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クインテット。ナイツ  作者: 恵/.
O―貪る。ナイツ
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諦めが早いのはとてもいいこと


「くそっ……!」

 狼は苛立っていた。優が目の前で倒れ、敵である男女二人組みは、優に気を取られた一瞬で逃げられてしまった。本当なら逃げた彼らを追いたい所だが、優を放っては置けない。

「おいっ! しっかりしろ!」

 肩を掴んで揺すってみるも、涙の溢れる目が開かれることも、閉ざされた口から声が漏れることもなかった。

「ったく! どうしろってんだ!?」

 叫んだところで、一つの可能性を思いついた。

「あの刑事か……!?」

 狼は携帯電話を取り出した。昨今ではあまり見かけない、二つ折りの旧式携帯電話だ。

 ボタンを操作し、アドレス帳からある人物の番号をコールする。

《もしもーし? この番号は狼君かな~?》

 スピーカーから、間延びした女性の声が聞こえてくる。

「よし、生きてる!」

《ふぇっ!》

 狼は電話を優の耳に当てる。すると優が跳ね起きて、叫ぶようにマイク部分に話しかける。

「舞奈ちゃん!? い、生きてたの!?」

《急になんなの!?》

 驚く優と、それに困惑する舞奈。そこから暫く、二人の噛み合わない会話が続いたが、やがて落ち着いて話せるようになった。

《つまり、私が殺されたって嘘で取り乱して、挙句相手さんには逃げられたの?》

「本当に、面目ありません……」

 携帯越しに頭を下げて陳謝する優。先程、落ち着くために瞳を蒼に戻した。

「私としたことが、ここまでの被害を出した上に取り逃がしてしまうだなんて……」

《まあまあ、そういうときもあるよ。今回は、私の存在が足枷になっちゃったみたいだし、こっちこそごめんね》

「そ、そんな、小宮間さんが謝るようなことでは……」

《ともかく。これからは、今後の動向に注意しよう。ね?》

「……はい」

 それから二言三言話した後、通話を切った優は携帯を狼に返す。

「申し訳ありません、心配を掛けてしまって」

 そして、狼達にも頭を下げる。

「まったくだぜ。リアルな死んだ振りはするわ、急に倒れるわで、どんだけ驚いたことか……」

 おいおい、そこは嘘でも気にしてないと言えよ。

「でもまあ、みんな無事だったんだから良しとしようよ」

「ダナ」

 その点、他の二人は空気が読めて助かる。

「てか、さっさと帰って飯にしようぜ。朝飯まだだから、腹減って仕方ない」

「あ、そう言えば……」

 もうそろそろ朝食の時間だ。色々あったのだから、腹が減るのも当然であろう。

「じゃあ、帰って朝ごはんにしましょうか」

「うん」

「ああ」

「そうダナ」

 一同は、ぞろぞろと『虹化粧』へと戻っていった。

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