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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
紋章王国

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紋章世界の終焉と再建 後編

「いやぁぁぁぁ………。」


一際大きな声をあげて、少女が果てる。


と同時に、俺の中に鍵がまた一つ収まる感じがする。


「……終わったっすか?」


闇の中から、別の少女の声が聞こえる。


「リィズか?あぁ、見ての通りだ。」


「……犯罪の後そのものっすね。」


「いや、まぁ、やってることは犯罪と変わらんだろ。」


リィズの言葉に苦笑しながら答える。


実際、嫌がる少女を押さえつけ、身動きできないままに力づくで犯したのだ。それが世界を救うのに必要な事であり、女神のお墨付きだったとしても、犯罪以外の何物でもない。


リィズは、疲れ果てて意識を失っている少女に洗浄魔法が込められた小瓶を投げつける。


ベッドの上に横たわる少女にあたる瞬間、小瓶は砕け散り、中に封じ込められた光が辺りを覆う。


光が消え去ると、少女の身体についた汚れ、シーツにしみ込んだ汚れなどがきれいさっぱりと消え失せる。


残っているのは、選択したばかりのようなまっさらの綺麗なシーツの上に横たわっている全裸の少女だけだ。


「じゃぁ、とっとと逃げるっす。……にぃにのロリコン。」


「ちょ、待っ……違うからなっ!」


窓を乗り越え、走りだしたリィズを追いかけながら、必死に言い訳をする。


「嘘つき……私とヤる時より嬉しそうだった。」


振り返らずにそう言うリィズの声には、何処か拗ねたような調子が含まれている。


「そ、それは……。」


リィズやカナミたち以外と、こういう事するのは初めての事だったから、興奮しなかったと言えばうそになる。


ただ、その対象が10歳を少し超えたぐらいの少女と言う事が問題なだけで……。


「クッソぉ、これも全部女神の所為だろぉぉぉ!」


リィズと共に、暗闇の聖王都の中を駆け抜けながら、そう毒づくのだった。


  ◇ ◇ ◇


『現在、レイフォードさんの中にはすでに二つの刻印が揃っていますよね?』


エルフィーネの問いかけに俺は頷く。


『では、リズノア聖王国へ向かうといいでしょう。リズノアの聖女は、ミルファースとの同調率が高いので、彼女を通じて連絡をしておきましょう。あなたが姿を現せば、受け入れてくれるはずです。』


……女神、エルフィーネはそう言って、現れた時と同じように、唐突に姿を消したのだ。


そして俺は、リィズを伴ってリズノア聖王国の聖都に入り、王宮にある聖女の寝所に侵入したのだ……受け入れてもらえるという女神の言葉を信じて。


「……それがこれだもんなぁ。」


俺は、ベッドの上で四肢を拡げた状態で拘束された聖女の姿を見下ろして、ため息をつく。


俺が姿を見せると、聖女は喚き暴れだしたので、仕方がなく拘束したのだ。


「猿轡を外しても騒がないと誓えるか?」


俺は少女の顔の傍まで口を寄せると、そう囁く。


寝所の周りに居る筈の護衛や側使えなどは、リィズが上手く排除しているはずだが、これ以上騒がれては、リィズ一人の手に余るだろう。


そうなってしまったら、聖女を攫うしか手は無くなり、聖女を攫ってしまえば、その後の収拾がつかなくなる。


だから、静かにしてほしいという願いを込めてそう告げると、聖女はコクコクと小さく頷く。


それを見て、俺は少女の口を塞いでいる布を外してやる。


「……あなたがミルファース様の神託にあった魔王ですね。」


聖女は、俺をキッと睨みつけ、そう問いかけてくる。


その言葉から、一応話が通っているのだという事が分かり、少しだけホッとする。


「状況は聞いてるんだな、じゃぁ、話は早い。」


「いやですっ!いくらご神託と言えども、何で私があなたに初めてを捧げなければならないんですかっ!」


……全然納得してないじゃないか。女神の嘘つき。




…………合意の上で済む話だったはずが、聖女の思わぬ抵抗に遭い、結果として犯罪まがい……いや、犯罪そのもので聖女の純潔を無理やり奪って、今こうして逃走中という訳である。


女神に対して文句の一つや二つぐらい言ってもばちは当たらないだろう。


「……にぃにがロリコンでも犯罪者でも、私はどこまでもついて行くっすよ。」


リィズの慰めが、傷ついた心に塩を塗るのだった。



「……次はセレスよね?どうするの?」


魔王城に戻り、一息ついたところで、カナミがそう訊ねてくる。


俺とリィズが、リズノア攻略の間、カナミはリノアの抑えと、この魔王城の制御をお願いしていた。


現在、この魔王城は天空に浮かんでいる。


セレスと決別した以上、あのまま帝国西部に城を置いておくのは、色々面倒な事が起きるからだ。


城を天空に浮かべるにあたり、城内に働いていた者達は皆解雇して追い出したのだが、メイド隊の中には、追い出されたら奴隷になるしかない、というものが数多くいて「どうせ奴隷になるなら、魔王様の奴隷にしてください」と懇願されたため、「奴隷になってもここに居たい」と言う者達のみ、城内に住まわせている。


彼女たちには「制御」の刻印を植え付け、今後この城の移動などの制御を担ってもらう事にした。


その為の訓練にカナミを残していったのだが、カナミの教え方が良かったのか、今では、カナミ無しでも、制御が出来るようになっている。


だから、今度こそ留守番はイヤだ、とばかりに詰め寄ってきているという訳なのだが……。


「セレスなぁ。どうしようか。」


正直、彼女と契りを交わすだけであれば、それほど難しくはないと考えている。


何か……女神の話を信じるのであれば、意志を持ったシステム……にそそのかされたとはいえ、彼女自身が変質したわけでもなく、幾度か、接触を試みようとしてくれている。


だから、「話がしたい」と言って呼び出せば、ノコノコと出てくるだろう。


そして、彼女が俺に好意を抱いていることは、指摘されるまでもなく丸わかりなので、ヘタレる気持ちを押し込めて、少し甘い言葉を囁いてやれば、用意に堕とせることは間違いない。これはカナミのお墨付きでもある。


そうすれば、後はリノアを呼び出して、女神のナイフを持たせ、俺の心臓を刺してもらえばいい……簡単な話だ。それなのに……。


「リノアが信じられないっすか?」


リィズがそう聞いてくる。


リノアには、先日呼び出し、この場で話しをしてある。彼女は青ざめながらも、世界を救うために、と決心してくれたのだ。その決意を信じてないわけじゃない、無いのだが……。


「なんか、そううまくいくはずがないって思うんだよなぁ。」


理由などない。ただ単に、そう簡単に行くわけがないという思いだけが渦巻いているのだ。


「だから、リノアが失敗する前提で行動したいと思う。」


「リノアちゃんが失敗する前提?」


カナミが、コテンと首をかしげる。


「そう、リノアが俺を殺せなかった場合、セレスに俺を殺してもらう……「勇者のシナリオ」だ。」


まず、セレスには何も知らせないことが前提だ。


セレスを呼び出し、騙して無理やり純潔を奪う。この時、ついでにマリアも頂く。マリアが冷静にセレスを宥めてしまってはその後の計画に支障をきたすからだ。


セレスには、俺を憎むべき相手、世界を脅かす魔王、このまま放っておくわけにはいかない、と憎悪を燃やしてもらわなければならないからだ。


セレスの持つトリニティの刻印を手に入れた後は、当初の予定通り、リノアと戦う。


その場でリノアが俺を刺せれば、この茶番はそこでおしまい。


リノアを勇者として祭り上げ、俺は勇者に倒された魔王として姿を消す。


後は女神たちが後始末をして、俺達を帰してくれる。


問題なのは、リノアが俺を殺せなかった場合だ。


その場合は、リノアを捕らえ、セレスに取り返す様に挑発をする。


セレスが動かないようであれば、魔王城からいくつかの街を攻撃し、魔王を倒さなければ世界が亡ぶ、魔王を倒せるのは勇者の資質を持ったセレスティア王女だけ、という事が認知されるように喧伝していく。


そこまでやれば、自然と「世界を救うには魔王を倒す」「魔王を倒せるのは勇者だけ」「勇者はセレスティア王女」という図式が出来上がる。


ここに至っては、セレスが望む望まないにかかわらず、魔王を討伐するために動かざるを得なくなる。


セレスにとって、俺は世界の敵であり、自分とその側近の純潔を無理やり奪った相手なのだから憎むには十分の理由がある。


そして、念を入れるために、セレスの前で、無理やりリノアを犯す処を見せつけることによって、その怒りを倍増させる。


そこまでやれば、いくら心根が優しいセレスと言っても、怒りのままに俺にナイフを突き立てることをためらわないだろう。


「そこまでする必要あるの?」


カナミがそう言ってくるが、失敗するわけにはいかないので、こればかりは譲るわけにはいかない。


「リノアが刺してくれれば問題ないよ。その時は、ちゃんとセレスに謝るからさ。」


だから、と俺はカナミとリィズに告げる。「リノアを頼む」と。


現在リノアはアイガス王国に在住している。……勇者王の証、アイガスの刻印をその身に宿したためだ。


本来であればサリアがその役目を負うはずだった。


しかし、帝国混乱時に王都奪回を目論んだまではよかったが、膠着状態に陥り、なんの決着もつかないまま、帝国が持ち直してしまった。


そして、帝国の後ろ盾を得たリノアが、王都を制圧、アイガスの刻印を手にしたことにより、すでにアリア自身には何の価値もないただの小娘になり果てていた。


現在のサリアは、目的を見失って、ぼーっと過ごしているという。


「どのような結果になるにしても、俺達の役目はもう少しで終わる。帰ったらみんなで出かけような。」


俺はカナミとリィズにそう声をかける。


二人は大きく頷くと、リノアのフォローをするために城を出ていく。


「さて、俺もセレスをいただきに行くとするか。」


俺は、心の中に芽生えるセレスへの罪悪感を押し殺しながら、トリニティ帝国の王城の中、セレスの寝所へと転移するのだった。

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