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海を渡る雷鳴、旧世界の権威を震撼させる半神の称号

避雷針の図面を完全無償公開したことにより、フィラデルフィアは天災を完全に克服した「安全の理想郷」へと変貌を遂げた。利権に固執する悪徳商人たちや保守的な学者たちの妨害を完璧な正論で粉砕した私は、次なるインフラ最適化の青写真へと取り掛かっていた。


だが、人類の幸福を最大化するために私が放った無償の叡智は、私が想像していたよりも遥かに大きなエネルギーとなって、大西洋を越えた旧世界を激しく揺るがし始めていた。


それは、私自身の知名度を、ただの「一地方の成功した印刷業者」から、世界の歴史を先導する「人類の救世主」へと押し上げる、決定的な社会的爆発の始まりであった。


ある日の午後、フランクリン印刷所の私の執務室に、ウィリアムが興奮を通り越して、どこか畏怖すら感じさせる面持ちで入ってきた。誠実で引き締まった体躯を持つ私の右腕は、その両手に、見たこともないほど豪華な羊皮紙の束と、重厚な封蝋が施された何通もの書簡を抱えている。


「フランク……大変なことが起きた。君が印刷し、世界中に無料で発送したあの避雷針の論文が、ヨーロッパの主要な科学アカデミーにすべて到達した。ロンドン、パリ、そしてベルリン。旧世界の最高峰に位置する学者たちが、今、君の名前を前にして完全にパニックに陥っているぞ!」


ウィリアムは、机の上に広げられた高価な書簡の山を指差した。そこには、格式高いラテン語やフランス語で、私に対する惜しみない賛辞と、驚愕の言葉が並んでいる。


「見てくれ、これがイギリスのロンドン王立協会からの公式な書簡だ。これまで植民地の科学などと見下していたあの傲慢なエリートたちが、君の論文を読んだ瞬間、全員が言葉を失って起立したそうだ。彼らは、君がシルクの凧だけで雷の本質を完全に暴き、それを避雷針という極めてシンプルな器具で無効化した事実を認め、王立協会の最高名誉である『コプリ・メダル』を君に授与することを満場一致で決定したと書いてある!」


「コプリ・メダル……。旧世界の科学界における、最高峰の栄誉ですね」


私は仕立ての良い衣服の袖口を軽く整えながら、いつものように余裕のある笑みを浮かべた。ペンを握る手の力強さは変わらず、押し寄せる名声の波を冷徹かつ完璧な知性で受け止めている。


「それだけじゃない。フランスの社交界や科学界のトップたちも、君のこの偉業に熱狂している。彼らは君のことを『天から稲妻を奪い、暴君から王笏をのぞいた男』と呼び、まるで神話に登場する半神の英雄であるかのように讃えているんだ。今やヨーロッパ中の知識人が、君のその圧倒的な頭脳にひざまずこうとしている」


ウィリアムの言葉は、決して大げさな表現ではなかった。当時のヨーロッパにおいて、雷は依然として不可解な「天の怒り」であり、それを人間がコントロールするなど不可能な領域とされていた。しかし、私がその理を解明し、さらに特許すら取らずに【完全無償公開】としたことで、彼らの古い世界観は根底から覆されたのだ。


「彼らが驚くのも無理はありません、ウィリアム。旧世界の学者たちは、長年、膨大な予算と複雑な数式をこねくり回しながら、何一つとして民衆の命を救う具体的な成果を上げられなかった。そこに、ただの紐と鍵、そして絹の凧だけで天のエネルギーを完全に手中に収めた私の最適解が突きつけられたのです。彼らの培ってきた『権威』という名のメッキが、一瞬にして剥がれ落ちたのですよ」


私の声には、世界の知性を最速でアップデートする者としての、知的で堂々としたオーラがみなぎっていた。


「富や名声を独占しようとするから、思考が濁るのです。私はただ、人類の安全と発展という最も効率的なゴールだけを見据えて動いている。その結果として、彼らの古いシステムが崩壊したとしても、それは歴史の必然に過ぎません」


「本当に君という男は、底が知れないな……。世界中が君を神格化し始めているというのに、その視線はすでに未来のさらに先を見つめている。私は君の相棒であることを、心から誇りに思うよ」


ウィリアムは深く感服したように首を振り、私の指示に従って、ロンドン王立協会へのスマートな返答の手紙を準備し始めた。名誉に浮かれることなく、それを次の内政や外交を有利に進めるための「無形の資産ブランド」として処理する私の姿勢に、彼は改めて絶対的な忠誠を誓ったのだろう。


午後になると、私の印刷所の広場には、いつも以上の黒山の人だかりができていた。


ヨーロッパからの特使や、私の偉業を一目見ようと大西洋を渡ってきた若い学者たちが、私の執務室の窓を見上げて熱い視線を送っている。街の市民たちもまた、自分たちの誇る「フランク様」が、あの気取ったヨーロッパの王侯貴族や最高峰の学者たちを完全に沈まかせ、世界の中心に躍り出たというニュースに、地鳴りのおが沸き起こるような大歓声を上げていた。


「おい、聞いたか! イギリスの偉い学者たちが、フランク様に最高のメダルを贈るんだってよ!」

「当たり前だ! フランク様は俺たちの命を救っただけじゃない、今や世界中の科学を引っ張る偉大な偉人になられたんだ!」


市民たちの幸福度と誇りが限界突破していくのを感じながら、私はデスクでペンを走らせていた。


そんな中、私の元へ、かつてフィラデルフィアの学会を牛耳り、私を「若造の不遜な実験」と罵っていた保守派の老害学者たちの幹部が、数人で再び訪ねてきた。以前の傲慢さは木っ端微塵に砕け散り、彼らはヨーロッパからの公式書簡の写しを手にしたまま、全身を小刻みに震わせている。


彼らの代表が、緊張と羞恥で声を詰まらせながら、私の前に深く頭を下げた。


「フランク氏……いや、フランク先生。我々の不明を、どうか、どうか幾度でもお許しいただきたい。我々が国内で貴殿の足を引っ張るような醜い議論に終始している間に、世界は、ロンドンもパリも、貴殿の圧倒的な正しさを認めていた……」


老害学者たちは、私を非難していた自分たちの行動が、いかに国際的に恥ずかしい「無知の極み」であったかを思い知り、完全にプライドを喪失していた。ヨーロッパの権威が私を「半神」と讃えた以上、彼らがそれに逆らうことは、自らの学者生命を完全に絶たれることを意味する。


「我々は、貴殿が設立を計画している新しい学術機関や、今後の都市インフラのすべてに、全力を尽くして従う所存です。どうか、我々にもその最先端の知を学ぶ末席を汚させてはいただけないでしょうか」


彼らの完全な敗北の宣言。しかし、私はいつものように爽やかで余裕のある笑みを崩さぬまま、静かに彼らを迎え入れた。器の小さな復讐など、私のグランドデザインには不要なコストだ。彼らの労働力と知識を、今後の都市発展のために効率よく組み込むことこそが、最もホワイトな統治と言える。


「顔を上げてください、皆さん。私は以前も申し上げた通り、過去のすれ違いを気にしてなどいません。科学の発展に、国境も、古い派閥も関係ありません。貴方方が自らの無知を認め、人類の進歩のために力を貸してくださるというのなら、私は喜んで歓迎します。フィラデルフィアを世界一の学術都市にするために、共に働きましょう」


「おお……! なんという聖人のごとき大度量……! 貴殿はただの天才ではない、人類を導く真の聖者だ……!」


老害学者たちは私のあまりにもクリーンな神対応に深く涙を流し、その場に何度も額を擦り付けるようにして感謝し、私の配下として働くために一目散に去っていった。これで、国内における学術的な反対勢力は完全にゼロとなり、私の影響力は絶対的なものへと昇華した。


夕暮れ時、印刷所の屋上で、私は涼しい風に吹かれながら街の景色を眺めていた。家々の屋根で夕日に輝く避雷針の鋭い先端が、まるで私の未来を祝福する盾のように並んでいる。


そこへ、静かな足取りでデボラがやってきた。彼女の可憐な仕草や美しい佇まいは、出会ったあの日から何一つ変わらぬ優しさを保っており、その手には、お祝いのために自ら焼いた温かいパンと、淹れたてのハーブティーが携えられている。


「フランク、本当におめでとう。世界中から貴方を讃える声が届いているわね。でも、どんなに偉大な人になっても、私の前ではただの優しいフランクでいてね。貴方が無事で、こうして私の隣で微笑んでくれることが、私にとっての最高の誇りなのだから」


彼女は一途な瞳で私を見つめ、そっと私の隣に寄り添った。衣服を揺らす風の中で、彼女の放つ平穏で深い愛情が、私の張り詰めた頭脳を心地よく癒していく。


「ありがとう、デボラ。世界が私をどう呼ぼうとも、私の本質は何も変わらないよ。この手に握ったペンも、紡ぎ出す知識も、すべては君と、この街の優しい人々の暮らしをより豊かに、安全にするためにある。ヨーロッパのメダルも、彼らの称賛も、私にとっては君の焼いてくれたこのパンの温かさには敵わないさ」


私は彼女の温かい手を優しく包み込み、その細い指先に静かに誓った。外の世界でどれほど巨大な権威の変動が起きようとも、この帰るべき場所のクリーンな幸福だけは、私がその圧倒的な知力を持って未来永劫守り抜いてみせる、と。


デボラは嬉しそうに頬を染め、私の胸にそっと頭を預けた。大西洋の向こうで激しく鳴り響く称賛の雷鳴とは対照的に、私たちの間には、何ものにも脅かされることのない絶対的な平穏の時間が流れていた。


翌朝、私は再び執務室のデスクに向かい、新しい図面とマニュアルの執筆を開始した。


ヨーロッパからの称賛は、私の影響力を国際的なレベルへと引き上げる強力な武器となった。この無形の名声をレバレッジとして活用すれば、今後の内政や、いずれ訪れるであろう超大国との本格的な交渉において、圧倒的に有利な立ち回りが可能となる。


「文字の力で世論の基準を作り、避雷針で天災を克服し、世界にその名を半神として轟かせた。さて、ウィリアム。次はこの高まった国際的な名声と、我が商会の自動化された富を融合させ、街のインフラをさらに上の次元へとアップデートしようか。夜の闇を完全に排除する『電気街灯』の配備計画、その最速の最適解を今ここに提示する」


「ああ、君の頭脳の加速には、本当に限界がないな、フランク。すぐに全州の職人たちに指令を出すよ!」


ウィリアムが頼もしい笑顔で応じ、私の新時代のインフラ計画が再び凄まじい速度で動き始めた。古い因習をすべて過去のものとし、科学の光で世界を完璧に書き換える。その最先端に立つ私のペンは、輝かしい理想の未来へ向けて、一分の迷いもなく力強く走り続けるのだった。

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