無欲の聖者が示す王道、統治権の譲渡と真のサポーターの決意
私が考案した新時代の音響ガジェットであるグラス・ハーモニカが放つ、極限までクリーンに調律された天上の和音は、海の向こうの旧態依然とした権力者たちや美貌の貴婦人たちの精神を完全にハッキングした。伝統的な宮廷音楽にしがみついていた保守派の老害学者たちは、最先端の音響科学の極致の前に言葉を失って完全論破され、夜陰に紛れて失脚していった。すべてが私の描いた設計図通りにパズルがはまっていくクリーンざまぁの極みを達成し、フランクリン商会のブランド価値と国際的な名声は、もはや天高い領域へと到達していたのである。
だが、この圧倒的なカリスマの暴走とも言える事態は、私が住まうペンシルベニアの地において、想像を超える地殻変動を引き起こすこととなった。
これまでの歩みの中で、私は数々の内政チートとインフラ改革を成し遂げてきた。公共図書館の設立による知の共有、ボランティア消防団の結成による都市の防災、避雷針の完全無償公開、電気街灯による夜間犯罪率の激減、そしてフランクリン・ストーブによる冬の凍死者ゼロ化。平民の生活を豊かにし、人類の安全を何よりも優先する私の完璧な聖人ムーブは、民衆の心の中に「フランク様こそが、この街の真の支配者にふさわしい」という絶対的な信仰を植え付けていたのだ。
その結果として、この地に君臨していた元の領主であるペン一族の統治体制は、名実ともに中身の伴わない空洞のデータへと退化していた。民衆が領主の課す理不尽な税や古い法律を無視し、何か問題が起きるたびに私の印刷所やポストオフィスへと押し寄せ、私の最適解による裁定を求めるようになったからである。
「フランク! 大変なことになった。現領主の代理人である総督と、ペン一族の直系である領主本人が、直々に我がフランクリン商会の総長執務室へ向かって歩いてきている。街の広場には彼らの馬車を一目見ようと民衆が集まっているけれど、みんな領主ではなく、君の動向を固唾を呑んで見守っている状態だ。彼らは完全に、君に白旗を揚げに来たんだよ!」
フィラデルフィアの中央ポストオフィス、磨き上げられた大理石の廊下に革靴の小気味よい音が響き、最高防衛責任者であるウィリアムが扉を開けて入ってきた。彼の誠実で引き締まった体躯は、これまでにない歴史的な転換期の熱量を感じて緊張に引き締まっており、その鋭い視線は私の次なる選択を見極めようとしていた。
私は、上質なシルクと最新の裁断技術で仕立てられた、一切の汚れもない最高級の衣服に身を包み、デスクの上でペンを滑らせていた手を止めた。常に余裕のある笑みを浮かべ、椅子の背もたれにゆったりと身を預ける。私の全身からは、どれほど巨大な権力や地位が目の前に転がり込もうとも、それを完全にコントロールしてみせるという知的で堂々としたオーラが溢れ出ていた。
「慌てる必要はありませんよ、ウィリアム。彼らはただ、自分たちの古い統治システムが、私の構築した近代的なコミュニティのインフラに対して完全に機能不全を起こしていることを自覚したに過ぎません。権力というものは、強引に奪い取るものではなく、最適な社会環境を提供し続けた結果として、自然と一箇所に集約されてしまうものなのですから」
私が静かに立ち上がると、同時に執務室の重厚な扉が開き、華美な装飾で飾られた衣服を着た、しかしその表情には隠しようのない疲労と諦念をにじませた元の領主一族の代表者が、複数の随行員を伴って入室してきた。かつては絶対的な土地の所有者として君臨していたはずの貴族が、いまや私の前で、まるで審判を待つ被告人のように冷や汗を流している。
「……フランクリン殿。突然の訪問を許してほしい。本日、私がここへ足を運んだのは、他でもない。我がペン一族が先祖代々受け継いできた、このペンシルベニアの全域における統治権、および土地のすべての管理特権を、貴殿へと完全に譲渡したいという公式な申し出を行うためだ」
領主は、震える手で最高級の羊皮紙に書かれた「統治権完全譲渡誓約書」をデスクの上に広げた。そこには、領主としての地位、徴税権、裁判権、そして都市の全権力を私個人へと無条件で委ねるという、破格の内容が記されていた。
「現在のこの街のインフラ、警察、消防、郵便、教育のすべては、貴殿の発明とフランクリン商会の資金によって完璧に自動化されている。もはや我々が領主として存在する意味などないのだ。民衆もそれを望んでいる。頼む、この街の王になってくれ」
随行員たちが、すがるような目で私を見つめる。それは、一介の印刷職人からスタートした私が、名実ともにこの大陸の一大国家の君主として君臨する瞬間(圧倒的なざまぁ達成)の到来を意味していた。
ウィリアムが、息を呑んで私の顔を見つめた。もし私がこの誓約書にサインすれば、一生遊んで暮らせる富どころか、絶対的な権力を持つトップの座が手に入る。
しかし、私はその黄金のペンを手に取りながらも、ただ静かに首を横に振り、常に余裕のある笑みを崩さなかった。
「お申し出は大変光栄ですが、領主。私はその統治権の譲渡を、この場において爽やかに辞退させていただきます」
「な、何だって……!? なぜだ! 貴殿なら、この街の完璧な支配者として、全平民を率いる絶対的な王になれるというのに!」
領主と周囲の貴族たちが、驚愕のあまり目を丸くして叫んだ。私の主観的な一人称の視点から見れば、彼らの古い脳髄では、権力を目の前にしてそれを拒絶する人間の思考回路が理解できないのだろう。しかし、私の知力はすでにカンストしている。絶対的な権力者という椅子に座った瞬間、それは「不都合な現実」や政治的な泥沼、裏切りのリスクというバグを自ら背負い込むことになるという最適解を、私は瞬時に導き出していたのだ。
「勘違いしないでいただきたい。私は、民衆を支配する『支配者(王)』になりたいわけではないのです。私の目的はただ一つ、この街のすべての平民が、理不尽な強制や搾取から解放され、それぞれの能力を最大限に発揮できる自由な環境を整えること。つまり、私は市民の皆様の可能性を後ろから押し上げる『真のサポーター』でありたいのです。権力という重荷は、一人の人間に集中すべきではありません。それは社会全体で共有し、システムとして自動化されるべきなのです」
私は誓約書をそっと押し戻し、仕立ての良い衣服の袖を端正に整えながら、圧倒的な聖人オーラを放って言葉を続けた。
「私が欲しいのは、誰かを見下すための王座ではなく、誰もが笑顔で暮らせる理想郷のインフラそのものです。統治権は私ではなく、市民自身が選出する議会へと返還されるべきです。私はその議会が正しく機能するための、文字の力、科学の力、そして経済の力を提供する一人の奉仕者に過ぎません」
「お、おお……。なんと無欲な、なんと高潔な御方なのだ……。己の利益を一切顧みず、ただ人類の発展と民衆の幸福のためだけに動く、本物の聖者がここにいる……!」
元の領主は、私の圧倒的な器の大きさと、神対応とも言える爽やかな辞退の姿勢の前に、感動のあまりその場に崩れ落ち、涙を流して完全敗北を認めた。彼らがこれまで必死に守ろうとしていた権力の椅子がいかに小さく、私の見つめている未来がいかに巨大であるかが、この瞬間に世界へと露呈したのである。
この「統治権の爽快な辞退」という異次元の聖人ムーブは、フランクリン商会の手によって大陸全土へ、そして海の向こうの本国へと最速で拡散された。
「フランクリン様は、与えられるはずだった一国の王の座すら、平民の自由のために投げ打たれた!」
「彼こそが、私たちの真のリーダーであり、最高のサポーターだ!」
大陸の全平民の忠誠心と熱狂は、これで完全に臨界点を突破した。私が一切の権力を断ったことによって、逆に「フランクリンの言葉こそが絶対的な正義である」という、法律すらも超越した世界最強の信頼システムが完成したのである。
この出来事は、これまでフランクリン商会の急速な内政発展を、ただの「一地方の商人の成功」として軽視していた大国「イギリス本国(老害議会)」の老害議員たちを、底知れぬ恐怖で震え上がらせることとなった。
彼らは、私が王位に就くよりも、このように「無欲の聖者」として全民衆の精神的支柱に君臨している状態の方が、遥かに本国の支配体制にとって脅威であるという本質を、ついに理解し始めたのである。
「あのフランクリンという小僧をこのまま放っておけば、遠くない未来、大陸全体の利権が我がイギリス本国のコントロールから完全に離脱してしまうぞ!」
「平民どもが奴のインフラシステムに依存し、本国の法律を軽視し始めている。今すぐ奴の翼をもぎ取り、本国の絶対的な権威を見せつけてやらねばならん!」
焦燥感に駆られたイギリス議会の老害議員たちは、ついにその醜い本性を剥き出しにし、私たちの住む地域を力づくで締め付けるための理不尽な重税「印紙法」の可決へと動き出した。あらゆる印刷物や法的書類に本国の高額な印紙を貼ることを義務付けるという、私の基盤である印刷業と民衆の言論の自由を真っ向から破壊するための、最悪の嫌がらせ(バグ)である。
大陸全土に、本国からの非情な通達が響き渡り、昨日までの平和な活気は一転して絶望の暗雲へと包まれた。
「本国の印紙法が施行されたら、私たちは新聞を読むことも、自由に商売の契約を交わすこともできなくなる……」
「結局、私たちは大国の気まぐれで潰されるだけの存在だったのか……」
フィラデルフィアの街を行き交う市民たちの顔から笑顔が消え、誰もが重税の恐怖に震えていた。
だが、そんな絶望の渦中にあっても、フランクリン商会の総長執務室だけは、変わらない圧倒的なクリーンな光に満ちていた。
「フランク、本国議会が正式に印紙法を可決したわ。街のみんなは不安に押しつぶされそうになっているけれど……私は知っているの。貴方がこれまでに見せてくれた科学の光やグラス・ハーモニカの奇跡と同じように、この理不尽な試練すらも、すべてを素晴らしい未来へと変えてしまう最適解を、その頭脳の中にすでに完成させているということを」
私のデスクの傍らで、デボラが出会い頭の頃から変わらない可憐な姿勢のまま、私の大好きな紅茶を静かに注いでくれた。彼女の経年変化を感じさせない一途な妻としての行動と姿勢が、これから始まる世界最強の超大国との外交戦を前にした私の、現役としての圧倒的なエネルギーを最高の状態へと研ぎ澄ましてくれる。
「その通りですよ、デボラ。本国の老害議員たちは、目先の税収という目に見える数字を追うあまり、私たちがどれほど強固な精神のネットワークで結ばれているかという絶対的な現実を見落としている」
私は紅茶を一口含み、常に余裕のある笑みを浮かべたまま、ペンを握る手の力強さをさらに込めて、ウィリアムの待つデスクの前に歩み寄った。
「ウィリアム、本国のこの理不尽な締め付けは、私たちが古い世界の軛を完全に断ち切り、誰もが自由になれる理想の新国家を建国するための、これ以上ない最高のカウンタートリガーなのです。民衆が本国の支配に対して『NO』を突き付けるための、完璧な大義名分を奴ら自らが与えてくれたのですよ」
「ああ、フランク! 君の言う通りだ。街の労働者たちも、君が救済雇用してくれたホワイト環境を守るためなら、本国の軍隊が相手だろうと一歩も引かないと息巻いている。僕の防衛部隊も、君の指示があればいつでも動けるよう、郵便ルートの防衛線を完璧にアップデートしてあるよ!」
誠実で引き締まった体躯を持つ優秀な男、ウィリアムが、私の理想に完全に共鳴した爽やかな笑顔で拳を握りしめた。二人の間に流れる絶対的な信頼関係は、世界のいかなる巨大な軍事力をもってしても、決して引き裂くことはできないものとしてそこに完成していた。
「素晴らしいですよ、ウィリアム。では、これ以上の無駄な血を流すことなく、ペン一本とカンストした知識だけで超大国を黙らせる、最高峰の外交戦を始めましょう。私は単身、イギリス議会という老害たちの巣窟へと乗り込みます。彼らの傲慢な尋問をスタイリッシュに完全論破し、その足元を根本からひっくり返してあげるのです」
私は仕立ての良い最高級の衣服を翻し、現役としての圧倒的な活動力を漲らせながら、新天地の未来を守るための第一歩を踏み出した。
時間の経過を完全にフリーズさせ、永遠の若さと圧倒的なカリスマを保ったまま、私はアメリカの命運をその両肩に背負い、大西洋の向こうの戦場(議会)へと赴く。誰も傷つかず、誰もが豊かになれる理想の国家のグランドフィナーレへ向けて、物語は超大国を相手にした最強の外交ハーレム無双へと、最高の盛り上がりを見せながら堂々と接続されるのだった。




