ピンク色
本当に肝心なところは見えてなかったんだが、気を使って言っていると思われているのだろうか?
おじさんも心配してこっち見たんだろうから事故にしとくけどこっちもわざとじゃないんだからね。おじさんも発生するかもだからとりあえずジャグジーに浸かってみろと顔を真っ赤にしながらそれだけ言って理奈は部屋を去っていった。服は持ってたがバスローブのまま出てって大丈夫なのだろうか?
何がなんだかよく分からないが
言われた通りにジャグジーに浸かると、タライが当たった鼻の血管にキズが入っていたのか暫くの間、鼻血が噴出した。白い泡のジャグジーに混ざってピンク色になり見た目は非常にファンシーだ。
野郎が独りで入ってるだけだが。
しかし、独身の男としては非常に貴重な場面を目撃したように思う。
ここがゲームに似た世界なら記憶を念写するスキルとかも得れたらいいのにな。と、かなり子供じみた発想をしていると、変な電子音と共に目の前にゲーム画面ぽいものが表示される。
まさか?いやいやそんなはずわ。な相反する気持ちで見てみる。が、心に思い描いたもの(スキル)ではなかった。
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クエスト:ブルジョワジーな気分に浸れ
※このクエストはキャラクターでは発生しません。
条件:
スカイホテルのロイヤルスイートのジャグジーに一定時間浸かる。
報酬:スキル
□鑑定Lv1
ゲームのキャラクター同様に鑑定を使うことが出来ます。
(このスキル報酬はセカンドの特性で共有する事は出来ません。得た側のみのスキルとなります。)
メモ:
身も心もほぐれた君の頭脳はフル回転。ワールドの1つの真理に到達しスキルを得た?
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おそらく先ほどの変な電子音が、理奈の言っていた音であり、クリア条件がそのままだし同じ条件のクエストをクリアしたのだろう。しかしセカンドとはなんだろうか?野球のポジションって事ではなさそうだし謎だ。
ジャグジーに浸かる理由もなくなったので、風呂から上がる。
ピッ
小さく電子音がなり視界に小さく矢印が浮かんでいる。
「・・・。」
矢印は風呂に入った状態で触れそうな位置にある水晶球を指していた。部屋の中で何ヵ所かで見かけたやつだ。
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インターホン(音声のみ)
一度タッチすると入り口に
二度続けてタッチするとフロントを呼び出せる。
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「これは便利かもしれないな。特に勝手を知らない俺にはうれしいスキルだな。」
思わずそう呟く。
ちょうど聞きたい事があったので試しにフロントを呼び出してみる。
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「それでしたらお客様が居られない間に清掃しておきますのでお気になさらないでください。ジャグジー自体も常時稼働型ですのでスイッチはございません。そのままにして頂いて問題ございません。それとお客様のプランには軽食が付いておりまして、丁度ご用意が整ったところですがお持ちしてよろしいでしょうか?」
断る理由もなく、軽食が運ばれてくる。サンドイッチや骨付きのチキン、小さめにカットされたケーキやマカロンに紅茶。部屋のゴージャス具合にはマッチしているが、旅行の予算が非常に気になる。行きの飛行機で既に赤字にしか思えないのにどうなってるいるのか?或いは思っているのと交換レートが違う?
軽食をモシャモシャと食べながら寛ぎ、スマホの時計を見ると12時になっている。腹も減る訳だ。結局、運ばれてきた軽食を完食して昼食替わりにしてしまった。
(あっ、味は非常に美味でした。食レポスキルなくてすまんな。誰に言ってるんだ俺は。)
少し早いがフロントに向かおう。
エレベーターのボタンにターゲットが合いまくってピッピッうるさい・・・。
既に知ってるという認識があるせいか、細かい説明のウィンドウが出てくる事はなかった。
フロントに着く。理奈は来ていない。
高級感溢れるホテルのフロントの片隅に場違いな感じで大きな水晶が浮いてる。
色は深い緑で透明度もある程度あるが中央部分は向こうが見透せない。
ピッ
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セーブポイント
※セカンドは使用出来ません。
グリムワールドのセーブポイント。キャラクターとプレイヤーはセーブポイントを設定出来る。致命傷を負うとセーブポイントに自動で移動し致命傷を負う前の状態に戻ります。グリムワールドの住民には見えない。
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またセカンドが出てきた。
セーブポイントの設定の選択肢なんかは出てこないので、俺がセカンドというカテゴリに属する旅行者なのが推測出来る。
ゲームぽい世界らしいし、セーブポイントという保険があると非常にうれしいのだが、これは町からは出ない方が良さそうただ。
「は、早めに来てるとか、なにか期待してるんじゃないだろうな。キモいぞおじさん!」
考察していると後ろから声を掛けられた。
(・・まだ顔が赤いな。そういうのは突っ込まない方がいいよな。)
「セーブポイントを試してみたくてね。この鑑定スキル便利だな。補足説明があるのが助かるが、どうやら俺はセカンドって名称の旅行者みたいでセーブポイントの設定は出来ないらしい。」
「か、鑑定のスキルはゲット出来たんだ。良かったじゃん。でもセーブポイント設定出来ないならおとなしくしておいた方がいいね。観光ついてきてもらうのは止めとこうか?」
「町の中なら大丈夫だろ。外に行く予定もあるならそっちは後回しにして貰って町中だけでも一緒に回りたいところだな。」
「そう?でも心配だな。そうだ護衛にフレンド呼べばいいか。この時間に誰かいるかな?おっ、ヒジちんがいる。」
「ヒジちん?」
「ちょっと待ってね。すぐ来るやつだし。」
プレイヤーはアカウントに紐付いているキャラクター間のフレンド登録を使ってやり取りが出来るらしい。その辺の説明やグリムワールドについて話ていると15分程で呼び出されたフレンドとやらがやってきた。
「リーナはキャラクターとプレイヤーの区別がつかんな。」
3頭身ぐらいの幼児?通常の幼児よりはかなり大きめな男児の第一声だ。頭の上にローマ字でHijikiと浮かんでいる。
「えーと、似た世界ならじゃなくてゲームの世界そのものなの??」
俺はゲームキャラにしか見えないがそれでいてグラフィック?が綺麗すぎて明確な判断が頭の上のキャラ名だけなヒジキに質問してみる。
「いや、ここは通常のゲームサーバーのグリムワールドではないと言うのが定説だ。そしてフレンドに呼んで貰わないとキャラクターはこの世界にログイン出来ない。申し遅れたが、ヒジキだ。親しい者からはヒジちんと呼ばれている。」
「えーと、東城 武だ。よろしく。」
ピコン
「ん?なんだこの手紙マーク?」
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リーナとフレンド登録が結ばれました。
ヒジキとフレンド登録が結ばれました。
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「えっ?フレンド登録って自動?」
「本当だ。えっ?普通フレンドの誘いメッセージの後に了承か拒否だよね?」
「うーん。聞いたことないが、確かに登録されているな。まあ、フレンドの解除は選択出来るようだが。」
ピコン
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ヒジキがフレンドを解除しました。
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ピコン
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ヒジキからフレンドのお誘いがありました。フレンドになりますか?YES/NO
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「こっちから誘うのはどうかな?」
「選択肢が出てるな。登録しても?」
「勿論。というか解除したのは検証が目的なだけだよ。気を悪くさせてしまったなら済まない。」
「ヒジキさん紳士だな~。」
ウィンドウのyesに触れて承諾しておく。
「エロ紳士だけどね~。」
曰く、空中都市に来るには時間が掛かるらしい。しかしヒジキさんは女性キャラクターからの呼び出しにはどんなに遠い位置からでも最速で駆けつけるらしい。
「じゃあ動物園行こうか。」
「なるほど。」
「何故納得するのかわからないが、観光でこの世界の動物園は面白そうだな。」
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ホテルを出て地下街道をしばらく進むと目的地の動物園に着いた。途中いくつかの分かれ道があったが特徴が余りないので迷子になれそうだ。ヒジキもリーナもマップがあるそうでスイスイ進んで行った。
「そう言えば入園料をタケシは払えるんだろうか?」
「あはは。そう言えばグラって持ってる?」
「へー。グリムの通貨ってグラって言うんだ。始めて知ったんだが?」
「ってことは当然?」
「0グラだな。」
「とりあえず入口の店員さんに聞いてみるか。と、その前にパーティーを組んでおくか。」
ピコン
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ヒジキからパーティーに誘われました。
パーティーに加入しますか?YES/NO
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またしても了承をタッチしていると、店員さんとのやり取りが聞こえてきた。
「えっ?どういう事ですか?それだと二人分の料金ですが??」
「お一人分は支払いが済んでますね。どなたか黒いカードをお持ちじゃないですか?」
「あ・・・。アレか?」
ポケットの財布を取り出してカードを取り出す。
「何ですか?このカード?」
端から見ると幼児がカードに興味を覚えただけに見える。が、そういう意味での質問ではないだろう。
「旅行の前の日にいきなり届いてね。とりあえず財布に入れてきた。多分ネット経由で申し込んだクレジットカードだと思ってたんだが・・・、」
「この世界での支払いに使えてしかも、勝手に支払いが済んでるとか普通じゃないですな。」
「ブラックカードか~。タケシやるじゃん?ん?なんか、模様がある?」
言われてみるとカードは黒1色ながら光沢のあるなしで模様が入っているようだ。
「このマークは・・・遊戯の神ケット・シー?」
「それはゲームの世界の?」
「うむ。確か猫の容姿の神で善神だが、遊び好きなため関わるとロクな事にならない設定だったかな。壮大なミッションもあるのだがクリアしても結局世界は何も変わらないようなオチが付く話だったよ。」
「あ~。アレね。知ってる~。なんか脱力感溢れるヤツだよね。まあオンラインRPGには話の前後の帳尻を合わせるためによくあるパターンではあるけどね。」
ポイントの単位もケットシーだし、ケット・シーは何かしら関係ありそうだな。