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第46話・別れの季節と新たな約束

征暦2046年3月1日。


全国の高校で一斉に卒業式が行われるこの日、皆方高校でもまた、旅立ちの儀式が執り行われていた。

体育館には、卒業生と在校生、そして教師と保護者たちが整然と並んでいる。

壇上に立つのは、卒業生代表。


伊達政美。


三年間の成績、実技、そして学校生活のすべてにおいて首席を守り続けた少女だった。

そして今――。

卒業生を代表し、答辞を述べている。


「肌寒い風が吹きつつも、暖かな日差しが私たちを照らす今日この日――」


体育館に、政美の凛とした声が響く。


「私たち卒業生のため、このように厳かで晴れやかな卒業式を挙行していただき、心より感謝いたします」


よどみのない言葉。

姿勢も、声も、完璧だった。


「これからの未来に対して、期待や不安が入り混じる中、こうして無事に旅立ちの日を迎えることができました。本当にありがとうございます」


教師たちが静かに頷く。

保護者席からも、温かな視線が注がれていた。


「今、思い返してみると――」


政美は一度、言葉を区切る。


「皆方高校で過ごした三年間は、あっという間……」


そこで,

政美の言葉が止まった。


「…………」


体育館に静寂が落ちる。

泣いているわけではない。

うつむいているわけでもない。

ただ、政美は壇上でじっと前を見つめていた。

そして――。


ダンッ!!


突然、壇上の机を叩いた。


「こんな堅苦しい挨拶は私には合わん」


いつもの、不遜で力強い口調に戻る。

その変貌ぶりに、唖然とする者。

苦笑する者。

そして――


「ぷっ……!」


巧は必死に口元を押さえていた。

肩が小刻みに震えている。

どう見ても笑いを堪えている。

政美はそんな巧を一瞥すると、構わず続けた。


「一月半前の大暴走《スタンピード》」


空気が変わる。


「我々は学生でありながらその戦場に身を置くことになった」


誰もが、あの日を思い出していた。


「……あの戦いに関わった者たちは、何を感じただろうか」


政美の声は、先ほどまでより低かった。


「私は――恐怖を感じた」


体育館が静まり返る。


「戦いの前、衣笠校長が言ったことを覚えているだろうか」


一拍。


「『ここでは、簡単に死ぬ』」


その言葉が、体育館に重く響く。


「校長は、私たちを引き締めるために言ったのだろう。だが――現地に赴き、私はその言葉の本当の意味を知った」


政美は、まっすぐ前を見つめる。


「課外学習では感じることのできなかった――死と隣り合わせになる恐怖を」


誰もが、政美の言葉に耳を傾けていた。


「入学した時、100人いた同級生が今や34人。66人の退学者の中には実力が足りず、夢を諦めた者もいる。魔獣と戦うことに恐怖を感じ、早くに別の道を選んだ者もいる」


そして、政美は在校生へ視線を向ける。


「在校生の諸君」


その声に、後輩たちが背筋を伸ばす。


「君たちの中にも、これから恐怖を感じる者が出てくるだろう」


政美は一度、言葉を止めた。


「その恐怖を克服できるか否か。それによって、君たちの進む道は変わるかもしれない」


静かな声だった。

しかし、その言葉には強い芯があった。


「だが、恐怖に勝てず、この道を去ることになったとしても――私は責めない」


政美ははっきりと言う。


「自分自身を責める必要もない」


そして――。


「なぜなら、恐怖を感じることは弱さではないからだ」


その言葉に、何人かの在校生が顔を上げた。


「大切なのは、自分が選んだ道を後悔しないことだ」


政美は卒業生たちを見渡す。


「私たちは今日、それぞれの道へ進む」


そして、最後にほんの少しだけ笑った。


「私自身、この三年間で多くのものを得ることができた」


静かに息を吸う。


「――有意義な三年間だった」


政美は胸を張る。


「学校生活に、一片の悔いなし。以上、卒業生代表――首席、伊達政美」


そして、最後に深々と頭を下げた。

次の瞬間。

割れんばかりの拍手が体育館を包み込んだ。


「「「おおおおおおおおっ!!」」」


在校生からも、卒業生からも、教師からも、保護者からも。

会場にいる者たちからの惜しみない拍手が送られる。

圧倒的なカリスマ性を持つ少女――伊達政美。

その三年間を締めくくる、最後の答辞だった。

____________________________________


「素晴らしい答辞でした、政美さん」


卒業式を終え、校舎の外。

最後の時間を惜しむように、校庭のあちこちで親しい者同士の別れを惜しむ姿が見られた。

その中で、翔馬が政美へ声をかける。


「ありがとう、翔馬」

「本当に感動しました」

「ホントにそう思ってるのかい?」


すぐ傍らから、巧がニヤニヤしながら割って入り政美が眉をひそめた。


「巧、それはどういう意味だ?」

「いやいや、深い意味はないさ。さすが政美ちゃんだなって感心しただけだよ」


巧は笑いながら両手を上げる。

翔馬たちは顔を見合わせ、笑った。


そして――。


政美は巧へ視線を向ける。


「巧」

「ん?」

「あと一年、しっかり研鑽を積んでいてくれよ」

「分かってるって」


巧は笑みを浮かべる。


「来年には、もっと強くなってるさ」

「期待している」


政美は頷いた。


「そして、翔馬」

「はい」


政美は真っ直ぐ翔馬を見つめた。


「来年、巧が卒業したタイミングでチームを作る」


その言葉に、翔馬が目を瞬(まばた)かせる。


「チーム……ですか?」

「ああ」


政美は頷いた。


「二年後――私たちのチームに入らないか?」


ハンターにとって、チームとは単なる仲良しグループではない。

二名以上のハンターがハンター協会へ結成申請を行うことで、正式なチームとして認められる。

チームを結成すれば、複数人での攻略を前提としたクエストが発生した際、優先的に情報を受け取ることができる。


つまり――。


本格的なハンターとして活動するための、一つの大きな選択肢だった。


「僕で……いいんですか?」


翔馬は驚いたように尋ねる。


「もちろんだ」


政美は即答した。


「それに、もし翔馬がよければ、真や環太たちも誘ってくれて構わない」

「…………」


翔馬は少しだけ考えた。

そして――。


「……分かりました」


小さく笑う。


「その時までに、政美さんから『いらない』って言われないように頑張ります」

「ふっ」


政美が笑った。


「そんな心配をする必要はない。その日を楽しみにしているぞ、翔馬」

「はい!」


政美は満足そうに頷くと、仲間たちの待つ方へと歩いていった。


春の風が吹く。

卒業生たちは、それぞれの道へと歩き始めていた。

三年間を終えた者たちが去り――。

残された翔馬たちは、新たな学年へ進む。


そして。


ここから始まるのは――。

これまでとは違う、次の物語。

征暦2046年。

皆方高校二年生。

世渡翔馬たちの新たな一年が、始まろうとしていた。


皆方高校一年生編・完

この度は読んでいただきありがとうございます。

この作品は、構成、文章を先に考え細かい描写等に関してはAIにて修正しています。

よろしければ感想、評価など書いていただければ今後の参考にさせていただきたいと思います。

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