に声が響く。
(私の力を具現化したものよ。今回はあなたの魔力も借りてるから、早めに片づけることをお勧めするわ)
柄の部分は長めにとってあり、片手でも両手でも使えるようになってる。
直刀ではなく反りが入っていて、根本付近には返しがあり……何とも言えない形状だ……しかし、しっくりと手に馴染む。
禍々しさと清廉さが同居したとしか言えない……形容しがたい形状と魔力を放つ剣……それが精霊剣だ。
……ファーを具現化か……。ピッタリだな。
俺は双頭狼たちに向かて剣を振るう。
切り裂く度に、剣が力を吸い取る感じがする。
そしてその力を剣自体が纏っていく……。
(あなた……魔法使えるんでしょ?撃っときなよ……溜まってるみたいだし、出さないと体に悪いよぉー。)
頭の中にニヤニヤしているファーのイメージが浮かぶ。
べ、別に溜まってなんか……。
(あれぇー、私はま・りょ・く・が溜まってるみたいだから、放出したらってすすめてるんだけどぉ……何と勘違いしてるのかなぁ?)
「ええぃ、うるさいぞ!……『大いなる風の龍!』」
俺は、誤魔化すように魔法を唱える。
ルーンも使わずイメージしただけなのに、剣先から魔力が放たれる。
放たれた魔力は風の渦となり、竜巻となって双頭狼たちを飲み込んでいく。
今までは、魔力を流した時、腕の紋様の所で堰き止められる感じがして、それを無理やり流し込むように力技で押し出していたのだが……。
今回、何故かすっと体から魔力が引き出される感じがした。
……剣に吸い取られると言った方がイメージが近いかな?
一度剣に吸い取られ、溜まった魔力を放つ……今回の魔法の発動はそんなプロセスが一番近いイメージだった。
(あなた、この変な呪印で力抑えようとしているんだろうけど……私には意味ないからねぇ。)
アハッ……アハハ……なんてことだ。
「ファー、お前最高だぜ!」
思わず剣に抱きつくが、光が薄れ、ボロボロと崩れ落ちていく。
(キモッ!まぁ、感謝するのはいいけど、早く依り代作りなさいよ。今回はアンタの溜まりに溜まってたモノを使ったからよかったけど、私一人の力じゃ、あそこまで顕現できないんだからね。)
ファーは元のフェアリー姿で現れる。
「あぁ、サンキューな。凄いすっきりしたぜ!」
(溜まってたモノ出してすっきりしたって……キモッ!)
「お、おまっ……。」
まぁ、いいか。
ファーのおかげで、この先の目途も立ったしな。
「さて、俺は一旦上に戻るが……ファーは……どうすればいいんだろうか?」
(どうするって……ついて行くに決まってんじゃない!)
何をバカなことを!と言わんばかりに言い募る。
「しかしなぁ……。」
俺は今の地上の状況、決まり、俺の立場などをファーに教える。
(なるほどねぇ……つまり、レイは私が他の男に取られちゃうことを心配してるんだね。)
ファーのニヤニヤが止まらない。
「違う!……違わないけど違う!」
(どっちなのさ……はぁ、私が可愛いから心配なのはわかるけどね、姿消していれば誰も分からないでしょ。石の方は……まぁ、分からないとは思うんだけどねぇ……バレたら頑張って買い戻してもらうしかないかな?……どうせ私がいなきゃただの石ころだしね。)
「なるようにしかならないって事か……。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「レイフォードちゃんおかえり。ちょっと遅かったね。大変だった?」
広場に戻った俺を見つけて、キラルゥが話しかけてくる。
「まぁ、大変と言えば大変だったが……とりあえず、依頼は終わった。このまま報告でいいか?」
後半部分はキラルゥに近づき小声で話す。
「そう……報告は後で聞くわ。……その前に際に清算済ませてらっしゃいな。たくさん稼いだのでしょう?」
キラルゥは前半部分を耳打ちすると、後半部分は、わざと周りに聞こえるように言う。
「たくさん稼いだ」の声に、何人かが反応する。
「そうでもないさ……武器を失うし、アイテムも残ってないから、赤字にならないだけマシってぐらいだよ。」
俺は、周りの奴らに聞かせるように言う。
ここでたかられてたまるかってんだ。
「じゃぁ、先に鑑定してもらってくるよ。」
「はい、行ってらっしゃい。終わったらもう一度ここに顔出してね。」
「……この辺りは、ちょっと変わってますが、ただの石ころですねぇ……。価値もないので申し訳ないですが引き取れませんよ。」
「いいんだ、モンスターにぶつけるために沢山拾った余りだからな。一応、ダンジョンの中で得たものは全部提出って事だったからさ。」
「ゴメンナサイねぇ。決まりはそうなんですが、でもゴミは買い取れないんですよ。街に行けるようになっら外で売るといいですよ。ゴミみたいなものでも2~30ミネラで買い取ってくれることもありそうですから。」
「んーと、扱いとしては、これ俺のものって事でいいんかな?次ダンジョンに潜るとき普通に持ち込んでも構わない?」
「そうですね、構いませんよ。……でも、こんな石ころ役に立つんですか?」
「あぁ、意外とね。注意を引いたり罠に誘導するには、石ころが便利なのさ。」
……嘘は言ってない。
結局、魔種が全部で1万2800ミネラ、モンスター素材がレア素材含めて2万ミネラ、採集素材が全部で8000ミネラ……合わせて4万800ミネラになった。
依頼分にあたるゴーレムと双頭狼の魔種と素材は別にしてあるので、それらを合わせれば、二等奴隷にあがれるだろう。
「ちょっと聞きたいんだが、ショップには調合セットとか、錬金セットとか、そういう職人用のアイテムって売ってないのか?」
「あぁ……たまにいますね、そう聞いてくる人……ありませんよ。街の人の仕事奪っちゃう可能性がありますからね。そういうのが欲しかったら、街で直接交渉してくださいね。」
あ、ちなみに……と受付のおねぇさんが教えてくれる。
「製作依頼も街でお願いしますね。……街に出れない下級奴隷の皆さんは、中級以上の人に頼むといいですよ。……そういう仲介をしてくれる人もいますから。」
「なるほど……ありがとう。」
俺は礼を言って、受付を離れる。
どちらにしろ、早く中級にあがらないと、ってことか。
中級にあがるためには、あと3つのステップ。
まず、ダンジョンに潜り5万ミネラ上納する。これで二等奴隷に……これは、この後キラルゥに頼んでクリアだな。
次に、初心者ダンジョン3つの最下層までたどり着き採集を行う。そして15万ミネラ上納……一つのダンジョンはクリアしているのであと二つのダンジョンだな。あと二つクリアする頃には金もたまる事だろう……。
……最短で2日……かけても5日でクリアしたいな。
最後は試験依頼のクリアと、30万ミネラの上納か……試験の内容が分からない限り、何とも言えないなぁ。
まぁ、余程じゃない限り1週間も見ておけば大丈夫だと思うけど……。
「それで、『別のモンスター』は存在したのかしら?」
「あぁ、存在した。」
これを見てくれ……と、記録結晶を渡す。
「これは……ロックゴーレム?……それから、こっちは双頭狼。どちらも、このダンジョンにいられると困るモンスターね。」
記録結晶を見たキラルゥはそう判断を下す。
「で、これが素材と魔種だ」
そう言って、俺は3等級の魔種8個とゴーレムの石数個と双頭狼の毛皮を渡す。
「あ、あなた、倒した……の?」
「偶然だよ、偶然。持ってるアイテム投げつけたら、爆発して……。」
嘘は言っていない……。
「それより、爆発したことで、壁に穴が開いて、そこが小部屋になってたんだよ。その小部屋の中に双頭狼の群れがいたんだ。」
……端折ってるけど、嘘は言ってないな。
「その双頭狼はどうやって倒したの?」
「いやぁ……、実は部屋の中に「何か力あるもの」が封じられた瓶があってさ、……爆発で砕けちゃったみたいで……その中に封じられていた力がバッサリとやっちゃたんじゃないかなぁ?」
アハハ……と笑ってごまかす。
かなり詳細を省いたけど、嘘は言ってないよ。
「そうなの……?」
キラルゥは疑わしそうに見つめてくるが……嘘は言ってないからな。
「あ、そうそう、これ、その小瓶の破片。」
俺はファーが入っていた瓶の破片を渡す。
精霊紋が施された瓶の欠片を見て、俺の話の信憑性がましたみたいだ。
「どうやら本当の話しみたいね。……いいわ、後はこちらから調査団を派遣します。」
「依頼、無事終了って事でいいのかな?」
「そうね、終了よ。依頼料はこちら……基本料3000ミネラに未確認モンスター2体分を合わせて5000ミネラ。加えて、倒して頂いた事による追加調査料に、新しい部屋の発見及び調査料、素材買取料……全部で4万8千ミネラになります。」
そう言って、ミネラ紙幣を渡してくれる。
「いや、それ預り所へ……。」
「あらぁ―、ちゃんと勉強の成果が出てるのねぇー。」
キラルゥは、ニマニマ笑っている。
「あとね、これ……どうする?」
そう言って差し出してきたものは「ゴーレムの破片」だった。
「ここの査定所だと、これは「単なる石ころ」で価値がないのよねぇ。望むなら「特別に一つ30ミネア」で買い取ってあげるけど?」
ゴーレムの破片はかなり集めてきた……50個はあるだろう。一つ30ミネアなら1500ミネアになる……価値のない石ころが1500ミネアなら美味しい話なんだろうが……。
「それ、本気で言ってるのか?」
「あら、本気よ?ただの石ころを頑張った御褒美で買い取ってあげる。悪い話じゃないと思うけど?」
「……ふっ「価値のない石ころで値が付かない」のなら、俺の物にしても構わないんだろ?」
「えぇ、規約ではそうなってるわね。」
キラルゥが嬉しそうに笑う。
よくできましたって顔だ……一体どれだけの事を隠しているのやら……。
「その石は俺が全部もらう……石ころを集めるのは趣味だからな。」
俺は笑い返す。……ちゃんとわかってるんだぞと言う意思を込めて。
「それより……。」
「わかってるわよ。……はい、これが二等奴隷の証明書。そのタグを貸しなさいな。」
俺は、首から下げたタグをキラルゥに渡す。
これは、身分証明なもので、このタグに奴隷情報が記載されている。
また、預り所さえ開設しておけば、このタグ一つでミネアのやり取りもできる。
「これで良し……あなたは、今から二等奴隷になったわ。寝泊りも1階層上を使ってね。」
「あぁ、明日は別の初心者ダンジョンに行きたいから、手続き頼むな。」
「一人はお勧めできないんだけどなぁ。」
「無理はしないさ。それにパーティの後ろからグサリ!とやられるよりは安全だろ?」
「あらぁ……レイちゃんが捻くれちゃってるわぁ……一体誰の所為かしらぁ?」
「ここの環境の所為だろ?」
俺は言い捨てて、部屋を出ていく。
最下層の一つ上……基本的には最下層と変わりないが……仕切りがある。
荷物とか、ガラクタの配置に工夫すれば、無防備な状態で寝なくても済むのはありがたい。
「……ファー……いるか?」
俺は小声で呼びかける。
(いるわよ。)
ファーが姿を現す。
「しばらく不自由かけるけど、上にいる間はなるべく姿を隠していてくれ。
依り代は……半月程かかりそうだ。悪いな。」
(いいわよ。あなたを通してみる外界も、それはそれで面白いからね。依り代については、普通そんなに早くできるもんじゃないしね。)
「そうなんだ……エアリーゼは早く作れってうるさかったぞ。丸1日かけただけで文句のオンパレード。」
(くすっ。アリゼ姉様らしいわね。……よほどあなたの事信用してたんでしょうね。)
「そうかぁ?」
(そうよー)
「ここを出たら、みんなで一緒に旅をしような……。」
(それって「フラグ」ってやつだよね、だよね?)
「ハハハ……、フラグは折るために存在するのさ。立てなきゃ折れない。」
(なにぃ、それぇーーー)
ファーがケラケラ笑う。
……なんかいいな、久しぶりにゆっくり寝れそうだ……。
ファーと他愛もないおしゃべりをしているうちに、いつしか、俺は眠りに落ちて行った。
邪妖精のファーが仲間になった……。
これで、レイフォードも精霊(?)持ちです。
そして、レイフォードは溜まっていたものをファーリースに抜いてもらってスッキリしたそうです。
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