55/132
不穏な動きと忍び寄る影
◇
「……ねえ、郁葉」
「なんだい?」
夜、郁葉と咲葉は終電に乗って移動していた。ここはY市から遠く離れた都市の地下鉄で、この辺りまで逃げていたために日が暮れてしまったようだ。
「今日のあれ、もしかして……」
「ああ、かもね。そんな気配がした」
車内には他の乗客はおらず、彼ら二人だけだ。よって、彼らの会話を聞く者はいない。
「どうする? 『ラボ』の奴らに教えるの?」
「そうだね。そのほうが面白そうではあるけど……今すぐ動かれると失敗するだろうね」
「何で?」
「僕らが去ってすぐだと、彼らも警戒したままだろう? あの魔女に阻まれるし、無関係な奴らも注意深くなるから、色々やりにくい。でも、ほとぼりを冷ましてからなら奴らも油断する。まあ、その間は詳しい調査をするように言っておけば問題ないけどね」
「なるほど」
やがてアナウンスが流れ、次の駅への到着を告げる。
「さてと、僕らの仕事はここまでだ。あとは高みの見物といこうか」
「そうね」
電車が駅に到着し、二人は列車を降りる。
「ふふっ、一体、何人が生き残れるかな?」
去っていく電車を見つめながら、郁葉はただ、不気味な笑みを浮かべていたのだった。




