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サクラとマサムネ異世界ほろ酔い漫遊記  作者: まほ。かんた。
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第32話 『深夜の絶対禁酒主義隊』

深夜二時――“酔っ払いエクスプレス”へ、絶対禁酒主義隊が乗り込んできます。


※お酒は20歳になってから。

※お酒を飲んだら乗り物の運転はやめましょう。

※お酒は楽しく適量で。

 ガタン――……。


 ゴトン……。


 規則的な振動の中。


 マサムネはゆっくり目を開けた。


 「……ん?」


 薄暗い寝台車。


 暖色ランプの灯りが揺れている。


 どうやら――


 サクラから戻っていたらしい。


 「寝てる間に戻ったか……」


 マサムネは小さく頭を掻く。


 その時だった。


 やけに外が騒がしい。


 「……?」


 窓の外を見る。


 どうやら列車は停車しているようだった。


 深夜の山間駅。


 白い蒸気が夜空へ流れている。


 そして――


 ホームには、黒い集団。


 だんだら模様の羽織。


 統率された足音。


 その先頭で、銀縁眼鏡の男が静かに列車を見上げていた。


 次の瞬間。


 低い声が、深夜の駅へ響く。


 「御用改めである」


 その声に、車内の空気が一変した。


 「この列車に酒器の持ち込み、及び飲酒疑惑がある」


 「速やかに酒類を破棄するように」


 静かな声。


 だが、有無を言わせぬ圧があった。


 「……来やがったか」


 マサムネは寝台から降りる。


 その時だった。


 「マサムネさん……?」


 振り返ると、カスミが立っていた。


 淡い色の寝間着姿。


 まだ少し眠そうな顔をしている。


 「大丈夫ですか……?」


 「お、おぉ……」


 マサムネは一瞬視線に困った。


 普段の法衣姿とは違う。


 やわらかい雰囲気に、妙に落ち着かない。


 「……どうしました?」


 「いや、その……」


 マサムネは咳払いした。


 「なんでもねぇ」


 カスミは少し首を傾げる。


 その時だった。


 寝台のカーテンが勢いよく開く。


 「んあ〜……うるさいねぇ……」


 ジン・トニックだった。


 かなりラフな寝間着姿である。


 そしてマサムネを見るなり、ニヤリと笑った。


 「あ、おっさんに戻ってるし」


 「ん?」


 「約得じゃん、おっさん♪」


 「何がだよ!?」


 「寝間着美女に囲まれてるし?」


 「囲まれてねぇ!」


 その横で、イーチコも普通に起きてきた。


 「んぁ……騒がしいな……」


 眠そうに目を擦る。


 そしてマサムネを見る。


 「あ、マサムネか」


 「なんだその安心したみたいな顔」


 「サクラだと色々めんどくせぇからな」


 「どういう意味だコラ」


 そんな中――


 再びホームから声が響く。


 「車内検閲を開始する」


 ガタン。


 列車の扉が開かれる音。


 統率された足音が近づいてくる。


 カスミの表情が変わった。


 「……来ます」


 マサムネも窓の外を見る。


 だんだら模様の羽織。


 静かな圧力。


 深夜二時。


 絶対禁酒主義隊による、“御用改め”が始まろうとしていた。


 その時だった。


 六号車側――


 紳士用寝台車から、怒鳴り声が響いた。


 「ちょ、待て待て待て!!」


 ジャックだった。


 「それは酒じゃねぇ! 薬用だ!!」


 「没収対象である」


 「なんでだよ!?」


 ドタドタドタッ!!


 車内を走る音。


 続いて、教団員の冷静な声が聞こえる。


 「樽を発見」


 「確保しろ」


 「待てぇぇぇ!! それは俺のじゃねぇ!!」


 「どう考えてもお前の声だろ」


 イーチコが呆れる。


 マサムネは頭を抱えた。


 「始まったな……」


 その時だった。


 コンコン。


 婦人用寝台車の扉が叩かれる。


 一瞬で空気が変わった。


 そして。


 低い声。


 「絶対禁酒主義隊副長、ジュンシューである」


 「婦人用寝台車の検閲を行う」


 静まり返る寝台車。


 カスミが息を呑む。


 ジンは逆に楽しそうに笑った。


 「へぇ〜……」


 マサムネは小さく呟く。


 「……なんで俺、婦人用寝台にいるんだっけ」


 「今さらです」


 カスミのツッコミが飛ぶ。

挿絵(By みてみん)

 その直後――


 ガチャリ。


 婦人用寝台車の扉が、ゆっくり開き始めた。


(第33話へ続く)

 次回は、婦人用寝台車への“御用改め”が始まります。

 深夜の列車内で、マサムネ達はどう切り抜けるのでしょうか。

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