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クインテット。ナイツ  作者: 恵/.
M―視える。ナイツ
33/132

これが後に、取り返しのつかない事態を引き起こす……かもしれない


  ◆


 ……少し前、狼と闇代の作戦会議の続き。


「ふと思ったんだがな。あの銃使いは、霊術ってのを無効化しちまうんだろ?」

「うん。だから困ってるの」

 何を今更、といった感じで答える闇代。

「だったら、その霊刀とかいうのはどうなんだよ?」

「え?」

 その提案に、闇代は目をぱちくりさせた。

「その霊刀とかいうで切りかかれば、勝機もあるんじゃないか?」

「でも、霊刀から繰り出される技は全部無効化されてるし……」

「霊刀本体も消されるのか?」

「分からない。そもそも霊刀は切りかかるための武器じゃないから、試したことがないの」

「だったら、試す価値はあるだろ?」

「でも……」

 あまり乗り気ではない様子。

「何か問題でもあるのか?」

「てゆうか、わたしの霊刀はちょっと特殊なの」

「特殊って?」

「わたしの霊刀は自立飛行型って言って、霊術と同じ原理で宙に浮くタイプなの。だから、霊術を無効化する相手とは相性が悪くて……」

「手で持って戦えばいいだろ?」

「無理。両手が鞘で塞がっちゃうから」

「鞘一本でか?」

「ううん。一本じゃなくて二本」

「二本て……」

 つまり、狼の出した案は限りなく実現不可能に近いと。そういうことらしい。

「まあそれなら、効果範囲外からの物理的攻撃を加えるぐらいしか手はないけどな」

「でも、霊術は無効化されるんだよ? 霊術以外であれに有効そうな攻撃はできないし」

「てか俺、お前の霊術とかいうの、まともに見たことがないんだが」

「? さっき見せたよね?」

 傷を治したときのことだろうか。

「あんなの戦闘じゃ使わんだろ」

「まあね」

 闇代は近くの木に寄ると、手招きして狼を呼んだ。

「何だよ?」

「今からわたしの霊術を見せてあげるね」

 闇代は拳を振り上げると、木の幹に向かって振り下ろした。

「!!」

 ドスン、と鈍い音がしたかと思えば、木の表皮に幾多もの割れ目が走った。闇代が手を離すと、木は彼女と狼の間を倒れていく。

「これがわたしの霊術。普通は霊質を合成してエネルギー体として打ち出すんだけど、わたしの場合は身体強化が殆どなの。治療も似た系統だから、ついでに習得しただけだし」

 かつて地に根を張っていた、この決して小さくはない木は、小さな少女の一撃によってへし折られてしまった。その一部始終を見ていた狼は、唖然と闇代を眺めている。

「ふふん、すごいでしょ?」

 ぺったんこだけが売りの胸を自慢げに反らす闇代。散々狼に見くびられていたためだろうか。

「でも、全部消されるんだよな」

「うっ……」

 確かに、いかに闇代の霊術が凄かろうと、打ち消されては意味が無い。

「どっちかって言うと、ああいう手合いには熱か冷気を撃ったほうが有効だと思うぞ」

「え、そうなの?」

「ああ。どういう原理で無効化してるのかは知らんが、大概この手の能力は別の形にしてぶつければ有効な場合が多い」

「詳しいね」

「優から習った」

 子供に何を教えているんだろうか、あれは。

「特に、熱エネルギーや力学的エネルギーは防ぐのが難しいからな。魔術や霊術なんかの系統のほうが妨害を受けやすいとか」

 てか、魔術もあるんかい、この話。

「熱かぁ……。正直苦手な分野だよ」

「というか、得意分野とかあるのかよ?」

「あるよ。身体強化とか」

「効かないだろ?」

「うっ……」

 先程と同じ反応。

「で、でも、逆は得意なんだよ……?」

「逆?」

「うん。熱は苦手だけど、冷気なら何とかなるよ」

「冷気か……」

 狼は暫し考え、

「それなら、いけるかもしれない」

「ほんとに?」

「ああ」

 頷く狼に、闇代は顔をぱあっと輝かせた。

「お前、やっとまともに笑ったな」

「え、そう?」

「今までは、無理して笑ってる感じがした」

 それには気づかなかった。狼も、何気によく見ているようだ。

「そっか……そうかもね」

 闇代は右手に握った金属片―――右の五芳星(ライトペンタクル)を見つめ、小さく呟いた。

「わたし、ちゃんと笑えてるって、ママ」

 そして顔を上げ、右の五芳星(ライトペンタクル)を前に向ける。

「お願い、力を貸して、ママ」

 闇代は、右の五芳星(ライトペンタクル)を握りつぶした。すると、彼女の拳から―――何も握っていないはずの左手からも―――細長い金属棒が伸びてきた。それらは適当な長さで止まると、今度は太くなっていき、闇代の手で掴めるギリギリの大きさになって止まった。その棒はまるで鞘に収められた刀のような形状で、恐らくこれが彼女の言っていた『霊刀』なのだろう。

「行こう、狼君。決着をつけに」

「ああ」

 闇代は一歩を踏み出し、そして軽やかに駆けていった。

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