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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

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アドラーとの合流 -後編ー

 「アドラーさんかい?早い、早いよ!」

 「確かに早いっすね、行くっす!」

 っと、動揺してついネタに走ってしまった。

 まぁ、リィズには通じていない……当たり前か。

 「気をつけろよ!」

 俺は走り出すリィズの援護をする。

 「こういう時は慌てた方が負けなのよね。」

 「そうなのですか?」

 うわぁっと!

 いきなり背後から声をかけられて驚く。

 「あぁ、昔エライ人がそう言ってた。」

 いつの間にか後ろに来ていたミリィに、そう答えておく。

 

 元々、俺達が後ろで陽動、敵陣営が慌てふためいている所をアドラーたちが飛び込んでくる、と言う手筈だったはずだ。

 それが、俺達の陽動が始まる前にアドラーたちが飛び込んだようだ。

 おかげで、こちら側で糧食庫を焼いたりしても、殆どの敵が来ない。

 本命があっちにいるんだから当たり前だよな。

 アドラーたちが現れた事で、こっちの行動は陽動って事はバレている。

 しかも、アドラーさえ捕らえるか殺すことが出来れば、それでここでの戦闘は終わり、糧食があるか無いかは大きな問題ではなくなるから、無理に戦力を陽動の方へ裂く必要はない……ってか。


 「ミリィ、強行突破になるから、ここで森の入り口を確保しておいてくれ。」

 「わかりました。レイさんは?」

 「俺も、アドラーの援護に行く。ここでアドラーを助けられなかったら意味無いからな。」

 「気を付けてね。」

 「あぁ、任せておけ。」


 俺はミリィに後を任せて、リィズの後を追う。

 リィズは通りすがりに敵兵を切り倒し、道を作りながらアドラーの元へ向かっている。

 俺とリィズがアドラーたちの近くへたどり着いた時、アドラーたちはすでに取り囲まれていた。


 「ふっ、手間をかけさせてくれる。降伏しろ!命だけは助けてやる。」

 「バカな事を!この『炎雷帝アドラー』の名において、賊軍などに降る謂れはない!」

 ……あー、こっちでは自分で二つ名を名乗るんだぁ。

 (にぃに、どうするっすか……って、何遠い目をしてるんすか?)

 (いや、ちょっとな……。あの人数だ、このまま飛び込んでもムリだからな。

 ……これを、向こう側から投げつけてくれ。俺もここから魔法を撃つ。2か所の背後から攻撃を受ければ、少しは慌てるだろう。

 そのまま俺が援護するから、アドラーの元に飛び込んで、こっちに誘導してくれ。)

 俺はそう言って炸裂弾をいくつかリィズに渡す。

 (了解っす。)

 (リィズのタイミングに合わせるからな、好きにやってくれ。)

 わかったっす、と言ってポジション取りに走っていくリィズ。


 ドォゥーン!

 しばらくして、前方でアドラーたちを取り囲んでいる部隊の一角で爆発が起きる。

 いきなりの爆発で慌てふためき、統率が崩れる魔族兵達。

 (今だ!)

 『炎の爆風(ブラストファイア)!』

 爆風が、魔族兵達を吹き飛ばす。

 予想外の所からの攻撃で完全に浮足立っている。


 ズシャッ!ズシャッ!

 そこへリィズが斬り込んでいく。

 「何してるっす!走るっすよ!」

 呆然としているアドラーたちに、リィズは俺の方を指さす。

 「あ、あぁ……行くぞ!」

 我に返り、慌てて駆けだすアドラー達。

 

 『突風(ブラスト)!』

 『突風(ブラスト)!』

 俺は、走るアドラーたちに襲い掛かる魔族兵を、魔法で吹き飛ばしていく。

 「レイフォードか、迷惑かける。」

 俺を確認し、頭を下げるアドラー。

 「そんな事は後だ!このまま森へ向かって走れ!」

 『爆烈風(ストーム)!』

 後を追う魔族兵を吹き飛ばす。

 「リィズ、戻れ!」

 魔族兵と斬り結んでいるリィズに向かって叫び、リィズと敵の間が空いた瞬間を狙って魔法を放つ。

 その隙をついて、リィズはバックステップで間合いを取り、こちらに戻って来る。

 「よし、リィズ撤収だ!」

 「了解っす。」

 

 『灼熱の大爆発(エクスプロージョン)!』

 俺は振り向き様、後方へ魔法を放つ。

 そして、爆発と轟音で混乱している間に俺達は森へ向かって走り抜ける。


 「レイさん、早く!」 

 森の入り口でミリィが待っていた。

 「アドラーたちは?」

 「先へ行ったわ。私達が最後よ。」

 「よし、抜けるぞ!」

 「……森の精霊ドライアード……次代の精霊を統べし者、ミリィが命ずる。道を塞ぎ惑わしの結界を、認識を阻害し幻の行く先を……精霊幻惑世界(イリュージョン)!」

 ミリィが惑わしの魔法を森全体にかける。

 俺達が走り抜けると、背後で樹木が動く音がする。

 道を塞いで新しい道を作っているのだろう。

 幻覚系の魔法もかかるので、今後、この森は迷いの森として、天然の要害になる事は間違いない。


 森を抜けると、そこにはセレナとルナが待っていた。

 「アドラーたちは?」

 「無事保護しています。お疲れの様でしたが、ゆっくり休んでいただくためにも、アルバに先行していただいています。アルバまで着いたらハクエイ様達の護衛の下ミランの街まで移動してもらう手筈が整っています。」

 俺の質問にセレナが答えてくれる。

 「そうか、じゃぁ俺達も一旦ミランまで下がろう。」

 「申し訳ございません!」

 その時、いきなりルナさんが跪いて頭を下げる。

 「ルナさんどうしたの?頭を上げてよ。」

 「いいえ、この度の作戦の失敗は全て私の所為です。」


 ルナさんの話では、連絡を任せたアルラウネの一人が情報をしっかりと伝えず、誤った情報をアドラーへと伝えたのが原因だという事。。

 そのアルラウネと懇意にしていた、ある妖精族のモノがゼキオン派と通じていたらしい。

 要は、騙されたというか唆されたという事だ。

 「騙し・唆しは私達の分野であるのに、逆に唆されるなんて一族の恥さらしです。」

 「そ、それで、その子は?」

 ルナさんは黙って森を指さす。

 「今頃は森の養分に戻っていますわ。本当は、もっと身の程を知らしめたかったのですが……。」

  ……ルナさんの顔が怖い……。

 

 「ま、まぁ、結果として、アドラー達を助けれたわけだし、いいんじゃないか?」

 なぁ、とセレナに振ってみるが、視線を逸らせて知らない顔をしている……心なしか、その口元は笑っているようにも見える。

 クッソ、裏切り者め……

 「っと、そうだ、ミランに戻る前にゼナの砦に寄っていくか。セレナもルナさんも手伝ってくれ。」

 俺は、話を全力で逸らしにかかる。

 「にぃに、ゼナの砦で何するっすか?」

 「まぁ、ちょっとな。詳しくは道中話すよ、だから急ごう!」

 そう言って、俺達はゼナの砦を目指すことにした。


 ゼナの砦に向かう途中、俺は「気づかれずに砦全体の人間に幻覚を見せるのは可能か?」と尋ねると、ルナさんは余裕とのこと。

 「だったら……。」

 俺はこの後の計画を打ち明ける。

 「……って感じで、出来るかな?」

 「大丈夫ですよ。タイミングはお任せいたしますね。」

 「あぁ、任せておけ。」


 途中、ミリィにはサキュバスたちとアルラウネの協力者たちを引き連れてミランへと向かってもらった。

 ゼナの砦でやることは数人いればいいし、アドラー達だけ着いて俺達が戻らないと心配すると考えての事だ。


 そして辿り着いたゼナの砦……。

 「いいか、リィズ……今全体に幻覚魔法をルナがかけているから、もう少ししたら飛び込むぞ。」

 「いいすよ。適当に暴れて、向こう側に抜ければいいっすね。」

 「そうだ、後、適当に「アドラー様!」とか叫んでくれると助かる。」

 「了解っす。」


 まぁ、大した事ではないが、アドラーがここを抜けて人族側に逃亡したというアリバイを作っておこうと思ったわけだ。

 じっくり調べられたらバレるかもしれないが、ある程度の時間が稼げればいいかって程度だからな。

 「よし、そろそろいいか……リィズ行くぞ!」

 「わかったっすよ……『アドラー様、急いで!』……こんな感じでいいすかね?」

 「OKだ。」

 俺達は砦に飛び込み、手あたり次第に斬り付けていく。

 薄暗い砦の中に充満する粒子……なんでも幻覚作用のある植物の胞子らしい。

 これを大量に吸い込むと、自分に都合の良い幻覚が見えるという……後は、外的誘導で「アドラーが攻めてきた」と思わせるだけでいい。

 こいつらの眼には、俺達がアドラーの兵士に見えているはずだ。


 「アドラーが向こう側に抜けて行ったぞ!追え!逃がすな!」

 あの声はルナさんかな?

 キリッとして、強い意志を感じさせる声だ。

 いかにも隊長っぽくっていいね。

 

 俺達は敵を切り伏せながら外へと誘導し、時折、声でアドラーがどんどん先へ進んでいることを演出する。

 「そろそろいいかな……くっそー、国境を越えやがった!」

 「なに!」

 「逃げられたのか!」

 「いや、今なら間に合う!」

 俺の言葉に、各所から反応がある。


 『灼熱の大爆発(エクスプロージョン)!』


 そんな追っ手の真ん中に極大魔法を撃ち込む。

 爆風と共に弾け飛び、吹き飛ばされるゼナ砦の警備隊。

 「このままじゃ、逃げられ……る……。」

 まだ意識がある奴がいるかもしれないので、そんな事をつぶやいてみる。

 これで、生き残ったやつらが目を覚ました後「アドラーは国境を越えて人間族の領地へ逃げて行った。」と証言してくれるだろう。


 俺達は、そっと来た道を引き返す。

 ゼナの砦から、かなり離れたところで、俺達は休息をとることにした。

 「みんなありがとう。おかげで上手くいったよ。」

 「アドラー様を呼び捨てなんて……断腸の思いでしたわ。」

 ルナには、何やら思う所があるらしいが……。

 「相変わらず、見事でしたわ。」

 セレナが、ルナの広範囲にわたる魔法の作用に感心している。

 サキュバス族は、単数相手に短時間で深く魅了させる術には長けているが、今回のような広範囲にわたる不特定多数を魅了させることには向いていない。 

 まぁ、どっちが優れているってわけでもないしな。


 「とりあえず、これで少しは時間が稼げるはずだ。助かったよ。」

 俺は再度、皆にお礼を言いミランへ戻ることにした。


 ◇


 結局、ゼキオン派もアラベス派も、人間族の領土には間者を兼ねた数人を送り込んだだけで、それ以上の深追いはしなかった。

 人間とのイザコザより、今は自分の勢力を拡大することに力を注ぐことに決めたようだ。

 まぁ、下手に人族に手を出して、自分の力が削がれるのは本末転倒になるしな。

 

 俺達はそのあたりの情報を集めてから、ミランの街へ戻った。

 アドラー達がついてから3日後の事だった。

 俺はすぐにでもアドラーと話をしたかったのだが、お互いに雑事が多く、中々、会見が実現できなかった。


 「カナ、これは?」

 「ウン、領内の報告書。よくまとめられているでしょ?」

 俺の手元に回ってきた1枚の報告書……詳細は細々と多数の書類に分かれているが、基本は、この1枚を見れば大体の事が分かるようになっている。

 それはいいのだが……。

 「なぁ、カナ……俺にはこの報告書が『栄光のSLGシリーズ』のUIユーザーインターフェースに見えるんだが?」

 「ウン、だって、真似したから。」

 あっさりと答えるカナミ。

 その報告書にはあらゆるデータが数値化されていて、一目でわかるようになっていた。

 それはいいのだが……。


 「なぁ、『お金』『食料』『資材(木材・石材・金属材)』『特産品』『兵力』までは分かるんだが……。」

 ここまでは、まぁ、まとめるのは大変だろうけど、元々数値として出ている物だからわかる……が問題はここだ。

 俺はカナミに問題の所を指さして訊ねる。

 「この『生産力』とか『城塞規模・防御力』とか『民意忠誠度・治安度・反乱度』とか『兵訓練度・士気値』とかはどう数値化してるんだよ!、さらに言えば『マナ・瘴気残量』ってなんだよ。見えるのか?測れるのか?』

 ぜぃぜぃぜぃ……イカン、最近ボケばかりに走っていたため、ツッコミにキレがない。

 「レイにぃ……あんまり怒鳴ると血圧あがるよ?」

 「もう、血管切れる寸前だよ!」

 「だって……ねぇ?」


 カナミがアルガード王国で聖女をやっていた時、その土地の領主の元へ送られてくる書類を監査したことがあったそうだ。

 本当は面倒でやりたくなかったらしいのだが、聖女として赴任した途端、貴族に対する陳情が山のようによせられ、仕方なく監査を……となったのだが、カナミにそんなことが出来るわけもなく……というより、書類そのものがチンプンカンプンだったそうだ。

 まぁ、そうだろうなぁ。

 でも、聖女としての立場もあり、舐められるわけにもいかなかったため、カナミは強権を発動……すなわち報告書の在り方そのものを変更したそうだ。

 つまり、今俺の前にあるものが、ソレなわけで……。

 

 「一応ね、アルガード王国の王都を基準に何%って感じで割合で出してるの。数値としては適当だけど、他との比較だったら十分なはずよ。」

 成程ね……単なる「ボケ」じゃなかったんだな。

 「センパイじゃあるまいし、やることはやりますヨ♪」

 ちなみに、マナ・瘴気残量に関してはカナミの独自の感覚で割り出しているそうだ。

 これも基準は王都で、その時女神に確認した時の数値が「マナ残量80%。瘴気15%」だったそうで、それより多いか少ないかで記入しているという……まぁ、これが何の役に立つのかまでは分からないが。

 ……まぁ、指示出す指針としてはこの方がやりやすいからいいか。

 どこが過剰でどこが足りないのか一目両全だからな。

 とりあえず、城塞防御力と各資材の生産量のアップが優先だな。

 俺は、とりあえずその関係各所に指示を出しておく。

 しかし、最近俺によく言われる「自重」という言葉は、カナミに言うべきなんじゃないだろうか?

 

 そんな感じで、内政の追われていたため、会見が出来たのは、結局1週間たってからだった。


 ◇

 

 会見は堅苦しくない方向で行きたかったため、アドラーを招いてのお茶会という体で始まった。

 俺の両横にはカナミとリィズが座り、後ろにセレナ、セイラ、ルナが控えて立っている。

 ソラが寝ている為、ミリィはソラについているからこの場にはいない。

 アドラーは一人で座っているが、後ろにラナとレナの姉妹が、さらにそのわきを固める様に魔族兵が二人立っている。


 「アドラー、久しぶりだな。その……元気だったか?」

 「レイフォード、久しぶりだ。この度は助けてもらった事感謝する。」

 まずは軽い挨拶から……ってまどろっこしいのは好きじゃないんだよな。

 「まぁ、今回は堅苦しくなく腹を割った話がしたいのでこういう席にしたんだ。いつものようにいこうぜ。」

 「ふっ、()()()()()()()……か、お前は変わらんな。」

 俺が砕けた感じで話しかけると、アドラーは苦笑いしてそれに応える。


 「なぁ、本題に入る前に、まずは確認しておきたいことがあるんだが?」

 「それは先日あった『勇者の変革』についての事か?」

 アドラーがそう問い返してくるが、何の事か、さっぱりわからん。

 「『勇者の変革』?なんだそれは?」

 「呼び方が違うのか?この世界では稀に世界の在り様が変わることがある。存在してたモノが、元から無かったかの様に存在そのものが消えたりとか、その人物との出会いがどうしても思い出せんとかな。……大抵の場合、勇者と魔王様の決着がついた後に起きるので『勇者の変革』と呼んでいるのだが?お前にも、ソレが起きたのだろう?」

 アドラーの説明に納得がいく。

 ちなみに、アドラーは俺との親交に関しては余さず覚えていたが、出会いの部分だけどうしても思い出せず『勇者の変革』が俺の身に起きたのだと思ったそうだ。

 

 「呼び方までは知らなかったが、まさしくその通りだよ。俺の周りではこっちに連れてきている奴らと龍種以外は関係が変わっている。」

 だから、一応確認してからじゃないとこの先は話せないんだと伝える。

 色々あったが、アドラーの事は友人だと思っている。しかし、アドラーがそう思っていないのであれば、ここまでの関係となる。

 「ふっ、何を警戒しているか知らんが、話せない事は話さなくていいぞ。俺はお前のことを友人だと思っているし、魔王様が認めた男という事で一目も置いている。そのうえ今や恩人でもある……借りばかりが増えていくので、返せる機会は欲しいがな。」

 想像以上の高評価だった。

 って言うか、そんなこと言われたら、俺の方が器が小さいと思われるじゃないか。

 ちらりとリィズを見ると分かってますと言うように頷く。

 「にぃに、大丈夫っす。例え小っちゃくても私の気持は変わらないっすよ。」

 ……小っちゃい言うな。


 「ゴホン……まぁ、これからの話だよ。アドラー、これからどうする?俺は魔族領の勢力図っていうのが分からないんだが、アドラー派というか旧魔王派というか……そういう奴らをまとめ上げるか?」

 「う……む……、ムリだな。奴らは俺に忠誠を誓っていたのではなく、魔王様に忠誠を誓っていたのだ。ここで俺が立ち上がったとしても、奴らにとってはゼキオンやアラベスと何の変りもない。だったら強い者、自分に都合のいい者につくだけだ。」

 「そうか……アドラーの名前で味方が集まるなら、それもアリかとは思っていたんだが、俺が立ち上がった場合と大差ないわけだな……。」


 「ん?お前、あの二人に立ち向かうのか?」

 アドラーが面白そうに聞いてくる。

 「まぁ、な。ホントはもっとコッソリ、出来ればアドラーを矢面に立たせて、後ろでコソコソって考えていたんだが。」

 「俺が立つより、お前が前に出たほうが面白いだろうよ。よかろう、この俺の力を貸してやるぞ。」

 「チェ、結局こうなるのか。」

 「まぁまぁ、わかってた事じゃない。」

 俺が愚痴ると、カナミが宥めてくる。

 まぁ、こういう風になることも考えてはいたんだが、アドラーの面白がっている顔を見ると、何か複雑な気分だ。


 「じゃぁ、アドラーは俺の「配下」って事でいいのか?」

 俺の言葉にアドラーの後ろに立つ兵士がビクッと動く。

 「あぁ、いいさ。俺が忠誠を誓った魔王様は亡くなられた。すぐの気持ちの切り替えは難しいが、魔王様が認めた男、レイフォードにこの先を委ねるのも面白い。それに、お前がいなければ、俺はここに居なかったのだからな。一度なくした命だ、レイフォード()の為に使うと誓おうではないか。」

 「アドラー様、しかし……。」

 「黙れ!もう決めた事だ。」

 側近の兵士が何か言いかけるが、アドラーはそれを一括して黙らせる。


 俺はアドラーの眼を見る。

 嘘偽りのない目であり、器を見極めようとしている目だ。

 俺が主の器ではないと分かった時、アドラーは去るだろう。

 しかし、主たる器を見せ続ければ、永遠の忠誠を誓ってくれるだろう。 

 そう言う不器用で力強い眼に常に見られてると思えば……、俺も怠けていられないって事だな。


 「よし分かった、その忠誠しっかりと受け止めよう。そしてこれが俺からアドラーに対する最初の命令だ、しかと聞け!」

 俺の言葉にアドラーが席を立ちその場に跪く。

 「アドラー……俺の事『様』付けするの禁止な。」

 えっ?っと、その場の空気が凍り付く。

 「……センパーイ、この雰囲気でそれって……ないわー。」

 「にぃには、もっと場の空気を読むといいっすよ。」

 「えっと、口出しするのは無礼かと思いますが、さすがに今のはちょっと……ねぇ?」

 「うーん、この雰囲気なら「レイ様」より「レイちゃん」って呼んだ方かいいかしら?」

 口々に言いたいことを言う俺の仲間たち。

 アドラーを始め、向こうサイドは何も言えず固まっている。


 「そう言うけどな、アドラーから「様」なんていわれたら、背中のあたりが、こう、ぞわぞわーってくるんだよ。」

 「だからと言って……。」

 「分かった、じゃぁ、これからずっとリィズの事を「リィズ様」って呼ぶな。」

 「な、なにを言ってるっすか。」

 「何の事でしょうリィズ様?」

 「うぅ……ぞわぞわーってくるっす。」

 「ご気分でも悪いのでしょうか?リィズ様?」

 「悪かったっす。止めて欲しいっす。」

 「そのようなこと言わずに、リィズ様。リィズ様の為にお茶を用意いたしましょう。」

 「悪かったっす、謝るっす、ごめんなさい。もう許して。」

 リィズが半べそを書いているので、これくらいで許してやろう。


 「あ、あのぉ、センパイ?私の事「お嬢様」って呼んでも……いいよ?」

 ちらっと上目遣いに、くだらないこと言いだすカナミ。

 とりあえずハリセンを一発お見舞いしておいた。


 「あ、ま、そ、そうだな……よいのであれば今まで通りレイフォードと呼ばせてもらおうか。」

 アドラーの顔が引きつっている。

 「あぁ、アドラーは様付けしたり変に謙ったりせず、今まで通りに頼む。」

 「分かった、そうさせてもらう。」

 アドラーが答えたことで、この件は終わりとなった。

 

 「じゃぁ、まぁ、そう言う事で……一度下がってもらえないかな?」

 俺は、アドラーの傍に立つ4人に声をかける。

 「えっ?」

 どう反応していいか分からないアドラーの側近たちに、セレナとルナがそれぞれ助け舟を出す。

 「とりあえず、色々案内させてもらいますわ。」

 そう言って側近二人を連れだすセレナ。

 「レイフォード様から許可をもらってるから、街へ行きましょう。」

 そう言いながらラナとレナの腕を組み、部屋から出ていくルナ。

 部屋の中には俺とアドラー、そしてカナミとリィズだけが残される。


 「悪いな、あまり情報を漏らしたくないんだよ……それはお前もだろ?」

 俺がアドラーにそう問いかける。

 アドラーも何のことか分かった様だ。


 「時間が惜しいので単刀直入に聞こう。魔王の娘はどこにいる?」

 俺の言葉が部屋の中に響き渡る。

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