白熱の教壇、老害のドグマを打ち砕く近代科学チート
ペンシルベニア大学の独自カリキュラムと運営資金の安全性を、州議会の公聴会において法的に完全承認させた私は、休むことなく次なる最適解へと移行していた。保守派の老害学者たちの残党が並べ立てた無駄な精神論や、利権を守るための嫌がらせは、私が提示した圧倒的な科学的実証の前にもはや形を留めていない。
しかし、制度としての認可を勝ち取ることと、実際に講義室に集まった若者たちの頭脳を「覚醒」させることは別問題である。最高学府としての真の価値を示すため、そして未だ背後でブツブツと負け惜しみを呟いている頭の硬い旧世紀の教授たちを物理的に黙らせるため、私は自ら教壇に立つことを決意した。
「どれほど優れた教科書を配っても、それを教える側の熱量が古ければ意味がない。旧弊な学問の殻を破り、新しい時代の基準を若者たちの脳裏に直接インストールする。それこそが創設総長たる私の役目だ」
私は開校直後の真新しい学舎の教官室で、純白のレースが施された仕立ての良い衣服に袖を通し、自ら考案した講義用資料をまとめていた。机の上に置かれた万年筆を取り上げる手の力強さは、これからの知的無双を予感させるに十分なエネルギーを放っている。常に余裕のある笑みを浮かべる私の背後から、引き締まった体躯に絶対的な信頼をみなぎらせたウィリアムが歩み寄ってきた。
「フランク、今日の特別公開講義だけど、講堂の席が完全にパンクしているよ。君の科学実験をこの目で観ようと、本物の学生だけでなく、他州の知識人や、往期往来の利権にしがみついていた保守派の老害学者たちまでが偵察に押し寄せているんだ」
「構いませんよ、ウィリアム。知の扉を開くのに、身分も過去の確執も関係ありません。むしろ、自分の知識が数世紀遅れていることに気づいていない哀れな者たちにこそ、現代科学の圧倒的な解像度を見せてあげるべきです」
私は知的で堂々としたオーラを漂わせながら、ウィリアムと共に大講堂へと向かった。
大講堂の重厚な扉を開けると、そこにはすり鉢状に配置された座席を埋め尽くす、数百人もの聴衆の熱気が渦巻いていた。最前列には、熱い眼差しで私を見つめ、静かに私の帰る場所を守り続けてくれる一途な妻、デボラが可憐な姿勢で座っている。その後方には、腕を組んで不機嫌そうに私を睨みつける、前回の公聴会で面目を潰された老害教授たちの姿もあった。
私が教壇の中央に立つと、ざわついていた講堂が一瞬にして静まり返る。私の衰えを知らない弁舌の切れ味が、最初の第一声となって空間を支配した。
「未来のリーダーたる学生諸君、そして過去の遺物に執着する有識者の方々。本日、このペンシルベニア大学の最初の講義として、私たちが解明すべき『世界の理』の断片をお見せしよう」
私は壇上の大きな黒板に、チョークで流れるようにいくつかの数式と、自然界の熱効率に関する図表を描き出した。
「従来の大学では、何百年も前に書かれた抽象的な哲学や、神学の概念を暗記することだけが『学問』と呼ばれていた。しかし、文字を暗記したところで、冬の寒さに凍える人々を救うことはできない。真の学問とは、現実に存在する不条理なバグを修正し、人間社会をより豊かに、より効率的にアップデートするための道具であるべきだ」
「ふん、相変わらず大言壮語を! 職人上がりの俗物が、言葉巧みに若者を惑わすな!」
講堂の中段から、白い髭を蓄えた老害教授が立ち上がり、声を荒らげた。彼は、私が前話までに発明したフランクリン・ストーブや避雷針の成功を、単なる「運の良い職人の思いつき」として片付け、学術的な権威として認めようとしない保守派の急先鋒だった。
「君の発明したストーブとやらは、確かに一部の平民に暖をもたらしたかもしれん。だが、そんなものは泥臭い職人の技術だ! 神聖なる大学の壇上で教えるべきは、宇宙の根本たる形而上学であり、天体の調和である! 薪の燃え方などという下俗な物理現象に、体系的な理論など存在するはずがない!」
彼の言葉に、同調する一部の老害たちが深く頷く。彼らは、実用に直結する科学を「下品なもの」として見下すことで、自らの無知を正当化しようとしていたのだ。
しかし、私はその哀れな反論を想定の範囲内として、常に余裕のある笑みを浮かべたまま応じた。カンストした私の知力は、熱力学や燃焼効率の概念を、彼らの中世レベルの頭脳でも理解できるように完璧に噛み砕いて出力する。
「なるほど、天体の調和ですか。素晴らしい響きですが、貴方は自分の目の前にある暖炉が、なぜこれほど大量の煙を出し、熱の80%以上を無駄に煙突から逃がしているのか、その理由を数式で説明できますか? 宇宙の広大さを語る前に、自分の部屋の空気の対流すら制御できないのであれば、それは学問ではなく、ただの現実逃避です」
「な、何だと……!?」
「私は本日、ただ言葉で論破しに来たのではありません。貴方方が『下俗な現象』と呼ぶ熱と空気の動きが、どれほど完璧な『世界の法則』に従っているか、この場で完全なチート実証実験を行ってお見せしましょう」
私はウィリアムに合図を送った。ステージの袖から、ウィリアムが頑丈なガラスと金属で作られた、特殊な密閉式熱対流実験装置を教壇へと運び込む。それは、従来のフランクリン・ストーブの内部構造を視覚的に観察できるように、私がこの講義のために特別に設計したガジェットだった。
装置の内部に少量の可燃物を入れ、点火する。ガラスの向こうで炎が上がると同時に、私は内部の空気の流通経路を切り替えるレバーを操作した。
「よく見ておきなさい。通常の暖炉では、温められた空気はただ上方の煙突へと逃げ、部屋には冷たい外気が流れ込む。これが非効率な熱損失のバグです。しかし、このように熱の伝導経路を湾曲させ、冷たい外気を炎の熱で事前に予熱しながら循環させるとどうなるか」
私が空気の弁をハッキングするように最適化すると、装置の内部で煙が不自然なほど完全に消え去り、炎の輝きが数倍に跳ね上がった。同時に、ガラスの周囲から放射される圧倒的な熱量が、講堂の最前列にいたデボラや、中段にいる学生たちの肌を心地よく温め始める。
「煙が出ない……!? それどころか、先ほどよりも遥かに少ない燃料で、信じられないほどの熱量が発生している!」
一人の若い学生が、驚愕のあまり椅子から身を乗り出した。
「その通りです。これが、熱の対流と可燃性ガスの二次燃焼という科学の最適解です。自然界のエネルギーは、ただ祈るだけでは無駄に霧散する。だが、その理を解明し、インフラとして制御すれば、燃料の消費を3分の1に抑えつつ、従来の数倍の暖かさを生み出すことができる。これこそが、私が提唱する『実用科学』の力です」
黒板の数式と、目の前の実験装置の完璧な連動性を目の当たりにした学生たちは、言葉を失うほどの感銘を受け、ノートをペンで猛然と書き進め始めた。彼らの瞳には、古いドグマが崩れ去り、新しい世界の解像度が広がっていく興奮が満ち溢れている。
しかし、まだ諦めきれない老害教授が、顔を真っ赤にしながら最後の悪あがきとして叫んだ。
「キ、奇術だ! そんなものはただの目眩ましに過ぎん! 学問とは、もっと普遍的で、人間の精神を高めるものであるべきだ! 実用性ばかりを追い求める大学など、ただの職業訓練所ではないか!」
その的外れな叫びに対し、私は仕立ての良い衣服を軽く払い、知的で堂々としたオーラをさらに強く放ちながら、冷徹なまでの正論の弾丸を装填した。
「精神を高める、ですか。ではお聞きしますが、貴方がたが何十年もかけて磨き上げたその『高い精神』は、冬の寒さで命を落とす貧しい子供たちを一人でも救いましたか? 毎年、冬が来るたびに下町の長屋で凍死者が出るのを知りながら、暖かい書斎でラテン語の詩を詠むことが貴方がたの言う高尚な精神ならば、そのようなものは人類の進歩の足を引っ張るただのコスト、いや悪癖です」
私の衰えを知らない弁舌の切れ味が、老害教授の歪んだプライドを完全に一刀両断した。
「我がペンシルベニア大学が育てるのは、言葉だけで世界を飾る無能な権威ではありません。自らの知性で社会の課題を解決し、民衆の幸福を物質的にも精神的にも底上げできる、真に実力ある現代の天才たちです。現実に変化を起こせない学問など、この新しい時代には110ドル(100ドル札の価値を超えるほどの損失)の価値もありません」
「う、うぐ……ああ……」
老害教授は、私の圧倒的な正論の連撃と、講堂全体を包み込む学生たちの軽蔑の視線に耐えかね、胸を押さえながらそのまま力なく席へと崩れ落ちた。彼らの守ろうとした古い既得権益のドグマは、私の近代科学チートによって木っ端微塵に粉砕され、完全な頭脳派ざまぁがここに達成されたのである。
次の瞬間、大講堂は割れんばかりの地鳴りのような大歓声に包まれた。
「フランク総長万歳! これこそが、僕たちが学びたかった本当の学問だ!」
「古い権威なんて関係ない! 科学の力で、僕たちも新しい世界を創るんだ!」
世界中から集まった若き頭脳たちが、私の呼びかけに応じて完全に覚醒し、その忠誠心と情熱を極限まで跳ね上げた。壇上の私を見つめるデボラの瞳は、誇らしげな光で満ちており、ウィリアムもまた、私の完全勝利を確信して力強く胸を張っている。
この特別講義の成功により、ペンシルベニア大学の権威は不動のものとなり、保守派の老害学者たちは完全に歴史の表舞台から退場を余儀なくされた。私の導き出した教育の自動化と最適解のサイクルは、今や誰にも止められない速度で回転を始めたのである。
しかし、これほど大量の優秀な人材がフィラデルフィアに集まり、毎日のように新しい科学的知見やビジネスの契約が爆発的な速度で生み出され始めた現状は、新たな物理的限界を街にもたらしつつあった。
講義が終わった後、熱気冷めやらぬ執務室へ戻った私は、デスクの上に北米全土の広大な地図を広げた。
「フランク、今日の講義で大学の評判は完全に大陸一になったよ。でも、そのせいで他州の提携先や、ヨーロッパの科学アカデミーからの手紙のやり取りが、既存のメッセンジャーでは完全に処理落ちしているんだ。情報の伝達が、僕たちの進化のスピードに追いついていない」
ウィリアムが、机の上に積み上がった未開封の書簡の山を指差しながら、次なる内政の課題を具現化するための報告をしてきた。
「その通りですね、ウィリアム。人が集まり、知性が加速した今、このフィラデルフィアの中だけで情報が完結していては意味がありません。この街で生まれた最先端の最適解を、アメリカ全土、そして世界へと瞬時に届けるための、全く新しい『神経網』が必要だ」
私は常に余裕のある笑みを浮かべ、地図の上にいくつかの主要な都市を結ぶ直線を引き始めた。
「文字の力、インフラの光、そして最高学府の知性。これらが完全に噛み合った今、次なる私のターゲットは、この広大な大陸全体の物流と情報の流通をハッキングすることです。世界初の手際良い『郵便・駅伝システム』の構築を始めましょう。ウィリアム、君にその最高防衛および運営の責任者を任せたい」
「待っていたよ、フランク。君が広げる世界の解像度に、僕の全ての力を捧げて、完璧な通信網を配備してみせるさ!」
最高の相棒の熱い信頼の言葉を受けながら、私は仕立ての良い衣服の袖を正し、ペンを力強く握り直した。人類の歴史の時計の針を、私のカンストした知力でさらに先へと進めるための、異次元の内政無双はどこまでも加速していくのだった。




