セレスの街にて
お待たせしました。
1年半ぶりの再開です。
「という訳で、セレスの街に着いたわけだが……。」
……聞いちゃいない。
俺は物珍しそうに周りを見ている三人娘を見て、そっとため息をつく。
というか、今にも飛び出しそうなリノアをがっしりと掴んでおく。
「うぅ、おにぃちゃん、離すのですぅ。屋台がリノアを呼んでいるのですぅ。」
「呼んでない、呼んでない。」
ジタバタと暴れるリノアを宥める事十数分、ようやく大人しくなったリノアを肩車して、ようやく落ち着いたと思ったら……。
「なぁ?」
「何ですか、おにぃちゃん?」
「カナとリィズの姿が見えないんだが?」
「おねぇちゃんたちなら、さっき屋台の方へ行きましたよ?おねぇちゃん達ばっか、ズルいのです。」
「だぁッ!、アイツらはもぅっ!」
なんか子守をしている気分になってきた。世の中のお父さんたちの休日ってこんな感じなのだろうか?
世間の悲哀というものの一端を感じたレイフォードだった。
◇
「ただいまぁ~、ってどうしたの、センパイ?」
宿の一室で、ベッドに倒れ込んでいる俺の姿を見て、カナミが慌てて駆け寄ってくる。
「エヘッ、おにぃちゃんは、リノアを気持ちよくさせるために頑張ったんだよね?」
倒れ込んでいる俺の腰の上で座っていたリノアがそう答える。
間違ってはいないが言い方っ!
「センパイッ!私というものがありながらリノアちゃんみたいな幼女を毒牙に欠けるなんてっ!」
「ちょちょっと、カナミ、待つっす!ここは一応にぃにの言い分も聞くっすよ。」
「あのぉ、リィズさん?」
「何すか?遺言はもういいっすか?」
「いやぁ、言い分を聞くって言いながら、その手にしてるのは何かなぁって?」
俺はリィズの手に握られた、刃が黒光りしているオクトエッジに視線を向ける。
「大丈夫っす、ちゃんと言い分は聞くっす。」
「それって、聞くだけ、って事だよね?」
「聞いてあげるだけ、優しいと思ってくれたらいいっすよ。」
「だぁッ!全部お前らが勝手に動くせいだろうがっ!」
俺は跳ね起きて二人を正面から見据える。
因みに、俺が跳ね起きた拍子に、リノアはSののまま跳ね飛ばされたのだが、チョンと宮中で一回転をして、見事な着地を決めて見せた。……誰も見てなかったが。
「お前らが急にいなくなるから、こっちは大変だったんだっ!」
俺は、二人がはぐれてからの出来事を話し出す。
まず、二人を探すのは早々に諦めた。この人込みでは、下手に動き回って探すより、何処かで待ち合わせたほうが無難である。
幸いにも、街について早々に宿は決めてあるので、二人もそのうち宿に戻ってくるだろう。
そう考えた俺は、今の内に雑事を済まそうと、リノアを連れてギルドへ顔を出す事にした。
◇
「そうじゃないっ、こうだっ!」
俺の動きにダメ出しをし、キレッキレの動きを見せる筋肉質の男。
「いいか、大事なのは腰だっ!もっと腰を使うんだっ!」
……なんで俺こんなこと、しているんだろう?
視線を前方に向けると、嬉しそうに歌い踊るリノアの姿がある。
そして、横を見ると、両手に色とりどりのサイリウムを握った、筋肉質の男たちが、見事なまでの『ヲタ芸』を披露している。
ってか、この世界にも、サイリウムやヲタ芸ってあるんだなぁ。
俺はそんな様子を眺めながら変なところに感心していた。
……のだが。
「だから違うって言ってるだろ!こうだ、こうっ!」
横からさっきの男の叱責が飛ぶ。
「そうだ、手は大きく振るんだ、その時身体全体を使って……。」
何故か俺は、この男たちから「ヲタ芸」の指導を受けている。
……なんでこうなったのだろう?
ノリノリのリノアを見上げながら、ギルドに顔を出した時の事を思い出す。
ギルドの扉を開けると、いつもの如く、品定めをするような視線が容赦なく襲い掛かる。
どの町でもどの世界でも変わらないことに、安心感とわずらわしさを覚える。
……どうせ、今度は絡まれるんだろ?
俺はそんなお約束を想定しながら、奥へと脚をすすめる。
「ちょいと待ちな。」
そんな俺達を押しとどめる声。
振り向くと筋肉質の、いかにもというような男が立っている。
ほら来た、と俺は予想通りの展開に、特に慌てることもなく、対応を始める。
どうせ相手は言いがかりをつけてくるだけ。少し大げさに撃退してやれば、その後は静かになる……いつもの事だ。
俺は腰にかけたポーチに手をやる。
ここには魔弾銃が仕込んである。
魔法関連に置いて複雑な事情を抱える今では、後で言い訳の聞きやすい魔道具を使った方が、話は早くて済む。
という事で、急遽こしらえた魔弾銃。直接魔力を撃ちだしたりすることも可能だし、魔法を込めた弾丸を打ち出すことも出来る。
魔法の弾丸を使用できるのは、魔力の消費を抑えることも出来るし、用途に応じて使い分けも出来る。
そして、魔力を直接打ち出すのは、激しい戦闘中など、リロードする暇がない時などには大いに役立つ。
要は使い分けって事だな。
そして、こんな風に絡んでくる相手には、スタンの魔法が仕込んである弾丸が最も効果的だ。
俺は男がどのように動いても対応できるように身構えたのだが……。
「リノアちゃんだろ?是非一曲歌ってくれないか?俺ぁ、先日のステージ見てから大ファンになってしまってよぉ。まさかこんな所で会えるなんて、ラッキーだったわっ。な、マネージャーさん、いいだろ?もちろん、金は払うぜ。」
……は?
この男、今なんつった?
リノアのファン?……誰が?
マネージャー?……誰が?
「えぇ、おじさん、リノアのファンなのぉ、嬉しいなぁ。……ねぇ、おにぃちゃん、歌ってもいい?ふぁんさーびすは大事って言ってたよね?」
「あ、あぁ。」
「やったっ。」
……ダメだ、頭が回らない。ファンサービス?確かに大事なんだが……。
俺が混乱している間にも、いつの間にかギルド内に簡易ステージが作られ、その上に立ったリノアにスポットライトがあてられる。
「みんなぁ!リノアのファンでいてくれて、ありがとぉ!リノア、とっても嬉しいから、特別に1強歌っちゃうよぉ!」
「うぉぉぉぉぉ~!」
「リっノアちゃぁぁぁん!」
リノアの愛らしい声に応えるかのように、野太い声がギルド内に響き渡る。
「じゃぁ、聞いてください、「Fortune Pegasus」……。」
リノアの口から、軽やかでポップな歌声がこぼれだす。
持ち歌の中でも、一番乗りやすい曲なので、リノアのコンサートのセットリストの中でも、最初に持ってくることが多い曲だ。
本来であれば、ペガサスナイトの二人と三人で歌う曲なのだが、リノア一人でも十分にお客を乗せることが出来ている。
「おい、マネージャーさんがぼさっとしてんじゃないぞ!」
最初に声をかけてきた男が、俺の手にサイリウムを握らせる。
「俺達で場を盛り上げるんだ、行くぜぇっ!」
そうして始まった男たちのヲタ芸。それを見たりノアは、気をよくし、ノリノリで2曲目を歌いだす。
これも、アップテンポで、客をノせるのにちょうどいい曲なのだ。
リノアの歌声と、ヒートアップしていくヲタ芸。その熱気にあてられ、気付けば、何故か俺迄ヲタ芸をすることに……。
◇
「あんなに気持ちよく歌ったのは初めてなのですよぉ。」
リノアが嬉しそうにカナミたちに話す。
リノアの機嫌がいいのは、とても良い事ではあるが、犠牲にしたものも大きい……特に俺の腰。
「とにかくだ、明日は貴族街に行くからな。」
俺はそう言い残して、再びベッドに突っ伏す。
今日はもう動きたくない。
その夜。俺のベットにこっそりと忍び込んできたリィズが、俺が動かなくてもいいように、こっそりとご奉仕してくれたのはとてもよかった。……ウン、リィズは可愛いな。
長い間放置していてすみませんでした。
現在、エターナル撲滅運動を始めていますので、その一環として、魔王~の連載を再開しました。
他作品のケリもつけたいので、こちらの更新は不定期になりますが、週2~3回の更新は出来るように頑張りますので、これからも応援よろしくお願いします。
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