面倒なので今回の更新はこれで終了
……翌日の早朝、『虹化粧』の住居部分にある黒電話が鳴り響く。
「はいはい。今出ますから」
その受話器を、優が取った。
「もしもし、牧野です」
《もしもし、あたしだよ》
電話の相手は、声から察するに女性のようだった。今流行りの『あたしあたし詐欺』だろうか。本当は流行ってないが。
「あっ、小宮間さん。昨日はご足労いただいてありがとうございます」
電話越しだというのに、頭を下げる優。色々突っ込みたいが、とりあえずスルーしておく。にしてもこの二人、知り合いだったのか。
《ううん、気にしないで。それよりも―――》
相手の声が変わり、優の表情が険しくなる。
《今朝、またでた》
「……そうですか」
一体、何が出たのだろうか? といっても、考えられるのは一つだけだが。
《今度も、ざっと数えて五十人。これで百人を超えたよ》
「申し訳ありません、私の力が足りなくて」
またしても電話越しに頭を下げる。癖なのだろうか? それともボケ? 天然ボケの可能性も捨てきれない。
《ううん、そんなことないよ。だけど、問題がもう一つあるの》
「問題?」
《うん。どうもね、犯人はどこかへ移動しながら事を起こしてるみたいなの》
「それってまさか―――」
《うん。そのまさか》
あのー、話がまったく見えないのだが。
《死体発見現場が、お優さん、あなたの家のほうへ続いてるの》
「……」
それを聞いて、絶句する優。思わず、受話器を落としそうになる。
《移動速度とか、死体の死亡推定時刻を使って軽く概算して見たんだけど、遅くても今日のお昼までにはそっちに来ると思う。だから、気をつけてね》
「……お気遣い、ありがとうございます」
優は辛うじてそう言い、電話を切った。
(お昼まで、ですか……)
先程の会話。その最後に電話の相手が言ったことを、心の中で反芻する。そして、
(やはり、それまでには決着をつけたいですね)
優は手早く着替えを済ませ、まだ夜の明けきらない外へと、飛び出していった。
「……やっぱりか」
そんな優を、狼が見ていない筈がなかった。
「一人で行っちゃうことないのにね」
闇代も一緒に見ていた。
「飯と寝床の礼くらい、したいのダガナ」
一片も。ていうか覗いてたな、お前ら。
「だったら、な」
「うん」
「ダナ」
彼らもまた、明けきらない空の下へ、飛び出していった。




