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第4話:【絶望】種明かしは、ハチミツよりも甘く、毒よりも鋭く 

この小説は生成AIを使用して作成しています。

「……ふむ。ガイル副団長、君もそう思うだろう? リリアナのあの、守ってあげたくなるような儚げな美しさ。あれこそが真実の愛を育むにふさわしい、至高の輝きだと思わないか?」


王立騎士団の訓練場。

日課の視察(という名の暇つぶし)に訪れた王太子ユリウスは、陶酔しきった表情で空を仰いでいた。

その背後で、ガイルは鋼のような体躯を微動だにさせず、無表情で控えている。


「……左様でございますか。殿下がお幸せそうで何よりです」


声のトーンは完璧に「忠実な騎士」のそれだ。


だが、その内側では――猛烈な冷笑が渦巻いていた。

(……『守ってあげたくなる』、か。昨日、その『儚げな美少女』は、あんたの耳元で囁かれた甘い言葉の数々に吐き気を催して、俺の胸ぐらを掴みながら『あいつの喉笛、今すぐかっ切っていい!?』と荒れ狂っていたがな)

ガイルの脳裏には、深夜の寝室で「16歳の令嬢」の仮面を脱ぎ捨て、29歳の本性を剥き出しにして愚痴り倒していた愛妻の姿が浮かぶ。


「昨日も彼女は、私との語らいの中で、感動のあまり瞳を潤ませていた。あんなに純粋な涙、今まで見たことがない。公爵令嬢のような冷徹な女には、逆立ちしても真似できまいよ!」

ユリウスは鼻を鳴らし、勝ち誇ったように笑う。


(ああ、あれな。昨日の報告書には『睡魔で欠伸が出そうになったので、わざと目にゴミが入ったふりをして涙を流し、感動したふりをして誤魔化した』と書いてあったな。リリアナの演技力は特務機関でも随一だ。あんたのような単細胞を騙すなど、赤子の手をひねるより容易いだろうよ)

ガイルは、視界の端でユリウスの華奢な首筋を眺める。


もし、今ここで「君の愛するリリアナは、俺の妻で、しかも29歳だ」と告げたら、この男はどんな顔をするだろうか。

想像するだけで、ガイルの口角がわずかにピクリと動く。


「おや、副団長。君も私の恋物語に感動して、笑みが溢れたかな?」

「……失礼いたしました。殿下の熱烈な情愛に、少々圧倒された次第です」

「ははは! 堅物の君にもわかるか。いや、すまないね。君のような無骨な男には、リリアナのような極上の花は一生縁がないだろうが……まあ、私の婚約破棄が成立した暁には、披露宴に招待してあげよう」


(披露宴、か。その主役の一人は、今この瞬間もあんたの裏帳簿を盗み出すために、側妃の侍女を懐柔している最中だがな。……おまけに、あんたが一生縁がないと言った『極上の花』は、今朝も俺が焼いたパンを美味しそうに頬張ってから出勤していったぞ)


ガイルは、胸の内にある優越感を完璧に押し殺し、深々と頭を下げた。

「身に余る光栄にございます、殿下」


その冷ややかな瞳には、哀れな獲物を見つめる狩人のような、静かな光が宿っていた。


何も知らない王太子は、満足げに鼻歌を歌いながら、軽やかな足取りで去っていく。


その背中を見送りながら、ガイルはぽつりと独り言ちた。

「……さて。リリアナが帰ってくる前に、今夜は彼女の好物の冷製スープでも仕込んでおくか。……『小鳥さん』の演技で、相当お疲れのようだからな」




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


時は事件後に戻る。


鉄格子越しに差し込む月光が、元王太子、ユリウスの無惨な姿を照らしていた。

豪華な刺繍が施されていた夜会服は汚れ、誇り高かった金髪は脂ぎって額に張り付いている。彼は縋り付くように、牢獄の前に立つ二人の影を見上げた。


「……セレスティアか。リリアナをどうした!? 彼お前が何かしたんだろう!? 彼女だけは……私の愛した、あの清らかな花だけは、お前のような蛇に毒されていなければいいが……!」

その言葉を聞いた瞬間。


セレスティアの隣に立っていた「リリアナ」……だった女が、天を仰いで深いため息をついた。

「……はぁ。ねえセレスティア様、もういいですよね? 私、喉の限界なんです。あのキィキィした裏声を出すの、一日に三時間が限度なんですよ」


ユリウスが目を見開く。

聞こえてきたのは、耳に馴染んだ可憐な鈴の音ではない。低く、落ち着いた、知的な――そしてどこか「生活感」の漂う、大人の女性の声だった。

「リ、リリアナ……? その声は一体……」


「あー、殿下。お疲れ様でした。潜入工作員のリリアナです。あ、本名はアンナと言います。もう『リリアナぁ♡』って呼ばなくていいですよ、鳥肌が止まらなくなるので」

彼女はピンクのウィッグを乱暴に脱ぎ捨てた。中から現れたのは、艶やかな黒髪をきっちりとまとめた、凛とした美女の顔だった。彼女は化粧を拭い、隠していた「目尻のわずかな小皺」を露わにする。


「……な、何を……嘘だ……私のリリアナは、16歳の、あんなに純粋な……」

「16歳? 冗談はやめてください。私、来週で30歳ですよ。殿下よりはるかに年上です」

「さ、三十……!? 嘘だ! 私に甘えて、セレスティアのいじめが怖いと泣いていたじゃないか!」


リリアナ……いや、アンナは冷ややかな目で彼を見下ろした。

「あれ、全部『演技指導』によるものです。あ、ちなみに殿下がくださったあの甘ったるいラブレター、特務機関の新人教育用の『悪い見本(反面教師)』として資料室に永久保存されることになりました。おめでとうございます、殿下」


「あ、あああ……っ!」

ユリウスは頭を抱えて蹲った。彼の「真実の愛」が、30歳目前のベテランスパイによる徹底的な「管理」だったという事実に、脳が拒絶反応を起こしている。


追い打ちをかけるように、重厚な足音が響いた。

「アンナ、迎えに来たぞ。……まだ終わらないのか?」

現れたのは、近衛騎士団副団長、ガイルだった。


ユリウスは希望を見出したかのように叫ぶ。

「ガイル! ガイル、助けてくれ! この女たちは狂っている! 私のリリアナをどこへやった! この女は偽物だ!」

ガイルは一歩前へ出ると、アンナの腰を抱き寄せ、ユリウスに同情すらこもっていない冷徹な視線を向けた。

「殿下。いい加減になさい。……彼女は私の妻だ。あなたの『真実の愛』とやらのために、うちの妻がどれだけ心身にストレスを溜めたか、お分かりですか?」

「つ……ま……?」

「左様。殿下が彼女の指先に口付けるたびに、私は影で剣の柄を握りつぶしそうになっていたんですよ。……ああ、今朝も彼女、殿下との思い出を『生ゴミと一緒に捨ててくる』と言って笑っていましたよ」

ガイルは妻の肩を抱き、愛おしそうにその額にキスをした。


「……さあ、アンナ。帰ろう。君の好きな29年熟成のワインを開けてある。……『小鳥さん』の仕事は、もう終わりだ」

「ありがとう、ガイル。……あ、セレスティア様。あとの処理はお任せしていいですか? 私はもう、この『バカ殿下』の顔を見るだけで胃酸が逆流しそうなので」

「ええ、お疲れ様。リリアナ……いえ、アンナ。最高の仕事だったわ」


セレスティアは優雅に扇を広げ、取り残されたユリウスを見つめた。

「……殿下。これが謎解きの答えですわ。

あなたが守りたかったのは『真実の愛』ではなく、用意された『台本』。

あなたが愛したのは『清らかな少女』ではなく、訓練された『スパイ』。

そして、あなたが捨てた私は――あなたが手出しできないほど、この国の実権を握る『勝者』。……さようなら、無能な元王太子殿下」



鉄格子の向こうで、ユリウスは言葉にならない叫びを上げ、壁に頭を打ち付け始めた。

その絶望の声を聞きながら、セレスティアは一度も振り返ることなく、コツコツと心地よい靴音を響かせて、夜の回廊を去っていった。

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