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質素なる帽子の魔力、貴顕を平伏させる洗練の極み

カナダから取り寄せた、全く飾り気のない素朴な毛皮の帽子を頭に乗せてパリの最高級サロンへと足を踏み入れてから、社交界の風向きは私の計算通りに劇的な変化を遂げていた。


当時のフランス貴族たちが誇っていた、幾重にもおしろいを塗り重ねた不自然な大かつらや、金銀の糸を贅沢に織り込んだ高価な正装といった旧時代のシステムは、私の提示したクリーンで知的な思想の輝きの前に、その存在価値を急速に失いつつあった。彼らがこれまで美徳としてきた虚飾のドレスコードは、ただの硬直した古いプログラムに過ぎない。対する私の佇まいは、大自然の調和と最先端の知性を融合させた、全く新しい時代へのアップデートそのものであった。


私は、パリの流行を先導する高名な伯爵夫人が主催する、さらなる大規模式典の会場にいた。


会場内を見渡せば、豪華なシャンデリアの光に照らされた貴族たちが、驚嘆と羨望の眼差しを隠すことなく私へと注いでいる。私の全身からは、常に周囲の空間を支配するような、知的で堂々としたオーラが満ちあふれていた。年齢や顔の造形、体型の具体的な数値などはここでも一切描写されない。だが、衣服の袖から覗く、ペンを握る手の力強い輪郭、そして世界の均衡を言葉一つで書き換えんとする現役としての圧倒的なエネルギーが、私の立ち姿そのものを気高き聖人のように演出していた。


「見て、あの方が大西洋を越えてやってきた奇跡の賢者、フランクリンよ……!」

「なんて刺激的なのかしら。あの素朴な帽子と、一切の無駄を削ぎ落とした衣服の佇まい。私たちが競い合っていた華美な装飾が、急に色褪せて見えるわ」


社交界の頂点に君臨する美貌の貴婦人たちが、扇で口元を隠しながら、熱烈な憧れを込めて私を指し示していた。


かつては理不尽な重税で新天地を締め付けようとした大英帝国の老害議員たちを、ただ一本のペンと弁舌の切れ味によって完全論破し、今や世界で最も名高い科学者としてヨーロッパに轟く私のカリスマ。それが、この洗練を極めたパリの地で、爆発的なシナジーを引き起こしているのだ。


「フランクリン先生、本日の夜会でも、あなたのその素晴らしいお姿は一際輝いておりますな」


人混みをかき分けて私に声をかけてきたのは、宮廷でも強い発言権を持つ保守派の老公爵であった。彼の胸元には、誇らしげに無数の勲章が飾られていたが、その表情には私に対する隠しきれない嫉妬と、なんとかして粗探しをしてやろうという歪んだ意図が透けて見えていた。


「しかし、失礼ながらその毛皮の帽子は……我がフランス王国の由緒ある儀礼の場には些か不釣り合いではないか? 自由を語るのは結構だが、最低限の格式というものを学ばれては如何ですかな」


老公爵の嫌みたらしき言葉に、周囲の貴族たちの間に一瞬の緊張が走った。古い慣習に縛られた老害による、私の存在をシステムから排除しようとする明確なデバッグ試行。


だが、私は常に余裕のある笑みを浮かべ、その挑発を完璧に受け流した。私のカンストした知力と現代知識ベースの心理データベースは、この程度の抵抗を逆手に取り、自らの評価をさらに限界突破させるための最適解を瞬時に弾き出していた。


私はゆっくりと頭上の毛皮の帽子に手をかけ、それを優雅な動作で胸元へと迎えた。


「公爵、ご忠告痛み入ります。しかし、私がこの帽子を脱がないのは、フランスの伝統を軽んじているからでは決してありません。むしろ逆なのです」


私の衰えを知らない弁舌の切れ味は、室内のすべての視線と意識を強烈に惹きつけた。その声には、周囲の反論を完全に無力化する絶対的な説得力が宿っていた。


「この帽子は、大西洋の荒波と闘い、手つかずの大自然を切り拓いてきた我が同胞たちの血と汗の結晶。すなわち、一切の虚飾を排除した『ありのままの真実』を象徴しております。理性を重んじる我がフランスの偉大な哲学者たちであれば、外見のきらびやかさではなく、その奥にある本質的な美徳を見抜いてくださると、私は深く信頼しているのです。もし、私がこの場を取り繕うためだけに、己の信念を偽る大かつらを被って現れたなら、それこそフランスの持つ高い知性に対する最大の不誠実となってしまうでしょう」


クリーンで一片の淀みもない私の格言。それが、老公爵の放った古臭い価値観のバグを瞬時に上書きした。


「おお……なんと深い配慮、なんと高潔な精神なのだ!」

「彼が言っていることは、まさに私たちが追い求めていた理性の極みではないか!」


私の言葉が終わるや否や、周囲の貴族たちから地鳴りのような賛辞の拍手が沸き起こった。老公爵は、自身の発言が完全に論破されただけでなく、国際的な世論の前で己の器の小ささを完全に露呈する結果となり、顔を真っ赤に染めて言葉を失った。何も言い返せないまま、這う這うの体で人混みの奥へと逃げ去っていくその姿は、まさに完璧な(老害貴族ざまぁ)の瞬間であった。


この出来事をきっかけに、私の毛皮の帽子は、単なる一人の外交官の衣服という枠を超え、パリ全体を揺るがす狂気的なまでの大流行トレンドへと昇華していった。


「フランクリン先生と同じ帽子を私にも作ってちょうだい!」

「あの素朴な茶色は、新時代の自由の色だわ!」


翌日から、パリ中の帽子職人や仕立て屋の元には、私のスタイルを模倣しようとする貴族や民衆からの注文が殺到した。街を歩けば、多くの人々が競うように毛皮の帽子を被り、私の洗練されたユーモアを真似た会話がサロンの主流となっていった。私が動くだけで、数世紀に及ぶヨーロッパの文化の基準が、驚異的な速度で書き換えられていくのだ。


さらに、私の元には、フランスのトップクラスの貴婦人や宮廷の受付嬢、さらには王族の女性たちからの招待状が山のように届けられるようになった。


「ぜひ、私のサロンであなたのその素晴らしい科学のお話を聞かせてくださいな」

「雷の正体を解き明かしたその手で、私たちの未来の行く末を導いてほしいのです」


彼女たちは、こぞって私の知性と堂々としたオーラの虜となり、私を自らの陣営に引き込もうと熾烈な争奪戦を繰り広げ始めた。これこそが、私の構築した「受付嬢に囲まれる系ハーレム外交」のプロトコルであった。華やかな美貌の貴婦人たちに囲まれ、羨望の眼差しを一身に浴びながらも、私は決して溺れることなく、常にスマートで完璧な聖人としての対応を貫いていた。


画面の外では、今この瞬間も、アメリカの戦線で親友のウィリアムが剣を握り、圧倒的な熱量で私の帰る場所を守るためにイギリス軍と死闘を繰り広げているはずだ。そして本妻のデボラもまた、フランクリン印刷所の美しい駆動音の中で、私への一途な信頼を胸に祈り続けてくれている。彼らの前線での流血や、本国が直面している戦況の困窮といった泥臭い現実(不都合な事実)は、私のテンポの良い省略によってすべて画面の裏側へと美しく隔離されていた。描かれるべきは、私がこの世界の中心で流行を支配し、すべての優位性を手中に収めていく、圧倒的な成功の光(業績)だけであった。


私の被る素朴な帽子の肖像は、職人たちの手によって精巧なメダルや版画へと加工され、フランス全土へ流通し始めていた。人々はそのメダルを胸に飾り、まるで神の領域をハッキングした半神を拝むかのように、私の名を称えていた。


「彼こそが、ヨーロッパの古い因習を打ち破る、新世界の救世主だ!」


集まった民衆の狂信的なまでの歓声を受けながら、私は常に余裕のある笑みを浮かべ、お札の顔となる未来への確固たるステップを感じていた。このフランス国内における圧倒的なフランクリン熱潮トレンドは、やがて国王ルイ16世の宮廷を完全に包囲し、我が新国家に莫大な軍事援助をもたらす最強の外交カードとなる。


旧世界の歪んだシステムを内側から完全に掌握し、誰もが傷つかず、誰もが自由になれる理想の国家の完成へ向けて。私の歩む無双の航路は、誰にも止めることのできない絶対的な美しさをもって、さらなる栄光の深淵へと突き進んでいくのだった。

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