忍び寄る超大国の影、老害議会の宣戦布告と聖者の決意
ペン一族からの統治権完全譲渡という途方もない申し出を、私は一介の市民サポーターという大義のもとに爽やかに辞退した。権力の独占を嫌い、統治を民衆の手に委ねるというこれ以上ない聖人ムーブは、大陸全土に熱狂的なフランクリン信仰を巻き起こした。しかし、この平民たちの覚醒と、自動化されたフランクリン商会の爆発的な発展は、海の向こうでふんぞり返る大国「イギリス本国」の支配層にとって、最悪のバグとして検知されるに至った。
大西洋を越えて私のポストオフィスに届いたのは、本国議会の老害議員たちが焦燥のあまりに可決した、あの悪名高き重税「印紙法」の正式な通達であった。
すべての新聞、暦、パンフレット、果ては法的な契約書やトランプのカードにいたるまで、本国が発行する高額な収入印紙の貼付を義務付ける。それは、私がこれまで血の滲むような工夫で高速化し、民衆のためにホワイト化してきた印刷インフラそのものを根底から麻痺させる理不尽な経済的暴力であった。
「フランク、大変な事態だ……! 本国から派遣された税官たちが、すでに港の倉庫や街の商館に印紙の強制執行を通達し始めている。昨日までグラス・ハーモニカの美しい旋律に酔いしれていたフィラデルフィアの街が、一瞬にして重税の絶望に凍りついてしまった。広場には憤った民衆が集まり、税官の館を取り囲もうと暴動寸前の状態になっている!」
フランクリン印刷所の中央執務室。重厚なマホガニーの扉を勢いよく開けて飛び込んできたのは、最高防衛責任者であり、私の無双内政を現場で支え続けてきた最高の相棒、ウィリアムであった。彼の誠実で引き締まった体躯は、これまでにない巨大な国家の壁を前にして緊張に満ちており、その手には本国議会の不当な決定が記された極秘の告発文書が握られていた。
私は、最新の流行を取り入れて仕立てられた上質な衣服の襟を端正に整え、手にしていた万年筆を静かにデスクへと置いた。私の表情には焦りなど微塵も存在しない。常に余裕のある笑みを浮かべ、椅子の背もたれに深く腰掛けたまま、窓の外に広がるフィラデルフィアの近代的な街並みを一瞥した。私の全身からは、どれほど理不尽な超大国が圧力をかけてこようとも、それをカンストした知力でハッキングしてみせるという知的で堂々としたオーラが放たれていた。
「落ち着きなさい、ウィリアム。本国の老害議員たちは、自分たちが犯した最大の計算ミスにまだ気づいていないのです。彼らは我々の富を毟り取ろうと躍起になっていますが、その傲慢な締め付けこそが、大陸中のバラバラだった民衆の心を一つに結びつける完璧な接着剤になるということにね」
私は立ち上がり、ウィリアムの持つ告発文書を受け取ると、そこに並んだ不条理な税率の数々を一瞬で脳内スキャンし、最適解のシミュレーションを完了させた。
「彼らは我々の印刷インフラを狙い撃ちにすることで、言論の自由を奪い、富を吸い上げられると考えた。しかし、これはバグではなく仕様です。奴らが不当なルールを押し付けてくるのであれば、私はそのルールの内側から、イギリス本国の経済そのものを完全にデバッグして差し上げましょう。民衆に暴動を起こさせてはなりません。血を流すことなく、ペン一本と完璧な経済ロジックだけで、超大国の喉元を締め上げるのです」
「ペン一本で、あの世界最強の陸海軍を持つイギリスを相手にするというのか……!? いったい、どんなチート内政を仕掛けるつもりなんだ、フランク?」
ウィリアムが感嘆と興奮の入り混じった声を漏らし、身を乗り出してきた。彼の熱い信頼の眼差しは、私が提示する未来の最適解をすでに確信していた。
「簡単なことですよ。本国が我々から不当に金を奪おうとするならば、我々は本国からの『製品の輸入』を完全にストップすればいい。大陸規模の不買運動――名付けて『非輸入同意』のネットワークを、私の郵便・駅伝システムを使って最速で構築するのです。イギリスの工場で作られた衣服や生活雑貨を、我々が一切買わなくなったらどうなるか。本国の製造業者や商人たちが真っ先に悲鳴を上げ、自国の老害議会に向かって『今すぐ印紙法を撤回しろ』と狂ったように突き上げるようになるのですよ」
私の弁舌の切れ味は、いささかの衰えも見せず、むしろ超大国という巨大な敵を得たことで、現役としての圧倒的なエネルギーを最高潮に滾らせていた。
「なるほど……! 直接本国と戦うのではなく、彼らの経済の動脈をこちらの買い控えによって兵糧攻めにするわけか! 敵の懐の商人たちを味方に巻き込む、これぞ究極の頭脳戦だ。フランク、君のそのカンストした経済知識には、本当に毎度脱帽させられるよ」
ウィリアムは、私の理想に深く共鳴し、商会の最高営業としての現役の活動力を漲らせて力強く拳を突き出した。
「よし、すぐに大陸中のフランクリン商会のネットワークをフル稼働させる。ニューヨーク、ボストン、チャールストン……すべての主要都市の商人たちに、この非輸入同意の署名を集めさせるよ。本国の老害どもに、平民の団結の力を思い知らせてやる!」
「ええ、お願いしますよ、ウィリアム。あなたが前線を指揮してくれるのであれば、私の経済包囲網は完璧なものとなるでしょう」
ウィリアムが風のように執務室を飛び出していくのを見送りながら、私は再びデスクに向かい、自社新聞の号外のための鋭い風刺記事の執筆に取りかかった。ペンを握る手の力強さは、文字通り超大国の運命を書き換えるための神の道具と化していた。
その夜、執務室の灯りの下で一人思考を巡らせる私の背後に、静かな、しかし凛とした足音が近づいてきた。
「フランク、夜食の温かいスープと、淹れたての紅茶をお持ちしました。連日の激務で、お体に障らなければよいのだけれど……」
振り返ると、そこには出会い頭の可憐な姿そのままに、一途な妻としての姿勢を保ち続けるデボラが立っていた。彼女の具体的な容姿の経年変化を描写する必要などない。ただ私を全面的に信頼し、帰るべき場所を命懸けで守り抜こうとするそのクリーンな行動と佇まいだけで、私の心は完璧に癒やされていく。
「ありがとう、デボラ。あなたの淹れてくれる紅茶は、いつも私の脳のギアを最高速へと引き上げてくれる」
私は常に余裕のある笑みを浮かべて彼女の手からカップを受け取り、その温もりを指先に感じた。
「街の人たちが言っていたわ。本国が恐ろしい軍隊を送ってくるかもしれないって。でも、私は少しも怖くありません。だって、私のフランクは、あの激甚落雷の天災から街を救い、グラス・ハーモニカで世界中の王族の涙を誘った、人類のサポーターなのですもの。どのような暗雲が立ち込めようとも、貴方の掲げる自由の光が、私たちを必ずホワイトな未来へと導いてくれると信じています」
デボラは私の仕立ての良い衣服の肩に優しく手を置き、その一途な瞳で私を見つめた。ここにあるのは、完璧な聖人である私と、それを信じ続ける美しいヒロインの純粋な絆だけであった。
「その通りです、デボラ。私は民衆の幸福と人類の発展のためにのみ動く。本国の老害議員たちが、自分たちの特権を守るために平民の生活を踏みにじるというのであれば、私はその傲慢の象徴である印紙法を、彼らの目の前で粉々にデバッグして見せましょう」
私は彼女の手を優しく握り返し、溢れ出る圧倒的な現役としてのエネルギーを執筆中の原稿へと注ぎ込んだ。
数日後、フランクリン商会が誇る世界最速の郵便システムを通じて、私が仕掛けた「非輸入同意」のネットワークは、大陸全土の主要都市へと一瞬で伝播した。
私の発行する新聞の号外には、本国の印紙法がいかに不条理であり、我々の正当な権利を侵害しているかをユーモアと鋭いロジックで解き明かした天才風刺論評が掲載された。民衆は「深すぎる……!」と感動し、誰一人として本国の印紙を買おうとはしなかった。それどころか、大陸中の商人たちが一斉にイギリス製品のボイコットに署名し、本国の製造業への発注を完全にストップしたのである。
このチート内政による経済包囲網の効果は、凄まじい速度でイギリス本国の心臓部へと突き刺さった。
ロンドンやリヴァプールの港には、大陸へ輸出されるはずだった大量の織物や鉄製品が山積みにされて腐り始め、本国の工場は次々と操業停止に追い込まれた。破産の危機に瀕した本国の商人や労働者たちは、怒り狂ってイギリス議会へと押し寄せた。
「植民地の連中が我々の製品を一切買わなくなったせいで、国中の商売が干上がっているぞ!」
「あの大陸の平民どもを裏で操っているのは、あの天才科学者のフランクリンだ! 奴を今すぐ議会に呼び出し、この事態をどう収拾するのか問い詰めるべきだ!」
イギリス本国の老害議員たちは、自分たちが放った印紙法というブーメランが、自国の経済を完全に破壊しているという最悪の現実に直面し、顔を青ざめさせてガタガタと震え始めた。彼らはついに、私という存在を直接ロンドンの議会へと召喚し、公式な尋問を行うという最終手段に出ることを決定した。
知らせを受けたフィラデルフィアの民衆は、超大国の最高権力の中枢へ単身乗り込もうとする私を心配し、ポストオフィスの前に集まって声を枯らした。
「フランクリン様! 本国の老害議会は、貴方を陥れるために恐ろしい罠を用意しているに違いありません!」
「どうか行かないでください! 貴方に万が一のことがあれば、この街の光は失われてしまう!」
集まった何千人もの市民たちの前に、私は仕立ての良い最高級の衣服をまとい、ウィリアムとデボラを両脇に従えて姿を現した。常に余裕のある笑みを浮かべた私の佇まいには、悲壮感など微塵も存在しない。あるのは、これから始まる歴史的な論破ショー(ざまぁイベント)を前にした、圧倒的な知のカリスマのオーラだけであった。
「皆様、恐れることは何もありません。私はただ、古いシステムにしがみつく本国の議員たちに、新時代の経済の最適解を直接教えてあげるだけです。彼らがどれほど醜い尋問の罠を仕掛けようとも、私のカンストした知識と衰えを知らない弁舌の切れ味の前には、すべての欺瞞がクリーンに暴かれることになるでしょう」
私の堂々とした宣言に、民衆からは地鳴りのような大歓声が沸き起こった。彼らの忠誠心と熱狂は、いまや本国の王権を完全に超え、私のペン一本の力へと統合されていた。
私はウィリアムの手を強く握りしめ、彼の誠実な引き締まった体躯から伝わる確固たる信頼を受け止めた。
「ウィリアム、私が大西洋を渡っている間、この街のインフラとデボラのことを頼みますよ。本国がどのような軍事的な圧力をかけてこようとも、君の防衛網があれば、私が帰るべき場所は死守されると信じています」
「ああ、任せてくれ、フランク! 君が海の向こうで老害どもを完全論破してくる間、僕はここで商会のトップ営業として、経済包囲網をさらに強固なものに仕上げてみせる。君の背後は、僕が命に代えても守り抜くさ!」
二人の爽やかな友情の火花が、暗雲立ち込める大西洋を照らし出すかのように輝いた。
私はデボラの可憐な見送りを受けながら、ロンドンへと向かう最新鋭の快速船へと乗船した。
私は単身、超大国イギリスの心臓部へと乗り込んでいく。待ち受けるのは、数百人の老害議員たちが仕掛ける、何時間にもわたる執拗な尋問の罠。しかし、それこそが、私が世界最強の若き外交官として歴史の主導権を完全に掌握するための、最高の舞台となるのであった。
物語は、全世界の運命を左右するロンドン議会でのスタイリッシュ完全論破ショーという、これ以上ない興奮へと、最高の盛り上がりを見せながら堂々と突入していく。




