七十六話 とある客人
「だいぶ完成してきたねー」
「ガジェットさんの手際が早すぎてびっくりだな」
「だねー」
家を建て始めて初日から数日が立った。
俺達は必要分の木を伐採したり必要な荷物と工具を取ったりして毎日手伝いに行った。
今はもう少しで完成と言う所まで来ている。
ここまで来ると俺達の手伝える事は少なくなってきた。
3人組はもう村に馴染んでるらしく家を作りながらもう仕事に出ているらしい。
「そろそろお昼にしようか。フィオラ、ガジェットさんを呼んできてくれ、俺は3人組を呼びに行くよ」
お昼の為に各地で作業している3人組を呼んできた。
最近は俺とフィオラ、3人組とガジェットさんの6人でお昼ご飯を食べている。
年長者の体験談は面白くて、みんなでガジェットさんの昔話を聞いている。
ご飯を食べた後、ガジェットさんが「残ってるのはワシにしか出来ない作業だからみんな好きにしてよいぞ」と言ってくれたので俺とフィオラと2人で俺の家に戻った。
3人組はそれぞれ仕事に戻って行った。
楽しい楽しい日常生活を過ごしていて充実していた。
しかし、そんな俺にも最近悩みが出来た。
「それでね!それでね! フー兄がね!――」
そう、フー兄問題だ。
最近、フィオラがフツーウの事をフー兄と読んでいる事。
アイツは俺からフィオラのお兄ちゃんポジションを奪ったのだ。許すマジ悪逆。
それにフィオラは何故かフツーウと距離が近い。
もしかして……初恋か!?
自分を誘拐した相手だぞ……嫌でもフィオラぐらい心が綺麗で広かったらそんなの関係ないのか?
それとも誘拐した相手の事を好きになるストックホルム症候群なのか!?
フツーウはメンタリストなのか!?
「ライラス聞いてる?」
「あぁ、ごめん。何だっけ?」
心の中でぶつくさと考えていると話を全く聞いていなかった。
「フー兄がね、お菓子作ってくれたんだよ! クッキーが凄く美味しかったんだ!」
アイツ料理まで出来たのか!? 俺の家では作ってくれた事無かったぞ。いや、母さんが作るのは譲らなかったのかもしれない。
まてよ……戦闘も出来る、村の警護という仕事もある、そして家庭的、尚且つそれなりに、いや微量に顔も良い。
アイツ優良物件じゃねーか。
そうか、フィオラの初恋を俺も応援しよう。
まぁ、お兄ちゃんポジを取ったことは話が別、後でとっちめよう。
その後もフィオラと庭で色々な事を話して過ごしていた。
そして魔術の練習がしたいと言う事でいつもの練習場所、小型犬の様なモンスターのペコと初めて合った場所に向かっている道中だった。
隣町の方角から2人が向かってくる。
1人は大人の人でもう1人は子供だ。
家族だろうか。
1人の子供の方は走ってきて、大人の方はそれを見ながらゆっくりと歩いてきた。
「嘘、ちょっ待っ――痛っ!」
子供の方は走っていたせいか俺の近くで石に躓いて転んだ。
「だ、大丈夫か?」
俺は少し心配しながら手を差し出す。
「あ、ありがと」
倒れている子どもは金髪の少女だった。
足に転けた時に出来た擦り傷から少し血が出ていた。
俺が回復魔術を使おうとするよりも先にフィオラが駆けつけていた。
「動かないでね、今治すから」
俺が使うよりも先にフィオラが回復魔術を掛けていた。
「凄い、もう痛くない! 今何したの?」
「えへへ、回復魔術だよ! ライラスに教えて貰ったの!」
そう言うとフィオラは何故か嬉しそうに俺の方を見てはにかんだ。
「ありがとう、魔術って凄いのね……」
俺とフィオラの女の子が話しているとその後ろから黒髪の大人びた人が歩いてきた、たぶん保護者だろう。
「もう、シャルったらはしゃぎすぎよ! 君たちありがとうね」
感謝を言われて少し恥ずかしがりながら2人で頭をペコリと下げる。
「そうだ!君たち、クリウスさんの家を知ってるかな?」
俺の家に用事かな?
まぁ、多分父さんの客人だろう。
「クリウス家はここを真っ直ぐ進んだら門をくぐって少し坂道を登るとありますよ」
俺は自分の家の方角を指さして教えた。
「何から何までありがとうね。行こうか、シャル」
「はい!師匠!」
俺達はその後にいつもの丘でフィオラと魔術の練習をした。
今回練習するのは前に失敗した魔術の大きさを変える練習だ。
今回は前回の失敗を繰り返さないようにペースをゆっくりして行く。
「まずは初級魔術の土から始めよう」
ソイルを選んだ理由は水と風はフィオラの得意魔術で、まだコントロールが上手く出来ないフィオラが変に魔力をいじると前の氷塊の時見たいに暴走するかもしれないからだ。
火にしなかったのは周りに草木が多いからと火属性の魔術は下手すると自分も火傷するかもしれないからだ。
火属性に限らず魔術も使い方を間違えると怪我をする可能性が高いから練習する時は注意が必要だ。
最初に俺が普通に魔術を使って、次に小さいサイズのソイルを使う。
フィオラも真似して普通のソイルを使う。
次に慎重に腕に力を入れて頭で小さいソイルをイメージする。
フィオラの右手に普通サイズのソイルが現出した。
それからは普通サイズと一回り大きいサイズのソイルが現出した。
俺の考えでは魔術の大きさの初期値が0で大きくしようと魔力を入れると+になって小さくしようと魔力を込めると-になると思っている。
もしかしてフィオラは大きい魔術を想像しているのかもしれない。
「フィオラ、やっぱり前の氷塊が怖いか?」
そう言われるとフィオラは肩がビクッとしてこっちを向いた。
「う、うん。実はそうなんだ」
たぶんフィオラは頭の中で大きな氷塊を想像しているのかも知れない。
俺はフィオラの目をみる。
「安心しろ、もし何かあっても俺が何とかしてやるから」
「わ、わかった!」
もう一度フィオラが目を瞑って集中する。
するとフィオラの周りに水色の魔力の渦が発生した。
透き通る様な水色の魔術が荒々しく渦巻く。
しかし次の瞬間、渦巻いていた水色の魔力が一変して黄色い魔力に変わって土埃の様に地面から空中に上昇し始めた。
魔力が属性によって動きが変わるのか……。
観察するのはこの辺にしておかないとそろそろ危ない。
前に失敗した時も今と同じように魔力が目で分かる様になった。
俺は成ったことが無いからどういう状態かは詳しく分からないが今は危険と言う事だけは分かる。
フィオラはまだ怖がっているのかも知れない。
フィオラが魔術を使う手と反対の左手を握る。
フィオラが目を開けて左手を見ると口角が少し上がった。
フィオラの魔術が完成して右手には普通サイズより一回り小さいソイルがそこにはあった。
「出来たよ!出来た出来た!」
「出来たな! 成功だぞ!」
フィオラが可愛らしくピョンピョン飛び跳ねながら喜んでいた。
俺も手を握っていたので一緒にピョンピョン飛び跳ねた。
フィオラも魔術が少しづつ出来ることも増えて上達していった。
かく言う俺はフィオラの様に得意魔術も無いし、未だに上級魔術は完璧に使いこなせない。
俺ももっと練習が必要だな。
自分の成長に悲観的になりながらもフィオラの魔術の上達は自分が成長してる時よりも嬉しい。
これからも楽しくやって行こう。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます!
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次話の投稿、楽しみにしていてください!!!




