表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
93/93

終幕 カモメ賢者と黒髪の少女

ここは北の果て。人類最北の街エルナヴから程よく離れた森の中。無数の切り株に囲まれた丸太小屋から、老婆が一人、姿を現わした。


北に聳える山の上には太陽が浮かぶ。白い光に照らされて、老婆は小屋の傍らの墓地へと歩みを進めた。その手には、一冊の本が握られている。三つが並ぶ墓のうち、右手の墓の目前で老婆は膝をつき、おもむろに口を開いた。


「ねえ、モーゼス。聞こえるかしら。今日はね、あなたに伝えたいことがあるの」


老婆の顔には、柔らかな微笑が浮かんでいる。墓に向かって本を差し出すと、老婆はふたたび言葉を紡ぎ始めた。


「覚えてる? あなたはまだカモメさんで、私はただの少女だった頃のこと。人に戻ったあなたと過ごした日々も素敵だったわ。でも、あなたのことを思い返すたび、心に浮かぶのは……生まれて初めて旅に出て、期待と不安を胸に抱いて過ごした日々のこと。今振り返れば、あっという間だったわね。でも、カモメの姿のあなたは、頼もしかったけどやっぱり可愛くて。時には恋人が、時には子供が出来たような気がして……楽しかったわね。あの頃のこと、頑張って思い出して、本を書いてみたの。あなたの気持ちはこうだったかしら……。きっと、そうね。だから……だから、これでいつでもあなたに会える。来世でも、きっと…‥」


老婆の手にした本。

その表紙には、題目が刻まれている。


”カモメ賢者と黒髪の少女”


「そうそう、思い出したわ。モーゼスあなた、ずっと不思議がってたわね。『心の声がバレてる』って。人の姿に戻ってからは無くなったけど、カモメの頃のあなたの声は、ずっと聞こえてたのよ。ここで、ね」


そう言うと、老婆は人差し指で自身の胸をトンと叩いた。



ぽよん。



― Fin. —

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ