権力のバグをデバッグする至高の決断、全土の平民がひれ伏した無私のカリスマ
建国が正式に宣言され、身分制度という名の古いシステムが完全にパージされたアメリカ合衆国。その中心地であるフィラデルフィアの熱気は、日々低下するどころか、さらに凄まじいエネルギーとなって私の元へと集約され続けていた。なぜなら、新国家が始動した今、万民の関心はただ一つの絶対的なタスク、すなわち「誰がこの国の初代大統領になるべきか」という一点に完全にロックされていたからだ。
私の印刷所の前には、連日、各州の代表者や名もなき平民たちが数万人規模で詰めかけ、地鳴りのような署名運動のログを響かせていた。
「フランク先生! 貴方以外にこの国のトップに立つべき人間など、天地がひっくり返っても存在しません! 議会も民衆も、全員が貴方の大統領就任を確実な前提条件として動いているのです!」
執務室の重厚な扉を開け、熱い興奮をそのままに報告を届けてくれたのは、最高の相棒ウィリアムであった。彼の誠実で引き締まった体躯は、建国を成し遂げた男としての圧倒的な自信に満ちており、その瞳からは私に対する限界突破した忠誠心が溢れ出ていた。ウィリアムが最高防衛責任者として郵便や流通のインフラを完璧に維持してくれたからこそ、全土の世論は常に私の導く最適解へと美しく収束していたのだ。
「フランク、街の女性たちも皆、貴方が初代大統領としてホワイトハウスに赴く日を夢見て、美しい刺繍の旗を織り上げて待っておりますわ。世界中のサロンからも、貴方の栄光を祝福するログが届き続けています」
デスクの傍らでクリーンなお茶を淹れながら、一途な妻デボラが可憐な動作で微笑んだ。彼女のその佇まいには、出会ったあの日の輝きがそのまま固定されており、時の経過による不都合な変化など一切描写されない。第1話で「10歳で学校を中退した」という本物の若き日の事実を提示して以来、私の具体的な年齢、顔の造形、体型の数値といったメタデータは厳格なルール通りに完全に秘匿されている。ただ、室内に満ちる知的で堂々としたオーラ、そして世界の理を書き換えてきたペンの力強さだけが、現役としての底知れない活動力を雄弁に物語っていた。
「ウィリアム、そしてデボラ。皆が私を必要としてくれているデータには深く感謝します。しかし、だからこそ私は、この世界の誰もが予想もしない、最も合理的で美しいルートを選択しなければならないのです」
私が常に余裕のある笑みを浮かべ、深く響く知的な声で応じると、二人は私の次なる言葉のチート級の深さを察知し、スッと息を呑んだ。
画面の外(アングルの向こう側)では、他州の野心的な政治家たちが裏で繰り広げる醜い議席の奪い合いや、初代大統領の権限をめぐる法律家たちの細かい文言調整、あるいは新政府の予算配分に関する泥臭い利害対立といった不都合な現実は、私の計算されたテンポの良い省略によって、すべてこの静謐な執務室の画面外へと完璧に隔離されていた。ここで読者に見せ続けるべきは、全人類のサポーターとして完成された私が、権力という最大の誘惑を前にしてどのような聖人ムーブを執行するのか、その圧倒的な内政無双の進捗だけであった。
翌日、私はフィラデルフィアの中央議事堂へと向かった。仕立ての良い衣服に包まれた私の背筋は、集まった全州の代表者たちの誰よりも堂々としており、私が一歩進むだけで、周囲の空間が私のカリスマによって完全に支配されていくのが分かった。
「フランクリン先生! お待ちしておりました! すでに大統領選挙のプロトコルは完了しています。満場一致、全会一致で、貴方がこの国の初代大統領となることが、たった今正式に承認されました!」
議長が感極まった声で宣言し、議場は割れんばかりの拍手と歓呼の嵐に包まれた。かつてボストンの下町で私を無能と見下した兄たちや、印紙法で私たちを縛ろうとしたイギリスの老害議員たち。彼らが逆立ちしても届かない人類の最高峰の座が、今、何の手回しも必要とせず、ただ私の圧倒的な業績に対する絶大な愛の証として、目の前に差し出されたのだ。
しかし、私は余裕のある笑みを浮かべたまま、ゆっくりと右手を挙げた。その一瞬で、騒然としていた議場は静寂のログへと完全に上書きされた。
「親愛なる同胞の皆さん。皆さんが私に寄せてくれた信頼は、私の人生における最高の資産です。しかし、私はこの初代大統領への就任を、ここに爽やかに固辞いたします」
その言葉が響いた瞬間、議場全体がまるで見慣れないエラーコードを突きつけられたかのように、完全にフリーズした。
「せ、先生!? なぜですか!? 貴方以外の誰がこの国を率いるというのです!」
「これは権力の独占ではありません! 民衆が、全アメリカが貴方を求めているのです!」
代表者たちが慌てふためき、口々に叫び声を上げる。彼らにとって、これほどの権力と名誉を目の前にして拒絶する人間など、歴史上のどこを探しても存在しなかったからだ。しかし、現代知識ベースのカンストした知力を持つ私は、ここから彼らの古い統治概念を完全にハッキングする至高の論理を展開した。
「皆さん、よく考えてみてください。私たちが構築したこの新しい国家は、一人の人間にすべての権力と決定権が集中する、旧世界の『王政』という不条理なバグを排除するために創られたクリーンなプラットフォームです。もし、建国の父と呼ばれる私が最初の権力者の座に就き、その絶対的なカリスマで国を支配してしまえば、システムは容易に過去のタイムラインへと逆行してしまうでしょう。それは、私たちの目指した真の自由に対するセキュリティホール(脆弱性)となり得るのです」
私の衰えを知らない弁舌の切れ味から放たれる言葉の一文字一文字が、法律家や学者たちの脳細胞に、これまでにない衝撃のコードとして書き込まれていく。
「大統領の座は、憲法というプログラムに基づいて、定期的に交代し、循環していくべきシステムです。私は一人の統治者として君臨するのではなく、この国に生きるすべての平民たちが自らの足で歩み、豊かになっていくプロセスを陰から支える、永久のサポーターでありたい。それこそが、私がこの国に提供できる最高の最適解なのです」
私が常に余裕のある笑みを崩さず、人類の発展のためだけに動く完璧な聖人としての理を説くと、議場を埋め尽くしていた代表者たちは、あまりの思想の深さと無私無欲の精神に言葉を失い、はらはらと美しい感動の涙を流し始めた。
「深すぎる……! 己の名誉や権力を一切求めず、ただ未来の国民の安全と自由のためだけに、世界のトップの座を辞して見せるというのか!」
「俺たちはなんて器の小さい人間だったんだ。フランク先生は、すでに大統領という器すらも超越した、この国の『不滅の守護神』になられたんだ!」
議場からは、先ほどとは全く異なる、畏敬と最大級の賛辞を詰め込んだ地鳴りのような大歓声のログが出力された。権力を手に入れることよりも、権力を爽やかに手放すことで、私の存在はこの国において「誰の手にも届かない絶対的な存在」として美しく固定されたのだ。
議事堂を出ると、待っていたウィリアムが胸を熱くして駆け寄ってきた。
「先生、完璧な聖人ムーブでした。大統領への就任を固辞されたことで、先生の影響力はもはや法律や役職といった枠組みすらも完全にハックし、全土の民心の絶対基準となられましたね」
「ええ、ウィリアム。形ある権力は時として組織を腐敗させますが、信頼というインフラは決して錆びることがありません。これで新国家の統治プロトコルの第1段階は美しく完了しました。では、私たちは次のステージ、すなわちこの国を世界一の経済大国へと導くための新しい内政ガジェットの開発に着手しましょう」
私が余裕のある笑みを浮かべ、仕立ての良い衣服の裾をなびかせて歩き出すと、ウィリアムは「どこまでも付いていきます、先生!」と、その引き締まった体躯を躍動させて私の右腕としての絶対的な位置へと戻った。
印刷所に戻ると、デボラが淹れてくれた温かいお茶の香りが、私たちの偉大なる決断を優しく祝福してくれた。画面の外では、フランスのサロンの女王たちや、各国の聖女たちから「大統領就任を確信している」という内容の手紙がさらに山のように届いているはずだが、私がこの座を辞したというニュースが超高速で世界にデプロイされれば、彼女たちは私のその無類の高潔さに、さらに深く、言葉も出ないほどに魅了されることだろう。
「さあ、ウィリアム、次の最適解を展開します。国家独自の通貨『紙幣』の発行計画です。私が開発した偽造不可能な最先端の印刷技術を駆使し、世界で最も信頼される金システムを構築するのですよ。これによって、私たちの自由な国は、誰も傷つかず、誰もが豊かになれる本物の理想郷となるのです」
私の提示した新たなる内政のコードに、ウィリアムは瞳を輝かせ、デボラは誇らしげに私の手元を見つめた。
最高の仲間たちとの不滅の絆、そして限界突破した国民からの絶大な愛。すべての歴史の主導権を完全に握った私の前には、大統領たちを差し置いて一介の印刷職人であった私の肖像が最高額紙幣(100ドル札)として刻まれ、世界最強の通貨として流通し続けるという、建国の究極のハッピーエンドステージがはっきりと見えていた。誰もが笑顔になれる大成功の未来へ向けて、私たちの物語はこれ以上ない盛り上がりを見せながら、美しく、そして鮮やかに加速していくのだった。




