3章-3(青と七との急接近)
青山幸村は 伊藤七の 作った歌詞を
見せてもらっては とても尊敬していた。
自分にはない 感性を 持っていて
とても 素晴らしい 歌詞の内容に
感動するばかりだった。
初めて 軽音部に来てから 半月くらい
たった 五月の 始めごろの
ゴールデンウィーク前 またも
青山幸村は まだ軽音部を 見学中の
身分だった。
見学している途中でも 青山幸村は
自然と詞を 思いつくことが
あったので 自分の 作詞ノートに
書き足していった。
そういうことを していたから
伊藤七が こう言ってきた。
「そこで 一人で書いてないで わたしの
作ってる 歌詞を作るの 手伝ってよ
青山くん」
そう 青山幸村は 言われて
自分なんかがいいの?
と 思って 思わず
「自分が 協力出来るんですか?
伊藤さんの歌詞は とても素晴らしくて
手伝えるか わかりません」
と 言って 優柔不断にも
そう 言ってしまったのだった。
伊藤七は それを聞いて ちょっと
何かを 言おうか 言わないか
迷った顔に なった。
でも スッと迷いを 振り払った
顔になって 青山幸村に こう言った。
「青山くん。どうしてそんなに 自分に
自信がないの?
どうして 自分自身を下に 見てるの?
青山くん あなたの 詞やポエムを
読ませてもらったけど とても
素敵で 素晴らしいものよ。
だから そんなに卑屈に
ならないで。
わたしと 青山くんが 協力して
歌詞を書けば とてつもない
いい作品が 出来ると 思うの。
だから もう少し 積極的になってみて
これは わたしからの お願い。
だから 一緒に 歌詞を 考えてよ。
いいかしら」
そう 言ったことを ちょっと怒りっぽく
伊藤七は 言った。
青山幸村は そう 言われて
そうなのかなと 心の中で 思ったのだった。
伊藤七は 青山幸村の 思いも 知らずに
こう 付け加えて 青山幸村に 言った。
「わたしが 思うことには 青山くんが
オリジナルで ひと作品 詞を書いて
みてよ。
そうね 題名は 月光とか 太陽とかの
フレーズが 入った 題名がいいわ。
青山くん お願いだから わたしのために
作ってみて。
もし 気に入ったら みんなと 相談して
曲を つけようと 思うから。
出来上がったら わたし 歌ってみたいな。
青山くんだったら 絶対に いい歌詞が
書けると 思っているから これは
わたしからの 本当の お願いです」
そこで 伊藤七は 言葉を切って
青山幸村の返事を 幸村の顔を
まじまじと 見つめて
幸村の 言葉を待った。
青山幸村は 伊藤七の 少しおさなさが
残るが とても ととのった顔立ちで
青山幸村にとっては とても まぶしすぎる
伊藤七の顔に まじまじと 見つめられて
思わず 赤面してしまった。
そして 次の言葉なんて 思いつかなかった
のだった。
伊藤七は 半分 面白そうに 半分は
どうしたのかと 疑問に 思ったので
青山幸村の 返事を待たずに また
伊藤七が 言葉を つないだのだった。
「青山くん どうしたの?
なんだか顔が 赤くなってない?
わたしの気のせいかな。
まあ それはいいわ。
それよりどうなの? 詞を わたしのために
書いてくれる」
と 最後の 言葉の方は かなり
強めになっていたから
青山幸村はハッと我に帰って
恥ずかしそうに
「はい わかりました。書きます書きます。
絶対 書こうと思います」
と 言うのが 精一杯の 返事だった。