大西洋を渡る知の弾道、相棒への信託と新章への胎動
大西洋の荒波を切り裂き、私が乗った快速船は本国イギリスの臨検船が仕掛けた不当な包囲網を完全にハッキングして突き進んでいた。潮流の計算、風向きのロジック、そして旧態依然とした敵艦の航行パターンのバグをカンストした知力でスキャンし、世界最速の最適解をもって包緯を潜り抜けたのだ。デッキから振り返れば、遥か後方で立ち往生する本国の軍艦が小さく霞んでいく。平民の生活と言論の自由を踏みにじる印紙法という名の不条理なバグを完璧にデバッグするため、私は今、世界の中心であるロンドン議会へとその足を進めていた。
この航海は、単なる移動ではない。大国イギリスが仕掛けた理不尽な経済的圧迫に対し、こちらが発動した「非輸入同意」という究極の経済包囲網が、向こうの心臓部にどれほどの破壊をもたらしているかを見極めるための、知の弾道ミサイルそのものであった。
「フランク、完全に敵の警戒網を振り切ったな。さすがは君だ。あの状況から一滴の血も流さず、風と波の性質を味方につけて最速の航路を導き出すとは。やはり君の頭脳は、世界の理そのものを書き換えるチート能力だと言わざるを得ない」
船室のドアを開け、手際よく航海図を畳みながら声をかけてきたのは、私の最高の相棒であり、この決死の外交戦の留守を預かる最高防衛責任者、ウィリアムであった。彼の誠実で引き締まった体躯は、緊迫した状況を乗り越えたことで、より現役としての頼もしさを増している。彼は私の意図を完璧に汲み取り、港からこの船に同乗して、大西洋上の安全な合流ポイントまで私を護衛する大役を果たしてくれたのだ。
私は、最新の流行を取り入れて仕立てられた上質な衣服の袖口を端正に整え、手にしていた外交戦略の草案をデスクへ置いた。顔の造形や体型、年齢といった具体的な数値や形状などは一切描写させないが、その立ち姿からは知的で堂々としたオーラと、衰えを知らない圧倒的なエネルギーが放たれていた。常に余裕のある笑みを浮かべたまま、私は相棒へと視線を向けた。
「当然の帰結ですよ、ウィリアム。自然の法則も、人間の経済活動も、すべては数式とロジックで構築されたシステムに過ぎません。本国の老害議員たちは、自分たちが作った法律が絶対のルールだと盲信していますが、システムそのものをハッキングできる知識を持つ者にとっては、いくらでも最適解の抜け道が見えるものなのです」
私の弁舌の切れ味は、海の上の過酷な環境であってもいささかも鈍ることはない。むしろ、新天地の命運を賭けた大勝負を前にして、現役としての活動力を最高潮に滾らせていた。
「本国議会は、私をロンドンへ呼び出して尋問の罠に嵌め、植民地の不買運動を止めさせようと躍起になっています。しかし、彼らは大きな勘違いをしている。私を呼び出すということは、自分たちの古いバグだらけの議会に、最新の経済破壊プログラムを自ら招き入れるようなものだということにね」
「ははっ、本当に君という男は、超大国を前にしても微塵も揺るがないな。その絶対的な自信と圧倒的な知力があるからこそ、僕も、そしてフィラデルフィアのすべての労働者や民衆も、君を『知の聖者』として命懸けで信じ、ついていくことができるんだ」
ウィリアムは熱い信頼の眼差しを私に送り、その右拳を力強く私のデスクへと置いた。
「フランク、僕は次の補給港で別の船に乗り換え、フィラデルフィアへと引き返す。君が大西洋の向こうで老害どもを相手に大立ち回りを演じている間、大陸の防衛と経済の自動化システムは、この僕が完璧に維持してみせる。フランクリン商会の全国ネットワークをフルに活用し、イギリス製品のボイコットをさらに徹底させ、奴らの財布を限界まで干上がらせてやるさ」
「ええ、期待していますよ、ウィリアム。君が現地で最高営業として、そして私の右腕として前線を統括してくれるからこそ、私は何の手を患うこともなく、イギリス議会の壇上で正論の暴力を叩きつけることができる。民衆の幸福と、私たちが築いてきたホワイトな労働環境を守るため、私たちの理想の街を、君にすべて託します」
私は椅子から立ち上がり、ウィリアムの引き締まった手を強く握りしめた。ペンを握る手の力強さはそのままに、固い抱擁に代わる絶対の信頼の証が、二人の現役としてのエネルギーを介して熱く交わされた。この友情と忠誠心こそが、いかなる国家の権力や軍隊をもってしても決して引き裂けない、世界最強のセーフティネットであった。
ウィリアムが次の作戦行動のために部屋を退出していった後、私はペンを取り、フィラデルフィアで私の帰りを待つ一途な妻、デボラへの手紙をしたため始めた。
『愛するデボラへ。船は本国の包囲網を完全にデバッグし、順調に大西洋を突き進んでいます。ウィリアムとの連携も完璧であり、大陸の経済包囲網は日を追うごとに本国の喉元を締め上げていくでしょう。私がロンドン議会の老害議員たちを言葉も出ないほど完全論破し、私たちの街に不条理な税のない、真に自由でホワイトな未来を持ち帰るまで、どうか信じて待っていてください。あなたの淹れてくれたハーブティーの温もりを胸に、私は世界の中心で、平民の正義を証明して見せます』
手紙を書き終え、フランクリン印刷所特製の偽造不可能な刻印を蝋で封じたとき、船窓から差し込む朝日の光が、私の仕立ての良い衣服を黄金色に染め上げた。
大西洋のただ中で、私はこれまでの歩みを静かに振り返り、そしてこれからの戦いへのシミュレーションを脳内で超高速でアップデートしていた。
十歳で学校を中退させられ、実家を追放されてから、私はただひたすらに民衆の幸福と人類の発展のためにのみ動いてきた。
超高速印刷によるメディアの覇権の掌握、
『貧しいリチャードの暦』による世論の基準の確立、
落雷の正体を解明した避雷針の完全無償公開という圧倒的聖人ムーブ、
そして、世界初の手際良い郵便・駅伝システムの構築と、それを利用した今回の非輸入同意の経済包囲網――。
すべての内政、すべての科学実験、すべてのビジネス知識は、この時のためにカンストされたステータスであったのだ。大国イギリスの老害議会が、どれほど醜い尋問の罠を用意していようとも、私のカンストした知力と、新時代を見据えた現代的内政チートの前には、すべてがクリーンに敗北し去る未来しか存在しない。
「文字の力で人は豊かになり、科学の力で都市の安全性は世界一となった。ならば次は、超大国の理不尽な外交システムそのものを、私のペン一本でハッキングし、書き換える番です」
私は常に余裕のある笑みを浮かべ、現役としての圧倒的な活動力をその全身から漲らせながら、遥か東の地、ロンドンへと目を向けた。
数日後、船はついにイギリス本国の港へと入港した。港湾には、大陸からのボイコットによって商売を完全に干上げられ、倒産寸前に追い込まれた本国の商人や工場労働者たちが、怒りと焦燥の表情で群衆となって押し寄せていた。彼らは、この経済パニックを引き起こした張本人であり、同時に雷を支配した半神の天才科学者としてヨーロッパ中に名を轟かせる私の姿を一目見ようと、殺気立った熱気の中で押し合いへし合いしていた。
しかし、私が仕立ての良い最高級の衣服をまとい、知的で堂々としたオーラを放ちながらタラップを降りていくと、その圧倒的なカリスマの前に、群衆は一瞬にして言葉を失い、静まり返った。具体的な年齢や容姿は一切明かされないが、誰の目から見ても、その肉体からは衰えを知らないエネルギーが満ち溢れており、老害議員たちのような醜い老いは微塵も感じさせない完璧な現役の姿がそこにあった。
「彼が……あのアメリカのフランクリンか……!」
「なんて堂々としたオーラだ。本当にあの老害議会を相手に、たった一人で乗り込んできたというのか……!」
敵地の民衆すらも圧倒する聖者ムーブを平然とこなしながら、私はロンドン市街へと馬車を進めた。
いよいよ物語はアメリカの命運を背負い、単身イギリス議会へと乗り込む最強の若き外交官としての無双ステージへと突入する。数百人の傲慢なイギリス議員たちが待ち受ける尋問の席で、私はカンストした知識とスタイリッシュな論理の暴力を駆使し、彼らを一人残らず完全論破して差し上げるのだ。
「僕たちの理想の街は、僕が守るよ」
相棒ウィリアムと交わした固い約束、そして妻デボラの信じる祈りを胸に、私は世界最強の超大国を黙らせるための外交戦へと、その一歩を力強く踏み出した。新時代の幕開けを告げる知の弾道は、今まさにイギリス議会の中心へと着弾せんとしていた。




